第二回モンドグロッソで誘拐された一夏は束に助けられ、共に暮らす中で行ったある実験で、一人の少女と出会う。
その後、出会った少女や束達と共に世界中の海で跳梁跋扈する深海棲艦や、それに対抗する艦娘や軍、そしてISと深く関わっていくことになる。

そんな一夏達の物語。


……になるはず。

1 / 1
投稿時間的にはこんばんは。挨拶はこんにちは?
執筆中のIS-Apocryphaが余りに停滞しすぎているので、気分転換でApocryphaの元にした作品の一つのプロローグと第一話を混ぜて短編にしてみました。
カッコカリと付いてるように、ISと艦これのクロスオーバーですが、仮想戦記設定盛り沢山な超独自設定物です。

また、この作品にTS転生系オリ主(Apocryphaの優衣の元)のIS二次やら転生系オリ主(Apocryphaの一夏=ステラの元)の閃の軌跡二次他を幾つかの作品の設定を混ぜて書いたのがIS-Apocryphaです。


出会い/変化

-プロローグ-

 

 あの日、あの時、俺は自分の身に何が起こったのか、全く理解出来なかった。

 

 姉に無理矢理連れて行かれたモンドグロッソ第二回大会。その決勝戦が行われる日。会場に向かう途中の道で俺は誘拐された。

 気が付いた時目に映ったのは、がらんとした倉庫の様な場所。見上げれば、自分が縛り付けられてる鉄の柱。そして巨大な液晶テレビの前でなにか会話をする男達。

 その大きな液晶テレビに映ってたのは、暮桜(くれざくら)だと教えられた、専用のインフィニット・ストラトスを身に付けた千冬姉と、その対戦相手。

 男達はその放送を見て、何かを叫んでる。どう聞いても日本語じゃないからわからなかったけど、多分こんな感じなんだと思う。 "なんで織斑千冬が試合に出てるんだ"、って。

 それは雰囲気だけで大体わかった。いくら頭が良くないって言われてる俺でもわかる。俺は人質なんだって事が。千冬姉がモンドグロッソに、決勝戦の試合に出られないようにするための。でも試合は始まって、千冬姉とその対戦相手が物凄い速さで空を飛び回りはじめる。

 出来る事も無いからボケッとその様子を見てると、一人の男が近付いて来て、俺に日本語で話しかけてきた。

「よお、坊主。お前さ、姉ちゃんに見捨てられちまったな。まあなんだ。俺達にゃお前さんへの恨みなんてないんだが、織斑千冬が決勝戦に出ちまった以上、お前さんにゃ死んで貰う。それが契約だからな」

「……」

 多分ガムテープか何かを貼られた口では何も言えないし、それがなくても考える事だって出来なかった。当たり前だ。まだ小学六年になったばかりの俺が、そんな裏社会の当たり前を説かれたって理解できるわけが無い。

 わかるのはただ単に、自分が何か悪い事をしたわけでも無いのに、これから他人の都合で殺されるって事。ただ、俺が千冬姉の弟だからってだけで。

 もちろん死にたくなんてない。けど、手と身体を柱に縛り付けられて、脚も頑丈に縛られてた俺が逃げる事なんて出来ない。ただ、泣いていたんだと思う。死にたくない、死にたくないって。

「悪ぃな坊主。お前さんにゃ罪なんてねえ。織斑千冬の弟なんかじゃ無きゃ、こんな風に死ぬ事も無かったはずだ。けど現実はこれだ。俺達だって死にたくないしな。悪いがこれ……」

 そんな風に俺に言ってきたけど、目を瞑ってた俺には、頭に何か硬いモノ……今ならあれが拳銃の銃口だったとわかる……が押し付けられてることしかわからなかった。

 けど、いきなり男の声が聞こえなくなって、硬い感触もなくなる。そしてタンタンという何かが地面を跳ねる軽い音に合わせて聞こえる、何かが砕けたりひしゃげる音と、男達の悲鳴。それが聞こえなくなった時、口を塞いでいたテープが剥がされる痛みに、怖くて強く瞑っていた目を開けると、俺の顔を覗き込んでくる、安心しきった表情の束さんの顔だけが見えた。

