Infinite・Genius 【インフィニット・ジーニアス】 作:EUDANA
執筆してる他作品で原作側の設定開示とかでちょっと設定見直して〜、と思いつつの息抜きでIS読んだのと、他のIS系二次創作思い付いたけどエタったのそのままなのはなんとも……と思ったのでその流れで。
およそ4年ぶりの最新話なので実質初投稿です。
地球外生命体エボルトとの激闘の末、目的だった新世界創造を果たした仮面ライダービルド 桐生戦兎。
しかし、そこは気付けば異なる世界 ISと呼ばれる兵器が世界中で活躍する世界だった。
「おい」
そんな世界で、同じようにやって来ていたエボルトたちと激闘を繰り広げて来た桐生戦兎だったが、同じ学園の生徒たちのいざこざに巻き込まれた先で、新たなスマッシュと遭遇する。
「おいヒゲ」
コンディションも不調に等しい今、桐生戦兎はスマッシュとの闘いを制することは出来るのか……!?
「おいこら、ヒゲなしのヒゲ」
なんだポテト、さっきからうるさいぞ。
「なんだもクソもねぇよ。お前なにやってんだよ?」
フッ、見ればわかるだろう。前回のあらすじだ。
「戦兎のヤツがやる予定だったろ」
前回やるはずだったのに、アイツがやらせなかったからだ!
「いやいいだろ別に一回くれぇ」
お前はやったからいいだろうな! だが俺はやってない!!
「ガキかおめぇは」
35歳だ!
「偉そうに言うな、余計酷くなってんだろが……てかよぉ、自分のいる店に突然強盗が押し寄せるとかどうなってんだよ。ガキの妄想じゃねぇんだぞ」
俺は政府官邸にテロリストが入り込んできた時にどうやって撃退するか常に考えてるぞ。
「だからガキかっての……いやまあ俺らにゃあり得る話だろうけどよ」
「あぁっ、げんさんだけあらすじやってんじゃねぇか! ずりぃ! 俺もやりてぇ!」
「だーかーら、ガキかっての」
「あぁ!? いいじゃねぇかよカズミンは一回やってんだから」
そうだそうだ!
「うるせぇなさっきから! 一回ぐらい我慢すりゃいいだろ!」
「んだと!?」
「はいはい、子供の争いはやめなさい」
「あ、みいた〜ん! ▲チョコパイ買って来たから一緒に食べな〜い?」
「いやもう紗羽さんと食べて来たから、男だけで食いな」
「えぇー!」
「じゃあげんさん、次は俺な!」
桐生戦兎が許せばな……仕方ない。せっかくだから全員でやるか。
せーの……
「「「「「どうなる、第24話!!」」」」」
「いや、なに俺差し置いてみんなで勝手にやってんのよ!!?」
────────────────────
店内から飛び出して行った未確認生命体ことスマッシュたち。
その姿は、外に集まっていた警官たちや野次馬の視界にも入り込んでいた。
『未確認生命体です! 容疑者ではなく、未確認生命体が店から出て来ました!』
「え、何あれ?」
「嘘、未確認生命体ってヤツでしょアレ!?」
パトカーの無線で連絡する警官。
逃げる、或いはカメラを回す野次馬。
そんな一行の真上を猛スピードで通過していくスマッシュは、何処を目指しているかもわからぬまま、街の空へと飛んでいく。
「なぁどうする!? 追わないとマズイぞ!」
徐々に小さくなっていく空に浮かぶ敵影を見つめ、一夏は白式を起動しながら店内を飛び出すと、クラスメイトたちに声を掛ける。
「そうだね、けど───」
「我々の内、私とシャルルはこの格好の際にISスーツを脱がされてしまっていてな。ISを起動するとエネルギーが減った状態になってしまうぞ。奴らの強さが未知数な中、正直痛手だ……」
ISは操作する上で、ISスーツという専用の物を着込まなければならない。
これはISスーツにはバイタルデータを検出する特殊なセンサーや端末などが組み込まれており、それらを使用することで体内の電気信号増幅、IS側に送り届ける役割を持っているからだ。
専用機持ちにもなると、普段の私服などの下にISスーツを着ていることが基本だ。
