宇宙戦艦作品の技術考察(銀英伝中心)   作:ケット

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核戦争後、中世と中世にならなかった世界

 同じ核戦争の後の世界なのに、『スタートレック』と『銀河英雄伝説』など多数の世界はなぜこれほど違うのでしょう?

 

 他にも似た破局を過去とする作品は多くあります。

 それを『現実』の破局後と比較してみましょう。

 

 どのように分けるのがいいでしょう?

 まず別といっていいなのが、古代文明遺跡がある作品。

 そして比較的最近……数世代程度、まだ記録などが残る、核戦争。

 核戦争とナノマシン災害の差も重大でしょう。

 異星人攻撃か否か、異星人が存在するかどうかも重大です。

 そして大きい違いが、ポスト希少性文明になっているかどうか、生産の指数関数増大が起きているかどうかなのです。

 

 比較的時間が短い『宇宙の戦士』『スタートレック』と、かなり時間的に遠い『銀河英雄伝説』の差は?

 

 ある程度列挙してみましょう。

 

『スタートレック』は基礎となる「宇宙大作戦」が2260年代、核戦争となった第三次世界大戦が終わって少ししてから「ファーストコンタクト」でエンタープライズEが行った過去が2063年。その助けで成功したワープ宇宙船実験を、「艦隊の誓い」と同じルールを持つバルカン星人が観測したことによりファーストコンタクト、支援を得て地球が統一政府となり、レプリケーターなどの存在で貨幣がなく内戦や格差があまりない社会が形成されました。

 ここの核戦争は、死んだのが三割程度とも言われ、その後でもワープ宇宙船をアメリカ~東南アジアで交易して作ったり、近代社会システム・科学知識は相当残っています。生存者も人殺しはしましたが食人には落ちていません。

 

『銀河英雄伝説』は2039年「13日戦争」、地球統一政府から西暦で言えば3100年あたりにゴールデンバウム朝、本編は(ゴールデンバウム)帝国暦487から。

 核戦争と、その後のシリウス戦役の惨禍が大きいのですが、それから相当に時間が経ってからゴールデンバウム朝が作られ、自由惑星同盟ができ、と大イベント間の年月が数百年単位であることが特徴です。

 ゴールデンバウム朝の極端な権威主義、とはいえルドルフ・フォン・ゴールデンバウムが障害児を生んだ妻妾も医師も死を賜ることができたことはそれ以前から相当人権水準の低い文化が定着していたのでは?

 

『無責任艦長タイラー』はかなり過去に大規模な核戦争があり、それから地球人の宇宙進出、ラアルゴン帝国との分岐がありました。その核戦争の遺跡である破壊された新宿ビル群はアシュラン戦役でゲリラ戦の戦場となり、イサム・フジを鍛えました。ラアルゴン側はともかく、連邦側の社会は民主的で文化自由度も高い、ただし生存可能なのがわずかな居住可能星系のみで貨幣もあります。

 

『マクロス』はゼントラーディの攻撃で地球が完全破壊、人口の圧倒多数が殺され、月とマクロスのわずかな住民が生存しました。その後のシリーズも、実は年号を見ると驚くほど短いです。

 全体としてそれほど社会が権威主義化・軍国主義化している印象はなく、歌などの文化もあります。

 

『宇宙空母ギャラクティカ』は人類の大半が核戦争で殺され、ごくわずかな生き残りが、軍・船の緊急事態論理の延長から再出発します。

 

『ヴォルコシガン・サガ』『ギャラクシーエンジェル』は数百年前の交通途絶から、膨大な死を伴う激変が起き、剣と馬、皇帝と貴族の文明に退化していました。

 

『宇宙の戦士』は核戦争後の、様々な体制の試行錯誤…学者体制の失敗とか…があり、志願制軍隊の名誉除隊者のみに参政権、という政体が定着しました。

 

『銀河の荒鷲シーフォート』『真紅の戦場』は核戦争から極端に軍国主義・権威主義の国家となりました。シーフォートはキリスト教と軍、真紅の戦場は多数の国の争いです。

『女王陛下の航宙艦』は大規模な爆撃を受け、これからどう変化するかが問題でしょう。

 

