提督をみつけたら   作:源治

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無職の話は今後増えるかもしれない、だって数がその……。
あと大事なことだけど萩風はかわいい。
 


『無職男』と『駆逐艦:萩風』

 

 

 

 無職にむにゃ……。

 

 

 

 午前七時。

 

 

 

 デデデン!! デデデデ♪ デデデ~バンッ!!

 

 はかっていたかのように、『加賀岬』が聞こえてきた。

 

 イントロが流れる目覚まし時計を止め、体を起こす作業に移行する。

 どうでもいいがこの目覚ましちゃんと歌声まで入ってるんだろうか?

 

 デデデン!!

 

 が聞こえた段階で、目が覚めてしまう俺には永遠の謎だ。

 どうでもいい謎だが。

 

 まぁその目覚ましのお陰で、今日もまた無事に起きることができた。

 ちなみに今日は陽炎たちと野球をする日だ、バイト代に目がくらんで今日も審判を引き受ける予定、やっぱ無職って辛いな。

 

 うぐ、起きたばかりのせいで涙が少し、頭もぼんやりとしてる、シャワーでも浴びるか。

 

 風呂から上がって全裸で一服、煙を肺に入れてようやく頭がしゃきっとした。

 適当に身支度を終えて外に出る、待ち合わせ時間はまだ先だがたまには散歩しながらのんびり朝飯でも食うとしよう。

 

 歩きながら食えるのがいいな、パン屋にでも行ってパンでも買うか。

 うまくいけば焼きたてのメロンパンにでもありつけるかもしれん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『無職男』と『駆逐艦:萩風』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メロンパン。おれの、メロンパン」

 

 

 とんびに、メロンパン、とられた。

 

 

 ちょうど焼きあがったところのメロンパンを無事買えた俺が、ウッキウッキしながらどこで食べようかと歩いていたら、なんかちっちゃい小人みたいなのが背に乗ってるように見えた巨大な鳥類にメロンパンとられた。

 

 あまりに衝撃的すぎて、なにもできなかった。

 

 

「メロンパン。おれの、メロンパン」ってボソボソ言うしか

 

 

 ……できなかった。

 

 

 というか冷静に振り返って見てみたら、最近の俺の運の悪さは酷いものがある。

 

 ラリアット退職 → お祈りフルコンボ → トンビにメロンパン。

 

 次の厄年はまだ先だぞおい。

 俺は、貝になりたい。

 

 気がする。

 

 

「あ、あの!」

 

 

 そんな絶望で立ち尽くす俺に向かって話しかける誰かの声。

 

 振り向くと、陽炎姉妹たちの中では比較的年上に見える長く濃い紫の髪の少女がいた。

 秋空の朝日に照らされた長い髪が、キラキラと輝いてまぶしい。

 なんていうかあれだな、クラスで比較的上位カーストにいそうな、控えめだけどちゃんとおしゃれして周りと合わせて活動できる社交的なタイプ。

 

「おお、えーっと。陽炎姉妹シリーズの……」

「は、萩風(はぎかぜ)です!!」

 

 ふんす! というように両腕で胸を寄せながら、身を乗り出して俺に自己紹介する萩風。

 結構おっぱいあるな、この子。

 

「あの、どうされたのですか?」

「いや、そのな。朝飯にメロンパンを外で食おうかと思って歩いていたら、トンビにパンを持っていかれてしまった」

 

 冷静に言葉にするとマヌケすぎる。

 

「さっきの光景はそういうことだったんですか……それで、あの、メロンパン以外の朝ご飯、ちゃんと食べられましたか?」

「見られていたのか、泣きたい……まぁメロンパンが朝飯だったんだ、察してくれ……」

 

 ぱぁっと笑顔になる萩風、「早起きは三文の得だった、うんうん、三文どころじゃない……」とかブツブツ言ってる。

 

 

 なんなの君ら、俺の不幸そんなにうれしいの?

