続き書けたで候。
では、どうぞ∠( ゚д゚)/
後夜祭は最高潮の盛り上がりを見せていた。
十日間に及ぶ九校戦を戦い抜いた生徒達は、学校の垣根を越えて歓談し、ダンスを楽しみ、束の間の平和な時間を満喫している。
煌びやかな照明。
流れる音楽。
響く笑い声。
それはまさに、九校戦の最後を飾るに相応しい華やかな光景だった。
――だが、その平穏は突然破られる。
ブォォォォォォォォン……
低いエンジン音が夜空から響いてきた。
音は徐々に大きくなっていく。
ブォォォォォォォォォン!!
それは所属不明の輸送ヘリだった。
ガコン。
輸送ヘリの腹部が開く。
次の瞬間、巨大なコンテナが投下された。
ドォォォォォォォォォォォン!!!!
轟音。
大地が震える。
ホテルの窓ガラスが激しく振動した。
「きゃあああっ!」
「な、何!?」
「事故か!?」
悲鳴が上がる。
だが、それは事故ではなかった。
コンテナは富士演習場の平原へ激突すると、そのままゆっくりと開き始める。
ギギギギギ……
重々しい金属音。
誰もが息を呑んだ。
やがて、コンテナの中から巨大な影が姿を現す。
「…………」
誰も言葉を発せない。
ゾウ、サイ、カバ、リクガメ。
複数の大型動物を無理矢理融合したかのような異形。
全長七メートルを超える巨体。
鋼のような外皮。
頭頂部には巨大な水晶と真鍮色の金属が埋め込まれている。
それは自然界に存在してはならない怪物だった。
怪物はゆっくりと頭を持ち上げる。
そして……
GOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!
咆哮。
それだけで窓ガラスが震えた。
会場中の生徒達が恐怖に息を呑む。
「何なんだよ……あれ……」
六高の男子生徒が顔を引き攣らせる。
そして、それは深雪も例外ではなかった。
「あれはまさか……キメラ!?」
さすがの深雪も驚愕の表情を露わにする。
だが、エドだけは違った。
「おいおい……」
嫌な予感がした。
非常に嫌な予感が。
「なんでこんな所にいやがる……」
その時、演習場に展開していた国防軍部隊が動き出した。
装甲車、戦車、魔法師部隊。
即座に怪物の包囲網を形成する。
誰もが思った。
これで終わると。
だが――次の瞬間。
青白い光が夜の平原を照らす。
「まさか!?」
エドが叫ぶ。
その瞬間、大地が唸り、地面が隆起する。
そして……巨大な岩柱が次々と出現した。
ドゴォォォォォン!!
戦車が吹き飛び、装甲車が横転し、魔法師達が巻き込まれる。
国防軍の防衛線は、一瞬で崩壊した。
「そんな……!?」
深雪が絶句する。
だが悪夢は終わらない。
陸戦型キメラは倒れた兵士へ歩み寄ると――その巨大な口を開いた。
そして、躊躇なく兵士を捕食した。
「「「「「っ!!」」」」」
会場中が凍り付き、悲鳴すら出ない。
誰もが理解した。
あれは人を殺すための怪物だと。
陸戦型キメラは再び咆哮を上げる。
GOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!
そして、ゆっくりと、確実に……後夜祭会場へ向かって歩き始めた。
ドシン――
地面が揺れる。
ドシン――
また一歩。
怪物は数百人の生徒達を獲物と定めたかのように接近してくる。
その姿を見ながら、エドは奥歯を噛み締めた。
「ふざけやがって……」
鋼の義手が軋む。
怒りを押し殺した声が漏れる。
平和な後夜祭は終わった。
今、この瞬間、富士演習場は戦場へと変わったのだった。
「きゃあああああっ!!」
「逃げろ!!」
「外へ出ろ!!」
「押すな!!」
会場は瞬く間に混乱へ包まれた。
恐怖に駆られた生徒達が出口へ殺到する。
将棋倒し寸前、誰かが転べば大惨事になる。
「まずい……!」
真由美は顔を青褪めさせる。
このままではキメラより先にパニックで負傷者が出る。
だが、肝心の中条あずさがまだ見つからない。
その時だった。
「皆さん、落ち着いてください!」
澄んだ声が会場に響いた。
第一高校生徒会書記、中条あずさだった。
あずさは震える手でCADに触れる。
恐怖が無い訳ではない。
それでも彼女は逃げなかった。
「梓弓!」
展開された魔法式が淡い光となって広がる。
柔らかな波紋のような光。
それは会場全体を包み込むように広がっていった。
情動干渉魔法、梓弓。