『ファウンデーション』は長時間をかける文明崩壊、首都星も略奪で農地化されました。ごく狭い範囲を暴虐で治める群雄たちから、ミュールが広範囲に法治を押しつけました。いくつもの軍国主義化してミュールに抵抗する社会も描かれます。ミュールの遺産を利用した(新しく再建された)ファウンデーションは比較的安定し自由の度合いが高い社会のようで、第二ファウンデーション攻撃を始め子が宿題をしています。

 

『マルドゥック・スクランブル』はあまり描写されない以前の戦争で、ボイルドが寝不足で友軍を誤爆し、多くの狂った人体改造研究が解禁されました。その研究者と製品は「O-9(オー・ナイン)」、免責・生存許可と有用性を引き換える生です。

 

『サイボーグ009』は核戦争がなかった、戦争も減った代償として闇で研究が進み、その製品である009たちが平和を守っています。

 

『火の鳥』の未来では繰り返し核戦争が起き、それでも人類は力強く生き続けました。しかし『望郷編』のように異常な人権軽視も多く見られ、『鳳凰編』の夢に出る未来の政治犯銃殺、『太陽編』での独裁宗教政権の繰り返しもあります。『復活編』では金持ち青年が火の鳥探しをする余裕もあったようで、かなり振れ幅が大きい未来です。

 

『三体シリーズ』は〈大峡谷〉と呼ばれる、人類の過半数が餓死した、環境崩壊・流民化を主とする巨大惨禍が歴史に刻まれています。それは宇宙での種の生存に適さない、現実を見ない、法と道徳が一体化した言葉・感情を人類に刻み付けました。滅亡後生存している艦船の子孫は、艦船の極端な全体主義を当たり前にし、さらに故郷を聞くなという宇宙文明独自の共通規範を内面化しています。

 

『スーパーロボット大戦OG』では統合戦争もあり、いくつもの戦役で相当な被害が出て、それがユルゲン博士の家族を死なせバルトール事件につながります。

 

『紅の勇者オナー・ハリントン』は離散が歴史の始まりとなっています。ただ最終戦争といわれる地球破壊はあったようです。

『彷徨える艦隊』も地球の過去での戦争は重要ではありません。長期間のシンディック・アライアンス戦争での両方の人心の変化のほうが重要です。

 

『人類補完計画』は核戦争後、ロボットが徘徊する世界が描かれていますが、むしろ世界の多様性のほうが肝心です。

 

『火星年代記』は地球が滅び、火星の生き残りがこれからどう生きていくか、という状態です。

『復活の日』は生物兵器による滅亡後、ごく少数の生存者です。『火の鳥 望郷編』と同じく性・生殖の極端な緊急性も問題となります。

 

『七人のイヴ』は宇宙災害で予告された地球滅亡を回避する努力で、遺伝子資源が失われたことから極端な生殖技術が使われました。

『怨讐星域』も予告された宇宙災害であり、対処のための行動が恨みに基づいた社会を作ります。

 

『ナショナル ジオグラフィック 地球消滅の日 その時、人類は…』『新スタートレック 超時空惑星カターン』も予告された宇宙災害に対する、『三体』とは対照的に理性的な対処が描かれます。

 

 

『量子怪盗』『楽園追放』は核戦争ではなくナノマシン災害による破局です。ただどの程度違うかというと……

 

 

『ギャラクシーエンジェル』は「白き月」の遺産で文明化されましたが、ジェラール王は白き月を侵略するなど絶対主義のような動きをし、エオニアがかなりの規模の破壊殺戮を起こしました。それで腐敗上層部が一掃され、シヴァ女皇が好きにできるおかげで、が『ガンダムX』がフロスト兄弟の終盤の殺戮のおかげで狂った両軍の指導層が全滅し平和になったと共通する皮肉です。

 

『それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ』『クラッシャージョウ』『ロスト・ユニバース』『イデオン』などははるか昔に滅亡した超古代文明の超遺跡の遺産争奪が話の中心になります。逆に言えば過去の破局の、現代の政体に対する影響がほぼ無視できるとも言えます。

