「あーー、こんなとこにいた!」
「む、村雨さん、探しました…」
ひょいっと屋根に身軽にあがってきたのは、乱藤四郎と五虎退の二人だ。
さすが短刀、動きも身軽だ。
「あっ羽根だしてる!さわらせてー♪」
無邪気に笑う乱は、村雨の漆黒の羽根を前に、手をワキワキさせながら笑った。
傍らにいる五虎退も、言葉にはしないが目を輝かせていた。
それを見て、小さく村雨は笑い片翼をふわりと広げてて招いた。
黒いもふっとした羽根に埋もれながら、きゃっきゃとはしゃく短刀の後ろからは、恐る恐る五匹の白い小虎が村雨に近づいてくる。村雨が本丸に来てからしばらくたつが、やはり動物は敏感なようで、村雨の放つ異様な力に身震いする。それでも、村雨の穏やかな性格を把握しているのか、一匹に続きもう一匹と最後には五虎退や乱と同じように羽根や村雨の膝にのり上がり気持ち良さそうにあくびをする。
戦場に片手で数える程度参加をしてから、本丸での知り合いも増えた。短刀始め、その兄(一期一振というそうだ。なんだかロイヤルだった)、大倶利伽羅を助けた(助けた記憶がないのだが)お礼をと眼帯のイケメン(燭台切光忠はやはり顔が良い。間違いない。)に感謝されたり。
なぜか村雨は範囲攻撃と本体直撃が出来るようで(槍と薙刀を合わせた感じか。火事場のなんたらで乗り気ったらステータスが縦横だったらしい。なにそれ。)槍や薙刀連中にも興味を抱かれたようで、やれ戦えと筋肉が迫ってくるようになってしまった。(まじこわい)
朝露が太陽に照らされる中、朝食の時間までまだあるなと思考し、ふとわざわざ自分を探しに来た様子だった二人に意識を向けた。
「そういえば、村雨になにか用事、あった?」
その一言に思わず二度寝しそうになっていた二人ははっとして、そうだったという表情を浮かべた。
実はこの二人、珍しく鍛練ではなく主である牡丹に朝から突撃をかまし、ついでにと村雨を呼んでくるように頼まれていたのだ。
「呼んでる?」
「うん、そろそろ慣れた頃だし、戦場以外のところに行く許可がでたりするんじゃないかなー」
「戦場以外?」
「は、はい…ここで生活している刀剣は、みんな、お小遣いを貰って、買い物とか、行ったりできるんです…」
なるほどと、まだ自分の荷物の少ない村雨は、買い物案が最適解ではないかと考えながら、わかったと膝に乗って丸まっている小虎をひと撫でしながら答えた。
「ならあまり待たせない方が良い、今から行ってくる───………」
そのまま立ち去ろうとする村雨を、二人の大きな瞳が見つめている。
(あれ、なんか期待の眼差し?え、どうしよう)
「二人も、くる?」
「いくー!」
「は、はい!」
ぴょんと片手を上げて立ち上がる乱に、村雨の膝に乗っていた小虎を抱えて立ち上がる五虎退。二人の顔には笑顔が浮かんでいる。
好意的な反応に(よかった)と胸を撫で下ろす村雨。
実年齢はあまり変わらないだろうけど、見た目小さい子どもなため、どうも調子が狂ってしまう。
(信乃も無言でうったえたりしてたなー…なつかしい)
ふわりと羽根を広げて屋根から降りる村雨と、後ろから身軽に危なげなく飛び降りる二人。
その足で、本丸の主である牡丹のもとへと歩を進めるのだった。
(しかし、今日日の子どもは身体能力が高過ぎやしないか?いや、信乃も乱たちも普通の子どもじゃないんだけどさ…)
そんなことを考えながら廊下を歩く村雨。
その背中は、羽根などもとからなかったように女性の細身な背中があるだけだった。