天災二人と馬鹿一人   作:ACS

130 / 130

 |・ω・)<チャオ

 前半主人公後半千冬です。

 


小学六年生 9

 

 

 千冬との立ち合い。今も昔も変わらずに勝てない勝負だけど、今は今まで以上に勝ちにこだわってる以上、次に繋がる試合にしようと思ったのは多分束との特訓のお陰なんだろう。

 

 千冬からの打ち込みを必死に受け流しながら徹底して攻めっ気を押し殺し、ひたすら相手の動きに合わせる事だけを考える。

 

 竹刀の動きを見てからだと確実に間に合わない。千冬の剣の疾さは間違いなく日本……いや世界一と言ってもいい、鞭の様に竹刀の先端が音速になるって程じゃないけど、少なくとも『目』で追っちゃダメだ。

 

 だから今日は千冬の動きだけを見る。腕や足、視線や表情、息づかいや足音、周りの事なんか全部一回どっかに投げて、()()()()()()()()()()()()()()()()()––––––その瞬間。千冬の表情と動きがまるで別人の様になり、俺は一方的に打ちのめされた。

 

 今までの千冬とは全く違う、かと言って最近の千冬の様な暴力的な荒い剣でもない。急所を徹底的に狙って、その為の搦手も合わせるような、例えるなら大袈裟だけど()()()()()()()みたいな感じ。

 

 

 完全に予想外だったからほぼ無防備で受けちゃったし、焦って防御しようとして型も何もあったもんじゃなくなって、それで余計に消耗したからか、俺は酸欠と疲労で立ち上がれず少しだけ横になってる。

 

 そんな俺を見て千冬はめちゃくちゃ落ち込んでるし、それに釣られて他の門下生も空気が落ち込んでる。

 

 

 ただでさえ今日は朝からどんよりした空模様だったのに、道場の中の空気が重苦しくなって正直気まずい。俺ってあんまこんな感じの空気感嫌いなんだよなぁ。

 

 そんで、横になったまま周りの人の顔を見ながらどうやってこの空気良くしようかなぁと考えてたら、千冬と目が合った。

 

 

 とりあえずフォローしとかなきゃなと思って、『気にすんなよ』的なジェスチャーをした瞬間––––––千冬は弾かれた様に走って道場を飛び出して行った。他の人が止めようとしてくれたけど捕まえられず、逃げ出す様に走り去った千冬を見て、俺は思わず体を起こす。

 

 

 俺の何が千冬をそうさせたのか正直分からない。もしかしたら束ならその理由に察しが付くのかも知れないけど、俺が見た限りだと…………いや、違うそうじゃない。誰だって人に言えない事、人に理解されない事が一つや二つなんてもんじゃないくらいある筈だ。それなら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()は間違ってる。

 

 特に最近のあいつは思い悩んでるし、今日も別人なんじゃないかってくらいには激しかったけど––––きっとそれも千冬の中にある物の一つなんだろう。誰だって良い所だけじゃない、悪い所だってあるもんだから、今回のそれは俺が知らない部分なだけだ。

 

 だったらその部分も知って、そんで後は……まぁなんとかなるだろ!! 追いかけてから考えりゃいい。

 

 そう考えて、俺は千冬を追いかけて道場を飛び出した。

 

 

 ▽

 

 

 ……………私が道場から飛び出して直ぐに空模様が崩れ、雨が降り始めた。

 

 がむしゃらに走って乱れた呼吸を整え、私は自分の行動を自嘲気味に笑う。

 

 

 「究極の人類が聞いて呆れるな…………」

 

 

 自分の出生を知ったのは……いや理解したのは最近だった。

 

 今までは自分の身体能力や家庭を全く疑問に思わなかったし、『訓練』での武器の扱い方や使()()()を徹底させられた事に興味などなかった。私は与えられた命令を完璧に遂行すれば『家族』と言う肩書きの男女が僅かばかりに私を褒めてくれる事だけを目的として生きて来た。それは今も変わらない、その筈なのに………彼が関わると私は私で無くなるような気分がする。

 

 それは決して嫌な感情ではない、彼が笑えば私も釣られて笑えるし、彼に褒められたり、必要とされたのなら私の内側が自分でも理解出来ないほどに満たされる。今の私が居るのは、束と出会ったばかりの()()()()()()()()()()()から成長したのは間違いなく彼の影響だと、そう断言できる。

 

 だかしかしそれは私の中の決定的な何かを変化させる。彼が束と話すのが嫌だ。彼が私から離れてしまうのが嫌だ。彼が私の物にならないのが嫌だ。様々な『嫌だ』が溢れてしまう。

 

 そしてこの思いが限界を迎えたのなら()()()()()()()()()()()()()()。『両親』を優先していたのに『彼』を優先するようになる、私はこの感情に抗う事など出来ない。

 

 

 –––––––私は彼を愛しているのだから。

 

 

 私を振り回している彼が好きだ。束を呆れさせる彼も、一夏と遊ぶ彼も、負けず嫌いな彼も、嫌いな所など何一つない。

 

 だけど、だからこそ怖い。私がこの感情に身を任せた時、『両親』は一夏をどうする? 彼が私を恐れる様になったら? 彼が、彼がもしも()()()()()()()()()()?