だが今回突然のアルバイトなどもあったうえ、特に店長の御目にかかったシャルルとラウラの二人は、それらを脱がされた上でメイド服や執事服を着ていたのだった。
一応スーツを着ていなくともISを展開すれば自動で生成されるが、それらのスーツを一から呼び出すとなるとタダでは済まず、ISのエネルギーをかなり持っていかれるのだ。
「さらに追い討ちを掛けるようで悪いんだけどよ、俺も昨日からの開発でちょっと本体とピジョンちゃんに不具合が発生してるんだよ」
「そうなのか……くそっ!」
戦兎の言葉に嘘はない。
先日のディケイドとの戦闘やそのあと朝まで続けていた開発の影響で、L&Pとラピス・ピジョンの双方に破損とエラーが発生してしまっていたのだ。
二人は本調子でなく、さらに一人は出撃不可。
そんな状況の中、一夏は先ほどの未確認生命体の取った行動から一つの提案をする。
「わかった。じゃあ俺は、さっき最後に出て行った機動力がなさそうなやつをやる」
さきの逃走の際、最初に飛び出した二体は飛行して飛び去ってたが、最後の一体だけは手を伸ばして無理矢理移動していた。
その一体は他の二体と比較して機動力と低く、そう簡単に広範囲に影響を及ぼすことはないだろうと考えての判断だ。
「危険だよ! みんなでやった方が……」
「だが奴らは三つに別れて行動しているようだ。機動力のない一体は一夏に任せ、我々は残りに対して二人掛かりで挑むのが最適だろう」
「それは……そうだね。なら、他の二体は僕とラウラ、セシリアと鈴から一人ずつで───」
その場の最適解としてエネルギーの少ない二人とエネルギーの消費がない二人から一人ずつ組んで交戦することを思案に入れる。
しかしその提案は、何故かセシリアと鈴にさえぎられた。
「それよりも、お二人は民間の方の避難をお願い致しますわ。ねぇ鈴さん?」
「そうね! 見る目のない店長のおかげでISスーツはちゃんと着てるからエネルギー消費もゼロ。それにこっちは機体更新でパワーアップしたわけだし、アタシらも先行するわ!」
二人のその発言に、一夏は思わず
「パワーアップ? ていうか、本当に大丈夫なのかよ!?」
「同感だ。無理に各個で当たらずとも……」
「たしかにそうかもしれませんが、すばやく撃破に向かうよりも、未確認生命体の近辺や移動ルートで逃げ遅れた方への避難誘導を広範囲でしてもらったほうが、より被害は少なく安全になるかと」
「そーいうワケだから、シャルロットとラウラは箒と戦兎よりも広い範囲で誘導しといて!」
それだけ言うと、セシリアと鈴はそれぞれの専用機のスラスターを吹かせ、スマッシュの後を追っていく。
「え、ちょっと二人とも!」
「仕方ない。では誘導を終え次第、二人の援護に向かおう。シャルロットもその場で武装を切り替えて対応してくれ」
「……ラウラもそれでいいのかよ?」
およそ独断で飛んで行った二人の提案をとりあえず受け入れたラウラに対して、一夏は不安を感じて問う。
「我々のエネルギーがあまり多くない以上、二人の言うことにも一理ある。この作戦でも問題はないだろう」
「そりゃそうかもしれないが……」
「それより一夏、お前もあの二人と一緒に未確認生命体を追え。チンタラしてたらヤバイことになるぞ」
それでもなお不安材料を抱えて躊躇していた一夏に、戦兎が急かすように声を掛ける。
「……わかった。四人とも、こっちは頼む!」
最後に逃走した一体は繁華街の方面へと逃走したらしく、あたりでは悲鳴が聞こえていた。
「どうやら奴らは西と東、それから北の方面に散っているようだな」
「じゃあ僕は西口の方を誘導してくるね」
「なら私は東だな。二人は北の方面に向かってくれ」
そうして段取りを取ると、シャルルもラウラもまたISを駆り、それぞれの方面へと散っていった。
先行した二人に続いて一夏達も迎撃と誘導のために散り、あとには戦兎と箒だけが残る。
