天界ホテルの禄魚の間では今年度のドラフトが開始されようとしていた。
主催は転生管理委員会。
例年はさほど活況の無い会だが、この数年は世間の目を集めている。
会場中央に配置されたいくつかの丸テーブルには、すでに各担当グループが陣取っている。
複数の並行世界の一部の地域(大抵は日本のオタク層)での転生ブームにより天界における転生需要が急増。
管理委員会は有望な転生候補者を平等に振り分けるため、ドラフトをこの20年ほど実施。
今のところ成功と言っていいだろう。
「では、今年度の転生ドラフトの開会を宣言いたします」
会場のスピーカーからは聞き慣れた高めの声が流れる。
テーブルにはドラフト会議職員により転生候補者の名前を書く紙とペンが配布される。
10分ほどすると最初の希望選択候補者が書かれた紙が回収される。
そして会場の壇上にある大型モニターに人の視線が集中する。
今回の参加グループは以下となる。
【オリジナル転生:スペースオペラ】
【オリジナル転生:厳密系ファンタジー世界】
【オリジナル転生:ふわっと系ファンタジー世界】
【二次創作転生:スペースオペラ世界】
【二次創作転生:ふわっと系ファンタジー世界】
【二次創作系:現代もの】
【二次創作系:学園もの】
【クロスオーバー系】
【現実やりなおしもの】
【歴史転生:世界】
【歴史転生:日本】
より細かいグループも存在するが、昨年の活動実績と自他推薦により参加グループは決定される。
これ以外にも特定の作品グループが数年おきに発生するが、ある程度年数がたつと、より大きなジャンルグループへ吸収されることが常だ。
コンテンツとは諸行無常なのだ。
獲得された転生候補者は各グループと提携している他の小ジャンルグループへの振り分けとなる。
特に二次創作系は年々小グループの増加傾向があるので転生候補者の獲得機会には必ず顔を出す。
「第一回選択希望候補者」
進行の声に皆大型モニターを凝視。
【グループ名+チート名+転生方法】が読み上げられる。
「オリジナルスペオペ、幸運チート付与、トラック転生」
「オリジナル厳密ファンタジー、農学者兼農家、召喚形式」
「オリジナルふわっとファンタジー、農学者兼農家、天災転生」
「二次スペオペ、天才技師兼パイロット才能、落雷転生
「二次ふわっとファンタジー、経験値バグチート、VRMMO召喚形式」
「二次現代もの、ロボット操縦及び格闘能力、トラック転生」
「二次学園もの、原作有力者血縁及び天才及び鈍感、落雷転生」
「クロスオーバー、幸運チート付与、トラック転生」
「現実やりおなおし、情報端末未来予知、病死」
「歴史:世界、屈強な肉体及び戦略家、図書館での本棚圧死」
「歴史:日本、天才剣士及び鈍感、トラック転生」
転生候補者は付与予定のチート名がそのまま識別名になる。
転生の仕方については契約を結ぶための交渉方法と認識されている。
オリジナルの厳密とふわっとの両ファンタジーでの選択希望候補者がかぶる。
さらにオリジナルスペオペとクロスオーバーもかぶった。
特にクロスオーバーがオリジナルスペオペと被せてきたのは会場のどよめきを誘った。
二次ふわっとのVRMMO召喚形式はこの数年の流行だが、それを交渉方法に持ってきたのは
その先見性に会場も黙りこんだ。
二次学園の原作血縁者はお決まりだが、丸テーブルの関係者たちががっちり握手をしている。
安牌ではあるが、需要を十二分に満たせる人材を確保できるのだ。
現在の趨勢を考えれば、鈍感による美少女ハーレムルート作品を強化できるのはグループとしては即戦力になる。
歴史:世界における図書館での本棚圧死は非常に特殊だが、知識前提の転生候補者を好む歴史系グループとしては時折やる手だ。
候補者抽選では、オリジナル厳密ファンタジーとクロスオーバーが交渉権獲得のガッツポーズを見せた。
はずれ一位では先ほどの選択希望候補者頭よりも大きなどよめきが上がった。
「オリジナルスペオペ、ジークフリード・キルヒアイスの能力、落雷転生」
「オリジナルふわっとファンタジー、第四の壁破壊、トラック転生」
ドラフト関係者、各グループともオリジナルふわっとファンタジーの判断にどよめいた。
各テーブルでは関係者がその判断の肯定・否定を早速戦わせていた。
この年のドラフトは20年語り継がれる混戦となった。
abemaTVで魔法科高校の劣等生が一挙公開されていたのでちょっと書いてみました。