呪腕先生は人理修復後、ハルケギニアに呼ばれたようです 作:海棠
正直言います。今回かなりの難産でした。なんでギーシュ殺しちゃったんだ…となりました。
次の日から学園長オールド・オスマンから謹慎を言い渡されたルイズはのたうちまわった。
自分のせいだ、モンモランシーがかわいそうだと叫び、涙を流しながら床をのたうち回った。吐きもした。
だが彼女は決してアサシンを責めなかった。それが彼にとってとてつもなくしんどく、思わず首を掻っ切りそうになったが彼女に必死になって止められた。
しかし一通りのたうち回ると彼女はなんとか平常さを取り戻した。これが二日目の出来事である。
そして謹慎を言い渡されてから4日目、部屋でルイズはベッドにぐだーっと寝ころびながら、アサシンは自身の短剣を磨きながら時間をつぶしていた。
時々忍び込んだネズミを捕まえたりしながら暇をつぶしたりもしたが、それでも最近はネズミも学習したのかめっきり減ったというものである。
「・・・暇ね」
「・・・そうでございますなぁ」
こんな時誰かが遊びに来てくれたらいいのだが皆怖がっているのか誰も来ない。いや、キュルケは別だ。来なくてもいいのに来る。だが今は授業中。来るはずがない。鬱陶しいとは思っていたがいざいないと寂しいものがあるんだなと彼女は理解した。
そんな時、ドアがコンコンとノックされた。ご飯かな、と彼女は思ったが時間帯的にご飯ではないようだ。というよりご飯さっき食べたじゃん。何ボケたおばあさんみたいなこと言ってんだと自分に突っ込みを入れつつドアを少しずらすように開ける。
「何かしら…?」
「あ、ルイズ様。お手紙です」
そう言いながら自分をかいがいしく世話してくれるメイド・シエスタがお手紙を渡してくる。
礼を言いながら彼女は手紙の入った便箋を見る。表面には何も書いてない。じゃあ裏面を見ると彼女はピタッと動きを止めた。
そこには
とかなり達筆な文字で書かれていた。背中にいやな汗がじっとりとし始めていることを自覚しつつルイズは微妙に震える指で便箋を開けると中に入っていた手紙に目を通す。
「・・・」
すると彼女はがくがくと震え始めた。
「どうしましたマスター殿?!」
アサシンは慌てて彼女のそばによって隣から手紙をのぞきこむ。
そこにはこう書かれていた。
「・・・母上様から、ですか?」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・あの、主殿?」
返事がないことを不審に思ったアサシンは彼女の顔を覗き込むと驚愕したような声を出した。
「き、気絶しておられる…?!」
器用なことに彼女は立ったまま白目をむいて気絶していた。きっと余りの恐怖に気絶してしまったのだろう。漏らさなかっただけましというものである。
次の日
その日、彼女は馬車に乗っていた。理由は一つだけで昨日届いた実家からの手紙である。なんか泣きわめく気力もわかない彼女は何も言わずぼーっとした顔で窓の外を眺めていた。これから処罰されるであろう身にもかかわらずまるで自然体でいた。
そしてそれを気まずそうに見ている真っ黒な男が一人。
「・・・」
「・・・」
二人の間に会話はなく、ただ重い沈黙があるのみ。男は仮面の下の眉間にしわを寄せながら彼女を見つめ、視線を向けられている当人はただ穏やかな表情で外を眺めている。お互いの視線は交差しない。していない。というより学園から出る前から一向にしていない。
「・・・主殿」
「・・・?」
馬車に乗って初めて彼女は男に視線を向けた。視線が交差する。男は彼女の顔を正面から見据える。今更であまりにも場違いではあるが端正な顔立ちをしていると思った。しかしその表情は穏やかで何も考えていないようにも見えた。
「・・・私の浅はかな懺悔を聞いていただけますか?」
「・・・」コクッ
肯定。何も考えていないような表情から一変してまっすぐに彼の顔を見つめた。上に立つにふさわしい顔だ。
「・・・・・・私はあの時、頭に来ていたのです。」
「・・・?」
「何も悪くないシエスタ殿を侮辱されて、思わず腹が立ったのです。殺してやろうとも思ってしまいました。決闘だから全力を出したというのは、はっきり言いまして自分への汚らしい言い訳なのです。
・・・・・・やはり私は従者として最低の男だと思います。言われても仕方がありませぬし失望されても仕方ありませぬ。ただ私情で将来ある人一人の命を殺めてしまった。これはあまりにも、あまりにも・・・」
「・・・あのね、アサシン」
彼女が口を開いた。
思わず男はびくっと体を揺らす。
「あの時からずっと考えていたことがあるの」
「考えていたこと、ですか…?」
「あなたがギーシュを殺めてしまったこと。・・・それの本当の悪は誰か」
「それは私が…!「最後まで聞いて。・・・あの後キュルケからを聞いたところによればあなたは止めようとしてくれていたみたいじゃない、ギーシュを」
「・・・それは、そうですが」
「・・・まず前提として・・・そうね、アサシン。決闘はね、本当は禁止されてるの。大昔に、私が生まれるよりずっと前に。