「───さて、と」
「私は一人でも問題ない。はやく行ってこい」
「おう」
事情を知る奴が残ってくれるのは助かるな、と。
そう思いながら戦兎は、ビルドドライバーを装着し取り出したフルボトルを振って装填する。
人質になっていた客たちや従業員はすでに脱出済み。
周囲の野次馬たちも、流石に自分の命は惜しかったらしく早々に退散し、この場には自分たち以外誰も残っていなかった。
ハンドルをすばやく回してスナップライドビルダーを展開。
ボトルから抽出した成分によって前後に装甲を生成し、変身手順を完了させる。
変身を完了したビルドは、手慣れた動作でビルドフォンとライオンフルボトルを取り出すと、ボトルを振ってビルドフォンのソケットに装填する。
放り投げたビルドフォンが巨大化するのも待たずにジャンプすれば、着地と同時にビルドフォンは変形を終えていた。
「じゃあ任せたぞ!」
チラリと箒の方へ振り返りながら言い残せば、ビルドはマシンビルダーのエンジンをフルスロットルで入れかっ飛ばした……。
街に並ぶ、高層ビル群。
その合間と合間をすり抜けて、飛行機雲を作りながらスマッシュが高速で飛行する。
背中の戦闘機にも似たエンジンのようなパーツから放出されるジェット噴射は、その反動だけでビルの窓ガラスに大きくヒビを入れていく。
その後を追うセシリアの
スマッシュはひたすらまっすぐ、かと思えば時折大きな急旋回でカーブといった具合の移動を行なっている。
その動きに何の意図があるかは不明───だが。
「随分とすばしっこいですわね……ですが、単純な直線移動ならばその先を狙えば良いだけのこと!」
追いつくことができないならば、目指すその先へ狙撃すればいい。
空間投影されたディスプレイに記された、スマッシュの時速、風量といった要素を落ち着いて、しかしすばやく頭の中で計算し、一旦追跡を辞めて更に上空へと飛翔する。
街並みとその間を飛ぶスマッシュを見下ろしながら、セシリアはスマッシュの移動先へとスターライトMk-Ⅱの銃口を向ける。
一撃でも入れれば体勢は崩れ、そうなれば後はティアーズの一斉掃射で仕留められる。
しかし失敗すれば、地上にスターライトから発射されるレーザーが着弾することとなる。
「そこ、貰いましてよ!」
だがセシリアもまた、実力で代表候補生に至った者。
カーブの前兆も見せぬまま駆けるスマッシュの胴体へと吸い寄せられるかのように、一筋の蒼い閃光が疾る。
『……!』
初弾命中、被弾箇所は背中のエンジンパーツの一つ。
そこから煙を上げて、スマッシュはその自慢のスピードを徐々に落とす。
「ふっ、思いのほか簡単でしたわね」
余裕を浮かべながらも慢心することなく。
スターライトを降ろすことなく、そのまま第二、第三射を放つ用意を整える。
『……!』
ここでやっとセシリアの存在に気付いたか、スマッシュは一度旋回すると、上空のセシリア目掛けてエンジンを吹かせて一直線に向かって来る。
「こちらに向かうのならば……!」
まっすぐ突っ込んでくるスマッシュ。
その先端目掛けてスターライトの銃口が
目前まで迫る蒼い光を、スマッシュは身体を捻って次々と回避、空の彼方に霧散する光を置き去りにして、徐々にセシリアとの距離を詰めていく。
一旦スターライトでの照射を中断すると、セシリアもまたブースターを吹かせ、人のいない場所へ誘い込むように後退していく。
「お行きなさいティアーズ!」
敵影の接近に合わせ、装着したままだったティアーズが一斉発射。各々の動きでスマッシュの四方を取り囲む。
先の一撃でスマッシュのエンジンを破壊したことで、本体の機動力を削いだ。
その事実はセシリアに無意識の油断を生むこととなった。
彼女はまだ気付いていなかったのだ。この目の前のスマッシュの真の戦い方が、自身のブルー・ティアーズと同じだということに。
迫るティアーズの一斉照射。
