帝国魔将ゴルベーザ!   作:RIN

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第10話の投稿です!
今回はあっちのコキュートスのお話…これで通じるでしょうか?やっとのこと対戦カードが出揃うところまで来ましたね。コキュートスの戦闘関連資料が少なくて大変でした…プロローグ巻持って無いので想像補完ありですが。

今回の一言
「全裸vs触手…これはいける!」


地底湖

――…ポツンと何かが身体に触れる感触がする。

 

 

――…氷の外殻には弱い刺激だが、確かに少し暖かい何かが身体を叩いているのだ。

 

 

――…その感触がモヤのかかった自身の頭を少しずつ振り払ってくれている。

 

 

――…動く気配の無かった身体と霞み掛かった目に力が入る。

 

 

 

 

―――そうして目覚めて最初に映った光景は…青色と灰色の世界であった。

 

 

――コキュートスSIDE――

 

「――ゥア、ア…コ、ココハ…ドコダ…?」

 

 コキュートスは水面から飛び出している大きな岩に這いずるような態勢――身体の下半身側は水に浸かっており、上半身は岩に覆いかぶさる様な形で倒れていた。

 

 頭の上から水滴がポタポタと定期的に落ちてくる。どうやら先程まで身体を叩いていた感触はこれのようだ。

 

 霞む頭を動かし、水滴の行方を追うように周囲を見回す。見た感じここは洞窟のような場所のようだ。天井は非常に高く、長い鍾乳石が水を輝かせながら並んでいる。壁は灰色のとても固そうな岩肌が見えており、奥行きもとても広くナザリックの闘技場ぐらいの広さはある。

 

 そして足元には仄暗く光る青い水面が広がっている。隆起した岩の柱が水面から所々出ているが、ほとんどの場所が水深の深い場所であるように見える。どうやら運良く突き出した岩の一本にコキュートスは乗っていた状態だったようだ。

 

「ココハ…『地底湖』…カ…?何故私ハココニ…。」

 

 コキュートスはナザリック第4階層の光景を思い浮かべ、ここがどこかの地底湖であると断定した。そうして何故こんなところに来てしまったのかを思い出す。

 

「ソウダ…私ハアノ不審ナ津波ニ流サレテ…。」

 

 突如現れた津波を避けようとしたが、とてつもない力で津波の中に引きずり込まれてしまったのだ。見えない何かに掴まれたまま、荒れ狂う津波の中で全力で抵抗していたところまでは覚えている。

 

 腕や脚を動かし身体の様子を確認してみるが、外殻に大きめのダメージを受けてはいるものの、特に拘束されているような感じはない。

 

 今そのとてつもない力から解放されていると言うことは、おそらく抵抗には成功したものの、津波に流されながら気を失ってしまったのだと想像できた。

 

「…《メッセージ/伝言》」

 

 異空間から巻物(スクロール)を取り出し、ナザリックへの通信を試みる。しかし、魔法自体は発動したが、ノイズが入るばかりで外部へと通話することは出来ないようだ。

 

(ココハ敵ノ勢力下トイウコトカ…。ソウ簡単ニハ逃ガシテクレヌラシイナ…。)

 

 予感こそしていたがどうやら敵はまだコキュートスを逃がす気はないようだ。何の目的があってこちらをこのような場所に連れてきたのか見当も付かないが、相手がよからぬことを企んでいるのには違いない。まずはここからの脱出が第一目標とコキュートスは定めた。

 

「…出口ヲ探ソウ。」

 

 そうして身体を動かし岩から離れようとした…その時であった。

 

 

 

 

 

『――残念だが出口は無い。お前の未来はここで終わる…我々の覇業の礎となってな!』

 

 

 

 

 

「…!?コノ声ハサッキノ…!!」

 

 地底湖の中に精悍な男の声が反響して響く。反響して聞き取り辛い声ではあるが、コキュートスにはこの声の主が先程津波に飲み込まれたときの声と同じであることがすぐに分かった。

 

『この領域に来たからにはもう逃がさぬ…我が秘技を食らうがいい…!』

 

 その瞬間コキュートスは足元で浮遊感を感じ、突然身体全体が水の中に沈み込む…それは足元の岩に異変が起きていたためだ。

 

(ナッ…!?シマッタ足場ガ…!!?)

