転生するらしいのでチートを頼んだら自分で手に入れろと言われた件。   作:ゆらぎみつめ

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 前話からかなり感覚を開けてしまって本当にすみません。

 最新話までのページを微修正していたりしました。

 大きな変更点もあるので暇な人は最初から読み直してください。

 そんな暇はねぇ!って人は、

 主人公はテスタロッサファミリーに正体を明かさなかった。

 未来視で不吉なものを見た。

 とだけ覚えてくだされば結構です!

 詳しくはプロローグを見てください。

 では!
 







とある喪失者の日常

 

 

 

 

 

 我輩は転生者である。

 

 特典はヘルシングのアーカード、化物語のキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード、ジョジョの奇妙な冒険のDIOの全能力。

 

 今世は魔法少女リリカルなのはに似た世界と聞き、折角の特典が過剰な力だったと思っていたのだが、蓋を開けてみれば俺以外にも転生者がいて好き勝手暴れていて、世界崩壊一歩手前の世紀末。過剰?とんでもない。なければとっくの昔に第二の生は終わっていただろう。昔の俺ナイス。

 

 更に、前世とは違って女性になってしまった身の上故に頻繁に狙われること津波の如く。

 

 転生者を殺し、その血を啜り、特典を奪って力をつけ、また殺す。

 

 気が付けば俺は私になり、友人曰く安全装置である特典の枷を自力で解き放ち、本物の化け物、吸血鬼となってしまっていた。

 

 

 

 

 ーーそんな時だ。彼に出会ったのは。

 

 ユーハバッハを名乗る転生者。

 

 全ての転生者を集め、選別を行った最強の転生者。

 

 桁が違った。

 

 これまで私が相手してきた凡百の転生者とは比べ物にならない。

 

 吸血鬼という種の本能が目の前の極上の餌を喰らえといい、今すぐ逃げろと矛盾した声を上げた。

 

 結局どちらも不可能だったわけだが、今を平穏無事に生きていられるのだから結果オーライだ。そう。平穏無事にだ。襲いかかってくる傍迷惑な転生者はほぼいなくなり、以前とは比べ物にならないぐらい静かで平和な生活が送れるようになった。感謝しかない。

 

 それでも不満を挙げろというならば、それはうちはカエデについてである。

 

 より正確に言うなら、うちはカエデを名乗るユーハバッハに、である。

 

 恐らくはうちはカエデの姿の方が真実なのだろう。それで同じ学校の同じクラスにいるのだろう。基本転生者は原作キャラと同じ年齢で転生させられるし、そこは疑ってはいない。

 

 だが近くにいるのが問題だった。

 

 この世に二つとないご馳走が目の前にいる。なのに何も出来ない。指を咥えて見ているしか出来ない。

 

 ひどい生殺しである。

 

 何度物陰で襲いかかろうと思った事か。

 

 思いきって本人におねだりしてみたが、毒性が強過ぎて無理と断られた。恐らくそういう特典を持っているのだろう。

 

 それでも諦めきれず、なんとかならないかと交渉した結果ーー。

 

 

 

 

「ば、化け物!」

 

 ざくり。

 

 と、喧しい獲物の首に爪を突き立てて絶命させる。

 

 これで三十人目。

 

 私は簡単なバイトをしていた。

 

 内容は敵対勢力の転生者の排除。

 

 正直陛下がやれよと思ったが、というか言ったが、なんでも用事があるらしく、私達のような腕の立つ転生者にお願いしたとのこと。期間は大体一ヶ月。報酬は望んだ特典を一つ。私は血液だけど。チート一つに釣り合う価値はあると思うから文句はない。というかやっと彼の血を貰えるのだから今から楽しみでしょうがない。苦節四年。長かった……。

 

 ぶすり。

 

「ぎゃあっ!」

 

 三十一人目。

 

 さっきから容赦なく殺しているが問題はない。

 

