両さんが神様にあっちの世界に連れて帰られてから、一月ほどの時間が流れた。
両さんと契約していた悪魔たちは契約者である両さんの帰還と共に大部分は地獄に戻り、残った半分は浄化され、もう半分は世界に散っていった。
かなり強大な大悪魔たちも召喚されてはいたらしいのだが、めぐみんの爆裂魔法に付き合って隕石を降らす強大な魔法を使い過ぎていたため疲弊していたらしく、エリス教とアクシズ教のプリーストたちによる共同戦線であっという間に駆逐されてしまったそうな。
ちなみに両さんの側近として動いていたバニルはちゃっかり無傷でウィズの店に戻って来ていた。
曰く、
「フハハハハ!伝説の英雄に出会えた歓喜でつい昔の荒ぶっていた頃の血が騒ぎ、忌々しい神々共と最終戦争をしてやるつもりだったのだが失敗したか!まあいい、一度はお目にかかりたいと思っていた御仁に出会えたのだ。正直なところ吾輩としてもこの年になって大戦争とか、年甲斐もないなーとは思っていたのだ。今後はおとなしくポンコツ店主の面倒を見ながらダンジョン制作に専念するとしようか」
らしい。
この世界が崩壊の瀬戸際に立たされた真の元凶はコイツなのではないだろうか?
まあもう終わったことだし、深く問い詰めるつもりは無いんだが。
「ちょっとカズマ、この魚、超ウザイんですけど。もう何回も戦ってるのに、全然倒せないんですけど」
ちなみに両さんだが、やっぱり色々と不正蓄財やら何やらをやっていたらしい。
その金額は膨大なもので、このベルゼルグ王国の国家予算の十数年分にも及ぶとダグネスは言っていた。
世界各国に多額の金を貸し付けていてその利息だけでも国家予算を凌駕し、あと数年両さんが総統の地位にあったら事実上世界を支配していてもおかしくなかった、とはダグネスの親父さんの言である。
両さんがいなくなった以上それはもう不可能だが、それはそれとして後始末としてやるべきことが無数にあるらしく、大貴族ダスティネス家の現当主であるダグネスはそれに掛かり切りで忙しいらしく、あと数週間は家に帰ってこれそうにないらしい。
「カズマさーん、強いモンスターちょうだーい。それでこの魚倒すから」
「お前それでこの前勝手に俺のモンスター交換して、言う事聞かないって騒いでただろうが。俺は厳選で忙しいんだ。自分でレベル上げして何とかしろ」
両さんとの最後の宴会で爆裂魔法を限界まで打ち続けためぐみんはそれが癖になってしまったらしく、暫くの間は高級マナタイトを揃えてくれと駄々をこねて来たが、最近はゆんゆんに掛かりきりであまり言ってこなくなった。
そう、両さんがいなくなったことで一番ショックを受けていたのはゆんゆんだった。
詳しくは知らないが両さんがこの世界に来た時初めて出会ったのがゆんゆんで、それ以降2人で世界中を冒険して回っていたらしい。
国を巡り、ダンジョンを踏破し、何度も財産を築き、瞬く間に破産しという波乱万丈の旅だったようで、ゆんゆんは相当両さんに懐いていたらしい。
その両さんがこの世界からいなくなったと聞いたゆんゆんは終日泣き続け、その後はテレポートを使って世界中の町という町、ダンジュンというダンジョンを探して回り、ついにいないと確信した後は数日部屋に閉じこもり、その後はダストに金を払って付き合ってもらいながら一日中酒瓶片手に泣き続けるという日々を過ごしていた。
そんなゆんゆんの姿に見ていられなくなっためぐみんはダストを追い払い、酒を取り上げて一日中ゆんゆんの相手をしている。
俺も先日心配で見に行ったが、めぐみんの一日一爆裂に付き合ったりと、段々元のゆんゆんに戻ってきているので恐らくは大丈夫だろう。
