やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。 作:ローファイト
何とか続きが書けました。
一部の神界の神様が暴走し、下界に降り人間の嫁取りを強行しようとしていることが発覚。
金太郎、桃太郎、浦島太郎の俗に言う三太郎が神界で配信している神チューブなる番組で、嫁候補ランキングに陽乃さんがランクインしていたため、嫁候補として大々的に狙われることに。
俺はオカルトGメンの美知恵さんからの指示で陽乃さんのガードと補佐を行うため、合流しようとしたが連絡がつかず、陽乃さんの所在を知っているだろう雪ノ下にスマホで聞こうとしたが、唐巣神父の教会へ向かう途中でシロの散歩という名の暴走のせいで気を失い、教会で寝込んでしまっていた。
俺はとりあえず唐巣神父の教会に行き、雪ノ下の意識が戻るのを待つことにしたのだが、
唐巣神父の教会に到着してみると、何故か嫁候補ランクにも載っていない一般人の川崎がどこかの神様に告白を受けていた。
どうやら、ランキング関係なしに、神界基準で嫁適正が高い人間が狙われてるようなのだ。
だが、川崎は相手が神様だと気が付かずに説教をくらわして、言葉だけで撃退してしまったのだ。
とまあ、そこまではよかったんだが……。
いや、よくはないか。
雪ノ下の意識が戻って、陽乃さんの所在を聞いたのとほぼ同時に、雪ノ下の実家から雪ノ下へ、陽乃さんが何者かに誘拐されたと連絡があったのだ。
誘拐犯は三太郎共か、それとも他の下級神か神の御使いが、嫁取りを断られて強引に連れ去ったのか?
流石に神様だから強引な手段はとらないだろうとは思いたいが、神様には人間の常識が当てはまらない。
それは美神さんにも横島師匠にも重々言われていたし、ハワイのあの大規模霊災の時の女神様や夫神様のはた迷惑な行動を目の当たりにしたしな。
神様による誘拐は十分にあり得るのだ。
俗に言う神隠しの部類だ。
「雪ノ下さんはどんな奴に誘拐されたんだ?」
俺は神様に誘拐されたと想定しつつも雪ノ下に質問する。
「ええ、暴走族のようだったと、雪ノ下家の直属の警備員が追いかけたのだけど、直ぐに見失ったと言っているわ」
雪ノ下は考え事をする仕草を見せながら、冷静にそう応える。
「はぁ?暴走族?」
俺はそれを聞いて、少々肩透かしを食らった。
神様連中じゃないのか?
それに今時暴走族って、おい。
まあ、千葉にはまだ結構生息しているが、なんでまた暴走族が陽乃さんを?
陽乃さん、どこかで暴走族とトラブって、その御礼参りに攫われたのか?
いや、あの陽乃さんが暴走族ごときに、攫われるか?
暴走族が100人束になったとしても、陽乃さんにかなうわけがない。
どういうことだ?
「少々妙ね。姉さんが暴走族と関りがあるとも思えないのもそうなのだけど、あの姉さんが暴走族などに簡単に攫われるとは思えないわ」
雪ノ下は姉が攫われたというのに随分と冷静だが、雪ノ下も陽乃さんが暴走族ごときに攫われたことに疑問を持っているようだ。
「もしかするとワザと攫われたのかもしれないな」
あの陽乃さんの事だ。
何か考えがあってワザと捕まったのかもしれない。
「あり得るわね。姉さんの事だから、攫われたふりをして本拠地に集まった暴走族を根こそぎ殲滅というのは考えられるわね」
「殲滅っておい、……あー、ありえそうだな」
殲滅ってさすがに過激だろ?とは思ったが、陽乃さんならワザと攫われてからの暴走族の根絶やしなんてことを普通にやりかねない。
そんな時だ。
ブルン、ブルン、パラリラパラリラ~
ブンブン、ブブブン、ブンブン
バイクの爆音が遠方で響くのが聞こえ、徐々に音が増しこっちに近づいて来る。
そして、教会の前まで来たようだ。
「比企谷八幡という輩はここに居るか!!居るなら出てこい!!」
バイクの爆音以上に大きな野太い声が響いてくる。
なんだ?どういうことだ。何故ここに暴走族が?