『若き女艦長カイの挑戦』は遺跡争奪があると同時に、イティーチという異星人との戦争で人類が滅亡寸前になったことを、その戦争の英雄である祖父などは覚えています。

『エンダー四部作』は、地球が最初の戦争で大被害を受けました。それ以前に人口問題でカトリックが禁教になるほど社会が圧迫されていたことも特徴です。その後、滅ぼしたバガーの開発済みの星々を事実上遺跡として居住地・農地としました。技術を理解していないで使っているのも遺跡系作品と共通します。

 

 

『スターウォーズ』はすべてがあいまいです。過去の歴史が質量とも巨大すぎます。パルパティーン帝国の暴虐、非正史のユージャン・ヴォング戦争は相当な悲惨ですが、銀河の規模が圧倒的に大きい。

『宇宙英雄ローダン・シリーズ』は、核戦争ギリギリから回避するために異星人との接触を利用して太陽系帝国が築かれ、その後何度も滅亡寸前の破局があり、政体も様々に変わります。ただしローダンたちが中心であることは不老不死技術もあり千年単位で変わりません。

 ローダンのパロディに近い『反逆者の月』は伝染病で滅亡した帝国の、反乱によって生じた生き残りが遺跡化しており、それが歴史の影の陰謀という社会ともつながっています。話が解決してからは人権を残しながら帝国という政体は保ってしまっています。

 

 

 惨事があったのに社会の変化が極端に小さいのが、『ガンダム宇宙世紀』『ガンダムX』『宇宙戦艦ヤマト(旧)』などです。

 宇宙世紀は一年戦争だけで人口の半分が死、それでも連邦という政体・腐敗が変わらず、その人口すらごく短期間で戻り環境破壊が進んだとされます。

 ガンダムXはコロニー落としが激しく人口の九割以上が死、それでも数十年後には地球は統一に向かい、大戦を繰り返そうとしました。

 宇宙戦艦ヤマトは繰り返し膨大な死者が出ていますが、治安崩壊・極端な軍国主義化はなく、ある程度の市民生活が保たれています。

『ダーティペア』は惑星が破壊され数十億人が死ぬのが日常のちょっとした災害程度とみなされ、上司も含め職も失わず刑事罰も課されません。

 スーパーロボットアニメの多くも、破壊規模を問わず社会構造の変化が小さいです。『スーパーロボット大戦OG』もそうです。

 

 ヤマトは特に全人類がパルチザン化した「永遠に」で変化がないのは……これはフランスなど、多くがレジスタンスとなった社会の再建・私刑・再統合が参考になるでしょう。

『レイズナー』も占領レジスタンス、『タイラー』もアシュラン戦役で多くがレジスタンス活動をし、統一後に反乱者も多く出ました。

 

 

 ここで加えておきますか……悪のルーツが明白な作品。

『セーフホールド戦史』『反逆者の月』ともにディヴィッド・ウェーバー。

『セーフホールド戦史』はバーサーカー型の異星人に滅ぼされた生存者が、探知の元となる高度機械を切ると決めた時、少数の権力者が超権力社会を作って技術を禁じる選択をしました。異を唱えた人が残したアンドロイドが話を進めます。その最初の人たちの悪がそのまま引き継がれたわけです。

『反逆者の月』は、銀河帝国の反乱艦とその子孫が人類の祖となり、反乱者の一部が技術で長生きして特別な特権階級として歴史を裏から操った、それが歴史の中で悪が多すぎる理由とされました。

 

 

 こう考えてみると、生産力爆発・極端な平等化がある作品がどれほど稀かと、文化・自由な生活が容認されているか否か、の違いの大きさです。単純に歌が許されるか否かがものすごい差。

 ほか、人口減少率、技術や制度が残ったか、外部の支援があるか……『文明崩壊』でも、外部との接触と支援の有無という地政学的条件は、島がタスマニア島のように技術を失い衰退していきいくつかの島のように滅亡に至るか否かを分ける……というような尺度で分類できそうです。表にもできるでしょう。

 生産力爆発・平等化/人口減少率・技術や制度の残存/外部の支援/社会の質、歌が許されるか、と分けるなど。

 

 

 

