戦闘描写はありません。穏やかでほのぼのとした感じです。
Pixivにも同じものを投稿しています。
いつも通り総員起こしの五分前に目が覚めた。閉められたカーテンの隙間から細く朝陽が差し込んでいる。定刻にラッパの音が聞こえてくる。
今日のラッパ手はあまり上手ではないなと考えながら一度伸びをしてから起きた。 さあ、点呼だというところで、スピーカーからチャイムが聞こえてきた。
「本日の演習担当艦出撃待て。外洋大時化。天候偵察機発進、情報入るまで待機」
待機ということを聞いて気が抜けた。アタシは今日は久々に演習に出撃する予定であった。練度が上がってからというもの、だんだんと演習に出撃する回数が減っていたので楽しみにしていたのだ。後輩の育成もしてもらわないと困るので、それは仕方がないことではあるのだが。
中止という話ではないのでとりあえずいつでも出撃できるように準備だけはしておこう。
平常通り、点呼を受け食事をし、部屋の清掃をして身支度を整えた。
このまま部屋にいようかと思ったが、がらんとした室内を見まわすとその気がなくなった。誰もいない部屋は案外さみしいものだ。
曙は昨日から新人に付き添い遠征、漣も昨日から輸送任務、潮は夜明け前から哨戒任務とそれぞれ出撃している。いつものうるさい三人がいないとここまで静かなのかと改めて考え、三人の顔を思い浮かべる。
そんなことをしているとスピーカーが鳴った。
「本日演習担当艦。本日演習担当艦。天候悪化につき演習延期。本日は鎮守府内で待機せよ。繰り返す……」
ややハウリングぎみのアナウンスを聞いて窓の外を見た。雲の流れは速いものの、爽やかな青空が広がっている。
こっちはこんなにいい天気なのに。なんということだ。だが、仕方がない。そういう日もある。わかってはいるものの残念である。
窓際で腕組みをして考える。さて、これからどうしようか。このまま部屋で本でも読むか? いや、この前、街で買った本は全部読んでしまったではないか。それにさっきも考えていたが、がらんとした部屋に一人でいても面白くはない。
しばし立ち尽くし、うーんと唸った。とりあえず部屋から出よう。くるりと回れ右をして部屋を出て廊下を進みながらまた唸った。
ふらふら歩いていると食堂まで来てしまった。誰かいるかと思って覗いてみるが誰一人いない。突っ立ていても仕方がないので、固く座り心地がいいとは言えない木の椅子に腰を下ろして天を仰ぐ。
じーっと天井の木目を眺めているとだんだん人の顔のように見えてきたので思考をそらす。
そういえば、秋雲はどうしているだろうか。最近は明石さんの工廠に通っているようだが、何をしているのだろう。ちょっと姿を見に行ってみようか。
ぼんやりしながら腰を浮かしかけると、入り口の引き戸ががたがたと鳴った。
引き戸が開かれ現れたのは、赤いズボン袴に陰陽師のような上衣を羽織った大柄な軽空母の隼鷹さんだった。右手に帆布の細長い袋、左手にぐい飲みを持っている。待機だという指示なのに、完全に酒盛りをする気でいるなこの人は。
「隼鷹さん、待機って指示聞いてなかったんですか?」
隼鷹さんはドカッと椅子に腰かけると袋から一升瓶を取り出して栓を抜き、一合の蛇の目にお酒を満たした。
その仕草はあまりに手慣れていて水が流れるようである。
「まあまあ、固いこと言わないの。これから外洋の天気が良くなることはないよ」
「確かにそうでしょうけど……」
人の話を聞いてか聞かずか、蛇の目に口を付けてグイとあおる。
「いや~、こっちはまだいい天気だ。こんな日に朝から飲めるなんて幸せだなぁ~」
一杯目を早々に空にして、またお酒を注ぎ入れている。実に美味しそうに見える。
「朝から飲む酒は美味いぞ~。へっへっへ……」
あまりに美味しそうに呑むものだから、つい、ごくりと喉が動いた。
彼女はそれを見逃さなかった。
