健全魔導士目指します   作:秘密の区域

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猫耳はいいぞ

 俺がエンジェルに搾取されている間にニルヴァーナは破壊された。

 

 それは構わないのだが、強行検束部隊に事後を見られたのは気まずかった。堅物っぽいラハールがなんとも言えない顔していて申し訳ない。

 

 とにかく発端は俺だったものの、現場を見る限り俺が完全に被害者だったため追及されることはなかった。今回はつい突発的に行動したので要反省である。

 

「K随分静かね。どうかしたの?」

 

「俺は元々騒ぐタイプじゃないよ。まあなんていうか、無事帰ってこれたから一息つきたくてな」

 

「さすがのKでも今回は骨が折れたようね。でもKを含めてみんなが帰ってきて安心してるわ」

 

 俺たちの帰還とウェンディとシャルルの加入で沸くギルドは今の俺には少し落ち着かない。

 しかしこの喧騒やミラの労いの言葉が俺を癒していることも事実である。例えばナツがテンションが上がる余りルーシィの服を燃やしたりとか眼福だ。

 

「K?どこをじろじろ見てるのかな〜?」

 

「いたたっ!手の骨が砕ける!」

 

 あられもない姿になったルーシィを見ていたらミラに手を捻られてしまった。女性とは思えない握力に俺はたまらず許しを乞う。

 

「もうKったら意外に女の子に目がないから」

 

「ははっミラには敵わないなあ」

 

「あの、ミラジェーンさんにKさん!」

 

 俺がミラに窘められていると、ウェンディが声をかけてきた。

 

「何か用か?」

 

「2人は付き合っているんですよね!?」

 

「その通りだ。フィオーレ1のラブラブカップルとは俺たちのことさ!」

 

「あなたそんなこと言って恥ずかしくないの?」

 

 冷ややかなシャルルの反応に若干後悔したのは内緒だ。 一方質問をしてきたウェンディは目を輝かせる。

 

「よろしければ2人の馴れ初めを教えてくれませんか!」

 

「えっ」

 

「いいわよ。全部話してあげる」

 

 思わぬ質問に固まる俺。当然話したくないのだが、ミラはノリノリである。

 

 こうなっては俺では止められない。次々に話される赤裸々なエピソードに穴があったら入りたい気分だ。

 

 ミラが熱く語っていると他のギルドのメンバーも集まってきた。

 

 そして恋愛関係なしに俺関連の話を始めて収拾がつかなくなる。

 

「この前ルビナス城下町の魔法教団を討伐する依頼を一緒に受けたんだけど」

 

「あの時か。あれは引いたな……」

 

「Kさん今度は何をしたんですか……」

 

「魔法教団が潜伏している建物に来るや『この建物をさ、ナツの魔法で焼き尽くしたら一網打尽じゃね?』って言い始めて」

 

「ひいっ」

 

「俺がおかしいみたいになってるけど街を半壊させたお前らに言われたくねえよ!」

 

「いやさすがにKのがえげつないと思うぞ」

 

 止まらないとんでもエピソードにウェンディの苦笑いが続く。この長時間の恥辱はウェンディの俺への印象を確実に悪化させた。

 

 辛い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然だが、俺は猫を探すことになった。

 

 きっかけはガジルが自分以外の滅竜魔道士に相棒の猫がいることになぜか焦りを覚えたことから始まる。

 それからガジルは血眼になってハッピーやシャルルのような猫を探し始めた。

 

 しかしそう簡単に見つかるはずもなく、見かねたジュビアが手伝うことになり、そこに俺も巻き込まれたのだった。あの時グレイに弁当を渡すことを手伝った縁で、ジュビアとは交流ができていたのである。

 

 面倒ではあるものの、ジュビアと2人での探索に、俺はテンションが上がっている。グレイに釘付けでこんな機会は滅多にないからな。

 

「あの、Kさん……この格好は本当に効果があるのでしょうか?」

 

 セクシーな猫のコスプレに扮したジュビアが問いかけてきた。彼女には俺が用意した衣装を着てもらっている。

 黒猫を模したほぼ下着のような格好をしたジュビアは実に扇情的だ。猫をおびき寄せるためという理由で着てもらったが、もちろんデマカセである。

 

