天災二人と馬鹿一人   作:ACS

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 |・ω・)<チャオ

 前半主人公後半千冬です。

 


小学六年生 9

 

 

 千冬との立ち合い。今も昔も変わらずに勝てない勝負だけど、今は今まで以上に勝ちにこだわってる以上、次に繋がる試合にしようと思ったのは多分束との特訓のお陰なんだろう。

 

 千冬からの打ち込みを必死に受け流しながら徹底して攻めっ気を押し殺し、ひたすら相手の動きに合わせる事だけを考える。

 

 竹刀の動きを見てからだと確実に間に合わない。千冬の剣の疾さは間違いなく日本……いや世界一と言ってもいい、鞭の様に竹刀の先端が音速になるって程じゃないけど、少なくとも『目』で追っちゃダメだ。

 

 だから今日は千冬の動きだけを見る。腕や足、視線や表情、息づかいや足音、周りの事なんか全部一回どっかに投げて、()()()()()()()()()()()()()()()()()––––––その瞬間。千冬の表情と動きがまるで別人の様になり、俺は一方的に打ちのめされた。

 

 今までの千冬とは全く違う、かと言って最近の千冬の様な暴力的な荒い剣でもない。急所を徹底的に狙って、その為の搦手も合わせるような、例えるなら大袈裟だけど()()()()()()()みたいな感じ。

 

 

 完全に予想外だったからほぼ無防備で受けちゃったし、焦って防御しようとして型も何もあったもんじゃなくなって、それで余計に消耗したからか、俺は酸欠と疲労で立ち上がれず少しだけ横になってる。

 

 そんな俺を見て千冬はめちゃくちゃ落ち込んでるし、それに釣られて他の門下生も空気が落ち込んでる。

 

 

 ただでさえ今日は朝からどんよりした空模様だったのに、道場の中の空気が重苦しくなって正直気まずい。俺ってあんまこんな感じの空気感嫌いなんだよなぁ。

 

 そんで、横になったまま周りの人の顔を見ながらどうやってこの空気良くしようかなぁと考えてたら、千冬と目が合った。

 

 

 とりあえずフォローしとかなきゃなと思って、『気にすんなよ』的なジェスチャーをした瞬間––––––千冬は弾かれた様に走って道場を飛び出して行った。他の人が止めようとしてくれたけど捕まえられず、逃げ出す様に走り去った千冬を見て、俺は思わず体を起こす。

 

 

 俺の何が千冬をそうさせたのか正直分からない。もしかしたら束ならその理由に察しが付くのかも知れないけど、俺が見た限りだと…………いや、違うそうじゃない。誰だって人に言えない事、人に理解されない事が一つや二つなんてもんじゃないくらいある筈だ。それなら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()は間違ってる。

 

 特に最近のあいつは思い悩んでるし、今日も別人なんじゃないかってくらいには激しかったけど––––きっとそれも千冬の中にある物の一つなんだろう。誰だって良い所だけじゃない、悪い所だってあるもんだから、今回のそれは俺が知らない部分なだけだ。

 

 だったらその部分も知って、そんで後は……まぁなんとかなるだろ!! 追いかけてから考えりゃいい。

 

 そう考えて、俺は千冬を追いかけて道場を飛び出した。

 

 

 ▽

 

 

 ……………私が道場から飛び出して直ぐに空模様が崩れ、雨が降り始めた。

 

 がむしゃらに走って乱れた呼吸を整え、私は自分の行動を自嘲気味に笑う。

 

 

 「究極の人類が聞いて呆れるな…………」

 

 

 自分の出生を知ったのは……いや理解したのは最近だった。

 

 今までは自分の身体能力や家庭を全く疑問に思わなかったし、『訓練』での武器の扱い方や使()()()を徹底させられた事に興味などなかった。私は与えられた命令を完璧に遂行すれば『家族』と言う肩書きの男女が僅かばかりに私を褒めてくれる事だけを目的として生きて来た。それは今も変わらない、その筈なのに………彼が関わると私は私で無くなるような気分がする。

 

 それは決して嫌な感情ではない、彼が笑えば私も釣られて笑えるし、彼に褒められたり、必要とされたのなら私の内側が自分でも理解出来ないほどに満たされる。今の私が居るのは、束と出会ったばかりの()()()()()()()()()()()から成長したのは間違いなく彼の影響だと、そう断言できる。

 

 だかしかしそれは私の中の決定的な何かを変化させる。彼が束と話すのが嫌だ。彼が私から離れてしまうのが嫌だ。彼が私の物にならないのが嫌だ。様々な『嫌だ』が溢れてしまう。

 

 そしてこの思いが限界を迎えたのなら()()()()()()()()()()()()()()。『両親』を優先していたのに『彼』を優先するようになる、私はこの感情に抗う事など出来ない。

 

 

 –––––––私は彼を愛しているのだから。

 

 

 私を振り回している彼が好きだ。束を呆れさせる彼も、一夏と遊ぶ彼も、負けず嫌いな彼も、嫌いな所など何一つない。

 

 だけど、だからこそ怖い。私がこの感情に身を任せた時、『両親』は一夏をどうする? 彼が私を恐れる様になったら? 彼が、彼がもしも()()()()()()()()()()?

 

 

 私は束程頭の回転が優れている訳では無い。だがそれでも分かる。彼が私に勝てば、きっと致命的な解決になると。

 

 『織斑計画(プロジェクトモザイカ)』とやらも、私のこの不安定なココロも、間違い無く。

 

 

 「…………いや、それも良いかもしれないな」

 

 

 本降りになりだした雨に打たれながら、口を突いて出た言葉にいよいよ取り繕えなくなり始めたかと再度笑う。

 

 今日の彼は恐らく余計な思考を全て、いや私の剣を捌く為にそれだけを考えていたんだろう。私の打つ剣が、足捌きが、息づかいが、彼の手玉に取られる様な感覚は私に興奮と喜びを与えてくれた。

 

 

 –––––だがそれと同時に私を見る目が、私を知ろうとするその目が、どうしても研究者達とダブって見えてしまったのだ。

 

 酷い八つ当たりだと冷静になった頭で思う、だがあの瞬間私は考えてしまったのだ『この出会いすら計画の一環だったのか?』と。

 

 その思考に行き着いた瞬間、私の中の暖かい気持ちは全て殺意に裏返って、そしてあのザマだ。

 

 

 感情一つコントロール出来ないとは………………本当に、究極の人類が聞いて呆れるよ。





 今後暫くシリアス。

 ちーちゃんは主人公が時間掛けて丁寧に丁寧に脳を焼いて情緒ぶっ壊したので束さんよりゲロほど感情重いです。

原作時代に入ってからの視点についてのアンケート。

  • 主人公視点(一夏は幕間)
  • 影響された一夏視点(主人公の出番は減る)
  • ①を完結させた上で両方(章分け)
  • ①を完結させた上で両方(作品分け)
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