「ファラオの神威を見るがいい。フフッ、フフフハハハハハハ!」

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疲れからか黒塗りの削除ボタンに追突してしまったので再投稿。すいません!許してください加筆しますから!(文字数が増えたとは言ってない)


全能の神よ、我が業を見よ!

 ―――その日、世界は震撼した。

 

 

 発端は二週間前。エジプトの砂漠に光り輝く巨大な複合神殿が顕れると共に、神王(ファラオ)の擁立が全世界に向けて宣言されたことにある。

 

 エジプトという国は大統領制を導入して久しい。プトレマイオス朝のクレオパトラを最後に途絶えたファラオが、今になって再誕するという事態にあらゆる国が困惑した。

 まして、その人物が過去に実在したファラオの名を名乗っているとあっては、その真意を問わずにはいられないのも道理というものだろう。

 

 そうして各国から寄せられた説明要求に対する旧エジプト政府の回答は、

 

 

 ―――あの御方こそが偉大なるファラオである。

 

 

 ただその一辺倒。当然納得などいく筈もなく今度は大使館に連絡を取るも、やはり要領を得ない答えが返されるばかり。

 宣言より三日後、遂に業を煮やしたとある国の外務大臣が、数名の部下を連れてエジプトへと飛んだ。

 

 

「あ、ああ……あぁ………」

 

 

 そして、その神殿を一目見た瞬間に理解してしまった。

 

 ―――勝てるわけがない。

 

 突如出現したという、全長数キロにも及ぶ巨大複合神殿の話は彼も聞き及んでいた。そんなことが可能なのは伐刀者を措いて他にないし、その中でも一握りの逸材であることは明白だった。

 それでも、こんなものは予想外だ。何せ、神殿の周囲には一体一体が(・・・・・)Aランク(・・・・)伐刀者に(・・・・)匹敵する(・・・・)魔力を秘めた神獣が数十も(・・・)鎮座しているのだ。無論、神殿そのものから放たれる魔力は更にその上をいく。

 

 立場上その方面への知識が豊富で、自身もCランクの伐刀者である彼はその異常性を正しく認識した。

 

「駄目だ……これは、これは駄目だ」

 

 KOKリーグと呼ばれる、世界中の伐刀者達が覇を競い合う大会がある。そこの序列三位に属する《夜叉姫》ならば、或いはこれに匹敵する大質量を操ることも可能かもしれないが、それもあくまで重力操作による間接的なものだ。

 直接的にそれを生み出した挙句、三日もの間維持できるほどの魔力の持ち主など、『あの領域』に至った者の中ですら見たことがない。あの神獣も伐刀絶技(ノウブルアーツ)の一部なのだとしたら、それはもう人間と呼べるかすら怪しくなってくる。

 

「伝えねば……」

 

 絶対に敵対してはならない。逆らったが最後、己どころか一族郎党、或いは国の一つや二つ程度は軽く滅ぼしてみせるだけの力がある。

 そう悟った彼の行動は早かった。礼節を損なわないように最低限の行事のみをこなし、半ば逃げるようにその情報を自国へと持ち帰った。

 

 当然ながら、情報を受け取った本国及びそこから又聞きした諸国は騒然となった。

 友好関係を築くことを主張する者。あまりに危険として、一刻も早く排除すべきと声を上げる者。まずは本人に会ってみなければ判断できないと慎重論を唱える者。秘密裏に繋がりを得ようと画策する者。

 《国際騎士連盟》、《大国同盟(ユニオン)》、《解放軍(リベリオン)》の三大勢力にとっても、その波は無視できないものとなっていった。

 

 ともすれば第二の《比翼》となり得る存在の唐突な出現。強すぎて(・・・・)捕らえられない(・・・・・・・)などという馬鹿げた領域に踏み込んだ、新たな超越者の台頭の可能性に議論は熾烈を極めた。

 そんな奴が二人もいてたまるか、と吐き捨てる者がいた。だが無視はできない、と呼びかける者がいた。それはそれで面白い、と嗤う者がいた。取り込めば大きな戦力になる、と企む者がいた。

 

 

