魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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第388話『魔法の宴 新人戦の一』

 

異例のスケジュールとなったが、とりあえず新人戦となったわけで、一年生たちは緊張しているか?と思っていたのだが―――。

 

(黙りながらも、どうやら闘志と気持ちは前に向いているようだな)

 

一高一年の心を察しながら、今日のメンバーを発表する。

本戦と同じく一日目は、ロアガンとSAW。既にメンバーは発表されている。

 

(さてさてどうなるか、だな)

 

「大丈夫だよ。確かにエルメロイは強敵だ。多分、最後に立ちふさがるのはこいつらだけど、僕たちだってやってきたんだ」

 

無言で決意しているだけだったが、一年キャプテンたる七草香澄がそんなことを言って最後の意思を示し―――出陣の時となる。

 

 

「よーし!お前ら!昨日言った通りだ。貯金はたっぷりある。後のことなど気にせずソーサレスの1人として、マギアスリートとして存分に己のパフォーマンスを発揮してこい!!」

 

「「「「サー!イエッサー!!」」」」

 

誰がこの合図を決めていたのかは分からないが、その合図に満足しながら所定の作業を行う。

 

刹那がやるのは、SAWのセイバーの得物の譲渡である。事前に決めていた通り、リクエスト通りの得物を使用者に手渡しするのは、マイスターとして当然のことである。

 

「志村は―――こいつな。ちゃんと動作を確認しとけよ。そうしてから提出だ」

「お、押忍!」

 

威勢いい言葉だが緊張は隠せない一年。サルビアの香りで少しだけ緊張を解すことにしておく。

 

「ぺぺは、これだが……お前さんならばご実家の方から持ってこれたんじゃない?」

「流石に『骨杖』(こつじょう)なんか持ってきたらばドン引きされると思いませんか?」

「まぁそりゃそうだな……」

 

神代秘術連盟の一員として概念武装系統のそれは晒せないのだろうと裏側を察しつつもぺぺ(ウインク顔)の依頼通りの「ボーンスタッフ」は手渡されるのであった。

 

変わったところでは……。

 

「改めて聞くが……六導、お前がやるのはロアガンだぞ?それを理解しているか?」

「ええ、当然ですよキャプテン」

 

朗らかに笑いながら一年生とは思えぬ色香を発する女子に問うも、返答は変わらず。練習時点から見ていたことだが……。

 

(この女子に刃物を渡すことを躊躇してしまう)

 

本能的な危険を感じるのは、この女が天性の殺人者であるからだろう。

 

「刹那先輩、焦らさないでくださいよ。それとも私の身体と引き換えですか?」

「OK、OK。悪かったよ。これがご所望のものだ。存分に『渇き』を癒せ」

「―――ええ、確かに」

 

鞘込めの二刀の刃物を渡す。そしてそれを引き抜き、刃を太陽に翳した六導玲霞の眼が細められて、同時に―――何か自分よりも幼き者を見るように優しいものを見せたことに疑問符を覚えつつも、武器屋は所望する戦士に武器を与えるだけだ。

 

「確かに。頂きましたよ魔宝使いサマ。代わりにエルメロイに勝利を齎しましょう」

「ああ、死を司る女神の如きキミの祝福を受け取るさ」

「私、ヘカテーのように遠くへ『矢を射る』のは嫌いですけどね」

 

最後の方に少しの嫌悪感を抱かれながらも、シオンの方からは短い銃身の拳銃―――当然CADないし、礼装の類なのだが、それを受け取ったのを見てから……。

 

「さて観客席に向かうぞ」

「ソウネー(怒)」

 

やはり怒っているリーナを連れて観客席へと向かうことにするのだった。

 

 

★ ☆ ★ ☆

 

『これぞ私の渚のドルフィンウェーブ!!未知の3Dマジックで世界を覆しましょう!!!』

『『『『うぉおおお!!! レイカさーーーん!!!』』』』

 

どこのワダツミのドルフィンだと言わんばかりの動きと水上を滑走しながら的を射抜いていく六導玲霞の姿に、第九高校の生徒たちが主な面子の私設応援団『レイカーズ』(爆)が奇声を上げるのだった。

 

半被と団扇を持ってアイドルファンクラブのような様子でいる彼らだが……。

 

「まぁこんな風な熱狂的な応援が着く女をメンバーに入れたらば、女子のメンバーは面白くないか」

 

彼女が九高から追い出された理由が理解できた。アンジェラといい、どうにも『アスリート』としても『ソルジャー』としてもそういうのはどうなんだ?という感覚を持ってしまうのだった。

 

「常識的な考えでは、そんな爆弾じみた選手は取りません。実力は誰よりも一番でも諸々考えてしまうのも一つですから」

「そりゃ実力一番でも『協調』が無い人間と言うかはねっ返りは受け入れづらいですからね」

「ご自分のこと棚に上げてませんか?」

 

生意気なことを言った後輩に対して額ぐりぐり(人差し指)をやってから隣りにいる褐色美人に言葉を重ねる。

 

「にしても市原OGと六導が親戚だったとは……」

「六の魔法師ではないんですか?」

 

一高のかつての3年生にして現在魔法大学で学んでいるお人が、一高応援席ではなくエルメロイの方にやってきたのは、そういうことだった。

 

驚きながらも挨拶を交わして、こうして一緒に観戦していたのだが、そんな事情を説明された。

 

桜小路がそんな関心をすると、それを機に少しの説明が成される。

 

