ダンジョンにSCP-710-JP-J伝承者がいるのは間違っているだろうか   作:猫屋敷の召使い

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はい。お久しぶりです。
中古とはいえ、PCを買い替えておんぼろPCの誤作動やフリーズにおびえることなく安心して執筆できるようになった作者の猫屋敷の召使いです。
今の今までコロナに怯えながらも新社会人として忙しい日々を過ごしておりました。
そして、ようやく生活にも慣れ始めたので、ぼちぼち更新していきます。更新を楽しみにしていた方々には大変待たせてしまい申し訳ございませんでした。

それでは最新話です。どうぞ。
久しぶりに書いているので誤字や文章に違和感があったら申し訳ございません。


第五一話

 早朝、牢から出してもらい青褪めたままの顔で、巧は薄白い光が照らす街を歩いていた。服はヘスティアが看守に預けていたものに着替えている。

 結局あの後、幻覚世界に呼ばれることがなく、もう数日ほど様子見を考えていたが、その顔色の悪さから、看守一同によって牢から追い出され、半ば強制的に拠点に帰るように言われてしまったのだ。

 

「……ふぅ、まだどうなるか分からない不安があるんだけど……追い出されちゃったし、やれる限りをやるしかないかな……」

 

 もはや青色を通り越して土気色の顔で覚束ない足取りのまま拠点までの道のりを移動する。

 未だにあの幻覚世界で感じた異物感が拭えなく、寝る間もなく便器に張り付くようにして吐き続けたのだ。

 流石の巧でも、食事も睡眠もとるにとれない状態は生物として厳しい。とはいえ、今朝は無理矢理ではあるが、胃に朝食を詰め込んだが。

 

「だ、大丈夫、かい?」

 

 朝早く、まだ寝ている人が多いとはいえ、通りに完全に人がいないわけではない。そんな通行人の一人が彼の顔色を心配してか、声をかけてくる。

 

「大丈夫だよ。これから家に帰ってゆっくり休む予定だから……」

 

 それに対し、平気だと答えるが、声も明らかに力がなく、どうにもこうにも大丈夫には見えない。声をかけた人物はどうするべきかと悩んでいる間にも、巧は拠点に向かって歩いていく。そんな彼に気づくも呼び止める間もなく、その姿を遠ざかっていった。

 しばらく歩き、大通りから逸れ、路地に入り、たった一人になる。最初から路地に入ればよかったと、回っていない頭で考える。

 

「おのれ、クソ鳥、許さん……」

 

 それもこれもすべては()()()のせいだと、恨み言を溢すが、これは完璧に彼の自業自得で、逆恨み甚だしいことこの上ないだろう。とはいえ、あの時は寝不足や疲労もあり、良くも悪くも思考がぶっ飛んでいたための行動だったが、他者からすればドン引きものである。

 そうこうしている内に、【ヘスティア・ファミリア】が拠点にしている廃教会へと辿り着く。

 中に入り、扉を開け、地下への階段を降りる。

 

「ただいまー……」

「あ、おかえ―――」

 

 静かに声をかけながら中に入ると、ベルとリリルカがダンジョンに向かう準備をしていた。

 彼も巧の声に反応して、声がした方に振り向きながら返事をしたが、その言葉は途中で止まってしまう。一緒に荷物をまとめていたリリルカも入ってきた彼の方に顔を向け、目を見開き驚きを隠せない様子だった。

 ベルは血相を変えて詰め寄ると、肩を摑んで前後に揺さぶり始める。

 

「どどどど―――」

「説明するから落ち着け」

 

 何かを言い終わる前にベルの額をデコピンで弾く。Lv.3になったばかりとはいえ、どんな軽い一撃でも、Lv.2になったばかりのベルとでは大きな差がある。当然の如く、頭は後ろに大きく仰け反り、額と同時に首さえも多少痛めてしまう結果となる。

 額を抑えて蹲る彼に、リリルカは心配そうに駆け寄る。

 

