本家の知識もままならないポケモン廃人がダンジョンの世界に行ったら。というお話です。
ある日突然、キミはポケモンになっていた。
というフレーズをご存知だろうか?
ポケモン不思議のダンジョンのキャッチフレーズである。
だが、数分前のオレにいわせれば、ダンジョン潜ってるくらいなら本家で卵孵化してろ。だった。
だった。つまり過去形、というのもオレの目の前にはピカチュウがいる。
「どうしたの?見慣れない顔だけど……」
そして、喋ってる。
状況を確認しよう。気がついたら、夕暮れの見知らぬ海岸のど真ん中、シャボン玉がふわふわ漂う砂浜で二人っきり。百歩譲って、ここまではいい。だが、ピカチュウと……わけがわからん。
厳選のしすぎか?ピカチュウなんか育てたことは無いぞ。三タテされたけど。いや、あれはエッジが当たらなくてノーカンだから。
「おーい、聞こえてるのかな?返事してよ」
「ピカチュウが、喋ってる」
「何言ってんの?キミ、ヒトカゲじゃん」
何言ってやがるこの電気ネズミ、オレは人間だ。
「電気ネズミって、でも君、おかしな事言うね、ポケモンなのに」
「またまた〜冗談はよしてくださいよ。だからオレは人間だって」
少し不安になり、 顔を自分の手でペタペタと触る。
触って分かったことは目が大きくなって、鼻が小さくなった。わーい、目薬さしやすくなったぞ。
後、髪がない。……ヒトハゲ。
最後に手を見る。オレンジ色、短い指。うん、完全にヒトカゲです。……できればガブリアスが良かったな。
「ボクはピカチュウ。キミは?」
「にわかには信じられん。オレがポケモンになるなんて」
「ニワカ?ニワカっていうんだね。面白い名前」
「に、ニワカちゃうわ!」
「え!だってさっき、ニワカにはっていったじゃん」
そういう意味じゃないから。しても名前、名前ね・・・ん?名前。オレの名前って何だけっけ?
「やっぱりニワカなんだよ」
「やめろ、にわかだけはやめろ。やめて下さいお願いします」
「そんな事いわれても」
困り果てるピカチュウ。わめくオレ。
名前といい、ピカチュウといい、この状況といい。ストレスで髪の毛が全部抜け落ちそう。
「もうハゲてるくせに」
焼くよ、ピカス。
「おい、お前らうるせーぞ」
名前で揉めるオレ達にヤンキーと思われるドガースとズバットが現れた。
まるでチンピラだ、なんでズルックじゃないんだろう。
「ご、ごめん」
「ごめんで済んだらジバコイルはいらねんだよ」
何故ジバコイル?! 何があった。オレの世界にコイルショック!
「ったく、お前らの大声で耳がいかれちまった。なぁ、ズバット」
「そうだな、これは金とか物で賠償してもらわないとな」
「ボク、お金なんてもってないよ。ニワカは?」
記憶喪失の分際でお金なんか持っていると思います? てかニワカなのね、決まったんだね。
「そうだよね」
「はあ?一文無しかよ、持ち物見せてみろ」
「う、これしかないよ」
と、ピカチュウが出したのは変な模様の描いてある石。
オレはともかく、ドガースもズバットも首をかしげた。
「なんだぁ?こりゃぁ?」
「ゴローんのいしでも、いしのつぶてでも無い、変な石だぞ。ガラクタか?」
氷の礫じゃないんですかね?
「チゲぇよバカ。てめぇが喋ると話がズレる。黙ってろ」
ドガースに怒られた。
「なんかムカついてきた。もうこの際どうでもいい、コイツは頂いていく」
「ああっ!返してよ」
ピカチュウがカービィのような足で背伸びしたところで浮遊のドガースには届かない。
ホッコリする絵なのでしばらく観察を。
「鼻くそほじってないでニワカも助けてよ」
「 渡しちまえよ、メガシンカできなさそうな石ころ」
「何言ってるか分かんないけど、ひどいよ」
オレの裏切りともいえる発言に満足したのか、ズバットがあざ笑う。
「唯一の味方にも見捨てられたな」
「ふはーひほ」
「ざまーみろ。だってさ」
石ころ口加えたドガースの通訳をした後、毒タイプ二人組は海岸付近の洞窟へ、はいっていった。
ガキ大将にいじめられた某メガネの子のように、うなだれて涙目になる。気が付けば乾いた砂浜に水玉模様ができていた。
「……あの石は、あの石は」
途方に暮れるアイツにとっては大切なものだったらしい。なんか、見るに耐えないな、よし。
「おい、ピカス、オレでよかったらあの石取り返すの手伝ってもいい」
やることも無いし、ドガースとズバット相手に死にはしないだろうし、このまま一人っていうのも。
「ホント」
まったく、味方になった瞬間、表情変えやがって。オレはドラ〇もんじゃねーぞ。
「ただし、条件がある。オレは人間だったんだ」
「記憶喪失なのに?名前もろくに覚えてなかったのに?」
「やっぱ止めた」
「ごめんよ〜ボクが悪かった。悪かったから〜」
「記憶喪失だろうが、人間からヒトカゲになったとしても、衣食住のうち、服は別にいいとして家とメシと金が無い」
