紅蓮激唱シンフォギア   作:zelga

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第42話 『翼を抱いてGo ahead!』

 

 

「……仕留め損ねたか」

 

 

はるか上空、視界に映る月が欠けるのを確認したフィーネは呟く。

 

カ・ディンギルは月を穿つために作りだしたものだ。故に直撃すれば、粉々に砕け散るように出力は調整してある。

 

ではなぜ欠けただけにとどまったのか? それは先程までカ・ディンギルの一撃と拮抗し、こうしてその軌道を逸らした人物がいるからだ。

 

 

「自分を殺して、月への直撃を阻止したか……!」

「あ、ああぁ…………」

 

 

光輝く空を見て、響は呆然と呟く。するとふと視線の先に赤い光が見え、それは徐々にこちらへ降りてくる。

 

地面に向かって炎を吹き出し、勢いを殺して光の主――奏はゆっくりと降り立つ。その腕の中に、一人の少女を抱えながら。

 

 

「……おい、起きろよ」

 

 

反応は、ない。その瞼は固く閉じられ、薄く微笑んでいる口の端からは血が流れていた。

 

 

「馬鹿野郎、お前には夢があったんじゃねのかよ……!」

「クリスちゃん……嘘だよ……。私、せっかくクリスちゃんと仲良くなれたんだよ……?」

 

 

歯を食いしばり、溢れ出る感情を無理やり押さえつけて、奏は震えながら話す。その手に抱くクリスの頬に手を触れた響も、今までの用に反応がないのを見て瞳を激しく揺らしながら言葉をこぼした。少し離れた場所にいる翼は、その様子を痛ましそうに見つめながらも言葉を発さない。

 

 

「もっとたくさん話したかった……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ハッ、無駄なことを」

 

 

静まり返った空間に、その声は響いた。

 

遮るものなど存在せず、3人の耳にその言葉はしっかりと届く。そして各々で様子が変わっていくのだが、そんなことは気にも留めずにフィーネは言葉を続ける。

 

 

「いくら夢を見たとて、叶えられなければ意味はない。……とんだグズだ」

「……今、笑ったのか?」

 

 

その瞳に激しい炎を纏わせ、翼はフィーネを睨みつける。隣で奏もゆっくりと立ち上がるのを尻目に、フィーネに剣の切っ先を向け、胸の内からあふれ出す感情のままに口を開く。

 

 

「命を賭して大切なものを守り抜いた者を……お前は無駄とせせら笑うのか!?」

「てめぇ、ふざけんのも大概にしろよ……!」

 

 

言い終え、剣を構える。そして奏と同時にフィーネに突撃しようと足に力を込め、それを開放しようとして――――

 

 

 

 

 

「それが、夢ごと命を握りつぶした奴の言うことかああああああぁぁぁぁッ!!」

 

 

――背後の咆哮を聞き、その荒々しい気迫に思わず振りかえる。そして、驚愕で目が見開いた。

 

声を発した主、響の姿は先程までとは全く違っている。全身が黒く染まり、輪郭しか見えないものの眼だけは赤く輝いていた。しかしその瞳に理性は感じられなく、ただ1つの感情が支配していた。

 

 

 

それは、怒り。生物が原初から持つ感情にして、最大級の激しさを持った物である。

 

 

「おい立花、お前……ガッ!?」

「立花、奏!?」

「なん、だ……これ……!?」

「融合したガングニールの欠片が暴走しているのだ。制御出来ない力に、やがて意識が塗り固められていく」

 

 

異変に気づいた奏が響に声をかけようとするが、突如膝をついて苦しみだす。それを見た翼が奏の方を見ると、彼女の槍が怪しく発光していた。

 

翼が焦りつつ二人に声をかけるが、二人はフィーネの方だけを凝視している。まだ奏は言葉を発しているだけマシのようだが、響は既に人間の言葉を発していない。そしてその様子を見たフィーネは、二人の状況を確認しつつ話す。

