でも何かこいつ邪悪な感じがするな……。
《フッハッハッハッ!!》
反省している。
ある日、日本が射程距離内にある全ての軍事施設がハッキングされ、日本に向けて多数のミサイルが放たれた。その数、実に二三四一発。
当然、国は迎撃体勢に移るも、そんな膨大な数を想定しているはずがない。全てを迎撃するなんてどだい無理な話だ。
次々と押し寄せるミサイル群。その事実を掴んだ関係各所に諦めと絶望が支配する中、それは現れた。
――――人間大の何かが飛んでいる。
確認した人間の正気を疑うような言葉だった。まるでお伽噺のようなあり得ない光景は、直後の行動によって上書きされる。更にあり得ないものへと。
それは音速に近い速度で空を飛び、何処から取り出したのかレーザーブレードでミサイルを次々に切り裂いていく。
白い騎士。正に一騎当千の活躍ぶりに誰かがぽつりとそう呟いた。
翼を持ち、そこから光を放って空を飛び、国を守るようにして光る両刃の剣を振るう姿を騎士以外の何と言えよう。
しかし、騎士一人では限界が来ようとしていた。
ところ代わって、とある研究室。
薄暗い部屋でモニターに映る騎士の姿を満足そうに見ている女性がいた。
「いやいやー、さすがちーちゃんだねー。ミサイル相手に剣だけで迎撃するとか、かっくいー!」
この女性の名前は篠ノ之束。モニターに映る白い騎士の開発者であり、この事件を起こした張本人である。
世界が机上の空論だと断じた自分の夢を知らしめるため。そのために誰もが凄いと圧倒されるようなシナリオを思い付いたのである。誰が傷付いても気にしない、悪魔のようなシナリオを。
そんな事情など露知らず、ただ大切なものを守るために騎士は剣を振るう。
家族のために、その友人のために、モニターを眺める親友のために、その家族のために。多くの人を守るために騎士は剣を振るう。
だが現実は非情だった。
「にしても、二三四一発は多すぎたかな? さすがに半分くらいしか迎撃出来ないだろうね」
幾ら高性能とはいえ、たった一機では限界がある。襲い掛かる無数のミサイルは騎士一人ではとてもじゃないが、手に負える代物ではない。
しかし、ここで予想外のことが起きた。
どう見ても騎士では届かない範囲外でもミサイルが迎撃されている。
これがほんの少しなら防衛設備かとも思うが、近いのから順々に全て迎撃されていく。その速度は束が開発した白騎士以上だ。
「一体誰が……?」
束は自分が天才だと知っている。こと専門分野においては他の追随を許さないほどであるとも。
そんな自分の世紀の発明に並ぶどころか、追い越しているのがいる。開発者もそうだが、今はその迎撃している何かを知る方が優先していた。
「何、あれ……?」
気になり、無人偵察機を向かわせるとそこには海面を滑るように移動している悪趣味なデザインとカラーの変人がいた。
『おいおい、まじかよ』
海を高速で滑りながら、頭部の装置から伝わる情報に呆れたように一人ごちた。低い男性の声だった。
だが彼が呆れるのも無理もない、何処の世界にミサイル相手に剣だけで挑んでいくのがいるのかと。
それに引き換え、恐らくは彼は向こうよりも遥かに安全なのを身に纏っているにも関わらず、手にした銃で迎撃。カッコ良さでは歴然だった。
『ま、男は結果で魅せるってな』
そう言うと再び手にした銃で遥か上空のミサイルを迎撃。距離が開けば、片手剣と銃を合体させライフルで遠距離も撃ち抜いていく。空に幾つもの花火が咲いた。
『ていうかこれ一張羅なんだが、海水とか大丈夫なのか? 錆びたりしないだろうな?』
余裕が出てきたのか、こんな状況にも関わらず自身が纏うスーツのことを気にし出す。
勿論、彼も着用しているスーツがどんなものかは知っている。だが、あまりこれを使う機会なんてなかったのだ。
これまでで片手で間に合うほどしか使用せず、こんな実戦ともなれば初めてだ。
そう考えるとミサイルではなく海水を気にする辺り、この余裕も充分立派なものだと言える。スーツからすれば余計な心配でしかないが。
『ハッハー! ビンゴだ!』
また遠くのミサイルを撃ち抜き、誰もいない海で声高らかに叫ぶ。残りの数も少なくなってきたところで、立ち止まり振り返った。
頭部の装置が彼に教えてくれるのだ。近くに白い騎士がいると。
『騎士様のお出ましか』
担当していた区域のミサイルを全て切り伏せて、白い騎士は空に君臨していた。
彼のスーツの方が優れているが、そこは到着した時間と操縦者が優れていたため、撃墜するのが早かったのだ。
「まずは協力してくれたこと、感謝する」
『台詞まで騎士らしいとは惚れ惚れするねぇ』
手を拡げておどけた態度を取る悪趣味なそいつに、白い騎士である織斑千冬が少なからず腹が立ったのは仕方ないだろう。
だがここで怒っても仕方ない。一人では無理だったのも知っているし、手伝ってくれて感謝しているのも事実だからだ。
「お前は何者だ?」
『俺か? 俺は――――』
しかし、目の前の奇抜なスーツを着たのが何者か気にならないと言えば嘘になる。
問われた彼は少しだけ勿体振るように、手にしていたライフルを肩に担いでからこう答えた。
『仮面ライダー……エボル』
「仮面ライダー、エボル……?」
『まぁしがない正義の味方さ』
《Cobra》
仮面ライダーエボルと名乗った彼は持っていたライフルに見慣れない何かを装填。機械音声が鳴り響いた。
千冬も胡散臭いことこの上ないエボルの行動に最大級の警戒を示す。
「何をする気だ……!」
『悪いが、こっちはお仕事が残ってるもんでな。そのお片付け、だ!』
《Steam shot! Cobra……》
「なっ……!」
上空へ向けて放たれたエネルギーは蛇のように曲がりくねり、その先にいた残ったミサイル全てを食い荒らした。
ハイパーセンサーが計測した馬鹿げたエネルギー量に唖然とするのもつかの間、
『いっちょ上がりだ。あとは任せた』
「任せた? おい、何をだ!?」
『これからここに各国の軍隊が来る。目的はお前さんだ』
そう、束の計画は概ね成功した。世界に自分の発明がどれだけのものかを証明出来たのだ。立派な兵器として。
戦闘機よりも高い機動性と運動性、武器を何処からか取り出せる機能、剣に使われていたレーザーの技術。これだけの宝の山を放っておくなという方が無理だ。
『向かってきたやつらをどうするかは自由だ。でもお前さんの正体を知ったとき、悲しむのは誰かな?』
「こいつ……!」
まるで自分の唯一の家族を知っているかのような言動に歯噛みする。そんなのは言われるまでもない。向かってくる軍隊をどうするかなんて最初から決まっていた。
『それじゃ遠くから健闘を祈ってる。チャオ』
「ま、待て!」
背を向けて手を振ったかと思えば、何処かへ消えていった。その場に赤い粒子を残して。
その後、苛立ちをぶつけるかのように軍隊を相手にした白騎士は奇跡的に死者を一人も出すことはなく、遅れて何処かへと消えた。
後に白騎士事件と世間で呼ばれる一方で、エボルと呼ぶ仮面ライダーが活躍していたのは極少数しか知らない。
何か微妙やこれ……。
エボルか、ガイアメモリ使ったオリジナルライダー(嘘)を考えていてこっちにしました。