精神干渉系統に分類される補助魔法。
対象の精神を鎮静化し、過度な興奮や恐慌状態を和らげる術式である。
「落ち着いてください!」
あずさの声が響き渡る。
「慌てて出口へ向かわないでください!」
魔法の効果もあってか、生徒達の混乱が徐々に収まっていく。
「必ず避難できます!」
生徒達の呼吸が整う。
視線が戻る。
恐怖で真っ白になっていた思考が正常さを取り戻していく。
「あーちゃん……」
真由美が呟く。
震えているのはあずさ自身も同じであった。
それでも、誰かがやらなければならないから。
だから彼女は立っている。
「ありがとう、あーちゃん」
真由美が小さく微笑む。
これで時間が稼げる。
ならば次は自分達の役目だ。
真由美は十文字を見る。
十文字もまた静かに頷いた。
「ここからは俺達の仕事だ」
そして、十師族の若き実力者達が前へ出る。
中条あずさの『梓弓』によって、会場を支配していた混乱は徐々に鎮まりつつあった。
しかし、それはあくまでも一時的なものに過ぎない。
窓の外では巨大な合成獣がゆっくりと後夜祭会場へ向かって進軍している。
先程まで応戦していた国防軍の部隊は壊滅状態。
横転した軍用車両と炎上する戦車の残骸が、戦況の絶望的な現実を物語っていた。
生徒達の顔には依然として恐怖が張り付いている。
「ど、どうするんだよ……」
「軍隊でも勝てなかったんだぞ……」
「私達、本当に大丈夫なの……?」
不安の声があちこちから漏れる。
誰もが恐怖を押し殺している状態だった。
そんな中、一人の少女が静かに前のステージへと進み出た。
第一高校生徒会長――七草真由美。
彼女は会場全体を見渡し、大きく息を吸った。
「みんな、聞いて」
決して大きな声ではない。
だが、その言葉は不思議と会場全体へ届いた。
「怖いわよね」
真由美はそう言って微笑む。
「私だって怖いもの」
その言葉に、生徒達は思わず目を見開いた。
誰もが憧れる第一高校生徒会長。
その七草真由美が、自分達と同じように恐怖を感じていると言ったのだ。
「でもね?」
真由美は続ける。
「だからといって、ここで慌てて逃げ出したらどうなると思う?」
会場が静まり返る。
「転ぶ人は出るし、怪我をする人も出る。助かるはずの人まで危険になる」
誰も反論できなかった。
つい先程まで、まさにそうなりかけていたからだ。
「だからお願い」
真由美は深々と頭を下げた。
「落ち着いて行動して」
会場がざわつく。
あの七草真由美が頭を下げたのだ。
「避難誘導は私達が行うわ。それぞれの生徒会、風紀委員、それから各校のその代表者達が責任を持って皆を安全な場所へ誘導する。だから慌てないで。必ず全員で帰りましょう」
力強いその言葉に、徐々に生徒達の表情が変わっていく。
「会長……」
「そうだよな……」
「落ち着け、俺達」
恐怖は消えない。
だが、混乱は確実に薄れていった。
真由美はそれを確認すると、同じく前へ来ていた十文字克人へ視線を向ける。
「十文字君」
「ああ」
十文字は一歩前へ出た。
そして会場全体へ向けて重々しい声で宣言する。
「ここから先は俺達が引き受ける」
その一言だけで空気が変わる。
「皆は指示に従って、落ち着いて避難するように。安心しろ。必ず時間は稼ぐ」
十文字の言葉に続くように、三高の一条将輝も前へと出る。
「俺も戦う。皆は安心して避難してくれ」
「微力ながら、私も協力させてもらうわ」
同じく、三高の一色愛梨も前へと出る。
それを見た深雪も静かに前へと出た。
「お兄様は不在ですが、第一高校の代表として私も尽力いたします」
そして最後に、面倒臭そうな顔をしたエドワード・エルリックが頭を掻きながら前へ出た。
「ったく……せっかくの後夜祭だってのによ」
エドは窓の外にいる巨大な合成獣を睨み付ける。
「人の楽しい時間をぶち壊しやがって」
その黄金の瞳に怒りが宿る。
「上等だ。そのデカブツ、オレ達でぶっ飛ばしてやるよ」
その言葉を聞いた生徒達の表情から、僅かではあるが希望が戻り始めていた。
七草真由美。
十文字克人。
一条将輝。
一色愛梨。
司波深雪。
そしてエドワード・エルリック。
九校戦で圧倒的な実力を見せつけた若き魔法師達。
彼らが立ち上がったことで、生徒達は理解する。
――まだ終わりではない。
戦いは、これから始まるのだと。
ちょっと長くなりそうだったので、分けやす。
では、また( `・∀・´)ノ