 

 

「暴走しているのは立花だけだが……元は同じ聖遺物であり、同じシンフォギア。共鳴反応で同様の状態に陥る可能性があるのか……想定外だが、良いサンプルになった」

「まさかお前、立花を使って実験を?」

「立花だけではない……見てみたいと思わんか? ガングニールに侵食されて、人としての機能を失っていく様を!」

「ッ、フィーネエエエェェ!!」

 

 

フィーネの言葉をきっかけにして、迸る衝動を抑えきれずに奏が飛び出す。ガングニールを振り上げ、跳躍してから全力で振り下ろす。それをフィーネは鞭を交差させることで受け止めるが、直後奏の背後から飛び出した響が同じ個所に拳を振るう。

 

 

「ガアアアァァッ!」

「ッ、化け物が!」

 

 

槍と拳、二つのガングニールの攻撃は一カ所に集中する。それは徐々に鞭を押しのけてフィーネに近づいていき、若干劣性である事を悟った彼女は顔をしかめ、腕を振りかざして鞭を拡散させた。それによって二人は弾き飛ばされ、響だけが着地に成功する。

 

 

「……もはや人ではない。人の形をしただけの、破壊衝動の塊だ」

「――――――ッ!」

 

 

四つん這いの状態で着地した響は再び咆哮し、フィーネに跳びかかる。彼女は反応して鞭を展開し、防御の構えをとった。拳と障壁がぶつかり合い、激しい火花を散らす。

 

 

「何度やっても…………なッ!?」

「オオオォォッ!!」

 

 

フィーネが再び押しのけようとするが、それよりも早く響の拳が障壁を貫く。そして拳を少し開き、情報から全力で引っ掻くように振り下ろす。

 

激しい音とともに、フィーネの周囲が土煙で覆われる。そしてそこからフィーネが飛び出すが、その身体は上下に真っ二つに割かれていた。

 

 

「ッ、なんという力……!」

「――――ッ」

 

 

完全聖遺物と融合して、それに匹敵するほどの耐久力を手にしているフィーネ。それを一撃で戦闘不能にした今の響を見て、翼はひそかに戦慄する。しかし響が肩で息をしている様子を見て、やはり代償がないわけでないことを悟った。

 

 

「立花、止まれ! これ以上は聖遺物との融合が進むだけだ!」

「ッ、――――――!」

「な!?」

 

 

これ以上響を戦わせるわけにはいかない、そう判断した翼は声をかける。しかしその声を聞いた響きは彼女の方に振り向き、方向と共に突撃してきた。

 

 

「――させるか!」

 

 

予想外の行動に翼は対処が遅れるが、響がその場に辿り着く前に横から奏が飛び出して槍の腹で受け止める。一度吹き飛ばされたことで多少落ち着いたのか、その瞳に狂気は宿っていない。しかし槍は相変わらず発光しており、共鳴反応は健在のようだ。

 

 

「奏、もう大丈夫なの!?」

「大丈夫じゃねえ、今も頭の中でガンガン響いてきやがる……ての!」

 

 

翼の問いかけに対し、奏は答えながら勢い良く槍を押し出す。それによって響は空中を舞うが、1回転して着地する。それを奏は油断せずに見ているが、表情はあまり芳しくない。

 

 

「翼、こっちは任せろ。お前はカ・ディンギルを頼む!」

「カ・ディンギルを!?」

「あれが一発で終わる代物なわけねぇだろ! まだ何発かは撃てるはずだ!」

「――ほぅ、気づいたか」

 

 

奏の指摘を聞き、倒れていたフィーネが口を開く。未だに身体は上下に裂かれている状態なのだが、普通に立ち上がる。そして彼女の言葉を切っ掛けに、背後のカ・ディンギルが再び輝きだした。

 

 