 殺した転生者はこの地に敷かれた特殊な術式にその魂を回収され、後でまとめて蘇生するとのこと。人を殺したことがない転生者には蘇生するとはいえ大変難易度の高いものなのだろうが、私のような転生者にとっては作業レベルのつまらない仕事だ。

 

 ああ、つまらない。こんなのが後一月かあ……。

 

 そうだ。明日アリサちゃんから血を貰おう。ある事件で正体がバレてからは時々血を貰っているのである。彼には到底及ばないが、それでも他の人間(エサ)とは比べ物にならない逸品だ。他にはなのはちゃんやはやてちゃんのもいい。流石原作ヒロインだ。まあ、二人のは飲んだことはないが。味は匂いで大体想像出来るから分かるのだ。だから転生者の血は駄目だと分かる。魂が関係しているのか誰であれ下水を混ぜたようで糞不味い。枷を外した者はまだ飲めるが、それ以外は本当に。昔は強くなるために無理矢理口にしたが、今はしない。たとえ力が手に入らずとも昔とは状況は違うのだ。必要がない。

 

 そういえばアリサちゃんが彼に好意を抱いたかもしれないんだった。

 

 それ自体は別にかまわないが、彼女も厄介な相手に好意を抱いたものだ。あの男は恐らくかなり手慣れている。気が付いたらペロリとされてもおかしくはない。流石に小学生には手を出さないだろうが……。まあ、いくら親友だからといってそこまで口出しはすまい。食われようが自己責任である。傷心のアリサちゃんを慰めて私のものにするのも悪くないしーー。

 

 ーーキィン!

 

 意識の隙間を穿つように放たれた銃弾を弾く。

 

「ちゃんと狙いなよ、ノーコン」

 

 思考を現実に引き戻し、私は後ろにいるだろう下手人に体ごと振り向いた。

 

 そこにいたのは私と同い年ーー小学三年生くらいの少女。

 

 丸眼鏡にそばかす。地に着きそうなほど長い黒髪。その手には背丈の倍以上はあるマスケット銃。

 

「あら、ごめんなさい。あまりにアレな顔をしていたから、勘違いしちゃったわ」

 

「あはは。それってこんな顔の事かな?」

 

「そうそう。思わず引き金引きたくなるわ」

 

「あはは」

 

「ふふふ」

 

 ……。

 

「死ね。トリガーハッピー」

 

「死になさい。吸血鬼」

 

 互いに殺意を乗せ、己の得物を構える。

 

 彼女の特典はヘルシングのリップヴァーン・ウィンクルの全能力、銃器の投影、直感だったか。

 

 ならば問題なく殺れる。

 

 ……が、やはり邪魔が入るか。

 

「何をしているの」

 

 私とあの彼女の間に赤毛の少女が入り込む。

 

「あら、蘇芳ちゃんじゃない。どうしたの?」

 

 あちらが構えを解いたので私も構えを解いた。

 

「戦闘区域の変更通知が来た筈。移動してないのは貴女達だけ」

 

「え、嘘」

 

「うわ、本当だ。殺すのに夢中で気付かなかった」

 

 携帯を見ると既に十分は過ぎている。

 

 これは不味い。せめて報酬分は働かないと血を貰えないかもしれない。

 

「蘇芳ちゃんは真面目ねぇ」

 

「当然。報酬は既に貰っているから。その分は働かないと」

 

「そう言えば蘇芳ちゃんはデメリットがあったわねぇ」

 

 そうだ。蘇芳にはそれがあった。彼女の特典はDARKER THAN BLACK -流星の双子-の蘇芳・パヴリチェンコの全能力、起源弾、気配遮断。その内の蘇芳・パヴリチェンコの全能力が問題だった。正しくは問題になってしまった、か。蘇芳も私と同じように枷を外した転生者だ。枷を外せば安全装置のないオリジナルそのものの力を使えるようになるが、同時にオリジナルと同じデメリットが現れてしまう。私で言うなら人間性の希薄化と吸血衝動、吸血鬼の弱点が生じたが、まあ、オリジナルがオリジナルだけに吸血鬼としての弱点はあってないようなものだし、元から月村の一族は夜の一族と言われている吸血鬼に似た種族だから多少吸血衝動が強まったぐらいであまり問題はない。人間性の希薄化はまあ、今のところ大した問題はない。ないともさ。

