二階堂 慶光(よしみつ)の娘は三人居た。


輝くような笑みを持つ、誰にでも好かれる可憐な末子の紅。

人一倍元気の良い、姉御肌で器量の良い長女の桃香。

そして、最後に、性別がどちらとも取れそうで影の薄いながら、存在感だけはある、桃香と双子である次女の舞彩。



上雲神社が有名な半島の街、江世羅(えぜら)の街に、何度目とは知らぬ夏がやって来る。
そして、今日も三人娘の父親は、誰を巫女に送るか頭を悩ませていた。

「何なら、僕が行くよ」
「いやいや、待て待て待て。お前さん、これはそんなホイホイと決められる簡単なことじゃあ無くてだな」
「狐ヶ崎さんに嫁入りでしょ?男色だって聞いてるから、あちらさん側に性別を変えて貰えば良いじゃない」

主に、この娘の言う通りではあるものの、実状を正せば、実際のところ、専らの悩みの種は、無自覚に局所的な地雷ばかりを発生させる娘である。


  汽車と双子
  黒真はマグロと読むのが正しい
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