 さてここで、『現実』を考えてみましょうか。

 今のところは幸い核戦争は起きていませんが、人口の何割も減る破局はいくつも見られます。

 特に激しい侵略、疫病、体制変革による粛清などが大きいようです。

 

 はっきりと人口減少率が大きいのは、コロンブス以後の大航海時代のユーラシア白人との接触による、南北アメリカ・オーストラリア・ニュージーランド・ハワイなどの伝染病による大量死。90%のすさまじい数字で、それによる崩壊を西洋の侵略精神が覆って、文化・文字・宗教・政治を完全に作り替える結果になりました。

 国家戦争で特大なのが、南米で起きたパラグアイ三国戦争と呼ばれる戦争。国の半分が死んだと言われます。

 それ以前も、都市国家水準では皆殺し、あるいは男は皆殺し女子供は奴隷……インドでは都市国家の落城で女を薪に乗せていきながら焼く伝統……が世界の共通ルールで、中国史やチンギス・ハン、ティムールなどは凄惨な虐殺が描かれます。ただし、大地域全体の人口減少比率はそれほど大きくないようです。

 

 中国は三国志で知られる後漢末に半分以上減ったように書かれますが、戸籍崩壊による可能性も。

 また太平天国の乱も千万単位のとてつもない人数です。

 第一次・第二次世界大戦は人数は多いですが、世界人口グラフで見るとほんの少しです。

 

 ソ連、中国共産党の虐殺も大きいですが、半分には至っていません。カンボジアは例外的に殺された比が大きい。

 

 きわめて局地的に、アイスランドでの噴火などで大きい割合が死んだことも知られます。

 また飢饉による大量死……見方を変えると虐殺も歴史の中には多く見られます。フランス革命後のヨーロッパでもとんでもない人数の飢饉死はかなりありますし、アイルランドやベンガル、そしてウクライナの大量虐殺でもある餓死は知られています。日本史でも江戸時代の歴史で重要な飢饉があり、それらは火山噴火などと世界史の関係でも注目されます。

 

 世界史の大疫病……中世後期ヨーロッパの黒死病、古代史のユスティニアヌスのペストや中国史・日本史の伝染病も被害は大きいです。

 

 新大陸の大量死は侵略が加わり、社会体制を大きく変えました。奴隷制どころか、奴隷制が維持できず黒人奴隷を入れるほどでした。

 

 黒死病は、労働者の減少で一人の労働者の価値が高くなり、賃金が上がったとも言われます。それは西ヨーロッパだけで、東ヨーロッパではかえって農奴制が強まったとも言われます。

 ダロン・アセモグルらの『国家はなぜ衰退するのか』『自由の命運』は特にこのことに注目します。それで、『銃・病原菌・鉄』の地理によるという考えを否定し、まるで一つのパチンコ玉が釘にぶつかる時の速度・角度の測定不能なほどの違いが、いくつもの釘で増幅されて別のポケットに行くに至るように、最初の、予測不能な、偶然である、ごくわずかな違いが二つの地域の制度を決め、制度は恐ろしい慣性で続く……中南米でよくある、革命を起こしても勝った革命家がもっと残忍な独裁者になる……『火の鳥 太陽編』……世界を事実上絶望と語っています。

 

 アセモグルかダイアモンドか……『スタートレック』と『銀河英雄伝説』を分けるのは。

 この問いでもいけるでしょう。

 また、トインビーの、文明が試練にあう、でもあるでしょう。

 

 

 ただ、少し問いを分散させましょう。特に重要なことに集中して。

 技術、外部、それも重要ですが、協力という一点に。

 その大きいヒントは結局『北斗の拳』です。

 

 核戦争や伝染病でたくさんの人が死んだ。それで何が起きるでしょう?