しかも俺を名指しで呼んでるんだが。
暴走族の知り合いなんていないし、関わった事もないんだが……。
まあ、普通に考えればこのタイミング、陽乃さんが暴走族に攫われた事と関連性があると見た方がいいだろう。
「暴走族が比企谷君を名指しで、このタイミングということは姉さんと関りがありそうね」
雪ノ下もどうやら俺と同じことを考えのようだ。
「ああ」
俺は頷いて同意はしたが、外に居る連中は只の暴走族じゃない。
霊視するまでもなく、気配で分かる。
「こんなところで近所迷惑も甚だしいね。比企谷、私が追っ払ってやろうか?」
川崎は顔をしかめながら、俺にそう言って正面扉から出て行こうとする。
勇気があるというかなんていうか、女子高生なら普通はビビるだろうに、それを正面切って追い払うとか、相変わらず肝が据わっている。
もし、霊能に目覚める前の俺だったら、慌てふためいて、ちびってたまである。
「ちょっと待ってくれ川崎、雪ノ下と教会の中で待っててくれ」
出て行こうとする川崎の肩を掴み、歩みを止めさせてから、俺が正面扉へと向かう。
そう、俺を呼んでいた暴走族は人間じゃない、神様だ。
あの独特な気配、間違いない。
教会の正面扉を俺が開けようとする前に、バンという大きな音と共に、扉が外から勢いよく開く。
「隠れても無駄だ!比企谷八幡!!此処にいることは分かっている!!」
怒鳴り込んできたのは、2mを超えてそうな巨漢だ。
しかも、超長いリーゼントに厳ついサングラス、何故かチョビ髭、そして、着ている服装は赤いシャツの上に長ラン、下はボンタン、いわゆる不良必須アイテム、改造学ランだ。
だが、顔は見るからにおっさんだった。
いい年をしたおっさんが、昔は悪だったんだぜとか言って、ちょっと懐かしんで、着ちゃいました見たいな感じで、身内が見たら恥ずかしい奴だ。
それよりもだ。
このおっさん。
金太郎だ。
赤いシャツのど真ん中に金ぴかの金の文字でデカデカと描いてるし。
どんだけ、自分を主張したいんだよ。
この暴走族だか不良だか風のコスプレのガタイがいいおっさんが金太郎で間違いない。
こんなのが金太郎?
美神さんが言っていたけど、ほんとイメージが崩れるな。
神様ってみんなこんな感じなのか?
いやいやいや、小竜姫様は物凄く女神様だし、斉天大聖老師は孫悟空のイメージのまんまだし、こんな感じの痛い神様はごく一部だと思いたい。
それよりもだ。
陽乃さんを攫ったのは恐らく、この暴走族風コスプレおっさんの金太郎だろう。
嫁ランキング8位の陽乃さんは、金太郎たち三太郎共や下級神から嫁候補として狙われていた。
俺はそれを阻止するために動いていたんだが、完全に先を越された。
それにしても動きが速い。
俺達が小竜姫様から依頼を受けるよりも早い段階で、既に金太郎は陽乃さんに狙いを定めていた可能性が高いな。
だが何故、陽乃さんを手に入れただろう金太郎が、名指しで俺の所に乗り込んできたかということだ。
さっさと天界に連れ去る事をせずに、わざわざにだ。
きっと、陽乃さんの事だ。
何らかの策を弄して、金太郎を俺の所に行くように仕向けたのだろう。
あの人は大人しく捕まったままって玉じゃない。
正直、天界に連れ去られていたら、俺じゃ、手も足もでなかった。
陽乃さんが、挽回できるチャンスを作ってくれたということだ。
ここからは、俺の立ち回り次第ということか……。
俺は後ろを振り返り、雪ノ下と川崎に目配せと手振りで、ここは俺に任せて後ろに下がってもらおうと合図をする。
雪ノ下は俺の意図を察してくれて、今にも金太郎に迫って文句を言いそうな川崎を抑え、下がってくれた。
一呼吸して心の準備をし、再び目の前の金太郎に視線を戻したのだが……。
「比企谷八幡は何処だ!何処に居る!」
金太郎は俺の目の前で周りを見回しながら叫ぶ。
目の前に居るんですが?
確かに身長差はあるけど、流石にスルーは無いだろう?
まさか俺が見えてないとか?
ボッチ体質が復活して、ミスディレクションが再発動したとか?
いや、ただ単に俺の顔を知らないだけなのだろう…、と思いたい。
「ここに居るんですが……」
「ん?いつの間に目の前に!?お主……ん?んんんっ!?その目は!?一言主様!?なぜこのような場所へ!?はっははーーーっ、失礼いたしました。平にご容赦を」
金太郎は俺が目に前に急に現れたのように驚くいて、その場で膝を付いて、恭しく頭を下げだした。
またか……。
いや、予想はしていた。
神様や天界の関係者は俺の目を見て、何故か一言主様という神様と間違える。
というよりも、いつも思うんだが、あんたらの目は節穴だろ?