「まあ、無理にとは言わないけど、ちょっとどうよ?」
しまった。自分の中の天秤がぐらぐらと揺れ動く。どうせ今日は出撃することはまずないだろうし、やることもない。だが、ここで飲んでもいいのか? いや、しかし……。
「……じゃあ、ちょっとだけいただきます」
私は簡単に誘惑に負けた。
隼鷹さんは右腕を伸ばし掌を下にして手を広げた。そうして、軽く拳をつくり小さく左右に揺らした。今度はくるりと手を上に向け、指を伸ばし手を開く。
なんと、掌の上には小さなお猪口が乗っているではないか。
驚いて隼鷹さんの顔を見ると、得意げにニコニコとしている。思わず私は拍手をした。なかなかしゃれたことをする艦娘だ。
「まあ、こんなもんさ。それじゃ、ちょっとだけね」
隼鷹さんは器用に一升瓶から二勺ほどの小さなお猪口にお酒を注いだ。
「どうぞっと」
「ありがとうございます」
小さなお猪口を両手で受け取り中を覗いた。薄く黄金色に輝く液体の底に青い蛇の目が沈んでいる。鼻に猪口を近づけ香りを嗅いでみる。日本酒らしい香りの中にヨーグルトのような乳酸系の芳香を感じる。
お猪口に下唇を付けて傾ける。するりと液体が口内に流れ込み、ぶわっと芳醇な香りが広がる。お米とアルコールの甘みを感じた後、ヨーグルトに似た柔らかな酸味が舌を撫でて喉に流れ落ち、スッと消えた。胃に液体が落ちるとふわっと熱さを感じた。
なるほど、これはなかなか……。
残ったお酒をスッと口に含み同じように胃に落とし込んで、小さく息を吐いた。
「どうよ、お味は?」
アタシはそもそもそんなに酒飲みではないので味についての知識がない。感じたままを述べるしかない。
「そうですね。最初は甘さを感じて、後からヨーグルトのような酸味。後口は少し辛さを感じました」
私の返答を聞いて隼鷹さんはニヤリと白い歯を見せて笑い手を打った。
「はっはっは、なかなか通なこと言うねえ。実はそこそこイケる口だろ?」
「そんなことないですよ」
アタシは愛想笑いで返した。
「これからどこか行こうと思ってたんだろ? 引き留めちゃったようで悪かったね」
「いえ、そんな。急ぐ用事でもないので」
「無理に酔っ払いに付き合うこともないよ、用事があるなら行ったほうがいい。そうだ。引き留めちまったお詫びにこれをあげよう」
隼鷹さんは一升瓶が入っていた帆布の細長い袋を手渡してきた。紺色のやや粗めの生地で一升瓶一本がすっぽり入る大きさだ。
「はぁ、ありがとうございます」
「私には中身があればいいからねぇ」
貰えるものなら頂いておこう。替えの砲身でも入れるのに役立つかもしれない。
食堂から出る際に隼鷹さんに一礼すると、彼女は左手にぐい飲みを持ち、右手をふにゃふにゃと振りにこやかに笑っていた。
幸せな笑顔だ。
*****
アタシは表に出て思い切り空気を吸い空を見上げた。風が強まってきたようで雲の流れがまた速まっているようだ。
雲の流れを見ていると、きらりと何かが反射したように見えた。一瞬戦闘モードに入り敵機か! と身構えたがどうも違う。
飛行物体はふらふらと左旋回しながら高度を下げてきた。固定脚の艦載機のようだ。艦爆よりは小さい。九六式艦戦だろうか? アプローチに入るが強風の影響でやや左に流されている。徐々に修正しながらなんとか着陸した。うん、お見事。
なんだろうと不思議に思って眺めていると、タキシングしながらこちらに来るではないか。
やはり九六式艦戦だ。足元まで近づいてきたので、しゃがんで小さな戦闘機を出迎える。こんなところに着陸してどうしたんだろうか。
コクピットの妖精さんがキョロキョロとあたりを見回して、アタシの方を向いて何かを伝えようとしている。アタシはどうも意味が分からず小首を傾げた。
妖精さんはコクピットから翼に降りようとしたが、途中でずっこけて地上に転がり落ちた。どうも落下傘バンドが引っかかったようだ。
