短編で投稿していますが、モチベーションが沸けば続きを書くかもしれません。
練習なので色々不備はあるかもしれませんが、多めに見てください。
『消された台風』とよばれる都市伝説がある。
史上まれにみる巨大な勢力をともない日本に壊滅的な被害をもたらすとされていた台風14号。
三年前襲来した大災厄が、突如として消え去った、という史実に基づいて語られる様々な説をまとめてそう呼ぶ。
陰謀論者は語る『これは某国の気象兵器の実験に違いない。禁止されているはずの気象兵器の開発は次の大戦への序章だ』と。
宗教家は語る『神の奇跡に相違ない。災厄を防がんと神がもたらした慈悲である』と。
オカルト研究者は語る『台風ほどの巨大な気象現象を突如として消し去るなど我々の科学力を越えている。これは宇宙人の仕業だ』と。
一時期は様々な憶測が世界中で語られ、今でも密かに議論が続くこの現象の真実は定かではない。
しかし、数多の俗説の中に埋もれていったマイナーな説の中に一つ奇妙なものがある。
それは、台風が消える瞬間をこの目で見た、という目撃者の証言である。
本来ならば最も重要視されるべきその意見は、語られるや否や荒唐無稽にすぎるとすぐさま否定され、忘れ去られた。
しかし、その説には極めて奇妙な点があった。
それは百名を超える目撃者の証言が、全て一致していたということだ。
もっというのであれば、それでもなお否定されるほどの荒唐無稽な話を皆が口をそろえた語ったこと。
あるものは恐怖とともに、あるものは崇拝とともにこう唱えた。
曰く『あれは、天を切り裂く漆黒の
◆◇◆
コンコンコンコン、と分厚い扉を叩く音が四度響く。
「入れ」
部屋の主、覇軍学園の現理事長、神宮寺 黒乃の許可を受け扉が開かれる。
入っていたのは、どこかぼんやりとした少年だ。
制服がまだ体に馴染んでいないのか、単に緊張しているのかどこか硬い動きで神宮寺の前に立つ。
「入学式もまだなのに、来てもらって悪いな」
「いえ、別に・・・・寮からすぐでしたし、構いません」
「そうか?荷解きとか、いろいろ忙しい時期かと思ったんだが」
「いえ、なんか勝手に用意されてたんで・・」
「・・・そうか」
学生寮にきてみたら、私物がすでに用意されていた。
そんなホラーじみたプライバシーの侵害も、納得するしかない立場。
何かを悟ったような顔で力なく零す少年に、神宮寺は同情する。
「さて、少し早いが入学おめでとう。私はお前を歓迎しよう」
「あっはい、えーと、どうもありがとうございます」
偉い人に歓迎されて、すごすごと頭を下げる。
そんな小市民的な対応をする少年ではあるが、もちろん入学式前からわざわざ理事長室に呼び出されるような男が、訳ありで無いわけがない。
「そんなに畏まることはないぞ?この学園に君を呼んだのは私だ。つまり君は私がスカウトした生徒、イニシアチブは君にある」
「ええと、色々と便宜を図っていただいた恩もありますし、目上の人ですし・・」
「気にするな、その恩はこれからの働きで存分に返してもらう予定だ」
まじか~、とか、早まったかな・・、とでもいったような表情で沈黙する少年。
しかし、すぐに表情を引き締め快諾する。
といってもその声は若干震えていたが。
「ふふ、まあそう怯えるな。流石の私もずぶの素人に無理はさせんさ」
そんな少年が面白いのか、冗談めかした口調で告げる神宮寺。
それに安堵の言葉を零そうとしたところで、続く言葉に動きが止まる。
「あはは、何だ良かっ」
「まあ、学園全てを敵に回したところで君が困るとも思えないが?」
先ほどの冗談めかした口調とは打って変わって真剣な声音。
引退したとはいえ元世界三位の伐刀者の視線に射抜かれた少年は、しかし憶することなく反感を込めた視線を返した。