 

 蘇芳は違った。オリジナルのデメリットにより、感情が薄くなり、合理的な思考に偏ってしまった。オリジナルがオリジナルだから、完全な契約者になっていないのが救いなのかどうか。

 

 そんな彼女は予め陛下から報酬を貰っていた。

 

 失った感情を補い、契約者としてのデメリットを緩和する為に何らかの特典を与えられたらしい。

 

 それが何かは知らないが、まあ、悪いものではないだろう。

 

 そして、その恩返しのために彼女は自発的にこのイベントに参加している。

 

 私と同じような理由で殺しに慣れているから躊躇しなかったんだろうけど、律儀というかなんというか。

 

 まあいい。それは彼女の自由だ。それよりも、今はここから一刻も速く移動するとしようか。

 

「彼の血が手に入らなくなったら困るしね」

 

 

 

 

 

 

「転生者の駆逐は九割がた完了。任務を終えた者から即時帰投してください」

 

 見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)。玉座にて。

 

 玉座の間を照らす海鳴市を描いた立体映像の前に立つ少女、レティシアは眉一つ動かすことなく冷静に事態の進行を把握していく。

 

「今回の殲滅戦で覚醒者が十六名誕生しました。初めての試みとしてはこれが最良かと」

 

「ふむ。超越者には至らぬか」

 

 続いてのレティシアの言葉に、玉座に座す男、ユーハバッハは少しばかり残念そうに呟いた。

 

「お言葉ですが陛下。未だ覚醒者に至る者はほんの一握り。その中で一番超越者に成りうる可能性を持つ吸血姫ですらまだまだ足りません。経験も、時間も」

 

「それを超えてこそ超越者だ。可能性はある」

 

「未だ覚醒者に至らぬ身ではありますが、陛下の要求する水準はあまりに高いと愚考します」

 

「……そうか?」

 

「はい」

 

 そこで一度言葉は途切れ、レティシアは立体映像を操る作業に戻りながら言葉を紡ぐ。

 

「特典にかけられた保護(プロテクト)を自力で外し、十全に扱えるようになったのが覚醒者ならば、特典(オリジナル)以上の力を発現させる者を超越者と定義する」

 

「そうだ。そしてそれに至る可能性は転生者ならば誰でも有している」

 

「そして陛下に至る可能性も、ですか?」

 

 男は笑みを浮かべるだけだった。

 

 レティシアは呆れたように頭を振ると、立体映像を操る作業を続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

「陛下。第97管理外世界まで後一週間を切りました」

 

 どこか。玉座の鎮座する部屋にて。

 

「それと先行させた第一から第三部隊の全滅を確認。現地勢力の転生者は中々手強いようですね」

 

「所詮は有象無象の寄せ集めだ。この程度で潰れたら面白くない」

 

「はい。陛下の仰る通りです」

 

「そうだ。結局私の力の前には全てが等しく塵だ。ならば過程を楽しまねばな」

 

「はい。陛下の仰る通りです」

 

「次は貴様が出るがいい。クロノよ」

 

「はい。陛下の仰る通りです」

 

「……壊れたか。まあいい。代わりはいくらでもいる。次は誰を使うか」

 

「はい。陛下の仰る通りです」

 

 壊れた人形を前に、男は次の犠牲者(おもちゃ)を探す。

 

 

 

 

 男は軍を率いて地球を目指す。

 

 転生者であるがゆえに、始まりの地であるがゆえに。

 

 ただその(おもちゃ)を振るいたいが為に。

 

 

 

 

 

 

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