ただみんな禁止されていることを知ってはいるけど止めはしないの。
あの時のみんなは『観客』だったのよ。『観客』はいつだって『舞台』を欲しがるわ。あなたとギーシュはあの時たまたま『舞台』の上で演じて、幕を引いただけ。誰が悪いとかじゃないわ。確かにギーシュがシエスタに吹っ掛けたのが最初の始まりかもしれない。だけどね、私はこう思うの。本当に悪いのはギーシュを殺したあなたでも、決闘をたたきつけたギーシュでもない。
その『舞台』を止めなかった『観客』が一番の『悪』なのよ」
次の瞬間、男は息をのんだ。半端で未熟なまるで実っていない果実のような女からこのような言葉が出てくるとは思っていなかったのだ。
彼女はもうすでに覚悟が出来ていたというのだろうか。自分が浅はかすぎて恥ずかしくなる。自刃して消えてしまいたい。
アサシンは仮面の下で苦悶の顔を浮かべた。
屋敷に到着すると彼らを待っていたのは畏怖の目線と侮蔑の目。そして彼女の姉からの攻める言葉だった。
「この馬鹿ルイズ!あなたなにしたのかわかってるんでしょうね!」
するとアサシンが割って入る。
「いえ、したのは私です。だから今ここで裁かれるべきは私なのです。主殿を責めないでくれませんか」
「使い魔風情は黙っていなさい!これは家族の問題よ!」
「確かに、家族の問題に口をはさむべきではありません。ですが、私は主殿の使い魔でサーヴァント。提案することも、思慮することもできます。・・・とにかくルイズ殿ではなく私を責めるべきだと私は思うのですが」
すると姉は少し息を吸って吐き出すと諭すような口調で話しかけてくる。
「・・ルイズ」
「は、はい」
「あなた本当に素晴らしい使い魔を持ったのね。それは私も誇らしく思うわ」
「あ、ありがとうございます」
「でもね、ルイズ。貴方もわかっているでしょうけど、使い魔の責任は主の責任なのよ。下の人のミスは上の人が責任を取るものでしょう?」
「はい・・・」
「・・・確かに下のミスは上が責任を取るものです。私もこう見えて上に立っていた人間ですのでそれはわかります」
「あなたも上の人だったのね。それならば、わかるでしょう?」
「・・・ですが」
「何かしら」
「…時には下が命で償うこともあるのです。こちらの世界ではどうかはわかりませんが、少なくとも我々の世界ではそういうこともありました。・・・それでも、駄目でしょうか」
「・・・本当に見上げた忠誠心ね、感服するわ。確かにルイズが殺したわけじゃない、あなたが殺した。その話は聞いているわ。
・・・・・・これ以上は話が平行線になる。まずはお母様の所へ行かないと」
「・・・(コクッ」
ルイズは無言でうなずいた。アサシンもそれに追従していく。先ほどまでの話し合いが嘘のように彼は彼女の姉に素直についていった。
姉に少し案内されつつ、彼は視線だけ周りの装飾品に向けていた。
どう見ても高級品とわかる品が勢ぞろいで嫌でも自身の主が貴族のお嬢様であることを理解する。別に金持ちが嫌いなわけではないがやはり自分は高貴な人の元に召喚されたのだと再度理解した彼に自分じゃない方が良かったんじゃないかという後ろ暗い感情が襲う。
そんな自己嫌悪の渦に引きずり込まれていると彼らはいつの間にか大きな扉の前に案内された。ゴクリと息をのむ主の姿に使い魔の方もこっそり姿勢を正す。
「入りなさい」と心が通った凄みのある声に思わず彼女はびくっとした。姉も冷や汗をかきつつ二人に軽く応援の言葉をかけるとその場をあとにする。
意を決して彼女は扉をぎぃッと開けた。すると部屋には少し老けているように見える女性がいた。だがその肉体に宿っている魂、精神力はかなり強いことを彼は感じとる。
「お帰りなさい、ルイズ。あの手紙を読んだのですね?」
「はい・・・」
「あなたの、いや、あなたの使い魔がしてしまった事の責任を問う…。そのことを理解しているのですね?」
「はい・・・」
手が震える。足が震える。眼がにじむ。
あぁ、やっぱりだめかもしれない。彼女は今から捨てられる自分を幻視した。
覚悟はしていた。
自分がヴァリエール家の戸籍から消えるかもしれないということは覚悟はしていたはずだった。
だがいざ目の前で、現実で襲い掛かられるとその覚悟すら足りないとわかってしまう。吐き気もこみ上げてきそうだった。視界が暗くなる。思わず下を向きそうになる。
「待たれよ、母上殿」
そんな彼女の視界が一気に開けた。明るくなる。遅れて彼女は使い魔が自分の母親に口出しをしたことを理解した。
「なんです?」
「主殿は悪くありません。悪いのは私です。私が独断で行動したからこうなったのです。ならばここで裁かれるべきは、切り捨てられるべきは私です。主殿ではない」
「・・・」
理解して一気に青ざめた。つまり彼は自分の命と引き換えに自分を許して欲しいといっているのだ。
「あ、アサシン?!こ、ここは口出ししない方が」
「いえ、そういうわけにはいきませぬ。私だけが悪いはずです。
私が殺したならば私がとがめられるのが当然のはず。主殿は確かに私を召喚した契約者です。だからと言って責任を負うべきでしょうか?
