やはり俺がボーダー隊員なのはまちがっているようでまちがっていない。   作:スキート

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第1話 比企谷八幡


 3年半前のあの日、見るに耐えない地獄を見た。逃げ惑う人々、崩れた瓦礫(がれき)。そして、そこら中で、暴れまわる近界民(ネイバー)と呼ばれる化け物の大群。

 

 その時、『ボーダー』に入っていた俺でさえ、吐き気を(もよお)した。どこに行っても人の叫び声が俺の耳に鳴り響いた。目の前で死んでいく人々を何回も見た。手が届く距離にいるのに、助けられなかった命がいくつもあった。

 

 そして、後に『第一次大規模侵攻』と呼ばれるこの戦いで、俺は大切なものを2つ失った。『ボーダー』であった母に、『ボーダー』ではなかった妹の小町が俺の前から消えたのだ。母は俺を庇って死んだ。小町は、俺が駆けつけた時にはもう姿を消していた。もう生きていることも定かではないが、小町に関しては行方不明扱いになっている。

 

 

 

 

 

 ──────────あの時の戦いで、俺の手元には飼っていた猫であるカマクラと母親が死ぬ間際に残した(ブラック)トリガーだけが残った。

 

 

 

 

 

 助けたかった。でも、救えなかった。

 

 

 

 

 あの結果は全て俺の力不足で起こしてしまった結果だ。

 

 

 

 

 

 だからこそ、俺は全てを失ったあの日に誓ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 もう何も、失わないと───────。

 

 

 

 ─────

 

 

 

 

「⁉︎」

 

 俺はバッと体を起こす。

 

 3年半前のあの日のことを、未だに夢に見る。忘れなれないくらい俺の記憶に深く切り刻まれたあの記憶を。

 

「…ど、どうしたの八幡。凄い汗よ?」

 

 俺は自分の部屋から出て下の階に降りると、桐絵と遭遇する。どうやら先程の夢のせいで凄い量の汗をかいていた様だ。言われるまで気づかなかった。

 

「いや、別に何でもねぇよ」

 

 心配する桐絵を余所(よそ)に、俺は素っ気なく言葉を返す。

 

「それならいいわ。ほら八幡もうご飯出来てるから直ぐにいくわよ」

 

 ここは玉狛支部。ボーダー本部とは別に隊員が集まる支部である。この玉狛支部は少数精鋭といった具合で、人数は10にも満たないが、実力は確かである。

 

 そして今俺をリビングまで引っ張ってるのが小南桐絵。アホ毛がぴょんと立っていることが特徴で、素直な性格をしている。玉狛支部にある部隊、玉狛第一(木崎隊)の攻撃手(アタッカー)であり、攻撃手(アタッカー)としての実力はボーダー内でNo.3を誇る実力派である。

 

 リビングに入ると、ご飯の準備をしているレイジさんと、テーブルに座って話しているゆりさんとミカエルさん。そしてその横でカピバラと(たまむ)れている陽太郎の姿があった。

 

「おはよう八幡」

 

「おはよう八幡くん」

 

「おはよう」

 

「はちまん! おはようなのだ!」

 

「…おはようございます」

 

 上から木崎レイジさん、林藤ゆりさん、ミカエル・クローニンさん、林藤陽太郎。

 

 レイジさんは、玉狛第一の隊長にして、ボーダーに2人しかいない完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)である。毎日自己鍛錬に励んでおり、体も鍛えられていて料理もでき、面倒見もいい。生身でも完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)である。

 

 ゆりさんは、玉狛支部のオペレーターを務めていて、ポニーテールが印象的な感じの女性。いつも落ち着いているレイジさんを浮足立たせる力を持つ。

 

 ミカエルさんは、玉狛支部の技術者(エンジニア)でカナダ人設定の近界民(ネイバー)だ。

 

 陽太郎は、子供にして何故か玉狛支部にいる謎多き子供、いつも玉狛支部で飼っているカピバラの雷神丸に乗って行動している。

 

「ほんっと朝は元気ないわねー」

 

「ほっとけ。俺はいつもこんなんだろ」

 

「2人とも冷める前に早く食え」

 

「はい」「わかってるわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 -ボーダー本部・比企谷隊作戦室-

 

 ここは、ボーダー本部にある俺が率いる隊の作戦室。こんな俺でも隊長をしており、B級16位に位置するチームである。勿論B級最下位であるのには理由があり、俺、いやチームでの活動を一切やっていない。約1年前、俺は交通事故にあって以来、ランク戦と呼ばれるものをしていない。勿論俺の怪我が治ってからはランク戦に復帰するつもりだったのだが、半年前くらいに比企谷隊で仲違い的な事が起きてしまい、気まずくなってしまった俺は、ボーダー隊員としての仕事もあまりしておらず、隊員とも最近はまったく顔を合わせていないのが現状である。

 

 俺のせいで、隊のみんなにも迷惑をかけている。この作戦室自体来たのは久しぶりだ。

 

 そろそろ決めなければならないかもしれない。|比企谷隊を解散すべきなのか、活動を再開するためにみんなを集めるのか。

 

 一応、この隊にも思い入れはある。現ボーダー創設時からあるし、A級にも上がってがむしゃらにみんなで頑張った思い出もある。

 

 作戦室にあるソファに1人で座りながら考えている時、作戦室の扉が開いた。

 

 俺が視線をその先に向けると────────

 

「あれ? 先輩。こんな所で何してるんですか?」

 

 

 

 

 

 

 比企谷隊(うち)狙撃手(スナイパー)で、俺の後輩、一色いろはがそこにいた。

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