「カ・ディンギルがいかに最強最大の兵器だとしても、ただの一撃で終わってしまうのであれば兵器としては欠陥品。必要あるかぎり何発でも撃ち放つ、その為にエネルギー炉心には尽きることのない無限の心臓を取り付けているのだ」

「尽きることのない……まさか、デュランダルはその為か!」

「その通り!」

 

 

翼が答えにたどり着き、それをフィーネは楽しそうに肯定する。そして同時に彼女の傷口が塞がっていき、数秒もしないうちに全快の状態に戻っていた。その在り方は人ではなく、完全聖遺物ネフシュタンの再生能力そのものだった。

 

 

「……だが、お前を倒せば引き金を引く者はいなくなる!」

 

 

その様子を冷静に見つつ、翼は剣をフィーネに向ける。それを見た彼女は鞭を構え、数瞬の間を置いて二人は再びぶつかり合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このッ!」

「――――――!」

 

 

響が拳を振るい、奏はそれを左手に展開した長剣で受け流す。最初こそ槍を使って迎撃していたが、接触する度に彼女の中で衝動が膨れ上がっていたので、それ以外の武装で対応するようにしたのだ。

 

 

「聞こえねぇのか!? 響、落ち着け!」

「――――――――ッ!!」

 

 

銃で牽制しつつ呼びかけるが、響からまともな反応は返らない。完全に暴走しているようで、怒りの衝動に飲み込まれているのだろう。振るわれる拳は一撃一撃が非常に重い。ただ本能のまま放つために直線的であり、対処しやすいと言うのが幸運と言えるだろう。

 

 

「ったく、これじゃデュランダルの時みたいじゃねえか。…………ってことは、だ」

 

 

どうしたものかと考えながら奏はぼやくが、あることに気づいて後方へ跳躍する。空中で何発か牽制することで安全に距離をとり、響からある程度離れることに成功した。

 

 

「同じ方法でいけるかもな。……あーあ、奥の手は最後にフィーネにかますつもりだったんだけど」

 

 

そう呟きつつ、響を見る。奏が気を抜いた瞬間に襲おうとしているのか、四つん這いの状態で彼女はいつでも飛び出せるよう構えていた。

 

それが分かっていながらも、奏は両手で槍を握って目を閉じる。響がそれに素早く反応して跳びかかるが、奏は迎撃の構えはとらずに、息を静かに吸って口を開いた。

 

 

 

 

 

Croitzal ronzell Gungnir zizzl――――

 

「ッ!?」

 

 

それを詠った瞬間、彼女の全身を光が包む。その眩しさに思わず響は距離をとり、警戒してその様子を見つめていた。

 

そして光が収まり、中から奏が姿を見せる。その様相はあまり変わっていないが、違う点が1つだけある。それは鎧の配色で、黒かった箇所が白く染まっていたのだ。

 

 

「シンフォギアとガシャットの同時起動、上手くできるのは予想できていたが……!」

 

 

纏う鎧の変化を確かめ、奏は槍を構える。しかしその表情は笑ってはいるものの余裕はなく、むしろ汗の量は増していた。

 

彼女が行ったこと、それはハンターゲーマーを纏った状態でガングニールを起動させたのだ。今まではあくまでアームドギアの状態で固定されたガングニールを持って変身していた、シンフォギアとして使ってはいなかったのだ。故にこの形態になった場合、彼女は2つの力を同時に扱うことができるということになる。

 

 

 

しかし、今回に限ってはデメリットも生まれてしまう。この形態になるということは、奏はガングニールをその身に纏うということになるのだ。つまり……。

 

 

「う……ぐぁ……!」

「――――――ッ!!」

 

 

彼女の暴走の影響を、より濃く受けるということになる。予想以上の衝動を受け、思わず奏は頭に手を当てる。その瞬間を狙い、響は再び飛び出して拳を振るう。それに気づいた奏は槍を持つ手を振り上げ――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!!」

「―――――――――」

 