 そのまま束さんと見つめ合ってると、束さんは涙を流し始めた。涙を流しながら、俺を拘束してたロープや鎖を全部切って、そのまま抱き締められて、謝られた。

「助けるのが遅くなってごめんね。こんな事に巻き込んじゃってごめんね。いっくんにばっかり、嫌な思いをさせちゃってごめんね」

 俺を抱きしめて、俺の肩に顔を埋めたまま、ネジが壊れた人形みたいにただずっと、自分が悪いと謝り続ける束さんに、助けてくれてありがとうと言って抱き返してあげると、一度だけ頷いて、また抱き締めてくれた。

 

 その後、俺は束さんの移動ラボで一緒に暮らす事になった。

 あの日俺が誘拐された事は、日本政府が握り潰していて、千冬姉は表彰式が終わるまで知らなかったらしい。でも、なぜかドイツ軍が俺が捕まってた工場跡を見付け、決勝戦が終わって直ぐに、日本政府よりも先に千冬姉に場所を伝え、その見返りとして一年間のドイツ軍IS部隊での教官指導を要求したって聞いた。当然その時、ドイツ軍の部隊と一緒に工場跡に向かった千冬姉が俺を見つけることはなかったけど、捕縛された誘拐犯達の供述や調査でいろいろな痕跡が見つかったから、交渉条件は変わらなかったとか。

 その事を知った束さんは、ドイツ軍のマッチポンプだろうねって言ってた。当時の俺ですらそう思った。けど、知らぬフリをした日本だって同罪。それに千冬姉は周りの思惑に振り回されただけで悪くはないけど、やっぱり助けに来てくれなかったのは、少し嫌だった。

 ただでも双子の兄の千夏の方が優先されて、俺はいつも割を食う側。今日だって誘拐されて死にかけたのに、千冬姉も政府も知らぬ振り。その事が凄く嫌だったから、家には帰らないで束さんと暮らす事にしたんだ。

 そんな中で、千冬姉にも千夏にも伝えなかったこの事を、俺が心から信頼出来るたった一人の友達、凰鈴音にだけ伝えたのは多分、俺が彼女の事を好きだったからだろう。

 

 そうして一年近く経った頃、束さんが量子技術を使った新しい機械を作って、その実験を手伝う事になった。

 曰く、並行世界を見付ける事が出来る装置だというが……この実験の結果は、失敗したとも、成功したとも言える。

 ただ一つ。ラボに一人と、幾つかの同居人が増えた事は多分、成功したって言える部分かもしれない。

 

 もっとも、それが後にいろいろな面倒が俺に降りかかる事に繋がっていたとも言えるから、素直には喜べない。

 だけど、彼女と出会えたのは俺にとってよかった事だったと、後に思い返す事になる。

 

 

 

-並行世界の駆逐艦少女-

 

 織斑一夏が篠ノ乃束のラボで暮らし始めて早数ヶ月。

 ここは作業用の広大な実験室であり、何らかの作業をしていない時は余り音のない場所ではある。だが、今は普段以上に、重い沈黙に支配されている。

 重く、痛々しい静けさに包まれた実験室。その一角に急遽運び込まれたベッドには、セーラー服を着た榛色の髪の少女が寝ている。

 年の頃は一夏と余り変わらない容姿を持ったその少女の様子を、ベッドの脇に置いた椅子に座って見ていた一夏が重苦しい沈黙を破るように、この部屋の主である束に問いかける。

「と言うわけで束姉。この子、どうするんですか?」

 束が新しく開発した機械を試験的に起動した瞬間、突如この実験室内に現れた少女。

 偶然か、必然か。彼女は一夏の直ぐ側、顔の高さ程の空間に忽然と現れ、幸いか、一夏が慌てて受け止めた事で床に叩き付けられるような事は無かったが、現れて以来、目を醒ましていない。