その一撃を三度の旋回で回避したスマッシュの脇に相当する部分、そこから小型の何かが発進される。
スマッシュから出撃したソレは、各々がすばやい動きで───それこそ意思を持っているかのように飛び交うと、散り散りになってティアーズへと接近する。
「アレは……!」
ソレを視認、ティアーズを操作しようとするセシリアの眼前へスマッシュ本体が接近する。
「くっ……!」
接近を許さず回避に徹するセシリアの背後で、何かの爆発音が響く。それが何を意味しているのかはすぐさま理解した。
撃墜されたのだ、ティアーズたちが。
スマッシュの身体からティアーズと同じように発進された、小型の戦闘機群に。
「……ッ! やってくれますわね!」
今ので二機のティアーズたちが撃墜され、重力に従い黒煙と共に地上へと落下していく。
残りの二機を自身の両側に展開すると、腰部のティアーズ二機からミサイルを、スターライトからはレーザーを照射する。
IS学園でのクラス代表を決める戦いの時点で本人も把握していたが、ブルー・ティアーズには本体とティアーズを同時に動かすことができないという明確な弱点が存在していた。
これはセシリア自身の腕の問題だが、優れた操縦者であってもほんのわずかに動くだけでも精一杯なのだ。
そんな同時に動くことはできないセシリアに対しスマッシュは、自動操作機能でも存在しているかのように、本体はもちろん、展開された子機たちも一斉に飛び交う。
最初に到達するのは子機たち。飛来するレーザーとミサイルの合間を縫って接近すると、セシリア目掛けて小型ミサイルを無数に発射する。
前方の視界を覆い尽くすかのように迫り来るミサイルの雨あられに、セシリアはさきほどと同じように後退する。
違いは誘き寄せるためではなく、回避に専念するためという点だ。
しかしミサイルはセシリアを逃すことなく、ロックオン機能によってしつこくどこまでも彼女に追いすがる。
空間投影ディスプレイに表示されるアラートを半ば無視しつつ、セシリアは背後に迫るミサイルを映した画面に意識を向ける。
「───今ッ!」
発射されたうちの何発かが先行し、自身に向かって来る。
その状況に至った瞬間、セシリアは後退を中断して一番先頭で迫り来るミサイルをスターライトで狙撃する。
狙いは正確。ミサイルのど真ん中をぶち抜くと、そこからミサイルは爆発。
さらに後方から追いすがっていた他のミサイルたちも、巻き込まれる形で誘爆していく。
だが連鎖する爆音が響いたことで、セシリアは飛来して来る音を聞き逃した。
爆煙が晴れるよりも先にやって来たのは、回り込んできたスマッシュ本体による背後からの奇襲。
アラートが鳴って気付く頃にはすでに遅く、振り返って迎撃しようと試みたセシリアのブルー・ティアーズ本体、そして残ったティアーズ二機にミサイルが命中する。
「きゃあっ!!」
ティアーズ二機が先に堕ちた二機の後を追うようにして墜落。自身もまたすぐに姿勢を立て直せずに地上に近づいていく。
そんな爆煙を突き抜けて落下するセシリアに追い討ちとばかりに発射されたのは、大型のロケット弾。
煙を後に引いて、巨大な殺意が一直線に飛来する。
すぐさま身体を捻って力を入れて姿勢を立て直して安定させる。
スターライトの引き金にふたたび力を込めて、小型ミサイルの時と同じ行程をもう一度繰り返す。
狙いは同じくロケット弾のど真ん中。苦もなく命中するも、さきほど以上の爆風がセシリア側にも襲いかかる。
「ッ……!」
真上で起こった爆発により、再びセシリアの視界は悪くなる。だがこれまでのスマッシュの行動から見れば、再度突っ込んでくるだろう。
その読みは正しく、セシリアへとスマッシュ本体が一直線に突っ込んでくる。
引き連れた複数の子機は両者の距離を縮めると同時に散開。セシリアの正面と四方からの同時攻撃に備える。
(こちらはティアーズを動かすので精一杯なのに対し、彼方は同時に……これだけの差が……!)
