かつて———〝英雄〟に憧れた少年がいた。
 あの日見た光景は、何よりも鮮烈で、何よりも貴く———眩し過ぎた。
 彼みたいになりたい。その憧憬を抱き、彼は堕ちた。

 ———けれど、その理想はたやすく溶け落ちた。

 奪われた。大切な家族の命を。
 失った。抱いた理想を。
 目を覚ませ。現実を見ろ。これの何処に希望がある?

 《心》が死んでいく。
 《心》が腐っていく。
 《心》は静かに閉ざされていく。

 ———それなのに、その《心》は癒え開かれ絶対に失いたくないものを知った。

 だから、この《心》に誓おう。
 決して〝奴〟を逃しはしないと。
 決して〝奴〟に二度と大切なものを奪われはしないと。
 決して———己が〝奴〟のようにはならないと。
 この身はありふれた〝復讐者〟であるが故に。

 これは、〝英雄〟を憎悪した少年が〝英雄〟に至る、矛盾の物語。

 さあ———最も新しい〝英雄譚〟を語ろう。
 
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