悪平等のおもちゃ箱   作:聪明猴子

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マイナス混入

『おっはよー』『なのはちゃん』『爽やかな朝だねー』

 

「………球磨川君が家にいる…」

 

球磨川がヴィヴィオとの挨拶を終えてなのはに話しかけると、なのはは朝食を作る手を止め感慨深げに呟く。

 

『おい、おい、どうしたんだい?』『なのはちゃんがここに住んだらいいって言ってくれたんじゃないか』『ボケるには早すぎるぜ』

 

「う~ん、やっぱり朝から球磨川君のマイナスを見ると心が沈むなぁ」

 

『それ中学生に言うことじゃなくない?』

 

「球磨川君が中学生になって、しかも家にいるって何か凄い違和感がある。何か道場に騎士甲冑が置いてあるみたいな、そんな感じの違和感」

 

『まぁまぁ、それは安心院さんに言ってくれよ。僕に言われても困るぜ』

 

「どうやったら会えるの?」

 

『死んだら夢の中で』

 

「……球磨川君。普通の人は死んだら生き返れないんだよ」

 

『僕だって死をなかったことにしてるだけで生き返ってる訳じゃないんだけどね。あっ、そうだ。なのはちゃん、僕が死をなかったことにしてあげるから――』

 

「死にません」

 

『まっ、冗談だよ』

 

「いやいや、球磨川君なら言うと同時に螺子の投擲くらい条件次第でするでしょ?」

 

『そんなことないさ。僕も四年で成長してるからね』

 

「そうかなぁ」

 

『そういえばフェイトちゃんは?』

 

「ん?あぁフェイトちゃんはまだ寝てるんじゃないかな。今日は休みだし」

 

『まったくいい大人がそんな自堕落なことじゃ子供の教育に悪いなぁ』

 

「言っておくけど球磨川君の戸籍関係調べてくれたのフェイトちゃんだからね」

 

『起きたらお礼を伝えといてくれない?』

 

「自分で伝えなよ」

 

オムライスを手早く作りながらも器用に半眼で睨みつける。

 

「それより球磨川君は絶対に、ぜぇぇぇったいに学校で問題起こさないでね。学校に呼ばれたりしたくないし」

 

『はっはっは』『そんなことマイナス十三組のリーダーだった僕がする訳ないだろ?』

 

「あっ、学校に呼ばれたりしたくないとは言ったけど学校自体を消せとは言ってないからね」

 

『なのはちゃんは考え過ぎだよ。僕なんてどこにでもいる中学生だよ』

 

「小学生の時にヴォルケンリッターと闘える人なんていないから。まぁそれに救われた方としては複雑だけど」

 

『なのはちゃんそれってすんげぇブーメランだぜ』

 

「………ほらっ、球磨川君は魔力ないし」

 

『体力もないけどね』

 

「知力もないよね。頭は悪くないのに」

 

『フォローして欲しかったなぁ』

 

「今の誉めたんだよ?」

 

『悪口だったと思ったけど?』

 

「……………………球磨川君って人の悪意には敏感だけど好意に鈍すぎるよね」

 

『えっ?』

 

「ご飯できたからテーブルに持って行って。ヴィヴィオもご飯できたから食べなー」

 

球磨川がお皿を持って離れるのを見ながら思わず呟く。

 

「…それでも戦うのを止めないのが球磨川君じゃん……」

 

 

 

 

 

 

高町家から出て暫くすると、八重歯が特徴的な元気っ子と、薄いブラウンの髪をツインテールに纏めた大人しめな少女がこちらに駆け寄って来る。

 

「ヴィヴィオ、おっはよー」

 

「おはよう。…あれ?」

 

「おはよぅ、リオ、コロナ」

 

そしてヴィヴィオに挨拶をしていると、ヴィヴィオの少し後ろを歩いている球磨川を視界に捉える。

 

「お、おはようございます。球磨川せんぱい?」

 

可愛らしく小首を傾げる八重歯っ子改めリオ。

 

『おはよー』『リオちゃん』『コロナちゃん』

 

「くまがわ先輩、おはようございます。先輩がこっちの方向なのは珍しいですね」

 

『まぁね』

 