アタシが両ひざをつき優しく妖精さんを起こすのを手伝っていると、前方から白い上衣に赤い袴を履いた小柄な少女がとてとてと駆け寄ってきた。
「あの、九六艦戦がこちらに来ませんでしたか?」
アタシは両手で優しく九六艦戦を包み込み、妖精さんも掌に乗せて立ち上がった。
「この子は春日丸さんのところの子でしたか」
春日丸さんはほっとした表情で九六艦戦を受け取り、固そうなゆがけをはめた左手に乗せる。妖精さんもしっかりと受け渡した。
「飛行訓練をさせていたのですが、機位を見失ったようで……。申し訳ありません。ご迷惑をおかけしました」
「いえいえ。でも、まさか陸上で飛行機を回収するとは思ってませんでした。一種のトンボ釣りみたいなもんですかね」
つい冗談めかしてそんなことを言ってみたのだが、それを聞いた春日丸さんの表情に少し影が差したように見えた。
悪いことを言ったかなと思った瞬間、春日丸さんの目に力が入り、空の右手をぎゅっと握り、一度大きく頷いた。
「やはり、今のままではだめですね。この子たちにはもっとうまくなってもらわないと。私自身も……」
アタシはそれを聞いて堪らなく嬉しくなった。言葉には出さないがアタシはこの人を守るのだと心に固く誓った。
「でも、この子は風が強い中しっかりとした着陸でしたよ。機体に損傷も無いようですし」
「褒めていただいて、あの……ありがとうございます。この子たちも少しずつうまくなってきたのですが、まだまだです。そうだ、お詫びと言っては何ですが、これをお受け取りください」
春日丸さんは腰から下げた鞄からチケットのようなものを取り出した。
受け取ってみると鳳翔さんの食事券だ。こんなに大層なものを貰ってもいいのかと驚いて春日丸さんの顔を見つめると、彼女はにこりと笑い「いいんですよ」と微笑んだ。
*****
さて、春日丸さんから鳳翔さんの食事券を頂いたので、鳳翔さんのところに行ってみよう。ただ、今日は食事券は使わない。これはとっておきのときに使うのだ。今日は下見、いや、偵察のようなものだ。
隼鷹さんから貰った袋を右手でくるくる回しながらお店へ向かう。自然に顔の筋肉が緩んでくる。
あまりにうきうきしていたので、早く着きすぎてしまった。鳳翔さんのお店は暖簾はまだ揚がってはいないが、扉は開いていた。はて、と思い中を覗き込み「こんにちは」と声をかけると、想定していたよりもはるかに近くから返答が帰ってきた。
「あら、朧ちゃんこんにちは」
カウンターの奥にいるであろうと思い、声をかけたのだが、カウンターの外にいるとは思わなんだ。
割烹着を着た小柄な彼女は右手を頬に当て困り顔で言葉を漏らした。
「ごめんね、ちょっと手間取っちゃって」
「何かあったんですか? お手伝いできることがあれば言ってください」
鳳翔さんが困っているとあらば、この鎮守府の艦娘であれば誰であろうと進んでお手伝いをする。アタシも例外ではない。
「私がちょっと出てる間に、業者の方が来たみたいでね。いつもは裏の方にお酒やビールを置いてもらっているんだけど、前の方に置いて行ってしまったの。納入業者の方が変わったのかしら?」
なるほど、カウンターの前にビールの中瓶が二ケースと日本酒のケースが二つ置かれている。これを移動すればいいのだな。
「朧に任せてください。これくらいならすぐに片付けますから。鳳翔さんはやらなきゃいけないことをやっちゃってください」
「悪いわね。まだ仕込みの最中だったから困ってたの。無理はしないでね」
「はい」
鳳翔さんは厨房に入り、仕込みの続きを始めた。
さて、まずはビールケースからいってみよう。隼鷹さんから貰った袋はカウンターの椅子に置かせてもらいましょうか。
まず右手で一つを持ち上げてみる。ふむ。ひとつ二十キログラムほどだろうか。今日は演習にも出られなかったし、トレーニングがてら二ついっぺんに運んでみよう。