 

 

 私は束程頭の回転が優れている訳では無い。だがそれでも分かる。彼が私に勝てば、きっと致命的な解決になると。

 

 『織斑計画(プロジェクトモザイカ)』とやらも、私のこの不安定なココロも、間違い無く。

 

 

 「…………いや、それも良いかもしれないな」

 

 

 本降りになりだした雨に打たれながら、口を突いて出た言葉にいよいよ取り繕えなくなり始めたかと再度笑う。

 

 今日の彼は恐らく余計な思考を全て、いや私の剣を捌く為にそれだけを考えていたんだろう。私の打つ剣が、足捌きが、息づかいが、彼の手玉に取られる様な感覚は私に興奮と喜びを与えてくれた。

 

 

 –––––だがそれと同時に私を見る目が、私を知ろうとするその目が、どうしても研究者達とダブって見えてしまったのだ。

 

 酷い八つ当たりだと冷静になった頭で思う、だがあの瞬間私は考えてしまったのだ『この出会いすら計画の一環だったのか?』と。

 

 その思考に行き着いた瞬間、私の中の暖かい気持ちは全て殺意に裏返って、そしてあのザマだ。

 

 

 感情一つコントロール出来ないとは………………本当に、究極の人類が聞いて呆れるよ。





 今後暫くシリアス。

 ちーちゃんは主人公が時間掛けて丁寧に丁寧に脳を焼いて情緒ぶっ壊したので束さんよりゲロほど感情重いです。

原作時代に入ってからの視点についてのアンケート。

  • 主人公視点(一夏は幕間)
  • 影響された一夏視点(主人公の出番は減る)
  • ①を完結させた上で両方(章分け)
  • ①を完結させた上で両方(作品分け)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

俺の友達が美少女になったから凄くマズい。(作者:4kibou)(原作:インフィニット・ストラトス)

ISの世界に転生した主人公。織斑一夏くんと仲良くしながらも、平和な生活を送っていたある日のこと。▼──織斑一夏(♂)が織斑一夏(♀)になった。▼これは波瀾待ったなしですね分かります。一体どこのうさみみをつけたおっぱいの大きい誰がやったのかは知らないが、凄く面倒くさそうです。▼取り敢えずヒロインとよろしくやってr……ん?▼まさかこれ原作介入フラグか。 


総合評価:23077/評価:8.82/完結:95話/更新日時:2020年04月13日(月) 02:08 小説情報

和風ファンタジーな鬱エロゲーの名無し戦闘員に転生したんだが周囲の女がヤベー奴ばかりで嫌な予感しかしない件(作者:鉄鋼怪人)(オリジナルファンタジー/ホラー)

どうやら和風ファンタジーゲームの名無しモブに転生したらしい▼……尚、ゲームのジャンルはエログロ上等な鬱ゲーである▼・追記▼ファンアートへのリンク等がある話には●を付けました▼ ▼ またPIXIVに本作品の記事を作成頂けましたのでご紹介致します▼https://dic.pixiv.net/a/%E9%97%87%E5%A4%9C%E3%81%AE%E8%9B%…


総合評価:91689/評価:9.33/連載:254話/更新日時:2026年05月17日(日) 07:00 小説情報

天災兎の愛は重い(作者:ふろうもの)(原作:インフィニット・ストラトス)

篠ノ之束は愛を知る。▼しかし、どうやら世間一般ではその愛は重いようで…?


総合評価:14479/評価:8.62/短編:13話/更新日時:2024年08月15日(木) 07:00 小説情報

うちの脳内コンピューターが俺を勝たせようとしてくる(作者:インスタント脳味噌汁大好き)(原作:りゅうおうのおしごと!)

転生したら頭の中の居候が色々と助言してくるので大丈夫かと思いながら将棋を指し続ける人のお話


総合評価:95814/評価:9.17/完結:168話/更新日時:2020年08月19日(水) 18:00 小説情報

進撃の迷宮譚(作者:でけぇ害虫)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

「進撃の巨人」になった転生者をオラリオにぶち込んで好き勝手させるお話です。過度な期待はしないで下さい。


総合評価:10357/評価:8.72/連載:19話/更新日時:2023年12月27日(水) 19:45 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>