 

――その手を振り下ろさず、響の一撃を受け入れた。

 

胸元を狙って放たれた一撃。それは一切の妨害を受けずに炸裂し、奏に密着する。そして奏は槍を手放し、彼女を優しく抱きしめた。

 

 

「無茶すんじゃねえよ。お前の拳は、こうするためのものじゃないだろ?」

 

 

そう話しかけ、ゆっくりと胸元の手をつかんで下ろさせる。その手は赤く染まり、奏の胸元も同じ色で濡れていた。

 

そして手を下ろさせた後、再び優しく抱きしめる。暴れないのかと響の様子を確認すると、彼女の瞳からは涙が流れていた。それを見て奏は確信する、彼女はまだ飲まれてはいないことを。

 

 

「大丈夫だ。……お前の怒り、私が引き受けてやる」

 

 

響の耳元でそう呟き、目を閉じる。その台詞と共に響の纏うシンフォギア、奏の纏う鎧と地面に刺さる槍が激しく発光し、2人を包み込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぜああああああぁぁぁぁッ!!」

「ッ!」

 

 

ーー天ノ逆鱗ーー

ーーASGARDーー

 

 

翼は空中で剣を投げて巨大化させ、それを蹴って加速させてフィーネに迫る。それを見たフィーネは鞭を格子状に展開して障壁を3重に展開し、それを受け止めた。

 

激しい火花を散らし、矛と盾はぶつかり合う。だがしかし、矛盾とはいずれ崩れ去る物。バリアに徐々に罅が入り、遂に1つが砕け散った。

 

 

「馬鹿な!?」

「はあああぁぁッ!!」

 

 

全身全霊で力を込め、剣はさらに勢いを増す。そして2枚目も砕け散り、ついに最後の1枚とぶつかり合う。2枚も障壁を破っておきながら拮抗する翼を見て、フィーネは忌々しさを隠そうともせずに口を開く。

 

 

「玩具如きが私と同等の出力だと……!?」

「私は私に誓った。もうこれ以上、失うことはしないと!」

 

 

鎧から新たに剣を2本取り出し、両手に持って翼は切りかかる。新たに加えられた衝撃で最後の障壁にひびが入り、徐々に広がっていく。それを見たフィーネは後方へ跳躍し、その直後に障壁が割れた。

 

地面にぶつかった障壁で周囲を土煙が多い、フィーネの視界はさえぎられる。煙を払おうと鞭を振りかぶるが、その直後に正面から殺気を感じてその方向へ鞭を伸ばす。その方向からは翼が走っており、迫りくる鞭を剣でいなして彼女の目の前まで接近することに成功した。

 

 

「しまっ……!」

「遅い!」

 

 

フィーネが鞭を手元に戻すよりも早く、翼は二刀を水平に構えて全力で振るう。それは腹部に直撃し、勢いを抑えきれずにフィーネは吹き飛び、カ・ディンギルにめり込むことでようやく止まった。

 

 

「カ・ディンギルごと叩き切る!」

「この……ッ!」

 

 

ーー蒼ノ一閃ーー

 

 

翼は巨大化したまま突き刺さっていた剣を引き抜き、大きく振り抜いて剣戟を放つ。フィーネは回避こそ間に合うものの、回避すればこの剣戟はカ・ディンギルに直撃する。彼女にとって、防御以外の選択肢は存在しなかった。

 

再び激しくぶつかり合うが、今度は拮抗する。フィーネは3重に展開していた障壁を1つに集中させたことで密度を上げ、質を上げたのだ。

 

だがその様子を見て、翼が何の行動も起こさないわけがない。拮抗している様子を見て、剣を再び振りかぶった。

 

 

 

 

 

「一太刀で切れないというのなら、刃を重ねるまで―――――ッ、なんだ!?」

 

 