 

 

「あ、あの。でしたら私、集合の時間まで漁港に行って鮮魚を食べて、ヘクセン七階にて開催中の『北の国展』で北の海幸山幸を食べようかと思ってたんです! よ、よろしければご一緒しませんか?」

 

 ああ、朝飯の連れ添いが欲しかったのか、てかなにその具体的過ぎる朝食プラン、朝からリッチすぎだろオイ。

 

 だが陽炎たちとの約束は十三時、今八時だからまあ余裕か。

 

「そうするか、流石になにも食わずに肉体労働(野球の審判)は勘弁願いたいからな」

「じゃあ行きましょう!」

 

 そう言って萩風は俺の手を取り、早足で歩き出す。

 もう慣れたけど、君らやっぱ人の手をつかんで引っ張るの好きね。

 

 

 

 ■□■□■

 

 

 

 艦夢守市東南部の漁港へ、歩いて行く。

 俺の手を引きながら歩く萩風はやたらご機嫌で、鼻歌なんぞも歌ってる。

 

 上空に、海のほうから飛んできた早朝便の特殊大型飛行艇が見えた。

 

 やがて飛行艇が俺たちのはるか真上を通り過ぎる。

 重低音が響いて朝の空を斬り裂いて飛ぶ、あれは帝国からの船っぽいな。

 遠めから見ても黄金色でかなり立派に見えるので、皇女専用機かもしれん。

 

 やがて、漁港に近づき潮のにおいに包まれる。

 

 活気のある港、地元客や観光客、漁師、そこで働く様々な人の声が響いてきた。

 

 萩風は心なしか生き生きとして見える、海が好きなのだろうか。

 おしゃれに気を使ってそうだから、潮の香りが付くのとか嫌がりそうに見えるが。

 

 漁業組合直営の食堂で朝食を摂ることにする。

 二階に上がると、意外と混雑していた。

 

 俺はアジフライ定食を注文、萩風はオニオンブレッドとマグロのカツレットとアジのカルパッチョを注文する。

 運ばれてくる料理、ああ、こういう朝飯はほんと久しぶりだわ。

 新鮮な海の幸を堪能する、せっかくなら生魚もチョイスすべきだったか、勿体無いことをした。

 まぁ浅漬けも味噌汁もうまい、それだけでもありがたいか。

 

 なんというか、久しぶりすぎるまともな食事な気がして、体が『これこれ、こういうの欲しかった』って言ってる気がするわ。

 

「わぁ、美味しそう……はむっ!? これ美味しいです!」

 

 おうおう、随分おいしそうに食べるな、両手でほっぺ支える仕草とか、可愛すぎるだろ。

 なんて思いながら見てたら、俺の視線に気づいた萩風が箸でカルパッチョを一切れはさんで俺の前に差し出してきた。

 

「あ、ていと……おにいさんもどうぞ。あーん♪」

「……」

 

 差し出されるアジのカルパッチョ。

 

 

 ……おい、マジか。

 

 

 確かに生魚食いたいと思いはしたが、こういうシチュエーションでか。

 ここ最近一気に青春時代取り戻してる気がするんだが、なんなんだろうかこの遅咲きの青春は。

 

 よくわからん感情をかみ締めながら、差し出されたアジのカルパッチョにかぶりつく。

 

 うまし

 

 とどめに近場の牧場直送の低温殺菌牛乳を選び、海の見えるデッキに出て萩風と並んで飲む、朝日がまぶしいぜ。

 

 無論、腰に手を当てて。

 

 傍から見るとオヤジ丸出しである。

 でも萩風も恥ずかしがりながら同じポーズで飲んでくれてた。

 

 マジで付き合いいいなこの子。

 

 こんな俺に付き合ってくれたお礼に、料金は俺がおごることにした。

 萩風は散々遠慮したが、年下に払わせられるかと押し切る。

 

 正直、あの貝になりたいレベルだった俺のメンタルを救ってくれた。

 そのことを考えれば安いものである。

 

 

 

 ■□■□■

 

 

 

 その後、市街地に張り巡らされた路面電車を使って、次の目的地の駅舎直結型商業施設のヘクセンに向かう。

 

 駅ビル『ヘクセン』。

 

 この駅ビルは数年前に改築されて地下三階、地上は七階。

 地元百貨店も一部入っている、その規模は都会の大型商業施設クラスだとかなんとかかんとか。

 

「ここ来るの久しぶりだな、できたばっかりの時に一回来たきりだわ」

「そうなんですか?」

 

 こてんと首をかしげる萩風、可愛いなおい。

 