 ベッドは束が持てあますその腕力を持って、一人で運んできている。流石人外との一夏の呟きにむくれた束だったが、当の束本人は、実は混乱していて状況を把握仕切れていない。極度の混乱。故に何をすればいいのか判断も付けられず、普段の様子からは想像も付かない程の弱々しさで一夏に縋り付き、一夏の言うがままにベッドを運び込むなど、余りに普段と真逆の動きを見せた。そして一夏も、束にベッドを運ばせたはいいが、それ以外は何をどう対処すればいいのかわかっていないため、思わず大きな声で束に問いかけてしまう。

「……あはは。そ、その、どどど、どうしよいっくん!」

「知りませんて! でもホントに、どうしましょうか」

 そんな二人の掛け合いで出された束の声か、一夏の声か。どちらに反応したものか、少女が小さく呻くとともに目を開けた。

「ぅうん……」

 そして見覚えのない部屋だからだろうか、身体を起こさず、顔を傾けて周囲を見回し、未だぎゃあぎゃあと騒いでいる一夏達に問いかける。

「……あ、あの。ここは、どこ、なのですか……?」

 やや怯えが混ざっているが、それでもはっきりと問いかけられた言葉に、束は不意に意識を切り替えると、一夏の肩を掴んでた手を離して少女の方へ向き直り、自分と一夏の名を告げつつ少女の名前を聞く。

「あ! 気が付いたみたいだね。……えっと、私の名前は篠ノ之束。こっちの男の子は織斑一夏。で、君の名前を教えて貰えないかな?」

「電、なのです」

「……いな、ずま?」

 しかし少女から帰ってきた名前に名字はなく、名前自体も、およそ女の子に付ける様な名前ではない。

 だからこそ、思わず聞き返してしまった一夏を、束が責めることはない。聞いた束自身も同じ事を思い、聞こうとしていたからだ。

「はい。改吹雪改暁型重装護衛駆逐艦六番艦の電といいます」

 そんな二人に少女……電は、自分は駆逐艦の電だと改めて名乗る。

 駆逐艦。現代でも存在する戦闘艦の一艦種であり、現在の戦闘艦艇としては中型艦に類する艦種だが、強力なレーダーや速射砲、魚雷、爆雷などを備え、時に大型艦や民間船の護衛をし、時に海賊退治などを行う、海軍の防人にして狩人。

 駆逐艦と電の名で、慌ててデータベースを探る束はしかし、電が名乗った艦型とデータ上の電の艦型が合わないことに気付き、問いかける。

「……駆逐艦。電。えっと……んう? 特三型駆逐艦、暁型の四番艦。もしくは特型駆逐艦、吹雪型の二十四番艦、じゃなくて?」

 しかし当の電は、戸惑ったように艦型を呟き、また来歴を話した。全てにおいて違う。

「あの、とくさんがたって、なんですか? 暁型は電の艦型で、同型艦は全部で八隻です。吹雪型は、電の設計原型艦の事ですよね」

 確かに資料によって違うこともあるが、現在では吹雪型は特型駆逐艦の初期型十隻分の通称であり、十一番艦の綾波から十隻を特二型として綾波型と通称。二十一番艦暁から二十四番艦電までの四隻が特三型となり、通称で暁型とも呼ばれる。

 近代最後の艦隊同士の大海戦が行われた太平洋戦争。その戦いに参加したその特型駆逐艦の二十四番艦として電の名はある。しかし艦型は電が言うような改吹雪改暁型ではなく、また護衛駆逐艦という艦種区分も当時の日本海軍には存在していない。