「ばっちりだ。グレイも『ジュビアに似合いそうだ』って言ってたぜ」

 

「グレイ様が!?」

 

 グレイの名前を出した途端、ジュビアの目の色が変わった。これも嘘なので多少の罪悪感に苛まれる。

 

「ところでKさんの格好は……」

 

「『ハッピー人型モード』だ。ジュビアが猫に扮するなら俺も何かやらないといけないと思ってな」

 

 俺は猫耳付き全身青タイツの姿をジュビアに見せつける。この世界ではだいぶ鍛えているから見苦しいものではないはずだ。

 

「そ、そうですね、いいと思いますよ」

 

 渾身の俺のコスプレに対して若干引き気味のジュビア。せっかくジュビアだけそんな格好だったら恥ずかしいだろうと用意したのにひどい。

 こうなったらその恥ずかしい姿を余すことなく視姦してやる。正直なところガジルが求める猫もとい、エクシードは見つけること自体難しいと思っているからね。

 

 そんな下衆なことを思いながらも猫探しはスタートした。俺たちは野良猫がうろつく路地裏を中心に捜索する。

 ジュビアは猫じゃらしを振りながら猫を誘いだしている。

 

 俺はジュビアが猫に気を取られている中、ジュビアの尻をガン見していた。ショーパンからはみ出る尻肉がたまらない。今すぐにジュビアの尻を鷲掴みにしたい衝動に駆られる。

 

「普通の野良猫はいますが、ガジルくんが探しているような猫はいないですね」

 

 すっかり尻を見ることに夢中になっていた俺は、ハッと我に返る。ジュビアの言う通り野良猫はそこそこいるが、お目当てのエクシードは見当たらない。

 

「卵から孵るようなよくわからない種みたいだし、簡単には見つからないかなあ」

 

「哺乳類じゃないんですか!?」

 

 哺乳類でも卵から孵る奴はいるが、この場合はどうなのだろう。そもそも一般的なカテゴリーで別けることは出来るのか?

 

 しばらく俺たちはこの疑問に頭を使うも、明確な答えは出なかった。

 

 まあ見た目猫だから哺乳類で良くね?という、投げやりな結論に留めておく。

 

「Kさんはギルドのメンバーのことについて、きちんと把握してますね。ジュビアも、特にグレイ様とはもっと交流を深めないと!」

 

 俺はジュビアが思ってるより『妖精の尻尾』の仲間と交流を深めてはいない。大所帯のギルドだけあって人数が多いため、未だに顔と名前が怪しい奴がいるレベルだ。

 加入したのも2年前と最近の部類で、自分は新参者なのだと感じることは多々ある。

 

「その愛しのグレイとはどこまでいったんだ?」

 

「どこまでって……それは、その」

 

 恋の進行状況を聞かれたジュビアは言葉に詰まる。どうやら劇的な進行はないようだ。

 全くグレイもこんなかわいい娘に言い寄られて、やーんな関係にならないとは罪作りな男である。鈍感ではないと思うのだが、気恥ずかしいこともあるのだろう。

 ……俺も恋愛に関しては人のことはあまり言えないが。

 

「あの、参考までにKさんはミラさんのどんなところに惹かれたか聞いてもいいですか?」

 

「ふへっ?」

 

 ずいぶんと答えるのが恥ずかしい質問が来てしまった。

 

 これミラ本人にしゃべったりしないよな?

 

 

「そうだな……色々あるけど1つあげるなら一途なところかな」

 

「一途なところ、ですか」

 

「俺はみんなが思ってるほど人間出来てなくてね。ミラには結構みっともない部分を晒してるよ。それでもミラは俺のことを好きだと言ってくれた」

 

 全部を見せてないとはいえ、こんな最低下衆魔導士の俺を愛してくれている。

 

 それがたまらなく愛おしいのだ。

 

「ジュビアも今抱いている気持ちを大事にしていれば、グレイもきっとそれに応えてくれるさ」

 

 自分でも似合わないと思うセリフを言ってしまった。裏でやらかしてる俺が言うようなことではないぞ。

 