「こんな所で買い物なんざしないからなぁ」

「買い物施設以外にも映画館群や、飲食店も充実してて。あっ、最上階の七階には市の艦娘課があって、直ぐそこにある市役所の面々からは『新店』と呼ばれているんです。『本店』とは特別仲が悪い訳でもないんですが、潜在的競争意識は意外と強いんですよね~」

 

 やたら饒舌に、ぺらぺらと愚痴をこぼすように話す萩風。

 ははは、まるで関係者みたいだな。

 

「あとは……その、結婚相談所、結婚式場案内所なんかも」

「……」

 

 うわー、それこそ一ミリも関わりが無いぞ。

 

 でもなぜか上目遣いで恥ずかしそうにこっちを見てくる萩風はほほえましかった。

 

 ああ、結婚を夢見るタイプか……

 

 

 ヘクセンに入り、まず地下一階へ降りる。

 

 広い地下フロアには駅弁、お土産物、名菓、惣菜、パン屋、和菓子屋、ケーキ屋、物販、飲食店他にも沢山のものを売る店が。

 

 よくもまあこんなに詰め込んだもんだ。 

 

 とりあえず目に付いた豚まん、赤福、特産うどん、上方ラーメン、お好み焼き、たこ焼きの店などをくるくる回る。

 

 こんなにも沢山の食べ物が並んでいると、見ているだけでも楽しいもんだな。

 

 

 ちなみに萩風は途中の食材コーナーを見て

 

「麦ご飯用の麦まだあったかな」

「明日の野菜のお浸しどの野菜にしよう」

「牛蒡とお豆腐のお味噌汁にしようかな……」

 

 なんてことをブツブツとつぶやいていたので。

 

「えらい健康的なメニューだな、カレーのルーで食事を済ますのが多い俺には眩しいわ」

 

 と言ったところ。

 

「だ、駄目ですレトルトなんて!! そうだ、よかったら今度お料理を差し入れさせていただきます。人参に牛蒡に蓮根、自然薯と蒟蒻なんかを入れた特製根菜カレーです、健康にもいいんですよ!」

 

 などとやたら気合を入れてぐぐいと押して来た。

 やばい、この子健康マニアだわ。

 

 家庭的な感じ溢れる女学生に料理を差し入れてもらうなんていうイベントに惹かれるものはあったが、いかんせん健康信仰に汚染されるのは避けたかったので、なんやかんやと言って断る。

 

「ご迷惑をおかけしてすみません、 萩風、少し下がらせていただきます……」

 

 どこに下がるというのだろうか、というかそんな落ち込まんでも。

 

 どん底みたいなオーラを放つ萩風をなんとかしようと、目に付いた特産コーナーにはいる。

 

 二つのリンゴ特産地域と魚介類特産地域が合弁事業展開している『しんえつ』というコーナーらしい。

 その場で作ってくれる搾りたての林檎ジュースを飲み、やたら香り高い笹団子を食べた。

 

 リンゴジュース美味いな、でかい瓶で買っていくか、野球終わったら陽炎たちと飲もう。

 

 

 

 健康的なリンゴジュースを飲んでテンションが戻った萩風に連れられて、場所を移動。

 お目当ては七階で行われている、北国の物産展だったっけか。

 

 移動途中でどっかで見たことのある少年を脇に抱えて走る、おしゃれな服を着たツインテールの女とすれ違う、姉弟だろうか。

 

「ツインテールか……」

 

 あの髪型ができるギリギリの年齢な感じもするが、無駄に似合っていたな。

 

 ぼけッと走り去るのを見ていたら、萩風がクイクイと袖を引っ張ってきた。

 見ると萩風が両手で髪を左右に分けてくいっと握り、ポーズを取る。

 

 なんなの、そのツインテールできますよアピール。

 

 

 七階に到着、フロアは大盛況だ。

 老若男女、多くの人がそこにいる。

 

 人生交錯点だな、ここは。

 

 頭上を見上げると『北の国展』という看板。

 近くには小さく設けられた展示スペースがあり

 

『失われた北海道、過去の食事の再現』

 

 と銘打ったポスターが目に入った。

 

 北海道ってなんだっけ、大昔の国名か、地名だっけか。

 