「なんだかんだあって寝不足で食事も今日の朝食ぐらいしかまともに取れてないから、こんな顔色なんだよ。朝食はどうにか詰め込んだけど。あとで罰金と修理費を然るべき場所(ギルド)に持って行かなきゃならないし」

「そ、そうですか……ッ」

 

 地面に沈んだまま、返答する。まだ痛みが抜け来ていないのかプルプルと震えてしまっている。

 

「ヘスティア様は?」

「ま、まだ寝てます……」

 

 回らなくなっている頭、そして狭くなっている視野を補うためにベルに問いかける。

 なんとか立ち上がれるまでになったのか、巧の質問に額を押さえながらも立ち上がってから応えた。

 それから今度は逆にベルが問いかける。

 

「あ、そういえばタクミさん」

「ん?どうしたの?」

「リリの改宗(コンバージョン)っていつになるんでしょうか?できれば早い方が良いんですけど……」

「あー、もうちょい待って。俺が牢にいた間になんかいちゃもんとかつけてきた奴はいた?」

「いえ、いませんでした」

「……じゃあ、もう少し待ってもらおうかな。絶対アプローチを仕掛けてくるはずだし。炙り出せるまでは待ってもらうよ。俺も今回はやらかしちゃったから、その関係で来る可能性もあるし」

「……?何でですか?」

「全ての原因はお前が誑しだからだ、阿呆(あほう)

「ど、どういうことですか?」

 

 そんなものはお前の後ろで頷いている小人族(パルゥム)に聞け。

 心の中でそんなことを言いつつ、疑問には答えずに苦笑で茶を濁した。

 

「あ、タクミさん。『サラマンダー・ウール』を買うのに拠点に置いてあったお金を使っちゃいましたけど、大丈夫でしたか……?」

「平気平気。そんな端金(はしたがね)

「は、はしたがね……」

「そもそも拠点に置いてる金の大半はお前らの装備を整えるためのものだよ。遠慮なく使え。だからといって無駄遣いしろって言ってるわけじゃないからね?そこんとこ勘違いしないように。それに俺が使うにしても、必要なのは消耗品ぐらいだし。それでも現状余ってんだ」

 

 現在、【ヘスティア・ファミリア】にはかなりの貯蓄がある。その中には『ヘスティア・ナイフ』の借金返済用のものもあるが、それを差し引いてもベル達が使う分については特に問題はなかった。

 

「……そういえば、二つ名ってどうなったの?」

「あっ、【リトル・ルーキー】です!」

「ほぉー……俺のは?」

「それは、神様が直接伝えたいそうなので……」

「ふーん……?あっ、俺の【ランクアップ】ってギルドに報告ってしてるのかな?」

「はい、神様と一緒に報告しました!」

「そう?ならいっか。それより時間大丈夫?ヴェルフと潜るんじゃないの?それとも今日は別行動?」

 

 その一言にハッとした様子で二人は慌ただしく地下の出口に向かい始めた。

 

「い、行ってきます!」

「行って参ります!」

「はーい、気を付けてー。ヴェルフによろしくー」

 

 ひらひらと、土気色の顔で無理しながらも微笑を浮かべて二人を送り出した。扉が閉まる音が聞こえると、地下室の奥に歩みを進める。

 奥に置いてある三つのベッドの一つには、まだヘスティアが眠りについていた。

 

「……やっぱり手狭になってきたなぁ……引っ越しも考えないといけないかな……。ま、もう一人増えたらってことで先延ばしにしようか……」

 

 そんな呟きを吐き出しながら、静かに寝息を立て、眠っているヘスティアのベッドに近付いていく。そのベッドに腰掛け、少し深呼吸をしてから声をかける。

 

「ただいま、ヘスティア様」

 

 巧は小さく呟いたはずだったが、ヘスティアはその声に反応してか、小さく唸ると目を覚ました。

 

「んぅ……?タクミくん……?」

「……はい、ヘスティア様。ただいま戻りました」

 

 起こしてしまったかと、少し申し訳ない気持ちになりながらも答える。

 まだ少し覚醒しきっていないのか、彼女は緩慢な動きで抱き着いてくる。

 