生活に必要なもの何もねぇな、オレ。悲しくなってきた。
「分かったよ。家とご飯を用意すればいいんだね、お安い御用さ。」
「交渉成立」
ピカチュウと握手を交わして歩き出す。目的地は海岸洞窟。目的は食住の確保・・・・・・ついでに石ころの奪還。
でも、海岸ってことはさ、水タイプ多いよね、大丈夫かな。タイプ相性的な意味で、俺炎だし。
ピカチュウ、なんでミミッキュじゃないんだろう。このネズミ、変に臆病だし・・・臆病? お、強い。とりあえずSにブッパして。技はボルチェン、ほっぺすりすり、あとは・・・アレだ。
「めざパのタイプは何ですか?」
「はやく行こ」
はい。
海岸付近の洞窟だけあって、ところどころに水たまりがあったり、水没していたりと鍾乳洞みたいだった。しかし、天井に穴が空いているため、内部は以外にも明るく、地形も段差とかは少なく歩きやすかった。湿気はあったが。
カラナクシやサニーゴなんかに途中襲われるも、電気タイプのアイツのおかげで苦戦はしなかった。
オレ?聞くな。あわで瀕死になったりしてないからな。 CとSにブッパしたいだけだから、これは戦略的撤退なわけで……。
ともかく、後でザロクのみだけは探しておこう。
「見て、ニワカ!」
きのみのことを考えているとピカチュウに名前を呼ばれた。
黄色く小さな手にはピンクで桃みたいなきのみ。これってもしかして。
「モモンのみだよ」
ビンゴ!序盤から出てくるけど全然使わないやつ。
「そんな木の実いらねーよ、ラムのみ拾って育てれば」
「ラムのみ?そんな木の実無いよ」
なん、だと……ラムのみが無い。バカな、廃人御用達のラムが……。
ガブリアスに何もたせればいいんだ。タスキ、もしくはスカーフ? タスキはゲンガーが、スカーフはランドロスが。とすると、メガネか? 流星群ブッパしてワンチャン、でも剣舞あるから両刀じゃん。剣の舞して流星群、強い。
「ニワカ? どうしたの、元気ないよ」
うるせえ。
そんなこんなで30分ほど進んで行くと、見覚えのある姿が、ズバットとドガースだ。周りが行き止まりから考えるにここが奥地なのだろう。
「や、やい! ボクの石を返せ」
ピカチュウに気づいたのか振り返った。洞窟が小さく、すぐに行き止まりで逃げられなかったからか、ドガースは気が立っているようだ。
「てめぇ、俺達に喧嘩売ってのか?」
「一人じゃ何も出来ないくせに」
「うう……」
毒タイプ二人組に言いくるめられた、ピカチュウの足は震えて、今にも泣きそうだ。
おまけに、チラチラとコチラを見てくる。助けを求めているのだろうか。鬱陶しい。
コイツには隣で騒がれたり、にわか、にわかとバカにされた。だが、ガス球と素早さ努力値にドヤ顔されるのよりはマシだ。
これでも前世はポケモン廃人として、君たちをボコボコにしてきたのだよ。
人間のしての強さを見せつけるべく一歩踏み出す。
「ドガースとか、耐性は優秀ですが、まず単タイプな時点でゴミですなwww。火力耐久が低すぎるのも拍車をかけていますぞwww。んんwww進化したところでこだわりメガネ大文字でヘラクロスをワンパンできないとか、ありえないwww。ズバットに関しても、特性と耐性は優秀ですぞwwwしかし、火力と耐久が足りていないのでゴミですなwww。主力が飛行タイプだけとか、複合タイプの意味をなしていませんぞwww」
「地震で一貫するヤツらに言われたかねーよ」
「・・・・・・」
「あれ、どうしたの? ニワカ殿」
毒タイプだって地面弱いくせに……って浮遊じゃん、飛行じゃん、効かないじゃん。
てか、あのボカチュウ、ニワカ殿とか裏切ってんだろ。覚えてろよ。
「しょ、将来リザードンだから、飛行つくから……」
「でも、なんか元気でたよ。この場合はありがとうよりも、お疲れ様。かな? ニワカ、お疲れ様」
何を思ったのか一瞬考え込んだ後、笑顔でコッチを見た。
「堅苦しいから略すね。ニワカ乙!」
「おまえ、それ、バカにしてんだろォオ!!」
洞窟中に響き渡った。それはもう、天井が震えるほどに。擬似ハイパーボイスだね。
落ち込むオレにズバットが追い討ちをかける。
「チームワークもクソもねーな」
アイツはオレの逆鱗に触れた、鎮めたくば混乱するまで殴らせろ。
「ピカチュウの大切な宝物を奪った悪党め、返してもらうぞ」
「無かったことにしようとしている」
「ないわー」
「……かっこ悪いよ、ニワカ」
三者三様にバカにされた。元はといえばピカチュウのせいだろ。ムシャクシャしてきた。
一発パートナー(笑)を殴って、毒タイプ二人組に向かい合う。
「うるせぇピカチュウ、攻撃しろ!今までの借りを返すぞ」
「いてて、うん!」
赤いほっぺから電気がほとばしる、オレの足元に。
「どこ目掛けて技出してんだバカチュウ」
「だって、放電は全体攻撃だったって、ばっちゃが言ってた」
そういう意味じゃねーからぁぁあ!