 だがそれ以前に、一夏が口にした疑問も尤もなのである。この淡い榛色の髪と深い緑色の瞳を持った小柄な少女が戦闘艦だということ自体が、既におかしな事なのだ。

「それより姉さん。なんかこう、駆逐艦とか護衛とか六番艦とか設計原型とか、自分の事としては女の子の口から聞いちゃいけない感じの単語がずらずらなんだけど、それはどうなのさ?」

「そうなんだけどね。でも、嘘を言ってるようにも聞こえないんだよねえ」

 電は嘘を言っていない。証拠はないが、目が嘘をついていない。しかし実証も出来ない。顔を見合わせてから電を見つめる二人に、電はやや怯えた様に問いかける。

「あ、あの。私、なにかおかしな事を、言いましたか?」

 電は、一夏と束の会話を聞いて、表情を見て、信じてもらえてないのは理解した。しかし説明出来ることは説明した。だが、二人の疑問は解決出来ていないのだとわかった。

 そうした電の表情を見て、束は電に、戦闘艦である証拠を見せてほしいと告げると、彼女はそれに応えてベッドから立ち上がり、戦闘艦としての装備であり武装である《艤装》を展開する。

「ううん。えっと、君が駆逐艦だとして、それを証明出来るものはあるのかな?」

「はい。えっと……艤装、展開」

 電の身体のあちらこちらに、機械的な何かが突如現れる。背中にはマストなどが付いた艦の艦橋のようなモノ、両腰には幾つもの長い円筒が括られた箱が、両手それぞれと左肩には二本の砲身を持つ砲台が、右肩には幾つもの小さな銃が付き、その下には幾つもの円柱が内側に括り付けられた盾状のモノが垂れ下がる。

 両太股には五本の筒が出てる箱形の何かが有り、足も、靴の代わりにノズルやフィンが付いた具足のようなモノに変化し、よく見れば頭にもいろいろな髪飾りの様なモノが幾つも付いていた。

 似たようなモノを一夏は見たことがあり、またこの部屋にも造りかけのそれが三機ある。束が中心となって造られた宇宙を目指す為の翼《インフィニット・ストラトス》。通称をISと略されるそれは、しかし電が艤装と呼ぶ、彼女が身に纏っているモノとは全く違う。

「……束姉。これ、ISじゃないよな。なんか、戦艦みたいっていうか」

 一夏の問いかけに束は直ぐに同意する。

「うん。明らかに戦闘艦のミニチュアって言えるかな。でも、資料としてここで集められる駆逐艦電の資料にも、護衛艦いなずまの資料にも、この子が持ってるような装備はないんだよね。強いて言えば、護衛艦の方に似てはいるけど……」

 両手や肩の砲台は、おそらく主砲を模したモノ。腰や太股、盾内の筒状のモノはミサイルや魚雷、爆雷などか。画像資料と見比べれば、どことなく雰囲気が似ているモノがあちこちに点在している。

 魚雷発射管、ミサイル発射機、爆雷投射機などなど。見れば見る程似ていると思わせるそれらは、しかし共通性はあれど同じモノはない。

 そこで束は、電に最後の時のことを聞いてみる。これはある意味、電ではなく自分と一夏に対する確認である。

「えっと、電ちゃん。君が沈んだのはセレベス海近海であってる? 原因は潜水艦の魚雷攻撃」

 するとやはりというか、電は驚いたように呻き、違うと断言する。

 現在確認出来る資料では、電は第二次大戦後半となる1944年5月に、姉妹艦の響と共にマニラからバリクパパンへ向かう輸送船団を護衛する航海の最中、セレベス海近海でアメリカ潜水艦の魚雷攻撃を受け、船体を二つ折りにして沈没した、となっている。

「ふぇ? あのあの、電は沈められてはいないのです。1932年に就役して、1979年に退役。1982年にちゃんと船台の上で解体されました」

 しかし電の艦歴を聞けば、全く違う歴史と言える。就役した年は同じ1932年だが、その後五十年弱もの長い期間を現役で活動し、最終的に解体されるという、およそまっとうな最期を迎えている。