「ヴィヴィオどうしたの!?すんごい疲れた顔してるよっ!!」

 

「球磨川先輩が居候になった………」

 

「えっ!?どういう状況!?」

 

『高町家に婿入りしました~』

 

「「えっ!?」」

 

「嘘吐かないでください。居候になっただけじゃないですか」

 

「それでも充分普通じゃないと思うんだけど……」

 

「球磨川先輩がママ達と知り合いで、色々とね……」

 

死んだ目で俯くヴィヴィオ。

 

『まぁまぁ、そんな訳で僕は高町家でお世話になっているのさ』

 

「えぇ~」

 

「ヴィヴィオもテスト前日に大変だね~」

 

「本当だよ」

 

『………』

 

「どうしました?」

 

『テストって今日?』

 

「えっ?小中共通だと思いますけど……」

 

『………また勝てなかった』

 

 

 

 

 

「ママ~、リオとコロナ連れて来たよ~」

 

ヴィヴィオがなのは達に友人二人を紹介する。

 

「試験終了、お疲れさま」

 

「皆どうだった?」

 

「花丸評価いただきましたっ!!」

 

「私達はそうなんだけど……」

 

「球磨川先輩がねぇ」

 

『あははは』『マイナスたる僕が試験を一発パスとかするわけないじゃん』

 

「ーーという訳で球磨川先輩は連休明けに追試です」

 

「うん……知ってた………」

 

「ミソギ語彙とかは凄いのに学校の成績は悪かったもんね」

 

そんなある意味当然な結果になのは達が呆れるような視線を向けていると、インターホンが鳴る。

 

「はい、はーい」

 

ヴィヴィオが球磨川達を連れ立ってドアを開けると、ジムのコーチであるノーヴェに連れらたアインハルトがいる。

 

「こんにちは。訓練合宿とのことでノーヴェさんにお誘いいただきました。同行させていただいてもよろしいでしょうか?」

 

「勿論ですっ、頑張りましょうね」

 

『合宿?』

 

「「あっ」」

 

「えっ?」

 

『うん?』

 

「まさかなのはママ達説明してなかったの?」

 

「えっと……その…昨日は球磨川君のせいで忙しかったし、その私も結構混乱してて……うん、その、はい、伝え忘れました」

 

「私もミソギと再会した衝撃ですっかり忘れてたから………」

 

「「………………………………………」」

 

「じゃ、じゃあ私はミソギと留守番してるよ。ほ、ほらミソギ赤点だったし、勉強も見なきゃいけないからさ」

 

「なっ、そ、それなら私が残るよ。フェイトちゃんは何ヵ月も前から予定を組み立てたり有給申請してたじゃん。ゆっくり休んできなよ。球磨川君は私が見とくから」

 

「いやいや、なのはこそ随分温泉を楽しみにしてたじゃん。しかもほらっ、なのはが合宿に行かなかったら皆に指導する人がいなくなっちゃうじゃん。私が残った方が良いよ」

 

「そんなことないよ。スバルやティアナ、ノーヴェ達だっているし」

 

「えっと……ママ?何を言ってるの?」

 

「どっちが残るか決めてるんだけだよ?」

 

「えっ?球磨川先輩も行くんじゃないの?」

 

「「えっ?」」

 

「いや、う~ん。どう思う?」

 

「ミソギ連れて行くのはちょっと不味いよね?友達も連れて来て良いとは言ってたけど事前に連絡もしてないし……」

 

「ましてや球磨川君だしね」

 

「うんミソギは駄目だよね」

 

「うん。球磨川君はね」

 

「ちょっ、ちょっと待って!球磨川先輩が、球磨川先輩が超面倒臭そうになってるから」

 

『いやいや、ヴィヴィオちゃん。僕はちっとも気にしてないよ』『ほら僕ってマイナスだからさ。嫌われるのは日常茶飯事だし軽蔑されるのは当たり前。避けられるのなんて慣れっこなんだよ』『うん』『だから全然、全く、これっぽっちも気にしてないよ』

 

「………ちょっとママ?」

 

「うん。ちょっとメガーヌさんに連絡いれてくる」




ちょっと登場人物が多くて混乱しますね。
次回に纏めて紹介するのでちょっと待って下さい。

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