 

 コキュートスの足場が急激な水の流れによって倒壊し流されてしまっていた。その水の流れは地底湖の水全体を巻き込むように急激にその速度を上げ、中央に激流を伴った渦を形成する。突然の変化に対応できなかったコキュートスは足元を掬われるように岩ごと激流に流されてしまう。

 

 平衡感覚も掴めない程の激流の中で必死にもがくが、不定形の水の中では体勢を保つことさえコキュートスには困難であった。

 

 そこに謎の声の者が追い打ちをかけるように声を荒げる。

 

 

 

『――そのまま水の中で切り裂かれるがいい!領域スキル<メイルシュトローム>!!』

 

 

 

 そして激流の中で水が鋭い輝きを増したようにコキュートスには見えた――()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

(ッ…!?マズイ…!スキル<防御態勢(プロテクション・)・氷壁の鎧(アイシクル・ボディ)>!!)

 

 

 コキュートスの戦士の勘が警笛を鳴らす。迷わずスキルを発動し、身体全体に青く分厚い氷の鎧を纏い防御態勢に入る。そして周囲の水の輝きが最高潮に達した時、コキュートスの纏った氷の鎧がけたたましい音を響きだす。

 

 それはもう刃の嵐と言っても過言ではない苛烈な攻撃であった。無数の水の刃がガリガリと氷の鎧を深く削っている。

 

『無駄だ…!その程度で防げるほど柔な技では無いぞ!』

 

 その言葉の通り、氷の鎧も瞬く間に薄くなり限界が訪れようとしている。今のスキルが最大の防御であることを鑑みると、コキュートスの固い外皮鎧でもこの刃の水の中に居続ければ数十秒と持たずバラバラにされてしまう。

 

(慌テルナ…私ヨ落チ着ケ…。ソウダ…コンナ時アインズ様ナラドウ切リ抜ケル…!考エロ…!)

 

 コキュートスは今までのアインズの訓戒を元に、今ある手札で冷静に最適解を考える。そうして異空間の中に右上の手を伸ばし、その中からコキュートスの主武装である白銀のハルバード『断頭牙』を取り出す。

 

(届ケ…!届イテクレ…!)

 

 コキュートスは感覚を研ぎ澄ませ、分厚い氷の鎧でできる限界まで身体を捩り断頭牙を投擲する。投擲の代償として、水に対して大きく抵抗した右上の腕は氷の鎧が剥がれ、水の刃によってズタズタになってしまう。

 

 しかし、投擲したハルバードは一直線に真上へ飛んで行き、そのまま固い岩の天井へと深く突き刺さる。コキュートスにはその様子は見えなかったが、狙い通り行っていることを信じ行動する。

 

(明王スキル<軍荼利明王撃(クンダリー)>!蛇ヨ…断頭牙ニ絡ミツケ…!)

 

 スキルを発動したコキュートスの背後に腕が八本ある明王――軍荼利(クンダリ)明王が現れる。軍荼利明王を通じてコキュートスの左腕から勢いよく鎖のような蛇が飛び出し、投擲した断頭牙へ伸びて行く。

 

 そして天井に突き刺さった断頭牙に蛇の頭ががっちりと絡みついた。

 

(引ッ張レ…!グゥウウ…!)

 

 氷の鎧が剥がれ落ち水の刃で身体全体にかなりのダメージを受けながらも、コキュートスは縮む鎖の蛇を手繰りそのまま水中を脱出する。通常の使い方では無かったためかボロボロになってしまった鎖の蛇に感謝をしながら、断頭牙の柄を掴み取り強引に天井から引き抜いた。

 

「《フライ/飛行》!!」

 

 落下途中で《飛行》の魔法の込められたネックレスを発動し空中に浮遊する。身体から所々に血を流しながらも刃の渦の中から抜け出すことに成功した。

 

(危ナカッタ…。モシ後数秒アノ中ニ居レバ逃ゲラレヌトコロダッタ…。)

 

 コキュートスはもしもの妄想に息を飲む。今の行動一つでも遅れていれば、刃の渦の中で取り残され抵抗できぬまま地底湖の底に沈んでいたことを思うと、本当に間一髪だったと恐怖する。

 

『ほう…?私のこの技から生き延びるとは…やはり相当な使い手であったか。』

 

 そうして先程の声の者がこちらに声を掛けてきた。技を躱したことに驚いたのか、こちらを称賛するような声色にも聞こえる。

 

「先程カラノ声ノ者…!貴様何者ダ…姿ヲ現セ…!」

 