重ねられたビールケースに背を向けしゃがむ。下のケースの取っ手に手を入れ一度息を吸って止めた。ふっと息を吐き前腕、上腕の順に力を籠めビールケースを背に預ける。奥歯を噛みしめ、腿に力を集中しグッと立ち上がる。腿から膝に荷重が掛かり関節と筋肉がミシミシと音を上げるようだ。
背中に四十キログラムほどの荷重が掛かっているが、立ち上がってしまえばこっちのものだ。そのまま一度表に出て、裏口に回り厨房に入る。
「あらあら、二つもいっぺんに持ってきたの。すごいわね。無理しなくてもいいのに」
「今日は楽しみにしていた演習がなくなって力が有り余ってるんですよ」
「でもくれぐれも無理しないでね。ゆっくりでいいわよ」
ビールケースを冷蔵庫横の床にゆっくりと下ろし。深呼吸をする。さて、残りもいっぺんに片付けてしまおう。
小走りで裏口から表へ回り再び荷物に向き合う。一升瓶が六本入った樹脂のケースを片手で持ち上げてみるとビールよりは重くはない。
では、片手でひとつづつ持って運ぼうか。「よっこらせ」と掛け声を出し、両手に取っ手がめり込む感覚と前腕の筋肉が肥大する感覚を感じながら持ち上げる。
左右の重さに揺られながら裏口に入り、先ほどのビールの横に荷物を下ろした。
「鳳翔さんおわりましたよ」
「朧ちゃんありがとうね。ちょっとカウンター席で待っててね」
鳳翔さんはこちらを見ず親子鍋を火にかけ卵を溶きながら答えた。
店内に戻りカウンターに腰かけていると、鳳翔さんは丼にご飯をよそい先ほどの親子鍋の中身を上にのせているところであった。
「お昼まだでしょ? これは手伝ってくれたお礼」
そう言って鳳翔さんはアタシの前に丼と味噌汁の器と漬物を置いた。
卵とじの丼から湯気が立ち上り出汁のいい匂いがする。親子丼かと思いきや、よく見ると豚肉だ。所謂、他人丼というやつだ。みそ汁はシンプルに豆腐とネギ。漬物はきゅうりの浅漬け。
「なんかすみません。そんなつもりはなかったんですけど」
只飯を食べるために来たわけでもないので、なんだか申し訳ない気分である。
「いいのいいの。働いてもらったんだから。賄いみたいなものよ」
「……では、すみません。いただきます」
丼に箸を差し込み具とご飯を口まで運ぶ。熱い。出汁の風味と玉子の甘みが絶妙で、具のシイタケを噛むたびにまた旨味が溢れてくる。半熟のとろりとした玉子と豚肉の油が溶けあい口中で混ざり合う。
とても幸せだ。演習ができないと知ったときは残念な気持ちでいっぱいであったが、今日はとても幸せな日だ。
無言で丼の中身を口に運ぶ。ふと、丼から顔を上げると鳳翔さんが鍋をかき混ぜながらとてもうれしそうに微笑んでいた。アタシの方は一心不乱に食べているところを見られて少し恥ずかしいのである。
黙々と食べ続け、最後に漬物を齧り、お茶を飲む。
「ごちそうさまです! とってもおいしかったです」
「おそまつさまでした。朧ちゃんはとっても美味しそうに食べるから作り甲斐があるわ」
そう言われると嬉しい感情と恥ずかしい感情が交錯する。食事をするだけでそんなに感情が出ていたのか……。
そろそろ時刻もお昼に近づいてきた。鳳翔さんはにこやかな顔で素早く且つ丁寧に調理を続けている。
「鳳翔さん、そろそろ忙しい時間帯だと思うので、失礼させていただきます。ありがとうございます」
椅子に置いていた袋を持ち立ち上がると呼び止められた。
「あら、今時甚吉袋なんて珍しい物を持ってるのね」
アタシはぽかんとして聞き返した。
「甚吉袋?」
「そう。甚吉袋。昔はそれをもって酒屋さんに行ってお酒を持ち帰ってきてたのよ。通い袋なんて呼び方もあるわ」
隼鷹さんが酒瓶を入れていたので、使用用途はわかっていたが名称は知らなかった。世の中知らないことだらけである。
「そうだ、この前、お酒屋さんからサービスで一本頂いたお酒があるから持っていきなさい。みんなで使ってね」