「しかしすごい人だな、全部見て回るのは骨が折れそうだ、適当にちょいちょいと……」

「なに言ってるんですか! せっかくきたんだから全部回りますよ!」

 

 え? マジでいってんのか……。

 

「うへぇ、お手柔らかにな」

 

 そして俺の手を引っ張って人並みに突入する萩風。

 チカラ強いっすね。

 

 

 

 ■□■□■

 

 

 

 ほ、本気で全部まわらさせられた。

 若いってステキやな(荒い呼吸)

 

 時間は十一時すぎ、さっき食ったばかりではあるが、そろそろ昼の時間だ。

 軽くなにか腹に入れておきたい、なにを食べよう、てか休みたい。

 

「付き合っていただきありがとうございます!! お礼というわけではないですが、もし萩風にできることがあったら言ってくださいね。頑張ります!!」

 

 元気だね、若いもんは……。

 

 ふと美味そうなにおいを漂わせてきた店に目が行く。

 北国の餡掛け焼きそばが食べられる仮設店舗だ。

 

「あれ食べたい」

「いいですね! 直ぐ買ってきます!!」

 

 やたらと密着してくる萩風と共に、持ち帰りのパックを買って屋上に移動することにした。

 

 

 屋上に到着、人はあまり多くなかった。

 景色を見渡せる休憩スペースを見つけて、そこに萩風と並んで腰掛ける。

 

「よっこらせっくす」

「よ、よっこらせっ……く……」

「真似せんでよろしい」

 

 悪影響を与えてしまった、流石にそろそろやめるかこれ。

 

「はいどうぞ! めしあがれ♪」

「おー、わるいな」

 

 パックをあけて差し出してくれる萩風、受け取った後にわざわざ割り箸も割って差し出してくれた、気がきくな。

 

 二人でもそもそとあんかけ焼きそばを食う、いい景色だ。

 ここはいいところだな、ほんと。

 

 ここでは……。

 

「おにいさんは!」

「ん?」

 

 思考を遮る様な声にはっとなって隣を見る。

 隣の萩風が食べるのをやめて、こちらを見つめていた。

 

 無言で少し見つめあう、こいつきれいな顔してんな。

 少し間を置いて、何処かためらうような感じで萩風は話し出した。

 

「おにいさんは“外地”からこられたんですよね?」

「あれ、言ったっけかそのこと? まぁ言うとおり、出身は艦夢守市の外だよ」

 

 今ではもう慣れたが、当時ここに来たばかりの頃は『外地』『内地』という言葉がなんなのかと首をかしげた記憶がある。

 来るときは橋で繋がってるもんだから気がつかなかったけど、ここは一応島だからそういういい方が定着したのかもしれん。

 

 普段は島全域を指して艦夢守市とか艦夢守島っていい方しかしたこと無いけど、一応大昔からの島の名前もあったよな、あわ、あわし……なんだっけか?

 

「あ、やっぱりそうなんですか……私って内地から出たこと無くて。あの、ご迷惑じゃなければここに来るまで、どんな人生を歩んでこられたかお聞きしてもいいですか?」

 

「どんなって、別に普通だよ。普通に生まれて普通に学校行って、普通のバイトして、普通にここに来て就職しただけだ。そして普通にラリアッ……なんでもない」

 

 ありふれた男の人生だ。

 ラリアットして仕事クビになった以外……。

 

 自分のことながら間抜けすぎる。

 

「その、でしたらおにいさんは、私たちについてどう思っておられますか?」

「お前たちって、陽炎姉妹のことか?」

 

「はい……」

 

「まぁ色々隠したいこと(家族問題)があるんだろうなとは薄々感じてるが」

「あはは、やっぱり(艦娘だって)わかってたんですか」

 

 姉妹二十人とかどう考えてもその、な。

 

「でも陽炎とか自分から言い出さないあたり、色々事情があるんだろ。別に気にしてないからそう神経質にならんでいいぞ」

「はい、ありがとうございます……」

 

 何処かさびしそうにうつむく萩風。

 俺がこの頃ってどんなことで悩んでたっけかなぁ、思いだせん。

 

「まぁ色々悩みはあるだろうし、俺にはわからんつらいこともあるだろうけどさ、“まだ若い”んだし楽しんで生きるほうがいいぞ」

「え?」

 

 ぽかんとした顔をする萩風、どれ、一つ年長者のアドバイスでもくれてやるか。

 

「あと説教くさいかもしれんが“若い学生のうち”しかできないことは今のうちにやっとけ、年とってからだとできないことが一杯あるからな」

「あっ、やだ、私ったら…あ……はい……」

 

 ものすっごくばつが悪そうに、目を逸らす萩風。

 なんやのん君。

 

 え、なに、俺もしかして滑ったのか?