 コキュートスは初めて謎の声の相手との疎通を図る。不意打ちの一撃とは言え、レベル100のコキュートスに一撃必殺級の攻撃を放ってきた相手だ。利き腕の右上腕は使えなくなったものの、油断せぬよう右下腕と左上腕の両腕でハルバードを空中で構え直し態勢を整える。

 

『ふむ、本来であれば敵に姿を現すなどありえんが…あの技を生き延びた勇気あるお前に敬意を表して私も直接相対したくなった。その相談承ろうではないか!』

 

 その言葉に呼応してコキュートスを苦しめた刃の渦が何事もなかったように静かになる。静寂が制する中、ゆっくりと地底湖の中央に水が集まり始める。その水が形を保ち始め…そしてそれは異形なるものへと姿を変えて行った。

 

(ム…ソノ姿ハ…『スキュラ』カ…!?)

 

 水の上に立つその姿は上半身が筋骨隆々の青髪の男で、下半身が巨大な触手を何本も持った異形種であった。コキュートスの記憶では性別こそ違うものの、水の異形種『スキュラ』という種族がいたことを思い出す。

 

 その異形の男は自信に満ちた顔でこちらを見つめた後、優雅にその場でお辞儀をする。

 

 

 

「―――はじめまして…コキュートス殿。私はこの湖の支配者スービエ…『七英雄』スービエだ。」

 

 

 

「何故私ノ名ヲ…!ソレニ『()()()』ダト…!?」

 

 コキュートスは自身の名を知られていたことに驚く。加えて『七英雄』はシャルティアを洗脳した主犯が名乗っていた二つ名である。

 

「おや…『七英雄』を知っているのかね?――あのひねくれ爺め…何が『情報の一つも渡さなかった』だ。しっかり敵に知られているではないか…まぁいい。」

 

 何かしら小言で愚痴めいたことを話してはいるが、嫌悪感があるようには見えない。スービエは少し呆れた態度を取りながらも気を取り直して会話を再開する。

 

「おっと身内事ですまぬな…確かお前の名前だったか?お前の名などあれだけ堂々と蜥蜴人の前で名乗っていれば誰でも分かりそうなものだろう?まぁ…それ以前からお前達のことは()()()だったがな。」

 

(()()()()()()()()()…。私達ハ監視サレテイタノダロウカ…?シカシ…)

 

 至高なる御方のアインズ自身が構築した完璧な警戒網を抜けてこれるとはコキュートスには到底思えなかった。常時のナザリックの警戒網でさえ完璧なのに至高の御方自身がそれに手を加えたのだ…破られるなど絶対にありえない。

 

「お前の表情は読み取れないが、心底意外って態度をしているな。どうせ自慢の警戒網を破られたとでも思っているのかもしれんが…それは少し違う。お前達は見えない敵ばかりを探すだけで、目の前に見える敵を見逃しているだけだ。最初から探している対象がズレているのだよ。」

 

「…ドウイウ意味ダ。」

 

 目の前に敵がいればそんなのはすぐに分かる。コキュートスもこの森に来てからそのような敵など会ったこともない。

 

「ははははは!その敵に情報を渡した奴が全く分からないとはな!ではヒントをやろう…この森や湖に来てから一回でも()()()を感じたことはなかったのか?それすら感じられんのであれば、お前には仲間と呼べる者など一人もいないのだろうな!」

 

「違和感ダト…?ソノヨウナコトナド………ッ!」

 

 違和感などないと否定しようとした時に――不意に思い出す…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

『――ふふ…そう!私が…『()()()』だよ!こんにちは!調子はどう?』

 

 

 

 

 

 

 

「アノ時ノアウラッ!マサカ…!?」

 

「心当たりでもあったか?きっとそいつが偽物であり…私の仲間だ。だが気付いたところでもう遅い。今頃はお前に成り代わって内部から蝕むように立ち回るだろうさ。そういったことではあいつの右に出る者はいない。」

 

「ヤハリ偽物カ…!!」

 

 コキュートスは今ここにきて状況を理解した。アウラに化けて自身に接触したのと同じように、今度はコキュートスに化けてナザリックの皆を陥れようとしていることが。

 

「お前の主人は聡明なようだが…どうやら仲間にはとても甘いようだな?さて…そのような者が本当に偽物と見破れるほどの聡明さを発揮できるかな?」

 

「………!」

 

 反論しようとするが言葉が出ない。アインズが他の至高の41人のことをとても大事に思っていることはコキュートスも知っている…そしてそのことになるといつもの冷静さを欠いてしまうことも。

 