「はぁ、違いますが……、俺が比企谷八幡です。そう言うあなたは何処のどなたですか?」
俺はため息一つ吐いてから、ちゃんと名乗って、事情を知らない風を装い金太郎に名前を聞く。
「んんん!?一言主様ではない…?よく見れば人間ではないか!!神であるわしを謀るとはいい度胸だ!!がはっはーーーっ!!しかもわしの前にて、堂々と名乗るとは!!痛快じゃ!!がーーーはっはーーーっ!!」
金太郎はそう言って豪快に笑うが、騙してもないし、勝手に間違っただけだろ?
「はぁ」
まあ、鬼門達みたいに勘違いしたくせに俺を責めてくるようなことはないだけ、マシか。
「名乗り遅れたわい!!わしは坂田金時!!武の神の末席を預かりし、怪力無双の金太郎とはわしの事だ!!」
「その坂田金時さんが、俺に何の用ですか?」
俺は、今は努めて冷静に対応する。
陽乃さんを攫った暴走族というのが、この金太郎なのかを確認しなくっちゃならない。
もしかしたら、間違いだということもあるかもしれないし。
本当に金太郎が攫っていたら、居所や無事を確認しなければならないし、陽乃さんを返してもらわなければならない。
それに、どちらにしろ金太郎を説得か捕縛して、天界に送り返さないといけないしな。
「おうおう、それだそれだ!!比企谷八幡!!!わしと勝負せい!!!!」
「……嫌なんですけど」
俺はノーと言える日本人である。
但し、美神さん以外には……。
「なぜじゃ!!!」
何故って……。
普通、いきなり押しかけておいて、勝負しろとか訳がわからないだろ?
「いや、何故初対面の人と勝負をしないといけないんですか?俺には理由がない」
「お主に無くともわしにはある!!」
何その横暴な理論は?
やっぱり、残念神様なのだろうか?
「……はぁ、一応理由を聞いてもいいですか?」
まあ、この程度の横暴さなんて、どうってことない。
ジャイアンも裸足で逃げ出すような横暴が服を着たような人が上司というか雇い主だし。
そんな美神令子という歩く横暴に比べれば、全く問題なく冷静でいられる。
「わしの将来の嫁!!陽乃との婚約を解消してもらうぞ、比企谷八幡!!そのための勝負だ!!」
金太郎はそう言って暑苦しく迫って来る。
「……誰と誰の婚約ですか?」
俺の目が腐っていくのが分かる。
「下界に下りてわしの将来の嫁の陽乃を迎えに来てみれば!!婚約者がいると言うではないか!!それが比企谷八幡!!お主じゃ!!」
「………」
何故そんな事に?いつの間に陽乃さんと俺が婚約?
いや、これは金太郎を俺に仕向けるための陽乃さんのブラフだろう。
しかし、仕向けるにしても、もうちょっと穏便な方法は無かったのだろうか?
金太郎はめちゃくちゃやる気満々なんだが……。
「さあ、陽乃をかけて!わしと男の勝負じゃ!!」
「話は分かりましたが……陽乃さんを誘拐したのって、金太郎さんですか?」
「誘拐とは笑止千万!!嫁を迎えに来たまでじゃ!!」
「それじゃ、陽乃さんは今、どこに居ますか?」
「表の牛車(ぎっしゃ)で舎弟共がもてなしておるわ!!」
「……そうですか」
金太郎が言うように、俺は霊視で陽乃さんが教会の表に止まっている何かの乗り物の中に居るのを確認した。
怪我とかはなさそうだが、陽乃さんは鬼門並みの霊力を持った存在に囲まれている。
これじゃ、逃げるのも難しいか。
「さあ、勝負だ!!比企谷八幡!!」
「……勝負って何をするんですか?」
この状況、陽乃さんを人質に取られたようなものだ。
勝負を受けないわけにはいかない。
だが、この状況を利用しない手はない。
「ようやくその気になったか!!がははははっ!!男の勝負とは当然!!相撲じゃ!!」
金太郎が勝負だと言った時から予想はしていたが、やっぱり相撲か、金太郎と言えば相撲だからな。
神様と、しかも武闘派神様と相撲とか、今の俺じゃまともにやって敵うことはないだろう。
これがもし普通の一般人とだったのなら、なおさらだ。
これは、出来レースって奴じゃないのか?
金太郎が現世で、こんな勝負を人間にしょっちゅう吹っ掛けて、自分の要望を通していたとしたら、質が悪いにも程がある。
だが、こちとら横島流や美神流なんでね、相撲勝負なんて真面にやるつもりもなんて無い。
というか、勝負自体しなくてもいいまである。
金太郎の目的は、陽乃さんを賭けて、俺と勝負し勝つことだが、俺の目的は飽くまでも陽乃さんの奪還と、金太郎を天界に追い返すことだ。
既に陽乃さんの無事と居場所は把握済みだし、後は、金太郎をどうにかして天界に送り返せばいい話だ。
終着点は見えた。
後は、この相撲勝負を切り抜ければいい。
金太郎は、懐からしめ縄のようなものを取り出し、教会の真ん中に放り投げた。
金太郎が柏手を二回打つと、床に落ちたしめ縄が円状に広がり、床から土がせり出して、礼拝用のベンチを飲み込んで、あっという間に、相撲の土俵が出来上がった。
流石は神様と言ったところか、あのしめ縄は土俵を作る神具か何かなのだろう。
「………」
……というか、これ、後で元に戻るのだろうか?
