笛吹いてたら弟子に推薦された   作:へか帝

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MHWのストーリー全体で見ると、まだ序盤すぎて震えますよ…


古龍捕獲ってできんの?

 

 先日、新大陸古龍調査団から新たな任務が正式に発令された。

 題して、『ゾラ・マグダラオス捕獲作戦』。

 この作戦が発令されるに至った経緯は複数ある。

 最も大きい要因はゾラ・マグダラオスの痕跡捜査が実を結び、学者たちがそこからゾラ・マグダラオスの進行ルートを割り出したこと。

 こないだアイリーンらが三爺の護衛も兼ねて大蟻塚の台地に赴いた甲斐もあったというものだ。

 ゾラ・マグダラオスの痕跡を持ち帰るため、わざわざ大八車を押して任務に向かって行ったのは鮮烈に記憶に残っている。

 

 調査の結果、ゾラ・マグダラオスの向かう先は大峡谷だと判明した。

 総司令は4つの理由から、この作戦の決行を決断したという。

 一つ、熔山龍の現在位置を特定できていること。

 一つ、巨大かつ鈍重な熔山龍が標的であること。

 一つ、調査完遂を趣旨とした五期団の来航により、人材に不足がないこと。

 一つ、これほどの好条件は、今を逃せば次は無いと確信できるほどの奇跡であること。

 

 ならばと気になるのが"捕獲"という手段について。

 古龍は捕獲できない。ハンターに刷り込まれた常識だ。ベテランであるほどその傾向は顕著だろう。

 作戦会議で総司令からの提案があった際にも、大多数のメンバーが驚愕していた。俺だってその一人だ。

 だが、それを頭ごなしに否定する者がいなかったこと、そして反対意見が一つも挙がらなかったことにもまた驚いた。

 俺はそこに新大陸古龍調査団が奇人と変人で構成された天才集団と目される所以を見た。

 

 そもそも古龍種が捕獲不能とされる理由を研究班のリーダーに伺ってみると、俺も新しく知ることがたくさんあった。

 まず、古龍種が従来の生物の枠組みから逸脱し過ぎているというのがある。

 何を活力の源とするのか。食事や睡眠は摂るのか、皮膚の下に血は流れているのか。麻酔は効くのか。

 何から何まで悉くが未知数。ゆえに捕獲という手段を取るというところまで至れないのだと。

 それに加え、中には古龍を捕獲することが災いを招くと恐れる派閥もいるのだと。そうした理由が積み重なり、今まで古龍の捕獲は行われてこなかった。

 だが古龍の捕獲を"しない"理由はあっても"不可能"な理由はない。

 研究班は鼻息を荒くしてそう息巻いていた。

 

 では肝心の手段だが、あの山のような巨龍をどのようにして捕獲するのか。

 まずは高山のひしめく大峡谷という地形を利用して、これを天然の要塞とし熔山龍の移動を制限。

 事前に十分な設備を構築し、大量の拘束弾で雁字搦めにして物理的にゾラ・マグダラオスを捕獲してしまおうという強引な手法だ。

 荒唐無稽にも思えるが、バリスタを駆使してワイヤーを引いた拘束弾の効果は各所で前例がある。ラオシャンロンやジエン・モーランといった超大型古龍にも通用する拘束手段だ。

 

 この捕獲作戦は永続的な捕獲を目的としてものではなく、今後の継続的な追跡調査の礎となるもの。

 モンスターの生態のプロフェッショナルの意見を伺ってみても、豊富な資源と人員を熔山龍に特化して準備すれば捕獲は可能と判断を下している。

 ゾラ・マグダラオスという、何もかもが規格外な古龍が相手だからこそ通用する作戦ということだな。

 

 古龍の捕獲と聞けば突飛な発想だと感じるが、総司令は新大陸を訪れた当初からこの案を温めていたという。

 過去の古龍渡りの調査対象はキリン、テオ・テスカトル、クシャルダオラの三体だったらしい。

 いずれもゾラ・マグダラオスと比べれば高速かつ小柄で、足取りを掴むのは困難を極めただろう。

 一期団は上陸時に大規模なトラブルに見舞われ、二期団と三期団は拠点作成に注力、四期団は対象がキリンだったということもあり追跡に失敗。

 順調に追跡できている現状と、五期団の潤沢な人材があって初めて古龍捕獲の実現に手が届こうとしている。

 

