名探偵と料理人   作:げんじー

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このお話は 原作44巻が元になっています。


第六十九話

「はぁ~……」

「どうしたの?この泥棒映画観に行こうって誘ったの園子でしょ?」

「そうですね、席に着いた後も前作がものすごく面白かったって語ってたのに」

「だってぇ、最初はイケてたからすっごく期待してたのにあれじゃあ前の二番煎じじゃない!」

「そぉ?わたしはそれなりには楽しめたけど」

「私もそれなりには楽しめましたよ?パーティでお会いした方がスクリーンで別の性格の人物の演技をしているって言うのも新鮮で」

「(ああ、紅葉さんは確かにハリウッド俳優と会う機会もあるんだろうけど……なんかずれた楽しみ方だな)」

「蘭、それなりじゃあダメなのよ!それと紅葉ちゃんの楽しみ方は独特すぎ!前のを踏襲してさらにスケールアップしたものが見たかったの!」

「まあ、そこは監督の腕次第だし……他の続編物と同じで二本目は無難な所に収まったってだけだよ」

「あーどっかで起こってくれないかなぁ。心臓の鼓動で周りの音が消えて市編むような華麗で大胆なとびっきりの大事件が!」

「いやいや、園子ちゃん。平和が一番だよ?」

「ホンマに。静かんのが一番やで?」

 

日も落ち、周りは街灯とネオンと月明かりが光源となった繁華街を俺達は歩いていた。さっきまで観ていた「オッサンズ11 PART2」に落胆した園子ちゃんが物騒なことを言っているが、平和が一番だよ?

 

「そう言えば最近は見てねえな、あの野郎」

「あの野郎?」

「ホラ、あの気障な怪盗だよ」

「あー、彼ね。学業が忙しいんじゃない?」

「そーいえば蘭もそろそろテストの勉強しなきゃって言ってた…って!?アイツ学生なのか!?」

「あれ?知らなかった?」

「知らなかったっていうか、龍斗オメーアイツの正体知ってるのか!?」

「あー。まー……」

 

彼の事は何度か対峙しているし、居場所も都内だから追跡しようと思えばできるんだけどそう言う話ってしてなかったっけ?…って。

 

「きゃっ!!……え?」

「おっと。こんな人通りのあるところで大胆な」

「くっそ、いてえじゃねえか!離せよ!!」

「いや、あんたひったくりでしょうが。紅葉、警察に…って」

「もうしとります。それにしても龍斗がいる所でひったくりなんて馬鹿なお人です」

「(は、はええ。オレと話すために三人とはちょっと離れていたのに園子がひったくられてから瞬きの間にはもう犯人をひねってやがった)」

「アッアッアッ!ワシが捕まえようとおもっとったが余りの早業に見とれてしもたわい!流石じゃのう、龍斗君!!」

「え?」

 

ひったくり犯に組み付いていると、後ろから聞いたことのある声が聞こえた。

 

「あれ?次郎吉おじさま!?」

「おお、誰かと思えば史郎んとこの娘っこに大岡家のご令嬢じゃないか!…二人がそろっている所を襲い掛かるとはある意味この悪党は見る目が合ったという所かのう?」

「もう、おじさまったら!…そうだ、蘭。この人は私のおじさまで鈴木財閥相談役の鈴木次郎吉おじ様よ!」

「は、初めまして!」

「まあ相談役と言っても経営の方は全て史郎に任せてワシは遊びほうけているがのう!ワシが主にかかわっとるのは一つだけかの」

「一つ?」

「そうよ、眼鏡のガキンチョ。それもひっじょーに身近な所!龍斗君のマネジメントをしているのよ。龍斗君のパトロンって言った方が分かりやすいかしら?」

「そういうこと。いっつもお世話になっています」

 

いや、本当に。この歳で自由に動けるようになったのは鈴木財閥のお蔭だ。

 

「アッアッアッ!なーに、ワシも美味しい思いをしとるしの!……しかし、それももうすぐ終わりかもしれんがな。のう?大岡家のお嬢ちゃん?」

「ええ。いつまでも龍斗を一人占めされては叶いませんし?」

 

そう言って意味ありげな目線を上げる紅葉と次郎吉さん。そう、俺が大岡家に婿入りするか紅葉が嫁入りするかの決着は未だ着いていないがどちらにせよ今のマネジメント体勢に変化が起きるのは確実なのだ。紅葉も独自に動いているみたいだし。

 

「で、でもおじ様?いつ日本に?最近はあんまり日本にいないってパパが言ってたけど」

「おう、帰ってきたのはつい先週じゃ。世界中探し回ってようやっと探していたものを見つけ出したから舞い戻ってきたのよ!」

「探していたもの?」

「最高の餌を、な」

 

「「「「餌?」」」」

 

それは新ちゃんにメチャクチャ絡んでいるルパン君のご飯の事かな?