 コキュートスは至高の御方が自分如きの偽物に騙されることなど無いと信じている…しかし、慈悲深い至高の御方を考えると――どうしても不安が拭えない。

 

 その様子を見たスービエは残念な顔を滲ませ、コキュートスに対し突き付けるように言い放った。

 

「酷なようだがお前に言っておこう…最初からお前が偽物に気付いていればこのようなことにはならなかったのだ。仲間はお前のせいで皆死ぬ。この場所で()()()()()()に後悔するがいい。」

 

 『無能』…その言葉にコキュートスは腕が強張る。右上腕が痛むがそれよりもスービエの言葉の真実がガラスの破片のように胸へと突き刺さる。

 

 今までずっと考えてきた他の守護者よりも劣る自分が露呈し、遂にはここまでの惨事を引き起こした。地上の状況こそ分からないが、至高の御方を守るべき自分が今ここにいることこそが、認めたく無いその言葉を肯定している。

 

 

――皆の役に立てず至高の御方の足を引っ張る…これを『無能』と言わずして何と言うのか。

 

 

 

 

(グ…!ダガ…マダダ…。マダ出来ルコトハ残ッテイル!)

 

 強張った腕の力を抜き再度最適な力を入れ直す。迷っている暇はない…今こうしている間にも危機は迫っているのだと自身に言い聞かす。

 

「オ前ノ言ウ通リ私ガ『有能』デアレバ、キットコノヨウナ事態ニハナラナカッタ。認メタクハナイガ…私ハ『無能』ナノダロウ。――ダガ、『無能』ナ私デモ出来ルコトハアル。」

 

 コキュートスはハルバードを大きく左腕で振り回し、スービエに対してその切っ先を突き付ける。

 

 

 

「――オ前ヲ倒シココカラ出ルコトダ!私ノ主人と仲間ヲヤラセハセン!」

 

 

 

 スービエを倒さない限り、ここから逃げ出せないことは会話から察していた。自身の無能さに絶望しても、諦めてしまえば『本当の無能』に成り下がってしまう。信頼してくれているアインズや創造してくれた武人武御雷の為にもここで引き下がる訳にはいかない。

 

 今はここから何としても脱出し、主人と仲間を助けに行く。それがコキュートスの使命だ。

 

「面白い…やってみせるがいい。この領域内で私を倒すことがどれだけ困難か…その身を持って味わうがいい!」

 

 そうしてスービエは水の中へ溶けるように消えていく。その瞬間、水がうごめくように振動し水中から勢いよく巨大な触手が何本も現れる。

 

 

 

「――ここから先、()()()()()姿()()()()()()()()()()()()!覚悟したまえ…このスービエの攻撃は一味違うぞ!」

 

 

 

―――コキュートスとスービエの地底湖での戦いがはじまった。

 

 




<原作を知ろう!>
スービエ
出典:ロマサガ2
容姿:青髪の下半身触手男
○原作では?
 七英雄の一人。古代人への復讐のためロンギット海の調査を行っていた七英雄。武装商船団へ介入したり、海の主の娘を吸収して力を手に入れようと画策していた。だが、原作では名前こそ聞くものの初見の人はどこにいるのか見当がつかず最後の七英雄になってしまう人も多い影の薄いボス。また、イベント以外でスービエへ会いに行くとまさかのセリフ無しで終わってしまう悲しい存在である。しかし、イベントをしっかりこなして最終イベントまで見ていると七英雄の真実を語ってくれる唯一の人物である。
 戦闘では即死あり全体技のメイルシュトロームと火力異常な触手がかなり厄介で、開幕メイルシュトロームで殺されたプレイヤーも多いかもしれない。第二形態ではHPの高さが問題でデッドリードライブや2段突きなども使用するため回復の兼ね合いから長期戦を余儀なくされる。
 ちなみに原作での異名は『海の王者』LOV2でのあだ名は必殺技の台詞から『一味違うタコ』になっている。
○この小説では?
 プレイヤースービエが作った元NPCスービエとして登場。設定に準拠こそしているがかなりプレイヤーの性格を反映されている。オバロでは海設定がないため急遽水枠として差し込んだ。だってこのタコさん、ここ以外じゃ出せなかったんだもん…。

 筆者はイベントをこなして七英雄の真実を聞いた時にロマサガ2がとても好きになった思い出のボス。また台詞自体もかなりかっこいいし後付けの設定も面白いので、知らない人や分からない人は調べてみるといいかも。
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