「古龍の捕獲。お前はどう見る、ゲールマン」

 

 大峡谷の拠点でそう語りかけてくるのは、獰猛な雰囲気を隠そうともしない女ハンター。

 名をヴィンセント。"殺し屋"というハンターに対する最低の蔑称と、"英雄"という最大級の賛辞の二つで呼ばれる異色の凄腕。

 ろくな手入れの施されていないぼさぼさの金髪をたなびかせ、傷だらけの顔で堂々と佇む姿はもはや自然の一部、一員。俺はこいつをモンスターといって差し支えないと思っている。

 ヴィンセントは渡来時の海難で装備を海に流された大多数のハンターに含まれるが、既にアンジャナフの防具で全身を固め、背にもアンジャナフの双剣を提げている。

 海に沈んだ装備に幾許の執着も見せず、ゼロから新大陸でハンターを始め瞬く間に装備を整えてみせる手腕は本物。

 アンジャナフと言えば、古代樹の森で現在確認されている中で最も危険度が高いモンスター。ほぼ全てのハンターが振り出しに戻った中で最先端を行くヴィンセントは、エリート揃いと名高い五期団の中でも筆頭の実力者だ。

 装備で実力が測られるのはハンターの常だが、新大陸ではそれがより顕著になるだろう。 

 

「捕獲が上手くいくかどうかを聞きたいのか?」

「興味がない。知りたいのは、どうなるかだ。専門家だろ、お前」

「古龍のか? そんなもんになった覚えはないが」

 

 ない。ないはずだ。

 いや確かにここ最近の活動や交友関係を思えばかなり深く古龍が関わっている。

 そういえば古龍周りで人に物を尋ねられることもかなり増えてきているが……。

 もしかして俺が知らないうちにそういう評価が出来上がっているのか?

 俺が否定しても説得力がないのが悲しいところだ。

 せめて自称だけはしないようにしよう。

 

「古龍と遭遇した数で言えば、お前がダントツだ。私ですらまだやり合ったことがない」

 

 大峡谷に砦が忙しなく組み立てられていく様子を遠景に眺めながら、ヴィンセントは不服そうに言った。

 

「嵐みたいなもんだろう。遭わないならそれに越したことはない」

「私は待ちかねている」

 

 そりゃ、お前のようなハンティング大好き人間ならそうだろうがね。

 古龍狩りを誉れと思うやつもいれば、管轄外だときっぱり身を引くやつもいる。

 古龍を狩るのとモンスターを狩るのとでは、やはり大きな隔たりがあるのだ。安易な延長線上にあるものではない。

 

「一番の大物で、かつて同行したウカムルバスがそうだ」 

「シルリアのか」

「話を聞きつけて無理やり同行した」

「見上げた根性だ」

「二度とあるかもわからん機会だったからな。大変だった」

 

 弟子のシルリアがウカムの装備を身に纏っていたことは記憶に新しい。そう滅多に出現するモンスターではないと思ってはいたが、狩りにはこいつが同行していたか。

 北の雪山深部に生息する原始飛竜のウカムルバスは、古龍でこそないもののそれに匹敵しうる強大さであり、そこらのモンスターとは明らかに一線を画す。

 

「流石のお前も古龍級生物ともなれば骨が折れるか」

「いや。クエストの出立に間に合わない所だった」 

「そっちかよ」

「道すがらキリンを追うラージャンに出くわしたんだ。ポッケ村に向かうポポの荷車が崖下に落ちてしまってな、結局徒歩で行くはめになった。

 大変だったぞ、うん」 

「のんきな奴だ」

 

