この世界がループしていることを俺は知っている 作:超高校級の切望
美夜子は幼い頃、現在の魔法医療では治療不可能な死の病にかかった。
そんな彼女を癒すために、美夜子の母は強い魔法を求め悪魔と取引をしてしまったのだ。
自らの命を生贄に捧げ娘の回復を願い、美夜子が病から癒え、代わりに彼女は姿を消していた。
「恐らく、あの事が魔界星を呼び寄せる引き金となってしまったのだろう」
「本当に悪魔が地球に………?」
「悪魔を追い払う方法はないんですか?」
不安そうなスネ夫。ドラえもんも悪魔について研究している満月牧師に対抗策がないか尋ねる。
「ないことはないんだが………」
満月牧師が片手を額縁に向ける。何処かの書庫が描かれている。その中の巻物の一つがすぅ、とガラスをすり抜けるように絵から飛び出してきた。
「今から五千年もの昔、ナルニアデスという男が悪魔族の力を封印したと伝えられている。その方法を綴った魔界歴程が、地球上のある場所に隠されているとこの古文書には書かれている…………」
隠すのか。人間にとって必要だろうに………悪魔崇拝者を警戒したのだろうか? それとも、力を封印されて尚悪魔は地球に干渉できるのか……。
ただ、その古文書はあまりに古く、隠し場所について解読ができないのだ。
「「解読?あー!」」
ドラえもんとのび太は同時に叫ぶ。そして、取り出したのはコンニャク。満月牧師に差し出す。
困惑しながらもコンニャクを食べ、のび太に促されるまま古文書に目を通し目を見開く。
「す、すごい! 読めてきたぞ! そうか!」
「貴方達、凄い魔法を使うのね」
古文書に目を通していく満月牧師。美夜子も驚いていた。
「こんな不思議な魔法、初めて見たわ」
治せない病気があったり、翻訳できない言葉があったり、この世界の魔法は現実の科学の代用品で、万能ではないらしい。
これで悪魔が来ても一安心だと笑い解散した。
「………………」
そう簡単に物事が進むとは思えないけど。
さて、その日の夕方。のび太から慌てた様子で電話がかかってきた。
もしもボックスがママに捨てられたらしい。出しっぱなしにするから。
ごみ集積所で欠片を見つけた……欠片、つまり壊されていた。
「…………………」
タイムふろしきを使えばいいのでは? まあ、今後も重要な秘密道具を雑な扱いされると困るし、暫く反省させてから教えてやろう。
「…………!?」
夕食を食っていると地震が起きた。かなり大きい地震だ。
テレビをつけようとしたがつかない。この世界のテレビは魔力でつけるからだ。
仕方ないので商店街に向かい魔道具店のテレビを見る。
台風が北上を続けているとニュースに緊急速報として地震の震源地を読み上げる。震源は浅く、近い。
満月牧師の教会付近だ。
「……………………」
魔界星接近に伴う天変地異。魔界星の対策を研究している満月牧師の家を震源とした地震。偶然というのは出来過ぎだ。
「沈んでる?」
たどり着いた場所には教会がなく、葉の茂らぬ木々の枝や教会の屋根が地面から飛び出している。と………
「マワリ君!」
「のび太、ドラえもん………」
ドラえもん達がやってきた。電話越しではケンカしていたが、仲直りしたらしい。
「これは一体………何が」
「美夜子さん達、どうなっちゃったの?」
と、その時。屋根と地面のすき間からチューチューと桃色のネズミが這い出してきた。
「ん? ドラララララ!!」
鼠が嫌いな猫型ロボットドラえもんは大慌て。鼠やだーと駆け出す。
「ん? このペンダント…………」
「うわ!?」
と、走っていたドラえもんが何かにぶつかり転ぶ。
「大丈夫ド………ドラ、ドラ………」
慌てて駆け寄ったのび太は、しかし言葉に固まる。何か恐ろしいものでも見たかのようなのび太にドラえもんも視線を追いかけ固まる。
「ドラゴンだー!」
「グオオオオオ!!」
咆哮とともに吐き出される炎。2人は慌てて回避する。
「貴様等もあの小娘の仲間か!」
その背に乗るのは黒い男。服なのか、あるいは体毛なのかは不明。剥き出しの肌は病人のそれより青く、尖った耳、大きな口、そして鋭い牙。