 ミサイルの様な装備や五連装の魚雷発射管。明らかに形状の違う砲。そもそも、特型駆逐艦の電にはミサイルなど搭載されたことはなく、また魚雷発射管も、おそらく最期の時まで三連装型のままだったと思われる。

 これらが示すのは彼女がこの世界ではなく……。

「……装備の外見と類似性のなさに五十年近くにもなる艦歴の長さ。戦没艦じゃなく解体までされてること。この三つが示すのは、この子は現実の、この世界で起こった第二次大戦で沈められた駆逐艦電じゃなくて、並行世界で産まれて活躍した駆逐艦電って事、なのかな」

「話を聞く限りだと、そんな感じにしか聞こえないですよね……」

 並行世界。実際にそれを見つける装置を開発しようとし、そして束と一夏の二人は、つい先ほどその試作機を動かした。動かしたのだが、やはり確証がまだない。

 既に束も一夏も電の事を疑ってなどいない。しかし、もっと情報が欲しい、そう考え、束は電にさらなる情報提供を求める。この世界と、違う世界との違いを知りたい、と。

「えっと、いーちゃん。いーちゃんが特に活躍したとされる海戦とか海域って、どこ?」

「1939年6月のモザンビーク沖海戦や1941年12月のハワイ州占領作戦。1945年9月のウェーク沖大海戦。1954年4月カーペンタリア要塞防衛戦。1955年7月ウラジオストーク港封鎖戦。それから、1958年から70年までは第五艦隊第一五護衛戦隊の第一五二護衛隊副旗艦として太平洋航路の輸送船団護衛任務を務め、その後は退役まで本国第一艦隊麾下の第一近海域護衛群に所属していました」

 その問いかけに電が語った歴史は、明らかに情勢や戦況が違いすぎる戦歴の数々。そしてこちらでは終戦となった1945年8月よりも後に行われた大海戦すら多数存在する。

 略歴的に、こちらで言う第二次世界大戦と同じ戦争は、1938年4月1日に"プロイセン帝国とオスマン・トルコ帝国の連合軍"が、"ポーランド王国"を始めとする周辺複数国に宣戦布告すると同時に行われた電撃的侵攻により開戦。

 日本も、1939年に連合軍所属のソマリランド連盟軍が()()()マダガスカルに宣戦布告して攻め込んで来たことでなし崩し的に参戦。その後、1941年12月10日にブリテン……こちらで言う、アメリカ大陸全土を支配下に置いた大英帝国と同等の国が、1938年時点で突きつけてきた最後通牒……ハルノートと同様のモノだろうそれを破棄する形で太平洋での戦争も開戦。

 この戦争では1946年8月17日に停戦するまでの間、日本は基本的にミクロネシア、ポリネシアにマダガスカルやオーストラリアを含む日本領と、同盟国であるインドやシンガポール、ブルネイなどと共に、ブリテンやプロイセン、ロシアから太平洋及びインド洋を守る戦いを繰り広げたという。

 また余談だが、その後1951年に、第一次、第二次両大戦で戦後賠償として日本やブリテンに領土を割譲しているロシアとプロイセンが、領地奪還を題目とした宣戦布告により第三次世界大戦が勃発。

 ブリテンもどさくさ紛れで日本領奪取のために宣戦布告したらしく、混沌とした戦況となったようだ。もっとも、向こうでは一大資源国且つ技術大国である日本()()()は、海軍力と技術力に物を言わせた防衛戦を行うことで、56年5月に停戦したこの戦争にも負けることはなかった。