「やめてくださいよ。頼まれたって
できない、ではなく、やらない。
学園全てを敵に回したところで問題はない。そんな大言壮語としかとりえない言葉を無意識のうちに肯定する少年。
だが、その表情には驕りなど一欠けらもなく、ただ思ったことを言っただけとしかいいようのない自然なものだ。
「勿論そんなことはさせんさ。折角掃除が終わったというのに、いきなり学園を消されたので私がたまらない。・・・そう機嫌を悪くしてくれるな」
「お願いしますよ」
「安心しろ、もしお前が私に無断で固有霊装を使おうものなら、私や寧音に加えて教師陣総出で止めにかかる手はずになっている」
「ひどい苛めだ...」
「国からの命令だ、仕方あるまい。君の立場を考えれば曲がりなりにも使用許可がもらえるだけましと思え」
「確かによく考えたら、自由に歩き回れるだけ温情ですねぇ」
「まぁ・・・そういうことだ」
なにを想像したのやら。少年は自由って素晴らしい!と喜びの声を上げる。
しかし、対する神宮寺は歯切れが悪い。
なぜかといえば、彼が別に自由ではないことを知っているからだ。
たとえばそれは、
『覇軍学園から出る際には、理事長の認可が必須。かつ、理事長推薦の二名以上の同行者が必用』ということであったり、
『体内に埋め込まれたデバイスにより、二十四時間その位置が監視される』ということであったり、
『一ヶ月に一回、医師による精神鑑定を行う』ということであったりする。
扱いは完全に危険人物だ。
しかしこの扱いを仕方がないと思わせてしまうほどの劇物なのだ。
その気になれば、なんならその気がなくても国家の存亡を左右してしまえる人物に対する警戒としては仕方のないことなのだ。
なんなら殺されていないことが温情、と言えないこともない。
「あれ、でもそれだと俺授業とかどうするんですか?実戦の授業ありますよね?ここ」
「ああ、もちろんだ」
「ってことは全部見学ですか?」
「基本的にはそうなるな。別に自習でも構わんが。なんだ、見学が恥ずかしいのか?」
「ああ・・いえ、別にそういうんじゃ・・・。いや、見学は見学で恥ずかしんですけど・・・・」
「なにかあるのか?」
「う~ん」
唐突に口ごもる少年。
視線を神宮寺と虚空に彷徨わせ、何やら深く悩んでいる様子。
『言いたいけれど、はたしてこれは言っていいのか?』言葉にすればそんな感じだろう。
それを察して、神宮寺は遠慮はいらんと先をうながす。
「ええと・・・、ここって一応、じゃなくて基本的に本気で魔導騎士を目指している生徒が学ぶ場所な訳じゃないですか?そんな中で一人見学ばっかしてる奴がいたら目立つよな~、って」
「遠回しな表現はいい。率直に言いたまえ」
「えと、俺は伐刀者ってのがどういう感じなのか詳しくないんで、失礼かもしれないんですけど。霊装の展開も許してもらえない奴が、ちょっとヤンチャな人に目を付けられたら厄介だなー、みたいな?」
「・・・なるほど」
ようは、いじめの対象になりかねない。そう言いたいのだろう。
実際、魔導騎士を目指しこの学園に入学してくる生徒達は、まだ若い衝動に身を任せ、己の力を振るってみたくなる年頃だ。
そんな中に、一人まともに授業も受けず、霊装も展開できない生徒がいたら、ちょうどいいサンドバックだ。
ここまで分かれば、やたらと言い渋っていた訳も神宮寺には察しが付く。
確かに、理事長に向かって『お宅の学園、いじめッ子とかいるんじゃない?』と聞くのは結構失礼だ。
そして、彼にとっては残念なお知らせだ。
「お前の懸念ももっともだ」
「えっ!?」
『うちの学園には苛めは存在しません』
そんな返答を期待していたのだろうか?
