何時もの時間に、霊夢は目覚めた。
体に染み付いた、巫女としての習慣。既に、料理を作り始めている音が聞こえる。
すると、僅かに遅れて妖夢も起きたらしい。
「おはよう、妖夢」
「おはよう……霊夢」
霊夢が挨拶すると、あくびしながら妖夢も挨拶した。
そんな妖夢の頭を撫でてから、霊夢は布団を畳み始め、妖夢も続いた。
そして、軽く身支度してからキッチンに向かい
『おはようございます』
と二人で声を掛けた。
「おう、おはようさん」
「おはよう、二人共」
そんな二人を、店長と明久が出迎えた。
「とりあえず、机の用意をしてきてくれるか?」
「はい、台拭き」
店長と明久に頼まれて、二人は朝食の準備をする事にした。フロアの適当な机を拭き始めて少しすると、早希とアレッタも現れた。
そして、机の準備が終わり、台拭きを一度洗って机の真ん中辺りに置いた時
「お待たせ」
「今日の賄いだ」
と店長達が、ゴンドラで料理を運んできた。
「今日は鮭のホイル焼きだ」
「レモンと醤油は好きに使ってね」
店長と明久が人数分を机に置き、それを順繰りに回していく。そして、ご飯とコンソメスープをよそい、人数分を用意した。
「いただきます」
『いただきます!』
そして、何時ものように朝食は始まった。
皿の上にあったアルミホイールを開くと、中から湯気が溢れ、たっぷり野菜と椎茸とシメジ。そして蒸し焼きにされた鮭が出てきた。
蒸し焼きにされたことで椎茸と鮭から出汁と脂が溢れ、野菜に満遍なく染み込んでいる。
「昨日、良い塩鮭が入ってね。丁寧に塩抜きしてたんだ」
店長は朗らかに説明する。懇意にしている魚屋が、仕入れ先で見つけたと譲ってくれた丸々一尾の塩鮭を、店長に譲ってくれたのだ。
とりあえずは塩抜きし、今朝食べやすいサイズに捌いた物を使ったのだ。
「あの魚屋さん、時々凄いのをくれますよね」
「先代からの馴染みだからな。新しい店長候補も、ウチの常連さんだしな。持ちつ持たれつだ」
早希の言葉に、店長は笑いながら答えた。
先代の店長、大樹は食材の入荷には拘っていて、初期は自身で様々な市場に赴いては仕入れていたが、途中から仕入れ先を自分で定め、そこと契約し、入荷するようになった。
特に大樹が拘ったのは、国産の食材だ。
外国産を信用してない訳ではないが、狂牛病事件の際に一時期牛肉が入手困難になった。その際、懇意にしていた肉屋が契約していた酪農家はいち早く立て直しを図り、困難から立ち直った。
野菜も複数の農家から直接入荷する八百屋、魚屋は直接漁港に行く魚屋を選んでいる。
そうやって、新鮮かつ安全性を確保した食材を入荷するように大樹は構築したのだ。
「この鮭、脂がくどくないですね」
「良い鮭を選定して、塩鮭にしたみたいだね」
妖夢の言葉に、明久も同意した。
職人が手作業で作る塩鮭。それを、店長は活かした。
「お野菜も美味しいです!」
「染み込みやすいように、細長く切ったからな」
アレッタの言葉に、店長が朗らかに教えた。
鮭と一緒に蒸し焼きにしたのは、玉ねぎ、モヤシ、キャベツ、パプリカ、シメジ、椎茸だ。
椎茸は笠部分を半分にし、玉ねぎ、キャベツ、パプリカ、シメジを細長く切って一緒に入れてアルミホイールで包み、フライパンで蒸した。
コンソメスープも丁寧に下ごしらえされ、丁寧にアクを取り除き続けて作られたから、器の底が透き通って見える程に綺麗だが、濃厚かつ複雑な味わいが口いっぱいに広がる。
「朝から贅沢ね……」
「本当だね」
霊夢の言葉に、妖夢は同意した。
幻想郷では、一部の家を除いて、朝食は質素な事が多い。特に、霊夢は顕著だった。
ねこやで働くようになってからは朝食が大事と気付き、なるべくは食べるようにはなった。
そして、食べ終わり片付けも終わると
「はい、アレッタには頼まれてたメンチカツサンドと護衛の人用の日替わり料理な」
「霊夢ちゃんと妖夢ちゃんには、おにぎりの詰め合わせだよ」
店長と明久が、アレッタ達に紙箱を手渡して見送ったのだった。