2発目の剣戟を放とうとした瞬間、翼の背後で激しい光が迸る。その方向が響と奏がいる場所と気づき、翼は思わず意識をそちらに向けてしまう。

 

そしてその隙をフィーネが逃すはずもなく、素早くカ・ディンギルから飛び出して翼に迫った。

 

 

「詰めが甘い!」

「ッ、しま……ぐああぁッ!」

 

 

両腕を振りかぶり、意趣返しとばかりに鞭で薙ぎ払う。目をそらしていたわけではないので、翼はギリギリ防御が間に合う。しかし踏ん張りがきかずに吹き飛ばされ、何とか空中で体勢を立て直して着地。剣を地面に突き刺すことで減速していき、ようやく止まったころには距離をかなりあけられてしまった。

 

 

「奏、一体何……が……?」

 

 

だがちょうど光の発生地まで飛ばされたようで、翼は二人の様子を確認しようとその場所を見る。しかしその言葉は続くことはなく、その方向を見ていた瞳は大きく見開かれた。

 

 

 

 

 

「――――奏、さん」

 

 

光が収まった場所、先に声を発したのは響だった。その瞳には理性が宿っており、彼女を覆っていた暗闇は鳴りを潜めている。二人は膝立ちの状態で抱き合っており、奏に対して声をかけていた。

 

しかし奏の反応はなく、身動きもまるで感じ取れない。それを見た翼は嫌な予感がして、急いで二人の元へ駆け寄った。

 

 

「奏さん、奏さん…………」

「嘘、だよね……?」

 

 

うわ言の様に何度も名前を連呼する響を見て、嫌な予感は増す。そしてそれを振り払うように奏の肩に手をかけて軽く引っ張った。

 

 

 

 

 

そして、奏は抵抗することなく仰向けに倒れた。それと同時に変身が解除され、普段着に戻る。

 

 

――それはまるで、あの日のようで。

 

 

「ッ!!」

「敵に背後を見せるとはな」

 

 

あの日のトラウマが呼び起こされ、翼は思わず硬直してしまう。そしてそれを近づいていたフィーネが見逃すはずもなく、鞭を振るって彼女に剣にまとわせる。そして彼女が反応するよりも早く振り上げ、遠くへ弾き飛ばしてしまった。

 

 

「……ガングニールを身に纏うことで、負担を肩代わりしたか。この様子、デュランダルの時も同様の方法をしていたな?」

 

 

倒れている奏を見て、響が元に戻っている原因を推測するフィーネ。だがそれは詮無きことと切り捨て、翼の方へと視線を向ける。

 

 

「愚かだな。仲間になど気を向けなければ、一太刀は浴びせれていたやもしれなかったものを」

「……私は人間だ、剣ではない」

 

 

フィーネの嘲るような言葉を聞き、翼は静かに答える。そして立ち上がり、収納していた剣を取り出して構えた。チラリと響の様子をうかがうが、彼女は今までの様子を覚えているようで震えて泣いている。戦う力はまだ残っているが、もはや戦闘不能だろう。

 

戦闘が始まった時、翼たちは4人でフィーネと対峙した。しかし現在、彼女と戦えるのは翼一人になってしまっていた。

 

 

「だとしても!」

 

 

そう自身に言い聞かせ、翼は走り出す。フィーネは翼だけに狙いを絞って鞭を連続して振るうが、彼女は一方を回避、一方を受け流すことで突破する。そしてフィーネに近づいたところで跳躍し、その手に持つ武器を全力で振りかぶった。

 

 

「ッ、それは!」

「力を貸してくれ、奏!!」

 

 

そう言いながらその手に持つ武器――ガングニールを投擲する。勢いよく放たれた槍は小型化しているものの鋭く、フィーネの心臓部へまっすぐ進んでいく。

 

その速度故に回避することはできず、攻撃したが故に鞭による防御も間に合わない。

 

 

「ガハッ!」

「両翼揃った、ツヴァイウィングなら!」

 

