なんやこいつ、きも。とおもってくれたらほんもうです。
この世界は不平等だ。それは誰だって常日頃から感じてると思う。
その中でも特に顕著なのが性差。生まれが男か女か。たったそれだけの事で将来が変わる。
今でこそ減ったが、それでもまだ亭主関白なんて古ぼけた考えの人間はいるし、逆に男なんてクソ。なんて言う人間までいる。
しかし、使い古された言葉だがどちらが欠けても世界はまわらないのだ。互いに互いを尊重しなければならない。どちらが上でも下でもいけないのだ。
そんな中、俺は思った。全てを平等にしようと。全て平坦に。全員が地に立ち、這いつくばる者も、担ぎ上げられる者も存在しない。そんな世界を作ろうと。
しかし、そのためには人ならざるものが必要になる。人の上に人を作らないのであれば、人でないものが上に立てばいい。
すべての人はその、唯一の下に平等になる。
そして、俺がその唯一になる。そうすれば世界は平等だ。俺は孤独でいい。たとえ、世界中から悪意を向けられようと、俺は気にしない。
なぜなら俺は、既に人ならざるものだから。
そうして俺、<全知 全能>(みなとも ぜうす)は、この高度育成高等学校の門をくぐったのである。
新入生の入学式を終えた職員室は、喧騒に包まれていた。
本来、入学式は生徒会主導でこの時期に教員達が忙しくなることはない。では何がこの職員室を騒がしくしているのか。その答えは、モニターに映っていた。
その画面はこの学校の予算。生徒に毎月配る金額や、学校運営に使われる金額の総資産が映っているはずだった。この学校は国立。つまり、その資産は言ってしまえば国家の資産であった。そうなると当然、桁外れの数字になるはずだ。
しかし、何度モニターを見ても映っているのはたった一つの0。それが意味するのは唯一つ。何者かに国の資産が盗まれたのだ。
すべて電子マネーで管理していて、現金はたった1円もないこの学校では、クラッキングをすれば可能な話だ。しかし、当然ファイヤーウォールは並大抵のものではないし、その他にも何重にもクラッキング対策はされている。
にもかかわらず、このようなことが起きた。しかも、その痕跡が1つもない。入ってきた回線を逆探知しても、海外サーバーを幾つも介しており、追いかけるにはハードの性能が足りない。手も足も出ない状況だった。
そんな大半の教師たちが頭を抱えるなか、一人の教師が声を上げた。
「この生徒のプライベートPt異常だぞ!?」
その言葉に周りの教師たちは頭を起こし、そのモニターを見つめる。
そこには、消えた総資産丸々の金額が映し出されていた。
「全知 全能。今年入学の生徒ですね。Aクラスです。さすがゼウス」
「こいつが犯人か?でも新入生には端末がないしな。どうやったんだ?マジでゼウスか?」
「ここのファイヤーウォールを突破したんだそんなこと余裕だろうよ。だってゼウスだし。」
一部の教員がそんな話をしている中、職員室の扉が開かれた。
「邪魔するぞ」
そんな傲慢な言葉と共に入ってきたのは件の生徒。全知全能だった。そんな彼にいち早く対応したのは、彼の担任である、真嶋智也。
「いいところに来た全知。いま呼ぼうと思ってたんだ。」
「そうか?ちょうどいい。俺も話があったんだ。」
「なら先に言ってみろ。俺の話はその後でもいい。」
「そうか?なら遠慮なく。
この学校の資産をクラッキングして盗んだのは俺だ。どうせお前達が聞きたかったのもそれだろ?そこで本題だ。俺はこの資産でこの学校の運営権を買おう。なに、校則にあることを実践しているだけだ。問題ないだろう?」
彼の主張にほとんどの人間が頭を痛めるなか、真嶋は至極冷静にあいてする。
「ふむ。言ってることはもっともだが、それ以前に犯罪だ。お前を捕まえられるんだぞ?」
「ふっ。たしかに俺は犯罪者だ。だが、俺の無罪を俺は既に購入済みだよ。ついさっきここの裁判所に行ってきた。」
「なるほど、なら問題ないな。ここの規則でお前に運営権を売らねばならない。しかし、足りると思っているのか?」
「無論だ。ここにあった資産は言ってしまえばこの学校の価値だ。その額でなぜ買えないと考える?それに俺に出来ないことはない。なぜなら俺は、ゼウスだからな!」
その言葉に今まで冷静だった真嶋でさえも思わず絶句する。
しかし、規則上売らないわけにはいかない。
こうして彼、全知全能は、この学校の支配者となったのであった。