否定してくれないの!?と驚愕を表情に張り付け、少年は想像の中の暗黒の未来を想像し影を落とす。
それからも納得したような表情をしたかと思えば唐突に沈んだりとせわしない。
一体少年の中でどんな未来予想図が繰り広げられたのか、百面相をしている彼を見て、中々に表情多彩な奴だな、と感じるのみで神宮寺は否定しない。
なぜならこの学園にはその下地があるからだ。
黒鉄 一輝
平均的な伐刀者の十分の一程度の魔力しか持たない身でありながら、魔導騎士を志す身の程知らず。
そんな風に学園中に嘲笑われる落第生。
彼のせいで、というよりも彼を貶めるために為に学園に作り上げられたこの淀んだ空気。
能力差別とでも言うべきこの腐った環境を改革することも、新しい理事長としてこの覇軍学園の立て直しを任された神宮寺黒乃にとって七星剣武祭優勝に次ぐ大事な仕事の一つである。
そして、この少年は覇軍学園の七星剣武祭優勝に対する起爆剤。
そんな彼を黒鉄と似たような状況に突っ込んでしまっては申し訳が立たない。
というか、教育者として失格である。
しかし、問題はない。なぜなら
「だが案ずるな、その点は問題ない」
「おお、流石理事長!」
「君が学内トーナメントで実力を示せばいいだけだ」
「は?学内トーナメント?そんなのこの学校にあるんですか?」
七星剣武祭の出場者を純粋な実力による選抜するための策として神宮寺が用意した機会。
学園総出で実力を競い合うその場で派手な勝利を見せつければ、実力はすぐに知れ渡るだろう。
何分少年の能力は極めて派手だ、彼自身の戦い方も合わせて嫌でも目立つ。
圧倒的な実力を示し続ければ、突っかかってくるものはそうはいないだろう。
「確かに、それなら俺は大丈夫かもしれないですけど、色々と不和を招きそうな仕組みですね」
「伐刀者は実力社会。曲がりなりにも騎士を目指しているんだ、己の地位は力で保障するしかない」
「そういうもんですか」
才能、経験、性差、運。勝利を分ける要因は色々とあるが、全てを実力で片付けられる者は数少ない。
負ければ色々と不満は溜まるだろう。一回勝負となればなおのことだ。
しかし、それを飲み込めないようでは騎士たりえないそういうことなのだろう。
そんなある種冷たいともとれる言い分は、この少年にとっては何処か遠い国の話のようだ。
「ふりかかる理不尽を運命と納得しているようではだめなのさ。そこを越えないことには己の未来は開けない。君にも覚えがあるだろう?」
「・・・・実感はないですけど」
「それでもかまわないさ。君はただ見せつければいい。貴賤を問わず全てを叩きのめす圧倒的な理不尽というものを」
「・・・僕は『prrrrrrr!』」
「っと、すまない電話だ」
意味深な言動。張り詰めた室内の空気を破ったのは突如かかった電話だった。
仕方なく少年は口をつぐみ、電話が終わるのを待つ。
しかし、なにやら厄介ごとが起きたようで神宮寺の声に僅かに苛立ちの色が滲む。
話は終わりかな?
変わってしまった空気を察し、少年は目線で問いかける。
「ああ、ちょっと待ってくれ。・・・すまんな。少々厄介ごとが起きた、話はまた今度でいいか?」
「俺の方はいつでも」
「ではまた今度話の続きをするとしよう。ああそれと、細かい注意事項なんかは後で生徒手帳に送信しておくから必ず読むように」
「了解しました」
「ではな、期待しているぞ『■■■■』」
すぐさま電話の応対に戻った神宮寺に背を向け、少年は小さくため息を零しながら退室する。
その歩みはトボトボという表現がぴったりで、石でもあれば蹴っ飛ばしそうな空気だった。
その姿を見れば、彼を危険人物などと思うものはそうはいないだろう。
しかし、彼の力を知る者は否が応でも警戒を余儀なくされる。
それはひとえに彼の持つ力が要因だ。
ただその力を持つというだけで、人格も思想一切関係なく警戒せざるを得ない圧倒的な暴力。
秘匿され、この度その封をとかれたその災厄の名はアド・エデム。
またの名を 『斬撃皇帝』
その名が世界に轟くことになるのは、そう遠い未来の話ではない。
素人のお遊びですが先が気になる!ってなっていただけたら幸いです。(なお続きを書くとは言っていない)