そう言うと、鳳翔さんはカウンターの下から緑色の一升瓶を取り出し、甚吉袋の中に入れた。
「ただ荷物を運んだだけなのに、食事もお酒も頂いちゃって……」
流石に艦娘全員から慕われている鳳翔さんから、こんなに厚遇を受けると困ってしまう。
「いいのよ。いつも朧ちゃんは頑張ってるからね」
アタシの気持ちを知ってか知らずか、鳳翔さんはいつものにこやかな顔で応えた。
ここまで来たら無下に断ることもできないので、丁重にお礼を述べてペコペコ頭を下げながらお店を出た。鳳翔さんはひらひらと右手を振っていた。
*****
一升瓶の入った甚吉袋を右手に持ちアタシは部屋へ戻ろうとしていた。流石に真昼間から一升瓶をぶら下げて工廠に行くのはまずかろう。
高く上った太陽から強い日差しが差し込む廊下をスリッパをぱたぱたとリズムよく鳴らしながら進む。どうせ誰も帰ってきてはいないだろうとノックもせずに自室のドアを開けた。
やや乱暴にドアを開けると、部屋の中で紫色の髪の後頭部がばね仕掛けのようにびょんと跳ねた。
「なんだ曙か、もう帰ってきてたんだ」
曙はサイドテールに結った長い髪を遠心力でゆるりと回しこちらを向いた。胸に包装紙で綺麗に包まれた箱状のものを抱いていた。
「なによ、びっくりするじゃない」
そう一言アタシの方を向いて言うと、また私に背を向け、胸に抱いていた箱を紙袋に入れて自分のベッドに置いた。そしてまた振り返り、アタシの右手に下げられた甚吉袋を一瞥した。
「ふーん。朧がお酒を用意するなんてめずらしいわね。まぁ、酒は好きなんだろうけど」
ん? 用意する? 何のことだ?
曙には「まあね」などと生返事を返して、壁にかけられたカレンダーを横目で確認した。
今日の日付には何も書かれてはいない、明日は……。……シールが貼りつけられている。これは潮が貼ったものだろう。そのシールの下にやや丸っこい字で『ご主人様生誕祭』と記入されていた。
「あっ」と口から声が出そうになるのを寸でのところで飲み込み、曙のベッドに置かれた紙袋を見つめる。そうだ、うっかりしていた。完全に失念していた。明日は提督の誕生日だ。演習に出るということで浮かれていて何の用意もしていなかった。
今から何かを買いに出かけて間に合わせるか。いや、今日は鎮守府内で待機ということだから駄目だ。そもそも、たった今、曙に生返事ではあったがこれがプレゼントだと言ってしまったではないか。
急に右手の一升瓶の重さが重くなったように感じた。アタシは平静を装い自分の机まで歩き、机上に甚吉袋をコトリと置いた。
提督には間に合わせだとはわからないだろうが、今回はこれで勘弁してもらって後で何か埋め合わせをしよう。
椅子に静かに腰を下ろし、机の引き出しから一筆箋と万年筆を取り出した。日頃のお礼くらいはしたためておこうか。
万年筆のキャップを外し一文字目を書き始めようとしたところで、ふと視線を感じ曙の方を顧みる。
曙はじいっとこちらを見ていた。
アタシはそしらぬふりをして一筆箋にペン先を置いた。
青いインクがなめらかに紙の上を踊りだした。
初期の朧ちゃんは真面目っ子というイメージの強いキャラクターでした。
ですが、限定グラフィック・ボイスが追加されるたびに素敵な部分がどんどん出てきてかわいく楽しい娘だとわかってきました。
夏の健康的な水着、秋の文学少女、バレンタインの正統派美少女、佐世保のお出かけ、瑞雲ランドの先頭を歩く姿。
佐世保の朧ちゃんを見ていると、真面目で自信家な彼女の意外と抜けた一面が見れて微笑ましかったです。
この娘は意外とふんわりとしたところもあるのだなと。
そんなかわいらしい朧ちゃんを朧ちゃん視点から書いてみようと考えて書き始めました。
朧ちゃん視点というところしか決めずに走り始めたのでこれがなかなか……。
物語を作るのって難しいですね。
朧ちゃんかわいいですよ。はいっ!