 

ーー炎鳥極翔斬ーー

 

 

フィーネにガングニールが突き刺さり、大きくのけぞる。そして翼は彼女の上空を通り過ぎ、両手に持つ剣から炎を噴き出させる。それを推進材として、カ・ディンギルに向かって飛翔した。

 

 

「狙いは初めからカ・ディンギルか!」

 

 

ガングニールを引き抜き、捨てながらフィーネは叫ぶ。そして逃すまいと両腕を振るい、鞭を翼に向かって放った。

 

 

「どこまでも、飛んでいける!」

 

 

飛翔する翼を追いかける、2つの鞭。その距離は徐々に狭まっていき、彼女がカ・ディンギルにたどり着くまでに追いつかれるかは五分五分だ。

 

 

 

 

 

「間に合え……!」

 

 

飛ぶ。鞭との距離が半分になる。カ・ディンギルまではまだ遠い。

 

 

「間に合え……!!」

 

 

飛ぶ。鞭がついに足元まで迫る。カ・ディンギルまでは後半分。

 

 

「間に合え……ッ!!」

 

 

飛ぶ。鞭の一撃をかろうじて避けるが、次は避けれそうにない。カ・ディンギルまではかなり近い。

 

 

「間に合ええええええぇぇぇぇッ!!」

 

 

飛翔()ぶ。鞭は左右から挟み込むように迫りくる。そして遂にその背中に届き――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行け、アメノハバキリ」

 

 

 

 

 

瞬間、彼女の真横を何者かが通り過ぎる。その直後、背後から迫りくる気配が一気に薄くなっていった。

 

やつが何をしたのかはわからない。だが、確実にわかることは1つある。

 

これで、風鳴翼の飛翔を遮る存在はいなくなったということだ。

 

 

「おおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉッ!!」

 

 

噴出する炎は勢いを増し、翼と一体化する。蒼き不死鳥となって、彼女は遂にカ・ディンギルにその身を届かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どこまでも……どこまでも忌々しい!!」

 

 

苛立ちをぶつけるかのように、地面に拳を叩きつけるフィーネ。彼女の目の前にあったカ・ディンギルは、その機能を停止させていた。

 

発射直前まで蓄えられていたエネルギー、それすら利用して生まれた大爆発はカ・ディンギルを再起不能になるほどの損害を与えたのだ。

 

 

「月の破壊はバラルの呪詛を解くと同時に重力崩壊を引き起こす。惑星規模の天変地異に人類は恐怖し……そして聖遺物の力を振るう私の元に帰順するはずであった!」

 

 

忌々し気に全壊したカ・ディンギルを見上げながら、フィーネは呟く。そしてその根元にある土煙に向かって伸びている鞭を戻そうとするも、ピクリとも動かない。まるで何者かが、土煙の中で動きを阻害しているかのようだ。

 

 

「痛みだけが人の心を繋ぐ絆! たった一つの真実なのに! それを……それをお前は! お前達は!!」

 

 

土煙に向かって、フィーネは大声で叫び続ける。そしてそれに答えるかのように土煙が晴れていき、中にいる存在がゆっくりと鞭を手放した。

 

 

「貴様はなぜ邪魔をする、グラファイトッ!!」

 

 

 

 

 

「気に喰わん、それだけだ」

 

 

 

 

 

≪See you Next game……≫

 

 

 




※奏さんによる負担の肩代わり →バグスターになったからこそできる裏技。デュランダル移送作戦時にビッキーが暴走した時も、ガングニール同士を移動して対処した。

ここまで読んでくださりありがとうございます。
ウルト兎さん、通りすがりの錬金術師さん、シップスさん、sevenblazespowerさん。感想ありがとうございました!
いくらうさん、誤字報告感謝です。助かりました。

やっと主役出せた……。
さて、次で最終戦終結の予定なんですけど……1万字超えそうな予感しかしないんですよね()。

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