このままだと、神父の教会が相撲部屋に……。
「さあ、勝負といこうではないか!!」
金太郎はいつの間にか、白いまわしに金と描かれた真っ赤な前掛け姿になっていた。
金太郎らしい姿ではあるが、一般的なイメージは大きな子供の姿だからな金太郎は、おっさんがやるとかなりシュールだ。
髪型はリーゼントのままだし。
いや、よく見たらあのリーゼント、ちょんまげだ!!
どうやったら、ちょんまげをあんな太くて長いリーゼントに出来るんだ!?
「ん?お主もさっさと服を脱いで!!まわし姿にならんかい!!」
「と言われましても……、まわしなんてもってませんよ」
服を脱げっていわれましても、俺もまわし姿にならなくちゃならないのか?
「日本男児たるものが、まわしも持ってないのか!?嘆かわしい!!」
「このままじゃ、ダメなんですか?」
世界中見回しても、まわしなんて、普段から持ってる奴なんていない。
力士だって、ずっと持ってるわけじゃないし、相撲するとき以外は持ってはいないだろ?
やはり、どこかずれてるな、この神様。
「ダメに決まっておろう!!かーーっ!!まわしを貸してやる!!」
金太郎は柏手一つ打つと、教会の扉の外から二足歩行のタヌキが現れて、俺にまわしを渡してくれる。
「……着替えるんで、ちょっと待ってください」
「おうおう!!手短にすませよ!!」
金太郎はそう言って、のしのしと、教会の外へ出て行く。
俺は後方に控えていた川崎と雪ノ下の方へ足早に向かうと、先に川崎が呆れたように俺に声をかける
「神様ってみんなあんな感じなのかい?」
「ああ……、例外じゃないか?」
例外だと思いたいが、横島師匠や美神さんの話だとアレより酷い感じなのが結構いるらしい。
「神父は出かけてるし、あんたんところのシロはまだ戻ってきて無いし……比企谷、神様と相撲やって勝てるのかい?」
「真面にやったら、勝負にならないだろうな……真面にやったらな」
「……あんた、悪い顔してるよ」
「そ、そうか」
次に雪ノ下が心配そうに俺に聞いて来る。
「比企谷君、金太郎と…神様と勝負なんて、大丈夫なの?それに姉さんは……」
「まあ、何とかなるんじゃないか、それと霊視で確認したが雪ノ下さん(陽乃)は無事そうだ。教会の外に止めてる牛車の中にいるらしい」
「そう……、ごめんなさい。姉さんのせいで巻き込んでしまって……」
雪ノ下は一瞬ホッとしたような表情をしたが、直ぐに申し訳なさそうな顔をする。
「いや、今回の事は、雪ノ下さんが悪いわけじゃないし、そもそも雪ノ下さんが神様連中に嫁取りのために狙われているのをガードするのが、俺の役割だってさっき言っただろう?それにもう、勝負はついているようなものだ」
そう、俺は既に勝ち筋が見えていた。
というか、金太郎がここに来て、俺に勝負を吹っかけて来た時点で、俺の依頼は半分達成されている。
「あなた、川崎さんではないけれど、悪い顔してるわよ。あまり美神さんに感化され過ぎるのも、どうかと思うわ」
雪ノ下は何時もの調子が戻ったのか、呆れたような表情をしていた。
「悪い顔?目つきが悪いのはディフォルトなんだが…それよりも、まわしの履き方しらないんだけど……」
いやいやいや、美神さんと同じとか絶対に無い。
悪魔が恐れおののくような顔だぞ。
すると、川崎がこんなことを言いだした。
「私が手伝ってあげるよ。下の弟が近所の相撲大会に出た時に教えてもらったんだ」
「いやいやいや、やり方さえ教えてもらえばいい」
「遠慮はいらないよ。一人じゃ無理だし」
「ちょ、ちょっ!」
「私も手伝うわ、川崎さん」
「ちょっと待てって!」」
俺は川崎と雪ノ下に引っ張られ、教会の応接室で着替えさせられる羽目に……。
なにこれ?なんの羞恥プレイ?
同級生女子二人に、着替えさせられるとか!?
恥ずかしすぎるだろ!!
金太郎め!!
次こそは、金太郎との相撲勝負……勝負?