彼女はまだ子供です。人一人の血を見たこともない、誰かのために悩み、涙を流すことができる優しき無垢な少女だということを召喚されてからまだ日にちが浅い私でも理解しているつもりです。
・・・こんな矮小な私のいうことなど信じてくれないかもしれませんが。そんな子に殺人の責任を負わせるのはいくらなんでも、あまりにも酷だと私は思うのですが……」
「・・・いえ、そういうわけにはいきません。あなたのいうことは分かります。確かにルイズは愛らしく、優しく、私の自慢の娘の一人です」
「お、おかあs「ですが」っ」
「貴族になるには『責任』というものは常に付きまといます。
そして今その責任が降りかかっている時。いわば『試練』のようなもの。その責任を背負い、前に進むことこそが貴族として求められているありかたなのです。
確かにルイズが殺せと命令するはずがないと私も断言しますし、あなたの独断だったということも信じましょう。ですが使い魔の責任は主の責任でもあります。だからこそあなただけが悪くてもルイズには責任を背負わせます」
「・・・」
「貴方は納得できない。その気持ちはわかります。でもこれは貴族の掟であり、試練なのです。それをご理解いただけませんか?」
「・・・承知いたしました」
「さてと・・・ひとまず話は終わりました」
そう言いながら彼女は立ち上がるとアサシンをまっすぐ見据えて行った。
「では手合わせしましょう」
「「・・・え?」」
アサシンは驚愕した。必ずこの貴族の風習を厳しく守る母上殿の(突然の)言動を解明しなければならぬと決意した。
彼には貴族の風習などわからぬ。ただ暗殺と忠義を尽くすしか能のない
「では、始めましょうか」
「あ、え、あ、はい、いいですよ。そちらにお任せします」
そんな彼でもいつまでも呆けているわけにはいかない。懐から短刀を取り出してスッと構える。すると相手もスッと構えた。突如覇気が噴き出した。肌にピリピリとこびりつくような濃密な覇気。
「フッ!!!!」
先に動いたのは彼女だった。素早く飛び込み、彼に剣を当てようと横に振る。
「ッ!!」
しかしそれに対して遅れを取るような彼ではない。
彼は暗殺者、その
彼は後方に舞いながら短剣を3本懐から抜くと素早く、そして正確に投げつける。しかしこれは弾かれてしまった。やはりと思いながら彼は外套の下で新しく抜いた短剣を握りつつ着陸するとすぐに肉薄を開始する。
金属音が連鎖的に鳴り響き、一際大きい金属音がなった。それと同時につばぜり合いが起こる。
お互いの顔がすぐ近くにある状況。少しでも力を抜けば首を落とされるかもしれないぐらい両者は全身の躯体に力を込めていた。グググ…と腕が曲がる。だが刃は動かない。脚も前に進もうとするがまるで頑丈な壁に体を押し付けているかのごとく動かない。
彼は心の中で右腕が使えないことを初めて嘆いた。あぁ、もう片方の腕がすぐ動かせるようなら短剣を掴んですぐさま突き刺せるのに…!!
