ロクでなし魔術講師と復讐の精霊使い   作:ユキシア

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鉄道駅

「お前等に話がある」

特務分室室長であるイヴの命令によって聖リリィ魔術女学院に潜入任務を言い渡されたロクスはセリカの変化の薬によって女になって聖リリィ魔術女学院の学園長であるマリアンヌが元・蒼天十字団(ヘヴンズ・クロイツ)の研究員であるか、その真偽を確かめる為に聖リリィ魔術女学院に潜入するのだが、それとは別でリィエル達の短期留学、そしてロクス同様に女になったグレン達と一緒に聖リリィ魔術女学院に向かうのであった。

その道中、帝都の北側にあるライツェル・クルス鉄道駅に向かう前に馬車内で聖リリィ魔術女学院の制服に身を包んだ女性の姿をしたロクスがシスティーナ達に話しかける。

「お前等のことだから大体は察しているとは思うが、余計な面倒事は増やしたくねえから一応言っておく。俺がこんな恰好をしているのは仕事だ。内容は伏せるがとある調査が目的で聖リリィ魔術女学院に潜入することになった」

断じてその馬鹿(リィエル)の為じゃねぇ、とリィエルに視線を向けて言う。

「俺は俺で動く必要がある。だから俺の邪魔だけはするな。それだけだ。ああ、それと聖リリィ魔術女学院では俺の事はフラムと呼べ。間違ってもロクスって呼ぶなよ……聞いてんのかよ? フィーベル」

馬車に乗る前から暗雲を背負うシスティーナ。見るからにショックを受けて抜け出せていないかのようにその瞳は絶望に染まっていた。

俯かせていた顔を上げ、システィーナはグレンそしてロクスを見て視線を下に向けるとまた俯く。

「世の中、不公平よ……」

「システィ、元気出して」

「システィーナ、苺タルト食べる?」

ルミアとリィエルはそんなシスティーナを励ます。

ショックを受けている理由に何となく察したロクスが溜息を溢しながら言う。

「胸が大きかろうが小さかろうが、使うアテがなければどうでもいいだろが」

「使うわよ!! ……きっと、たぶん」

「システィ……」

吠えるシスティーナだが、本当に使う日が来るのかはわからない。

「コレのどこがいいのやら……」

「ロクス君、止めてあげて。悪気がないのはわかっているから」

制服の胸から自身の胸を揉みながら疑問を口にするロクスにルミアはこれ以上システィーナの(こころ)に傷が広がらないようにするも。

「変な目で見られたくないくせに胸を大きくしたい女のソレには理解できねえな。魔術師に胸の大きさなんて関係ねえだろ」

悪気も悪意もなく、ロクスはただ純粋な気持ちを言葉にした。

「持つ者には持たざる者の気持ちなんてわからないのよ!!」

シャー! と俯かせた顔を上げて威嚇する猫のように吠えるシスティーナをどうどうと宥めるルミア。しかしルミアもシスティーナの言う持つ者であってシスティーナはルミアの胸部を見てまたも首を前に折る。

そんなシスティーナにルミアは何とも言えない笑みを浮かべ、リィエルは首を傾げる。

近くにいたグレンも何も言えず、ただ黙ってやり過ごして見ていた。

ロクスはロクスで伝えることは伝えた、と言わんばかりの態度でルミア達から離れて腰を落ち着かせて外の風景を眺めていた。

そんなロクスの顔にルミアは視線を向けていた。

社交舞踏会が終えてから久々に顔を見せたロクス。潜入任務の為に既に女性になっていたとはいえ、何時ものルミアならロクスに歩み寄り、嫌な顔をものともせずに話しかけることぐらいはするだろう。

だがそれができずにいる。

『俺とお前達では進む道が違う。もう俺に関わるな』

社交舞踏会後に言われた彼の言葉が今もルミアの頭から離れずにいる。

あれはまさしくロクスがルミアに見せた優しさと懇願。

復讐という茨の道を進むロクス。

その道を歩ませまいとロクスはルミアを拒絶した。

自分の傍から引き剥がし、別の道を進ませようとロクスが見せた優しさは悲痛にそのもの。

愛する者を失った痛みを知っているからこそロクスは自分に関わらせないように告げたのだ。

今も社交舞踏会前なら悪態や苛立ちをルミアに見せていただろう。

だが、今はそれすら見せない。

無に近い感情を見せるロクスにルミアの胸にチクリと小さな痛みが走る。

 

 

 

フェジテを発って四日目の朝。

一行は、アルザーノ帝国首都、帝都オルランドへと辿り着く。

その帝都の北側にあるライツェル・クルス鉄道駅。その五番線ホームから、帝都より北西、湖水地方リリタニアにある聖リリィ魔術女学院直通の鉄道列車が発着している。

五番線ホームにはこれからシスティーナ達の留学先の聖リリィ魔術女学院の生徒達がホームのそこかしこで、きゃぴきゃぴ姦しく会話に華を咲かせている。

(うるせぇ……)

姦しく会話に華を咲かせている聖リリィ魔術女学院の生徒達に内心苛立ちを見せる。だが、ただの雑談程度ではロクスもそこまでは気にも留めない。しかし、その生徒達の視線が複数向けられているともなれば話は変わる。

ボソボソと聞こえる内緒話。僅かに聞こえる内容から自分のことを言われているともなればロクスが苛立ちのも無理はない。

「そんな目立つ髪をしていたら嫌でも話題になるわよ」

システィーナ達も内心苛立ちロクスと聖リリィ魔術女学院の生徒達の内緒話に察してそう言った。

「ロクス君、別嬪さんだものね」

炎のように燃えるような赤い髪は嫌でも目立ち、高い身長は目につきやすい。なにより顔もスタイルもいいともなれば視線も向けられるし、内緒話の一つや二つは出て来ても不思議ではない。

なによりお嬢様とはかけ離れた男らしい仕草や態度が所作に出ているにも関わらずどこか品もある。

「私達の学院にあのような方はいらっしゃいましたか?」

「いえ、わたくしも初めてお見えになりましたわ。そういえばかの有名なイグナイト家の遠縁の方が我が校に推薦で入られるとか……」

「まぁ、あのイグナイト家の方ですの」

「あの赤い髪、まさにイグナイト家の……」

聖リリィ魔術女学院の生徒達のそんな会話がロクスの耳に届く。

帝国古参の大貴族、イグナイト公爵家。遠縁とはいえその力と権力は魔術社会では知らぬ者はいない。

(それを含めて俺にこの潜入任務を一任したのか……)

赤い髪、イグナイト家が得意とする炎熱魔術の使い手。

偽装とはいえ、この共通点があれば遠縁という形でイグナイト家の力を使って聖リリィ魔術女学院に推薦で内部に潜入できる。イグナイト家の頼みともあれば断ることなどまずできない。だからこそイヴはロクスにこの任務を一任させたのかもしれない。

(まぁいい……どちらにしても俺は仕事をするだけだ)

ロクスの任務は蒼天十字団(ヘヴンズ・クロイツ)の研究員と思われる聖リリィ魔術女学院の学院長マリアンヌの真偽を確かめること。

それ以外の雑事に気にすることはない。

だからロクスはリィエルがこの場にいないことは口にしなかった。

数分後、グレン達はようやくリィエルがいないことに気付いて大慌てで探し始めた。

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