 

 

――

 

 

「うわー!メダルやトロフィーでいっぱい!」

「ホンマや、うちも実家の方に帰ればそこそこある方やとおもっとったけど。この数は…」

 

次郎吉さんがせっかくだからと鈴木邸に俺達を招待してくれた。そして招かれたのは次郎吉さんがこれまで取ってきた賞のトロフィーを飾っている一室だった。

俺達はタクシーを拾ったが、何か気にいったのか新ちゃんはルパン君と相乗りで次郎吉さんのバイクでここに来た。

 

「新ちゃん、次郎吉さんのバイク乗り心地はどうだった?」

「ま、まあまあだったぜ?だけどあの爺さん、バイクの風切り音にも負けねえくれな大声でバイク自慢してくるから参っちまったぜ…」

 

ちょっとだけ疲れた様子の新ちゃん。まあ、いきなりバイクだものね。そんな雑談をしているとトロフィーを見ていた蘭ちゃんが声を上げた。

 

「ゴルフのヨーロッパOPに、ヨットのUSAカップに世界ハンバーガー早食い選手権なんてものもある!それも優勝ばっかり!!」

「でもこれ、同じ物はないんやない?」

「ほう、そこに気づくとはするどいのう?一度頂点を極めてしまうと冷めてしまっての」

「(スゲーけど、金持ちの道楽だなこりゃ。真似できん)」

「あれ?料理も出来るんですか?」

「ん?ああ、それはワシが若い時に取ったもんじゃな。その頃は龍斗君に龍麻葵の緋勇夫婦も生まれとらんかったからの。いまじゃあその分野に関しては頂点なんておこがましい事はおもっとらん!むしろこんな逸材が生まれてきた時代に生を受けられて感謝しとるほどじゃ!!」

「あ、ははは」

「次郎吉おじ様、緋勇家の大ファンなのよ……あれ?あんな像、前からあったっけ?」

 

園子ちゃんが気づいたのは裸婦の黄金の彫像が大きな宝石をかかげている像だった。

次郎吉さんが言うには元々この像は大航海時代に不沈艦と言われたシーゴッデス号の船首に付けられていたものでその手にあるのは人魚の涙が宝石になり海難を防ぐ力があるという伝説があるアクアマリンで…

 

「その名もブルーワンダー(大海の奇跡)!元はこの黄金像を取り囲むように他の人魚像があったらしいんじゃが長い年月を経て朽ちてしもうたらしく今はこのビッグジュエルを持った黄金像しか残らんかったそうじゃ」

「「「へー」」」

 

「ねえ、新ちゃんビッグジュエルって言えば…」

「ああ、さっき話していた奴の大好物だ……ったく、さっきの園子のひったくりと言いアイツと言い…噂をすれば影ってやつか?」

 

まさか、餌ってルパン君じゃなくて。

 

「これを手に入れるのには苦労してのう。美術的価値も高くてやっと先週ワシの所に」

「え?じゃあさっき言ってた餌って」

「その通り、これが餌じゃ。彼奴を釣るためのな!」

「キャツって?」

「この世に生を受けて72年。この次郎吉狙った獲物は逃したことは無かった。そう、臨んだ賞は全て手に入れて願った夢は全て叶えてきた。龍斗君たちという素晴らしい才能の人材にも触れられた。じゃがあったんじゃよ、この世で唯一掌握できない者が。そのものはいかなる厳重な警備からも堅牢な金庫も魔法のように突破し、悠然と夜空に翼を広げて消え失せる白き罪びと」

「ちょ、ちょっとそれってまさか…」

「そう、彼奴の名は…」

 

 

――

 

 

「怪盗キッドってあれですよね?大きな宝石ばかり狙うって言う」

「そう、ある宝石を探しているんだけどその宝石の手掛かりが「ビッグジュエル」って事だけしかわかっていないからいろんな宝石に手を出している俺らと同世代の男の子だよ」

「……龍斗?なんでそないなこと知ってるん?」

「前に話したことがあってね。年齢云々は俺が自力でだけど目的は彼から聞いた。さて、今回はどうするんだろうね?お、卵が安い」

「ああ、朝刊の挑戦状ですね?それなら園子ちゃんからメールが来て怪盗キッドはOKの返事を次郎吉さんに出したって。あ、このキャベツ他のより美味しそうや」

「……当たり前のようにキッドが次郎吉さんのアドレスを知ってたのはともかく、そりゃあ目立ちたがりの彼が受けない訳ないか」

 

俺と紅葉は学校の帰りに食材の買い出しに来ていた。話題になっているのは怪盗キッド。何故次郎吉さんが彼を敵視しているかは分からないが、キッドがブルーワンダーを狙うの

が決まった。

 

「これ、さっき園子ちゃんに送って貰ったメール。なんや、来週の日曜が本番で前の土曜に下見に来るらしいで。園子ちゃんに土曜に一緒に現地に観に行こうってさそわれてるんやけど龍斗はどうする?」

「俺、俺はなあ……」

 

さてどうするかな。観に行くか、観に行かないか。

 

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