 そして、すさまじいガッツだ。そこらの並ハンターなら、運に恵まれない限りそこで終わりだろうに。

 よしんば助かったとして、俺なら嫌になって村につき次第宿を借りて寝るね。そのままの足でウカムルバス討伐に参加とか冗談じゃない。

 こいつとはちょくちょく親交があるが、このブレなさは相変わらずだ。 

 西に強いモンスターが出れば行って狩り、東に狂暴なモンスターが現れれば行って狩る。

 信念も脈絡もなくモンスターを狩り続ける姿はまさにハンターの鑑そのものであり、だからこそ"殺し屋"などと揶揄され貶められる。 

 あるいは、英雄と持て囃されることもあったか。当の本人は周囲の評価などまるで気にせず狩りに没頭しているようだが。

 まあ、フィールドに出れば肩書も評判も、感謝も罵倒も何ら意味を為さない。こいつの性格なら自身の風評など微塵も頓着しないだろう。

 

「古龍は普通のモンスターと違う」

 

 ヴィンセントは神妙にそう呟いた。

 

「ただの強いモンスターではない。そうだな?」

 

 確認するように寄越された問いに、俺は頷いた。

 力、知恵、存在。どれをとっても生物の枠に当てはめるのが愚かしく思えるような規格外なのが古龍というものだ。

 天災が生き物の形を象っているようなものだと俺は思っている。

 

「今さらだな。お前もあの影を見ただろう」

「ゾラ・マグダラオスだな。規模、寿命、生命力。あらゆる生物と比べることも叶わぬ、生ける環境。だが、あれだって生き物じゃないか」

「だから狩りたいって?」

「私はハンターだぞ」

 

 俺はやめておいた方がいいと思うんだがね。なかなか聞き分けが悪い。

 何をどうしてそこまで焦がれるのか。生粋のハンターではない俺には、どうにも理解が及ばない。

 

「古龍を狩るのは、私の目標だ。ゾラ・マグダラオス捕獲作戦はその前哨戦になる。

 新大陸にだってそのために来た。まだ見ぬモンスターに、古龍渡り。面白いじゃないか」

「お前はいつまでも元気だな」

「古龍と見えぬまま引退するハンターの方が多い。私がそうならない保証などどこにもないからね。

 それに、古龍に臨むなら早いに越したことはないだろう。老いて衰えた身で立ち会えるなどと思い上がりはしない。

 海を渡って古龍に近づけるというなら、乗らない手はないだろう?」

 

 ヴィンセントは静かな口ぶりで語る。使命感に駆られるのとは違う。ただそうするのが、生きていくうえで当たり前なのだと本気で思っている。

 モンスターハンターという称号がもっともふさわしいのはこいつだ。ハンターを志すやつには金とか憧れとか、俗っぽかったり必死だったりと様々な理由があるもんだ。

 古龍に挑むにも同じことが言える。復讐、功名、力試し、強敵に挑むには、誰しもそれに相応しい理由があるだろう。

 こいつにはそれがない。古龍がいるから狩りに行く。

 シンプルすぎるが故の異質な思考で、古龍に挑まんとしている。

 こいつはもうハンターという種族に生まれた生き物。もはやそういう生態。俺はそう解釈してる。

 明らかに他のハンター連中とは熱が違う。周りからしてみれば、その異物感にはドン引きするだろう。好き勝手言われるのもやむなしだ。

 

「古龍への挑戦。その肌感を感じるのにはいい機会になると思うぜ」

「何が起きる?」

「俺が知るかよ」

「ふむ。お前に分からないなら、誰にも分からないか」 

 

 作戦決行の日は近い。




ローラン
火山の鉱脈から出土した、謎の金属製の武器防具を愛用する女ハンター。
既存の加工理論を根底から覆す未知の武器防具は加工屋も考古学者も垂涎の品。
だがそれは、なによりもハンターにとって至高の品であり、故に度重なる貸借要請を彼女は全て断っている。
装備としての価値は、彼女のハンターとしての名声が雄弁に物語っているだろう。
 
ボリス
モガの村出身のベテランハンター。
安全な狩りを進めるための計画性と準備力を持ち合わせており、熟練した狩りをする。
ボリスがしばしば新人ハンターに言い含める。
「悲観的に準備して、楽観的に実行し、客観的に成否を判断しろ」
それを実行できるだけのハンターは、実のところ多くない。
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