てか、放電使えたんか。レベル高くね?
「いや、今の電気ショックだよ」
キサマ、わざとだな。人にむけて技を当てていいのはワタルさんとサトシのアイツ……って、合法じゃねーか。
「いや、ニワカってヒトカゲじゃん。人間じゃ無いし」
いい加減にしろ。ほら、下手な漫才してるから観客二名が冷めた目をこっちに向けてるぞ。こっちまで哀れになるじゃないか。笑ってるなコイツ、確信犯だな。
ほら、もう一回。こっちみんな、あっちだあっち。
「電気ショック!」
尻尾とおそろいの電撃は、油断していたズバットに直撃。さらに、感電したのか動きが鈍い。
「よし、麻痺引いた!すばやさの無いズバットとか、ステロをまかれたリザードン。挑発もらったクレッフィ」
「それって? つまり」
「ただのゴミ!」
追加効果に一人で狂喜乱舞しているとマヒらせた奴が言った。
「ところで、すばやさ?それって何?」
「倍速とか鈍足とかの状態異常のことしゃね?」
敵であるはずのドガースまでもが素早さ無いと言い張る。
……え、バカな、すばやさが無い!?最も重要なステータスのすばやさが無い。バンギかバンギ無双なのか?! フライゴンが下克上か? ポケモンGOじゃなか!
クソ、恥かいた。こうなりゃヤケだ。
「ドガースのバカヤロー」
「ちょ、なんで?」
ニワカのこうげき ドガースに大ダメージ。
「負けるか!」
紫色の球体からの毒ガスを受け、毒状態になりつつも、火の粉で反撃。先ほどのダメージが効いていたのか、地面に落ちた。
毒状態になりながらもドガースを倒し、隣を見ればズバットもひっくり返っていた。
「やった、勝った。勝ったよ!ニワカ。宝物、取り返せたよ〜、ありがとう!」
宝物(石ころ)を取り返した黄色いアイツが駆け寄ってくる。キャッキャと喜ぶその姿から大切なものだったらしい。てか、ほっぺスリスリするの止めろ、マヒる。
小さな洞窟とはいえ、初めての世界。初めての冒険。慎重に進んだこともあり、太陽は完全に沈み月とバトンタッチしていた。
サクッサクッと海岸を歩くオレとピカチュウ。体が重いがきっと疲れだろう、慣れない事はするもんじゃないな。
「ありがとうね、ニワカ。ボク一人だったら絶対に取り戻せなかった」
思えばコイツとは今日あったばかりなんだよな。すっごい打ち解けていたけど。
隣を見れば、黄色いネズミは自分と同じ色の月を眺めている。
「ボクね、この石の謎を解くのが夢なんだ」
例の石は月明かりに照らされ、その独特な模様が神秘的に光っているようだ。
「ねえ、ニワカ。ボクね、今日冒険して思ったんだ。君と一緒なら何処でも行ける気がする。そして、行った先々でたくさん謎を解くんだ」
この石のこと、君が人間からポケモンになったこととかね、そう言った。ピカチュウはどこかイキイキとしていた。これがホントのピカチュウなんだろう。
ホントの自分か。オレの記憶は、前世が人間だったことと、ポケモンや、その他ゲームの知識ぐらいしかなく、両親や友達のことは思い出せない。
親不孝な息子だと思うが、ポケモンの世界に両親の記憶よりも、ポケモンの知識の方が明らかに武器になる。まあ、これはこれでありだろう。友達も……ゲンガー育てた記憶あるからいたと思う、きっと。何より手塩をかけて育てたポケモン達が待っている。でも。
「楽しそうだな」
ピカチュウの夢に相槌を打って、空を見る。
この世界の月は、空気が汚れてないからか綺麗だ。オレの住んでた街とは大違い。右も左も分からないが、大好きなポケモンに囲まれるのも悪くは無い。
「いっちょやってやりますか」
「どうしたの?ニワカ」
ポケモンを使ってきたオレがポケモンに使われるのは癪にさわる。思い通りになると思うなよ、世界め。
「ピカチュウ、その夢、オレも混ぜろ」
「に、ニワカ……ありがとう、よろしく」
なぜポケモンになったのか、それは分からない。この先何が待ち構えているのかも分からない。けど、よく分からないが不安は一切感じない。
あ、ただひとつ分かることは身体の具合がおかしいことだ。何故だろう?そういえば、ドガースの毒ガス食らってて……あ。
「ど、どくが……モモンのみ、採っておけば」
「二、ニワカ?」
ニワカはどくでダメージをうけた。
ニワカが力尽きました。