 今の自分に起きたと考えると、自分は無事でも、核戦争の場合ダムや発電所や道路も、明日行く店も破壊され、伝染病でも食糧を店に並べ水道の面倒を見る人が死ぬ。

 死ぬ数が少なければ休日返上で出勤する人が頑張って食糧店や水道が維持されるかもしれないが、限度を超えるとそれも崩れる。何とかなったケースが文明が壊れなかったケース、ならなかったのが壊れたケース、と思われる。

 食えない、飲めない、洗えない=死ぬ。

 

 さらに、その破壊自体で死んだ人、そして食糧の奪い合いで優先順位が低い、たとえば本が薪として焼かれて、知識も減る。

 そんな時には知識があるだけでも憎まれ殺される、知識自体を破壊することも人間はよくやる。

 

 人間が、社会・国家を保って生き続ける条件。

 水、食糧、暖房、家。

 水道局、警察。

 食料品~道路~食糧工場~農業・貿易。その流れを逆流する貨幣……『北斗の拳』の、札束入りカバンをぶちまけて尻をふく紙にもならない、にならないこと。黄金でも社会崩壊の限度に至れば塩や絹と違い価値を失う時が来る。古代でも金属価値より数字価値が大きい貨幣は価値を失った。道路、自動車、信号、燃料、警察……。右側通行というルール。

 

 食えなくなったら、日本の戦後の混乱期ではタケノコ生活・闇市、服などの財産と農村の食糧を交換したなどが言われる。

 そこである程度秩序が生じた。ただし、日本の場合はアメリカの援助もあり、警察権力の完全崩壊ではなかった。

 

 崩壊が本当に大きい場合は、生きるために、集まり結束する。それこそ『北斗の拳』の牙一族のように、血縁などがあると強い。ラオウたちのようにカリスマでも……あの作品では銃が使えなくなった空白を拳法が埋めた、があったが、より現実には馬を扱う技術、天文を見るカリスマなどが有効だったようだ。秦は馬を育てる、騎馬民族系の建国神話では製鉄奴隷の伝説が目立つ。

 おそらく、そのような集団が、暴力に満ちた世界で生き残るための、マフィアの掟の延長・人間の自然な感情でできる小社会を築き、その延長としてさまざまな権威主義・軍国主義国家が生じるのだろう。

 

 三国志の描写もそれに近いし、西ローマ崩壊後の国もそんな感じだろう。

 ただし現実の人類の場合宗教が大きい役割を果たす。

 日本の中世、西ヨーロッパの中世とも、宗教が極めて強い。寺・教会や修道院が巨大な土地所有者であり、強い軍事力を持つ。技術・文字を独占し、実際には必要とされる魔術面でも人々を支え、教育する。情報と物流のネットワークを強く支配する。

 

 そして、そんな崩壊状態で暴力的に襲ってくる侵略者がいれば、それに対抗するすべはない……大航海時代の新世界。

 

 

 中国史は、三国志の後漢末、唐の安史の乱、どちらもとんでもない動乱です。

 しかし中国は、日本や西ヨーロッパと違って、中世の特徴を持たない世界になりました。中国としての、中央集権と文字と官僚制のシステムが続いたのです。西ローマのような極端な技術低下もない。

 それは何よりも黄河・長江など超巨大河川がある、その運搬能力と農業生産力が、かなりの破壊の中でも多くの技術、文字を書く人を残し続けたのでしょうか。

 また、蛮族たちもすぐに言語を学び、現地エリートを採用し、結局は中国文明に同化されていきました。

 

 インドの中世、はやはり理解しにくいです。

 イスラムや東ローマもかなり中世の面がありつつ、中央集権の面も強い。宗教が圧倒的に強い。

 

 

 結局は、それらの社会・国を作る動機は、食糧などの物資を配り、犯罪を裁き、戦うため。協力のため、と言っていい。

 協力……以前も言った、二人の農民が一人で動かせない岩を二人で持ち上げて四人分の畑を作る。ではそれが、どうやって暗黒の森、猜疑連鎖による殺し合いにならずに協力し続けられるか。

 実際には、人はそれを考えていない。テニスのプロにどうやって打っているんだと聞いて言葉にするのが難しいように。ムカデにどう歩いているんだと聞いたら歩けなくなるように。だが、言葉にすることは腕を上げる方法にもなる。

 啓蒙時代は、賢い人たちが考えた。社会契約論を。それ以前にも、プラトンなどは考えた。旧約聖書の、モーセが十戒を受けるのもそれと言っていい。

 