だが嘆いても状況が変わるわけではない。彼は蹴りを腹部に押し込むように放ち、それを起点にして後方に大きく宙返りして跳んだ。
その姿にルイズは見惚れていた。
あぁ、あの強いお母様にあそこまで戦えるなんて、彼はなんて凄い使い魔なんだろうと。
そしてそれを召喚した自分はまだ天に見放されてないんじゃないかと思った。
彼女の母親であるカリーヌ・デジレ・ド・マイヤールは先までの一連の剣戟を経て確信に至った。
この者はかなり
瞬間、両者ともに大きく跳ねた。
彼は彼女と十分距離を取ると短剣をグッと力を入れてしっかり手の中に握りこむ。そして一歩踏み込んだ次の瞬間、ぎりぎりまで張り詰められた弓矢のように彼女に突っ込んだ。
石畳が激しい音をたてて裏返り、砕け散る。音をもすべて置き去りにするような豪速。それが彼の両脚から発されたのだ。
「・・・ッ?!」
そのあまりの速さに一瞬彼女は対応が遅れた。受け流そうと体が直感的に動くが間に合わず、深手を負う。しかし致命傷は確実に避けていた。
彼は勢いを殺しながら地面に滑るように着地するとすぐに彼女の方へ向き直る。
その場に静寂が訪れ、ただ彼女の腕からつたう血が地面に落ちる音だけが時計の針のようにその場に音を刻みこんでいく。
それは彼とて同じだった。一瞬のスキのカウンター。直撃こそなかったが、傷は負った。
彼からも血が滴り落ちる。
「アサシン…!」
ルイズが思わず声を上げる。彼は布にくるまれた右手を上げてそれを止めた。
「あの速さを防ぐか。・・・なるほど。あなたは我々の領域に片足を
「なに・・・?」
「我々英霊は人であって人ならざる者。過去に
「何が言いたいのですか?」
「つまりあなたは世界から
「なんでそこぼかすのよ」
「・・・話は、よくわかりません」
「えぇ、わかるには少し難しいと思います」
「ですが、あなたは過去の人間の影法師、そして私は今を生きる人。
私もあなたたちと同じような存在になる日が来る。そう、言いたいのですね?」
「えぇ。それが幸か不幸かは私には判断しかねます。少なくとも、私にとっては『幸』だ」
「・・・理由をうかがっても?」
「えぇ、何故なら」
彼は再び構え直すと咆えるように叫んだ。
「ルイズ殿に今ここで出会えたからだ!」
刹那、彼は再び疾走した。飛び飛びでぐんぐんと距離を縮めていく。それを視認している彼女は剣に力を込めた。
片腕に深手を負ってしまっている自分では十全な力を発揮できない。先ほどの様なつばぜり合いも負けてしまうだろう。ならば近づかせないようにしつつ一撃をたたきこむしかない。
彼女の周りの空気がざわつく。風が、奔流があふれ出す。
それを視認した彼もまた止まるつもりはない。自分は命を全て投げうってでも勝たなければならない。勝ったところで何かが得られるとはみじんも思っていない。
だが彼は今、『勝ちたい』と、柄にもなく思った。思ってしまった。
これは仕事人としての、暗殺者としても彼のプライドからではなく、ただ、今、この戦いの場に高揚してしまっている一人の人間の影法師として、一人の激動の時代を生きてしまった者としての、我儘であった。
続く
色々と台無しにするあとがき
「ハーイ、ジョージィ。反省会といこうぜぇ」
「(前略かよ・・・)・・・ちょっと見逃してくれへん?100円あげるから」
「いやいや、さすがにそうはいかねぇよジョージィ。いつまで待たせたと思ってんだ。これを待ってた読者がいるかどうかはわからないけど少数は多分おそらくいると思う。しかもだぜジョージィ?ギーシュを殺したうえで苦しんでたのはお前だろ?自業自得ってやつだぜ」
「うん、そうだね。じゃあ休憩でナイトレインやってくるわ…「待てや?!!」
「ほら、ジョージ、これ・・・」
「皆様の感想?!」
「おお、その通りだ!こんなん見たら、書くしかねぇだろう?」
「(しんどそうな顔)」
「Oh...仕事が忙しいんだけど、みたいな顔してるね?」
「(コクッ)」
「おい、図星かよw まぁ、それは置いといてだ。今日まで少しずつ書いてきただろう?そして今の今まで待たせてしまって申し訳ねぇじゃねぇか。
ジョージィ、続きを書くんだジョージィ…、俺も手伝ってやるから・・・」
「(スッ・・・」
「だから最低でもさ・・・」
ガシッ
「アルビオンまでは終わらせるんだよ!!*1」
「ジョージは死んだ。プロット通りに物語が進行しなかったからだ。
ところでこの回のプロットが大まかにかけたのが2020年ごろなんですよ。今まで何やってたんでしょうね、このバカは」