 俺の複雑な気持ちとは裏腹に、ジュビアは感銘を受けたようだった。ジュビアを勇気づけられたならそれはそれでいいか。

 

 さてジュビアへの恋のアドバイスは終えたが、肝心のエクシードはまだ見つかっていない。

 

 捜索は難航している。

 

「こうなったら秘密兵器を出すしかないようだな」

 

 俺は持ってきていた袋の中から魚と七輪を取り出した。

 

 行き詰まることを予期していた俺は、ハッピーから好みの魚を聞き出し、準備していたのだ。

 

 これで必ずエクシードが見つかるわけではないが、ないよりマシだろう。

 

 七輪で魚を焼き始めたことにより、魚の香ばしい匂いが辺りに漂い始める。その匂いに釣られて多くの野良猫が姿を現わしてきた。

 

「……やけに多くないか?」

 

「多いなんてもんじゃないですよ」

 

 気付けば大量の猫に俺たちは包囲されていた。集まった猫たちは皆、七輪の焼き魚を虎視眈々と狙っている。

 

「ニャー!!」

 

 一匹の猫を皮切りに、猫たちが一斉に飛びかかってきた。凄まじい争奪戦の中、揉みくちゃにされる俺とジュビア。

 猫たちは目的を果たすと、嵐のように立ち去っていった。

 

「もがもが」

 

 さらにハプニングは続く。なんと猫たちによって体勢を崩されたことで、俺の顔がジュビアの尻の下敷きになってしまった。

 彼女の大きくて柔らかな尻肉が俺の顔に直撃していきているのだ。何もないまま終わるだろうと思っていたのに、神は俺に至福の瞬間を授けてくれた。

 この柔肉の感触を俺の顔に焼き付けるぞ!

 

「ん?なんだこれは」

 

「あんっ」

 

 ついでにボケたふりしてジュビアの尻を揉みしだく。手触りも中々のものですなあ。

 

「きゃーーー!!!!」

 

 しかしささやかな幸福の時間は一瞬にして終わりを告げる。自らの状況に気付いたジュビアは、俺に魔法の水流をぶち込んだのだ。

 当然避けれるはずもなく、俺は空高く吹き飛ばされる。

 

 そして落下していく最中、誰かの頭にぶつかって気絶した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は頭の痛みとともに目を覚ました。勢いよくぶつけたせいか、痛みはしばらく収まりそうにない。

 それより問題なのは俺がぶつかってしまった人物だ。

 

「てめえこれはどういうことだ?」

 

 怒り心頭のガジルくんである。長く捜索していたのか疲れも見える。

 

 このままでは溜まったフラストレーションごとぶっぱされそうだ。どう言い訳したものだろうか。

 

「やっと見つけました!Kさん無事でしたか……」

 

 ここでタイミングよくガジルをなだめてくれそうなジュビアがやって来た。

 

 しかし俺たちの姿を確認した途端固まってしまう。

 

「二人がそんな関係だったなんて、ジュビア困惑!」

 

「「はあ!?」」

 

 俺たちの体勢を確認しよう。

 

 ちょうど起き上がったばかりでガジルに覆い被さっている俺。

 

 見つめ合う二人。

 

「誤解だあああああああ!!」

 

 俺はガジルから飛び退いて弁明を始める。ガジルもことの重大さに気付いて弁明に加わる。

 

「二人して必死になって否定するなんて……ますます怪しい」

 

「どうしろって言うんだよ!!」

 

 なぜかジュビアに変なスイッチが入っている。ここは冷静に説明して誤解を解かねばならない。

 

「まあ落ち着けジュビア。ガジルはともかく彼女がいる俺がそういう趣向を持っているわけないだろ?」

 

「あっ!お前一人だけ免れようとするんじゃねえ!!」

 

 これが彼女持ちのアドバンテージだよ、ガジル。

 

 だが俺の言葉を受けてジュビアはますます驚愕の表情を浮かべた。

 

「まさか両方OK!?」

 

「なんでそうなるのかなあ!?」

 

 結果、なんとかして誤解を解いたものの、この件はジュビアに新しい世界を開拓させることになった。

 後にジュビアがリーダスに俺とガジルの絵をせがむ姿を見て俺は頭を抱えることになる。

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