 このような世界情勢や戦況、そして地形はほぼ同じでも国名や領土すら違う世界は明らかに別世界。

「やっぱりいーちゃんは、明らかに別世界の戦闘艦だね」

 ここまでの説明で、束も電が別世界の艦である事は完全に認めた。そして一夏は思った。あの試作機の起動は成功しているんじゃないか、と……。

「束姉。あの装置、並行世界を見付けるって言ってたよね。まさかと思うんだけど……」

「そのまさか、かなぁ……。正直まだ、自信が無いんだよね。確証が得られないというか。でも、確かに、ね。いーちゃんがここに居る以上、存在は証明されたって言う事?」

 一夏がそう問えば、束もやや疑心暗鬼になりつつも、しかし目の前に電が実在する居る以上、否定する根拠がなくなってしまった。

 少なくとも、電が語ったような五十年近くに及ぶ長い艦歴や戦史を、細かな戦地と勝敗まで交えながら語ることなど、思いつきだけで出来ることではない。

「そうじゃないんですか」

 一夏ですら、電が嘘の歴史を語っているのではないというのは直ぐにわかった。すぐに理解しきれるモノではないが、電は事実しか話してない。

 そんな風に考え込み、勝手に納得しているに人に、電はやや困惑気味に声をかけるが、それも特に気にした様子はなく、むしろ一夏は電の髪を撫でながら大丈夫だと安心させる。

「あ、あの……」

「ああ、こっちの話だから別に大丈夫だ」

 そして束も、電の頬を撫でながら、ただ、自分達と一緒に、ここに居ればいいとだけ伝える。しかし電はそれでも不安なのか、伏し目がちに二人に聞き返してしまう。

「うんうん。大丈夫。一先ずいーちゃんはその艤装をしまって。で、ここでは普通に私達と生活して、私の手伝いをしてくれればいいから」

「いいの、ですか?」

 そんな彼女の頭を、一夏は二度、ぽんぽんと叩きながら大丈夫と声をかけ、改めての自己紹介をし、束も一夏に続けて自分の名前を伝える。

「束姉がいいって言ったんだから、それでいいんだよ。俺は織斑一夏。一夏でいい。電、よろしくな」

「改めて、束さんだよ。よろしくね、いーちゃん」

 二人が名前を言い、電に手を伸ばすのを見て、彼女は艤装を格納してから二人の手を取り、胸に抱え込む様にし、一夏と束の顔を見ながらよろしくと伝えるのだった。

「えっと、はい。あの、束さん、一夏さん。よろしく、なのです」

 

 なお。この電が持つ戦闘艦としての性能は、この世界の第二次大戦に参加した全ての駆逐艦と比べて遙かに高性能且つ高機能であり、束が「いーちゃんてばこっちの第二次大戦期の駆逐艦どころか、大半の軽巡洋艦すらさらっと超えてるよねー」と断言する程の性能を有していた。

 その詳細は、また別の機会に語られることになる。




電であって電ではない電がヒロイン(の一人)な艦これクロスなISです。
暮桜の名前以外にIS自体が出てないけどISメインです。そしてここの一夏もまた……。更にリィン達まで出てくる超展開に。

この作品、IS原作で四巻分位まで書いていたのですが、基本的な流れはApocryphaにほぼそのまま流用してるので、実は続きを投稿しようとしても所々で深海棲艦との戦闘や艦娘絡み、海軍/自衛隊絡みの話しが入るなどの艦これ的要素以外にApocryphaと差異が殆ど無いので多分、続きは投稿はしません。

なおこの電ちゃん、現代の汎用護衛艦(DD)どころかミサイル護衛艦(DDG)や某国の1万トンオーバーな変態駆逐艦よりも高性能という、第二大戦前の建造艦としては某チート艦隊の艦船も真っ青なスペック持ちだったりします。
そもそも機関燃料が核じゃないけどガスでもディーゼルでもない上、推進器もスクリュープロペラじゃないとか……。
流石に海中戦艦(日本武尊)みたいなのまでは設定しませんでしたが、割と似たような物は設定してます。

IS-Apocryphaはちょっと遅くなると思いますが、エタらせたくは無いので、少しお休みしつつちょっとずつ書いています。というか書けています。来月中には次話を上げたいなと。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。