2つの五芒星が描かれた人ならざる人型の男は残虐な笑みを浮かべ指を向ける。
「喰らえ!」
「うわあああ!!」
放たれる雷が地面を焼きながらのび太に向かい、しかし突然現れた巨大な逆さ氷柱に防がれた。
「あっ、あ!? 出たな、小娘!」
悪魔の視線を追えば、そこには美夜子。
「チュッ、チューチューチュー! チュー!?」
慌てて己の体を触る鼠。マワリはもう一度美夜子を見る。ペンダントの宝石が赤い。
ドラゴンは美夜子に向かい飛び、炎を吐き出すも美夜子は避ける。熱せられた空気が渦巻き炎に触れる前にネズミを吹き飛ばし、マワリが鼠を受け止める。
マワリは美夜子と戦う悪魔を見ながら取り出したのはA4用紙。紙が手元から消え、ドラゴンの首が半ばから断たれる。
何処に引火したのか、ドラゴンの体は激しく燃え上がり背中に乗っている男ごと爆発した。
「美夜子さん!」
「…………チュー」
美夜子に駆け寄るのび太とドラえもん。マワリは鼠と美夜子を見比べたあと、そっとポケットに隠す。
「ごめんなさい、貴方達まで巻き込んで………」
「美夜子さん………満月牧師は?」
申し訳なさそうな美夜子にドラえもんが尋ねる。美夜子は顔伏せ語る…………教会諸共、悪魔族により異空間へ連れ去られたらしい。
美夜子だけは運良く逃げられたが、先程の悪魔に見つかり追われていた。この場に来たマワリ達を美夜子の仲間と判断し襲ったのだろう。
「でも、この古文書だけは無事だったわ」
と、ペンダントから取り出す古文書。それさえあれば魔界歴程の場所を見つけ、悪魔族の力を封印する方法が分かる。
「それを持って魔界星へ乗り込めば!」
「魔界星へ?」
「大魔王デマオンを倒さない限り、彼等は必ず地球へやってくるわ。それに、パパを助けることも………」
のび太とドラえもんは思わず顔を見合わせる。
「お願い、2人とも、力を貸して」
「「ええ!?」」
ん、2人? どうも自分は入っていないようだ。
2人は乗り気ではない。まあ、彼等はまだ子供なのだから危険なことに首を突っ込むとなると怖いのは当たり前だが。
「そうよね。これ以上貴方達を巻き込むなんて、酷い話よね。これは私の問題だわ」
「美夜子さん…」
美夜子が指笛を吹くと空飛ぶ絨毯が一人でに飛んできた。美夜子は絨毯に飛び乗ると飛んでいってしまった。
ポツポツ振り始めた雨は、待ち受ける未来の暗さを表しているかのよう。
「ドラえもん、動物語ヘッドホン貸してくれ」
「え、あ……う、うん」
「チュー、チュチュ、チー!」
机の上で何かを訴えかけるように騒ぐ桃色鼠。早速ヘッドホンを装着。
『お願い聞いて! 大変なことになったの!』
「大変なこと?」
『え!? わ、私の言葉がわかるの!?』
「このヘッドホンでな」
『すごい………あ! それよりも、あの私は偽物なの! じゃなくて! あ、いや、そうなんだけど』
「落ち着け美夜子さん……」
『そう! 私が美夜子で…………解るの?』
だってペンダントが同じだし、色も彼女が来ていた服の色合いそのままだし。
『彼奴は多分、悪魔が化けているのよ。貴方達を誘ったのは、魔界歴程が悪魔には近付けない場所にあるから』
「人間のふりして、人間に取ってこさせて奪う気か。あくどいねえ、流石悪魔」
『魔界歴程を守らなきゃ!』
「落ち着けよ。悪魔は近づけねえんだろ?」
とは言え場所が割れているなら張り込んでいるか。さて、どうするか。透視とテレポートを………いや、魔法の結界がどんな反応を示すかわからない。
「悪魔は、月の光があると魔法が使えないの。月の光には、悪魔の魔力を浄化する力があるのよ」
「なら、満月の夜に動くか」
仮に雲が月光を遮っても、雲程度なら超能力で散らせる。
次の日。
『マワリ君! 僕達、美夜子さんを助けに行ってくるよ!』
「は? おい、ちょっとま…………切りやがった」
『チュチュ! チイ、チュー!!』
「急ぐぞ。しっかり捕まってろ」
胸ポケット付きのパーカーを着込む。掴まるための紐も昨日のうちに縫い付けてある。
箒は、見た目に気を使う必要はない。その身一つで一気に飛び出す………念力で空気の壁を押しのけながらマワリは一気に加速した。