 ―――だから、あまりに時間をかけすぎてしまったのだろう。

 痺れを切らした各勢力の過激派が、わざわざ手を結んでまでエジプトへと攻め入ってしまったのだ。

 その数、実に七万。千人に一人と言われる伐刀者の総人口の一パーセントにも及ぶ大軍だった。

 

 

 

 そして。

 

 

 

 (イスラエル)側、西(リビア)側、(スーダン)側からそれぞれエジプトへと侵攻せんとした三大勢力軍は、ものの数分で壊滅した。

 

 

 東の《国際騎士連盟》は、獅子の体と人の貌を持つ神獣、《熱砂の獅身獣(アブホル・スフィンクス)》の軍勢に蹴散らされた。

 

 西の《大国同盟》は、複合神殿より放たれた太古の神々の神威さえ思わせる大灼熱の太陽光に焼き払われた。

 

 そして南の《解放軍》は、たった一人の男が操る飛行船に蹂躙された。

 

 

「ハハッ、来たか!ファラオに歯向かう愚か者めが!ならばよい、太陽の輝きをもってお前達を焼き尽くそう。今ここで!」

 

 

 《闇夜の太陽船(メセケテット)》―――太陽と見紛うほどの輝きと灼熱を発するその船の甲板から、絶対なる君臨者の宣言が木霊する。

 それだけで《解放軍》の精鋭達は悟らざるを得なかった。自分達の命運が、とうに尽きているのだということを。

 

「何だ……」

 

 収束していく日輪の極光を前に、誰かが呆然と呟いた。

 

「何なんだ、あの男はァァァァァ⁉︎」

 

 次の瞬間、一切の音が消えた。

 

 

「ふん、この程度か。だがよかろう、絶望による死を許す!地上にあってファラオに不可能はなく、万物万象は我が手中にあると知れ!」

 

 

 最後までその声を聞き届けた者は、誰一人として存在しない。

 

 

 

 

 

 この一件をもって、三大勢力はエジプトへの不干渉を決定。それはたった一人で七万の伐刀者を圧倒した超越者、《太陽王》オジマンディアスの名が世界中に知れ渡った瞬間でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――というのが、第四の巨大勢力《神王領域》誕生の経緯だけど。ステラもこれは知ってるよね?」

 

「ええ、もちろん。アタシだって皇族だもの」

 

 破軍学園。日本に七校しかない伐刀者の育成機関であるこの学園では、《連盟》より認可を受けた魔導騎士となるべく生徒達が日々腕を磨いている。

 そこの一年生である黒鉄一輝は、ルームメイトであり恋人のステラ・ヴァーミリオンに《神王領域》の成り立ちを語っていた。

 ステラは訝しむ。何故彼は、帰ってくるなりそのようなことを唐突に語り出したのか?

 

「ああ、ごめんごめん。いきなりだったよね」

 

「それはいいけど、何かあったの?なんだか落ち着きがないっていうか、ソワソワしてるように見えるけど」

 

「うん、それなんだけど―――」

 

 ステラが指摘する。今の一輝には、浮かれているとも戸惑っているともつかない微妙な雰囲気があった。

 自覚はあったのか、苦笑を浮かべながら一輝は理由を明かす。

 

「―――その《太陽王》オジマンディアスが来日するらしいんだ」

 

「……は、えぇぇッ⁉︎」

 

 基本的に、《太陽王》は自身の複合神殿から出てこない。別に引きこもりというわけではなく、神殿内部だけでおおよその仕事をこなせるからだ。

 外交においても一国で四大勢力の一角を担っているのは伊達ではなく、自身が出向くよりも相手から訪れることの方が圧倒的に多い。

 

「そんな《太陽王》が日本に……?一体何のために?」

 

 ヴァーミリオン皇国の第二皇女であるステラは、当然ながら一通りの世界情勢を学んでいる。そんな彼女の知る限り、今回の訪問は前代未聞とまでは言わずとも、かなり前例の少ないことだ。

 

「そこまではわからない。僕もさっき神宮寺理事長から聞いただけだからね。ただ……」

 

「ただ?」

 

 既に存分に驚いたというのに、まだ何かあるのかとステラは身構える。

 

「《太陽王》は、この破軍学園を視察に訪れるそうだよ」

 

「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇ⁉︎」

 

 学生寮に、再び甲高い絶叫が響き渡った。


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