「おかえりー……」

「はい。御心配おかけしました。……まだ眠いなら寝ててもいいよ?バイトがないなら」

「……………………………………………タクミ君ッ!?」

「はい。ヘスティア様の最初の眷属の巧君ですよー」

 

 反応が大分遅れたね。

 口には出さないが、つい思ってしまった。

 抱き着いていたヘスティアは相手が巧だと理解すると、身体を離して肩を摑んで、まじまじと顔を凝視する。

 

「そんなに見なくても巧君ですよー。顔色は悪いかもしれないけどねー」

「だ、大丈夫なのかい?」

「平気平気ー。少し休めば良くなるよ。今回の件も初犯ってことと人的被害がなく、建物にも大きな被害はなかったらしいし」

 

 今朝、追い出される際にその辺りを聞き出していたのだ。比較的処罰が軽い理由はさわりは聞いていたが詳細までは聞いていなかった。すると、壊れたものはベッドや棚などで床や壁、天井といった建物自体には被害はなかったとのことだった。そのため、修繕費もそこまで高くはなく、迷惑料や罰金と合わせて二〇〇万ヴァリスほどで済んだ。いや、レベルと【ファミリア】の規模だけを考えれば決して安くはないのだが、そこはすべて巧が非常識な成果を上げているおかげで大した損害ではなかった。もちろん巧は壊してしまったことについては申し訳なく思っているし、むしろ本当にその金額でいいのかと、巧の方が聞き返したぐらいだった。だが、正当な金額だということで押し切られてしまった。

 

「あとでギルドの方に罰金を届けたら今回の件は終わりだよ」

「そ、そっか……それなら良かったよ」

「そういえば、今日はバイトはあるの?」

「ん?うん。あるよ」

「そうなんだ。頑張ってねー。俺は少し休むから」

「……わかったよ。ゆっくり休んで」

 

 巧はそのままベッドに倒れ込んで、枕に顔を(うず)める。

 と、そこでヘスティアが思い出したように声を上げる。

 

「あぁ、そうだった!」

「……どうかした?」

 

 巧は彼女の声に反応し、枕から片目だけ出るように頭を動かし、視線を向ける。

 それを確認したヘスティアが二の句を告げる。

 

「タクミ君の二つ名だよ!」

「……あぁ、今言うんだ。それで、何になったの?」

 

 巧が眠そうな声で尋ねると、ヘスティアは複雑そうな表情で告げた。

 

「【無謀な挑戦者(クレイジー・スーサイダー)】だってさ」

「……うん。分かったよー。じゃ、お休みー」

 

 それだけ言うと、再び枕に顔を埋めて、今度は静かな寝息が立つ。それを見届けたヘスティアは身支度を整え、地下室を後にした。

 

「……半端に痛い。ていうか、どうしてそうなったし。あの伝言か?……いや、それ以外ないか。ベルはフレイヤがちょっかい出すと思っていたが、俺の方も比較的まともだった……か?いや、直訳で『イカれた自殺志願者』の時点でやばいか……」

 

 扉の閉まる音が聞こえた巧はそれだけ呟いて、今度こそ眠りに落ちた。

 




 不定期とはいえ、ぼちぼち続けていきます。
 今はコロナで厳しい状況ですが、皆さんも気を抜かずに日々をお過ごしください。
 あと久しぶりの更新は投稿ボタンを押すのに5分ぐらいかけてびくびくしながら押してる。
 久しぶりの投稿ってなぜかすごく怯えてしまう。それなら定期的に投稿しろよって話だけど、そんな速度で書くスキルがない自分が悲しいです……。

 あと次話についてはいつになるかちょっとわかりません。申し訳ございません。


以下クレジット
「SCP-710-JP-J」は”Kwana”作「SCP-710-JP-J」に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/scp-710-jp-j

「SCP-444-JP」は”locker”作「SCP-444-JP」に基づきます。
http://ja.scp-wiki.net/scp-444-jp

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