 

「あれだ、まぁ、若もんに付き合うくらいどってことないからさ、なにかあったら話くらいはいつでも聞いてやるよ、萩風」

 

 滑った恥ずかしさを隠すのを兼ねて、元気付けてやろうとおしゃれに整えられた髪をぐしゃぐしゃっと撫でてやる。

 嫌がるだろうがまあ落ち込んでるよりは怒ってる方がましだろ。

 

 ところが萩風は怒るどころか、うれしそうな顔で声を上げた。

 

「あ……私の名前をおぼえていただいて、光栄です! 提督!!」

 

「んな大げさな、つかお前、お前まで提督呼びか」

 

 文句の一つでも言ってやろうと思ったが、嬉そうに飛び回る萩風を見ててどうでもよくなった。

 

 俺はぴょんぴょん跳ねる萩風の、頭上に広がる空を見上げる。

 空は冬の澄みきった色にして青い。

 

 トンビにメロンパン取られていうのもなんだが、今日はなにかいいことが起きそうだな。

 

 

 

 ■□■□■

 

 

 

「えっと、あの、私先に球場に行ってますね!」

 

 もうちょっとで河川敷の野球場に到着しそうになった時、萩風がそう言って走っていった。

 ボソッと「提督と一緒だったって嵐や皆にばれたらその……」みたいなのが聞こえた気がするので、多分恥ずかしいのだろう。

 

 親と一緒に出かけているのを見られるのが恥ずかしい心境、思春期だな。

 

 ついでに陽炎たちと合流する前に一服することにする。

 歩き煙草は色々うるさい世の中だが、誰も居ない河川敷の道で位は大目に見てくれ、ください。

 

 火をつけて一服し、煙を吐き出す。

 

 ふと、遠ざかっていく萩風の逆方向からこちらに向かってゆっくりと歩いてくる、やたら目つきの悪い眼鏡をかけた長身の痩躯の男の姿が目に入る。

 

 やがてその男が俺の前で立ち止まる、少し驚いた顔だ。

 こっちだって驚きだわ、こんな所で会うとは。

 

 

 

「よう、相変わらず殺し屋みたいなツラしてるな」

 

 

 

 俺の言葉を聞いてその男は、なんともいえない表情を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オマケ - 陽炎会議録NO.1 -

 

 

 薄暗い部屋、円卓を囲む二十人近い少女らしい者たちがいた。

 

 らしいというのは、何故か全員顔を隠すための尖った白い被り物をかぶっていて、その顔がよくわからないからだ。

 そして被り物の額部分にはそれぞれ番号が振ってある。

 

 その中で『1』と額に書かれた数字の被り物をかぶった少女が口を開く。

 

「それではこれより陽炎会議を始めます、まずは最大にして最重要の議題である私の提督に関してです」

 

「1番、私のというのは語弊があります! ゆきか…いえ、私と貴方のです!!」

「8番、それは違います、不知火と1番と8番の提督です」

「2番、隠れてないから、名乗っちゃってるから。と、いうかやっぱりあれよね、えーっと、ヒットしちゃった人、手あげて~」

 

 その場に居た全員の手が挙がる。

 

「や、やっぱりぃいいい↑どおすんのよぉおおおこれぇええ!!」

 

 1番の被り物をした少女が頭を抱えてうずくまる。

 残りのメンバーも頭を抱えた。

 

 

 - 陽炎会議録NO.2 - に続く。

 

 

 




メロンパンをトンビに取られたショック。
それを萩風にアーンされて、慰められたいだけの人生だった。

どんなに不自然でも無職は最後まで陽炎たちの正体に気が付かないでいくしかないと思った。
だって自分たちを若い女学生だと思ってもらいたくて必死になる陽炎型がカワイイから。
 

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