~アルヌスの丘 自衛隊駐屯地~
「これおかわり」
「こっちはワインね」
「おいロゥリィ、まだ飲むのか?」
龍人とロゥリィが食事をしていた。
「いいじゃない〜、美味しいんだもの」
「昨日俺の所で1人で酒樽開けただろう、幾ら亜神とは言え飲み過ぎだ」
どうやらロゥリィはかなり飲んでいるらしい。
「ならぁ……私の相手をしなさいよぉ〜」
そう言いながら龍人に抱き着くロゥリィ。この場に古龍達はいない、なので何時も以上にスキンシップの激しいロゥリィ。鬼の……龍の居ぬ間に何とやらだ。
「抱き着くな、食べ難い」
「むぅ……すぅ……」
「ん? ……なんだ、寝たのか。これで静かに飯が食える」
どうやらロゥリィは龍人の膝で寝てしまった様だ。
「はい、お待たせしました! ってあれ、ロゥリィ様寝ちゃいましたか?」
「あぁ……飲みすぎでな。それよりも、此処の仕事はなれたか、デリア?」
「はい! それで古……じゃなかった、龍人様もお変わりないようでなりよりです!」
「まぁな……それと出来るだけバレない様に頼むぞ、バレたら面倒だからな」
「勿論です!」
「たまには一族の方には顔を出しているのか? テューレ達も心配していたぞ?」
「あははは、こっちの仕事の方がアタシの性にあってるみたいで……」
「なら今度、テューレに会った時に元気だと伝えておこう」
「ありがとうございます、ではごゆっくり〜」
デリアはそう言うとその場から去っていった。
「さて……これからどうするか、先にハーディを尋ね……いたたたっ!」
下を見てみると、ロゥリィが目を覚ましており、彼の足を抓っていた。
「まぁさかぁ……ハーディのところに行くつもりぃ?」
「そのつもりだぞ、現状を聞く為にもな……それに他にも聞きたい事もあったしな」
ロゥリィはそれを聞くともの凄く嫌な顔をしている。
「そういやお前……ハーディに求婚されてたっけ?」
「私はそんなつもりないのぉ! しつこいのよぉアイツぅ!」
「まぁ……その……頑張れ」
「……そうよ、貴方から言えばいいのよ。私への求婚を止める様に」
「俺が? ……でも個人の趣味嗜好に口出すつもりはないんだが」
「いぇ……いっそ私は貴方の物だって言えばいいのよぉ! そうすれば万事解決よぉ!」
「それは駄目だろ」
「何が問題なのよぉ? 私に女の魅力にないって言うの?」
「誰もそんな事は言ってないだろ。お前は十分に可愛いし、魅力的だぞ」
などと何時もと変わらぬ顔で言う龍人。それを聞くと顔を真っ赤にするロゥリィ。
「そっそう……」
ロゥリィは顔を見られたくないのか、彼の腹に顔を埋めている。
少し落ち着いたのか、身を起こすと何かを決心した顔をする。
「私、あの時から「ちょっといいかい?」」
ロゥリィの言葉を遮る様に声をかけてきた伊丹。何ともタイミングの悪い男である。
「ぇ……あの……なにこの空気」
ロゥリィは邪魔をされたのを怒り伊丹を睨み、周りの者達は「今のはお前が悪い」と言う目で彼を見ていた。
「どうかしたか伊丹?」
「ぇとタイミング悪かったかな?」
「ロゥリィ……話は後で聞くからそう睨んでやるな」
「ぐぐぐっ……後で部屋に行くから」
ロゥリィはそれだけ呟くと龍人の膝に寝転んだ。
「それでどうした?」
「いいのか?」
「大丈夫さ。ロゥリィの話も重要だけど、そんな顔の同志を放ってはおけないさ」
伊丹の顔に疲れと困惑が見て取れた。
「ありがとう……実はちょっと相談があって」
伊丹は言うと、自分の置かれた状況を話し始めた。
テュカが炎龍に殺された父の死を受け入れられず、今も父は生きてる様に振る舞っていた。周りもそれを察して合わせていた。
だがそんな時、ダークエルフの女が現れ、テュカに真実を告げた事で症状が悪化、テュカは伊丹を父と呼ぶ事で精神の均衡を保つ事になった。
伊丹は当初、時間が解決してくれるだろうと思っていたが、根本的な解決にはならず、テュカの伊丹に対する依存度が増すばかりだった。
「それで俺の所に来たと」
「俺もテュカに対してどうすればいいか分からなくて……」
「こればっかりは難しい問題だなぁ。幾ら俺でも心までは……一番の方法はテュカ自身に仇を討たせてやることだ」
「仇か……」
「と言うかそのダークエルフは何者だ?
なんで態々テュカを狙ってそんな事を言ったんだ?」
「ぁー、それが」
伊丹は説明を始めた。
ダークエルフの女、名をヤオ・ハー・デュッシと言い、手負いの炎龍に一族の居住地を襲われ、その炎龍に傷を負わせたと言う緑の人(自衛隊)を探してアルヌスにやって来たらしい。
一度は伊丹達の上の人間が対応したが、炎龍の居場所がエルベ藩王国の領内であり、許可なく自衛隊が赴く訳にはいかず断られた。しかし他の隊員の伊丹ならと言う言葉を聞き、伊丹と彼と共にいるテュカが狙われた。
ヤオはテュカに真実を突き付け精神的に追い詰める解決策である炎龍の討伐をさせようと言う訳だ。
「同志伊丹、お前さん、とことん巻き込まれ体質だなぁ。そして厄介事を解決する為に必死になるお人好し」
「ゔっ……」
「まぁ嫌いじゃないけど……」
龍人は少し何かを考える。
「ふむ……伊丹、上の人間と話せるか?」
「ぇ……ぁあ、今の時間なら誰か居ると思うけど」
「なら取次いでくれるか、少し話をさせてもらいたい」
「なにを?」
「少し出掛けようと思ってな。まぁ……俺は言う必要はないけど、伊丹を連れて行くならお前さんの上司に相談しないとね」
「それじゃあ」
「遅かれ早かれあの炎龍は討たないといけないしな。
ほらっロゥリィ、起きろ」
どうやら龍人は伊丹に協力すると決めたらしい。ロゥリィは渋々龍人の膝から起きた。
「じゃあ伊丹、行こう」
「あぁ、ありg」
龍人と一緒に行こうとする伊丹の肩を掴まれた。
伊丹は冷たい何かを感じ振り向くと笑顔のロゥリィがいた。
「あっあの……ロゥ……リィさん?」
「ようじぃ……よくも私の邪魔をしたわねぇ。
この埋め合わせはしてくれるわよねぇ?」
伊丹は周囲を見回すが、皆、視線を合わせない。と言うか誰も伊丹を見ないようにしている。
「なっ何をすれば?」
「今度、あっちの世界の服が欲しいわぁ」
「この間、買ってたんじゃ……」
「服はいくらあってもいいじゃない」
ふっと以前、龍人達を連れて東京に赴いた時の事を思い出した。龍人がもの凄い金額をロゥリィの服に支払っていたのを見た。
もう一度、周囲を見渡すが皆知らんぷりを決め込んでいた。
「はぁ……ロゥリィ」
「龍人はだまっ……ひゃん!」
龍人はロゥリィの耳元で何かを呟いた。するとロゥリィの顔が顔が真っ赤になる。
「分かった?」
「ふぁい」
真っ赤になったロゥリィはふらふらとこの場から出ていった。
「何言ったの?」
「まぁ……気にしないで」
龍人は何を言ったのか分からないが、伊丹は深く聞かない事にした。