 最高の協力は、『スタートレック』のボーグだろう。すべての、あらゆる異星人を攻撃し、すべての「人」に機械を埋め込み、脳を支配し、それぞれに通信機がついた状態にしてクイーンと通信で直結させる。

『エンダー』のバガーは生来の生理としてその状態にある。

 

 問題は、そのような集合精神異星人は創造性に乏しいこと。新しい敵に会った時に対応できない可能性がある。ボーグは次々と別の文明を吸収し、内部に多様性を持つことで生き延びる。『ヴォイジャー』ではジェインウェイの艦と協力することで自力では勝てない敵に対抗した。

 これは『宇宙戦艦ヤマト』白色彗星帝国がデスラーを受け入れ技術を学んだこと、その元ネタであるモンゴル帝国が征服された民の技術者を厚遇し攻城兵器も作り上げたことに通じます。

 恐ろしいのは、民主主義・自由・人権が、強さ・生存の必要十分条件ではない、ということです。

『バーサーカー』は、本体の創造性は乏しいかわりに、内部で放射性物質サイコロを振って方針を決める。だから敵がバーサーカーの行動を読むことはできない。

 

『スーパーロボット大戦OG』のバルトール事件は、異星人の攻撃・地球人の無能で家族を失い絶望したユルゲン博士が、地球人をバガーのように協力し勝利する存在に作り替えようとして起きた。

 

 地球人は、物語・集団で虚構を信じることで、本来のサルの体が許す150人より多くの人数で団結できる……ユヴァル・ノア・ハラリの洞察です。

 ただ、その物語が、生存に最適かどうかはわかりません。

 以前言った、国家を擬人化すると神である……「神」は愚か。人類が自然に膨大な人数の群れを擬人化して心に作ってしまう「国・神」は、人類の設計として客観的に愚かである……深いジレンマです。

 ある時最適でも突然変わることもあり得ますし、時間によることもあり得ます。たとえば伝染病対策として完璧な物語・制度が、侵略者との戦いでは無能、がありえます。

 一般には、戦うために最適・協力が極めて強い状態である全体主義・軍国主義、徹底した保守・何も変化を許さない、が、急速に技術を進歩させて征服に来る周囲に勝てなくなる、です。

 

 ここで出る『三体』の難しさは、短時間・小さい船であれば誰もが納得する、非常事態で生き残るためのルールを、長期間・大人口・広範囲に強制し続けることが困難だ、です。強制の結果〈大峡谷〉が起きたトラウマ、潜在的には国家・階級間の猜疑連鎖から、合理的な生存手段をとれない、法と道徳を一致させて全体で潰す。内部に潜んでいた憎悪を意識的でなく処理して、逃亡主義禁止という一致した法と道徳の一致と強制が生じた。

『ギャラクティカ』は少人数なので、軍隊的秩序だけ以外選択肢がない。でもそれが大帝国になったら?

 以前からも何度も考えた、人間集団の規模による体制、ひいては宗教や道徳にいたる違いと、昆虫が巨大化できないなど生物学と共通すること、の応用でもあります。

 

 

 どうすれば協力できるのか?

 協力のためには全体主義・軍国主義・権威主義しかないのか?それとも民主主義が最良なのか?

『宇宙軍士官学校』が強調する、自分を変える、をしつつ協力し続けられる、それに一番適しているのは民主主義なのか?人間の民主主義と普通教育よりシンギュラリティ後のAIのほうが優れることは?

 

『スタートレック』型と『宇宙の戦士』型、実際にはどちらが優れているのか?

 どうすればどちらになるか選べるのか……異星人というどうしようもない要因しかないのか?それとも、単に生産の指数関数増大というタブーを解禁するだけでいいのか?

 

 それ以前に、目的をどうするかもあります。人類の存続さえも道徳より低いとしてしまいますか?

 その上で、目的に向けて、どうやって協力するか。そのためには、どれだけ自分を、人間を理解しているか……啓蒙思想の思想家も、マルクスやレーニンも、間違いなく足りなかった。今のハイエクも足りないはず。

 

 進化と同じ、結果として生き残った「もの」が正解、でいいのでしょうか?

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