「えーレベル上げとか面倒くさいんですけど。最近はカズマさん一日中グルグル回ってるだけだし、私が寝てる間にレベルだけ上げといてよ」
「ああ、いいぞ。ついでにそのまま裏イベントまで全クリしといてやるよ。俺と一緒に厳選しようぜ?」
アクアと一緒に一日中屋敷に引きこもって日本から召喚した最新版のポ〇モンをしていた。
「はぁ!?ふざけないでよ、私はストーリーもちゃんと楽しみたいの!やるなら魚を倒すだけにしといてよね!」
「だったらレベル上げも楽しむんだな。・・・おっ、色違いが生まれた」
両さんがこの世界に残した足跡は大きいが、それでも世界は変化し続いている。
世界を最終戦争の危機から救った勇者である俺は、勝ち取ったこの静穏な生活を満喫するつもりだった。
「え、どれどれ?・・・結構可愛いじゃない。ねえカズマ、この子私にちょうだいよ。この子と一緒にポケ〇ンマスターになるの!」
「ふざけんな!こいつは性格も完璧なレアなんだ、欲しけりゃ自分で厳選しろ!」
しかし、今頃両さんはどうしているだろうか。
あっちの世界に帰ってるだろうし、どんな状況に陥ったとしても平気そうな人だから心配はしていないが、元気にしているだろうか。
・・・・うん、元気にしてるな。
あの人が元気にしてない状況とか想像もつかないし。
よし、じゃあな両さん!あんたがそっちの世界で元気にしているように、俺もこっちの世界で元気にしてるぜ!
あの素晴らしい両津勘吉という人間に、祝福を!
「ん・・・・・む。どこだ?ここは?」
気付けばわしは、ふんどし一丁で町の大通りの真ん中に眠っていた。
「確かわしはアクアと飲み比べをしていて・・・・。そうだ、わしの金!」
アクアと大金を賭けて飲み比べをしとったのだ!確かにわしは勝ったハズ!わしの金は!?
「ってこんな大通りの真ん中にあるわけないか。クソ、なんでわしはこんな所におるのだ?確かにわしの館で飲んどったはずなのだが・・・・」
ぐるりと回りを見回してみるが、街並み自体は見慣れたファンタジー的な中世ヨーロッパのものだった。
だが、歩いている住民の姿には違和感があった。
明らかにモンスターとしか思えないトカゲや犬の頭をした人間たちが町を闊歩しているのだ。
普通の人間たちも、その姿に違和感を覚えている様子はまったくない。
ゆんゆんと一緒に世界を回ったが、こんな町は見たことが無かった。
「う~む、まったく知らん町にテレポートか何かで飛ばされちまったのか?金も持っとらんし、困ったな」
そう思いながらもう一度周囲を見回していると、視界の端に、世界観に合わないジャージ姿の男が倒れる姿が映った。
「む・・・・あれは。よし、兄ちゃん大丈夫か?!」
日本から送られてきた転生者だと確信したわしは、露店の前で倒れた男の元へと駆け寄り抱き起した。
年の頃は高校生くらいで、髪をオールバックにした目つきの悪い
「う・・・・・あ、アンタは?」
「わしか?わしは亀有公園前派出所の両津勘吉巡査長だ」
「け、警察?・・・・え、警察?!その恰好で!?」
安心させるために警官だと言ったが、ふんどし一丁なので逆に疑われてしまったらしい。
こいつが授かっているだろうチート能力を利用してこの状況を乗り切らんといかん以上、ここは勢いで押し切った方がいいだろう。
「この格好については気にするな、極秘任務中だったんだ!それより兄ちゃん、お前の名前は?これは職務質問だから、正直に答えるんだぞ!」
「え・・・あ、ス、スバル!菜月昴、です!」
「そうか、スバルか。よーし、スバル!お前もいきなり死んでこんなことになって色々と混乱しとるかもしれんが、安心するといい。この両津勘吉がいる限り、大抵の事はどうにかなるのだからな!」
そう言ってわしは、ガハハと大きく笑うのだった。