「彼女の姓から第六研の関係者と思われがちですが、親戚筋がそうであって、彼女自身は引き取られる前は『一宮』という姓でしたから」

 

一花でもなく市原でもなかったということは遠縁の親戚だったのだろうか。その辺りはともかくとして第一研究所の魔法師であることが理解できた。

 

「一宮の魔法は第一研と同じく人体干渉に関するものでした。その主となる対象は自らに対して―――」

「一色家のものとは違うので?」

「一色家が脳髄、あるいは神経ニューロンの加速に対して、一宮のは肉体そのものへの干渉でした。己の身体を一つの武器と化す。エルメロイの書にありましたよ。大脳辺縁系に対する処置」

 

その言葉に諳んじれていることを話す。

 

「室町、はたまた平安の頃より戦を行うものたちは意図的に己を変革する術を持っていた。それは心構えとかいうレベルではなく、彼らは武器を持った瞬間に覚醒をする。その身体機能と精神構造を戦場での生存と敵の殺害だけ向ける―――しかし、六導のは少々違うような」

 

これに近いものを持っているのは、どちらかといえば四高の『静希』が近いと思うが、彼はおそらく『大脳基底核』の方の干渉だと思えている。

 

「ええ、一宮家は本来はそれを狙っていたようですが、どうにも……彼女はそれとは違うような気がするんですよね。だから明確な回答が刹那君から欲しかったんです」

「そのためにスズ先輩はここ(エルメロイ)に来たんですか?」

「安心して下さい。一高の方にも顔を出します」

 

その言葉、サマードレスを着て笑顔を見せるスズ先輩に、観念しながら考えるに。

 

「考えるに彼女は色んな意味で『成長』しているんですよ。多分ですが、求めていたのはそういうマギアソルジャーなんでしょう。しかし、それゆえに脳下垂体の行進を促してしまった。肉体的な成長と同時に精神構造も進んでしまった。それゆえに彼女の動きは洗練されている」

 

魔法を用いて『パーフェクト・ソルジャー』を作ろうとしたのだろうが、その為に脳機能に手を施してしまいすぎた。それが生んだのは肉体と精神の『早熟』である。

 

市原鈴音が、在学時代から大人っぽいと感じられていたのは、肉体に対する刺激を旨とする魔法が生んだ副産物なのかもしれない。

 

外的な刺激こそが、ヒトを変化させる一因なのだから。

黄金姫と白銀姫という至上の美の世話役、

人類史を塗り替えた大英雄との見習い魔術師の交流、

死の淵にありて正義の味方であった男との邂逅……。

 

「養子に引き取られた経緯は、俺とおんなじですかね?」

「仰る通り。彼女もまたオーフェンですから」

 

確認を取ったことで、理解できた。

 

彼女は色んなものを『俯瞰』して達観している。おそらく肉体と精神の乖離とまでは言わんが、己の身体を一個の器物として使うことも出来るタイプの術者だろう。

 

ただその一方で人間らしい主体的な目的もある。親父(衛宮士郎)のようなロボットではないのだから―――。

 

「あんまり気にしなくてもいいんじゃないですかね。それとも危険視しています?」

「……色々と、六導家での待遇がどうなっているかなどを父は懸念していましたから」

 

市原家は数字落ちした第一研究所の人間などを気にかけている。それは、スズ先輩がやろうとしていることとも無関係ではないだろうが―――。

 

「とりあえず話されるとよろしいかと」

「ではエスコートお願いします」

 

ソロゲーム・ロアガンの第六試合に出て、今のところは一位のスコアを得ている六導玲霞の下へと赴くことに。水に濡れている美少女の姿を見るとか男子として色々とアレだが、スズ先輩に世話になったのは事実で、それを断ることは出来なかった――――。

 

 

「ソロでは一位を取られたけどペアでは勝つよ」

 

六導玲霞というエルメロイの選手によって女子ソロのロアガンは一位を取られた。男子ソロは二位を取ってくれたことで面目は立ったのだが。

女子ソロ二位は七高、三位に二高。

男子ソロ一位は七高、三位にエルメロイ。

 

という塩梅だ。混合ダブルスの『つらら』にも出る香澄だが、女子ダブルスのロアガンにも出る。元々、その予定であった所に予想外の殺晶院 霧雨(恋人?)の「つらら」の参加が彼女をダブルゲームに駆り立てたのだ。

 

「一位を取りたいか香澄?」

「あっためーですよ!! 負けたいと思っているわけ無い!!」

 

その勢いある言葉とキバを見せる顔に満足しながら六導玲霞のペアに対する方策を達也は授ける。

 

「1vs1の対戦形式ではない試合だからな。どうなるかは分からないが、ユースフ・ディケッチ(無課金おじさん)にこれ以上進撃させるのは面白くない」

「それで?」

「―――『コイツ』を使え。六導玲霞の試合を見ていたが、彼女に勝るならば、こっちのCADだ」

 

その言葉を疑うわけではないだろうが、それでもいきなりな作戦変更に―――。

 

「大丈夫!ライダーでもガンナーでも私はこなしてみせるから香澄ちゃんの思うように戦って!!」

 

ペアパートナーがそう言ってきた以上―――香澄は何もなく戦いに挑むことにした。

 

重課金者どころか廃課金者のごとき司波達也を疑うことはないのだから―――などと失礼千万なことを考えながらも、ペア戦は始まり、新人戦のSAWもまた加熱していく……

 

 

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