ミサイルを受けたブルー・ティアーズの残りシールドエネルギーは7割。本体の攻撃によって受けたのは凡そ3割。
本体に追加して子機たちの一斉照射を喰らってしまえば、倍の6割は持っていかれるだろう……。
援軍が来るには今しばらく掛かる。ならばここは一人だけでも最低限足止めしなくてはならない。
己を鼓舞しスターライトの銃口を真っ直ぐに向け構えながらも、しかしセシリア自身もこのままでは非常に危ういことに気が付いている。
「───あまり使いたくは無かったのですが、一夏さんたちの前で啖呵を切った以上仕方ありませんわね!」
そう言うとセシリアは
何やら計算式が展開されるもそれら一切を無視し、ティアーズに干渉しない形で腰に追加して設けられたスロットへとソレを装填する。
「は、ハチ……?」
ボトルを装填すると、ブルー・ティアーズから甲高い声が音声デバイスとして鳴り響く。
空中で投影されたディスプレイには『
するとまず最初の変化が訪れる。持っていたスターライトの銃口の真下に長い針が形成され、まるで銃剣のような形状になったのだ。
「こ、これは一体……?」
一方、空で困惑しているセシリアの遥か下の地上。
撃ち落とされ黒煙を上げていたティアーズ。
それらすべてがカタカタと震えたと思えば、黄色いオーラに包み込まれた。
後方の噴出口に覆い被さるように二枚の翅が生えると、それを震わせたティアーズたちが一斉に空へと舞い戻る。
爆煙を突っ切ってセシリアへと突進するスマッシュと、それに追従する形で接近する子機たち。
ボトルを使ったものの長い針以外の変化は見られず、それでもなお針が伸びた銃剣のような形状と化したスターライトを構え、迎撃を行うセシリア。
閃光を掻い潜り、彼女まであと数十メートルといった所まで距離を詰めた瞬間、地上の方からスマッシュへと何かが飛び交った。
『!?』
「あれは……!」
ハイパーセンサーが捉えた、地上から接近する新たな機影。それは黄色いオーラによってハチのような形状へと変化したティアーズであった。
ティアーズは加速しながら青いレーザーを塊に変化、巨大な針の形状へと凝縮させて発射していた。
突如として浴びせられた攻撃に怯みながらも、スマッシュはセシリアへの攻撃を一時中断すると大きく旋回、彼女に子機たちを差し向けたまま、自身は空の彼方へと飛び去る。
発射された針は、それまで以上の速度で一気に撃ち出された。
セシリアへ攻撃を仕掛けようとした子機たちは、しかし反撃を許されないまま針が直撃。
機影のど真ん中に針が深々と突き刺されば、次々に爆散していく。
『……!?』
「す、すごい……」
物理法則の一切を無視して発動する未知の攻撃を前に、思わず呆然としそうになるセシリア。
一方で虎の子である子機をすべて破壊されたスマッシュは、残る本体での突貫へと体勢を整える。
「まだやれますの……!?」
スマッシュの徹底した行動に驚愕しながらも再度スターライトを構え迎撃を試みるセシリア。
女王を守る兵士の様に、セシリアを守るべくスマッシュの前に立ちはだかるティアーズたち。
双方の睨み合いは、しかし奇妙な音声と鮮烈な光によって途切れることもなる。
スマッシュが突貫するかというまさにその瞬間、強い光が両者の間に差し込んだ。
「これは……!」
中央に奇妙な形状の歯車が描かれた、金色のカードのようなもの。
それらが一直線に何枚も並び、さらにその中央を一筋の光が通過していく。
『!?』
スマッシュはそれが自身へと向けられていることに気付いたのだろう。セシリアへの突貫を中断すると、エンジンを吹かせて急転換する。
空の彼方へと飛び去り旋回するスマッシュ。しかしその背後では、カードと光線が尾を引いて付いてくる。
振り切らんとするスマッシュだが、抵抗も虚しく速度を上げたカードと光線がスマッシュへと直撃する。
『!!?』
空中に大きな爆煙を描くと、スマッシュの背にあるエンジンがプスプスと黒煙を上げて機能を停止する。
高度から落下したスマッシュは、そのまま硬いアスファルトへと叩きつけられた。
「やはりアレは───」
墜落していくスマッシュを追ってスラスターを吹かせるセシリア。
ビルの谷間を舞い降りる中、ハイパーセンサーの端にもはや見慣れた人影が見て取れた。
《……》
赤と青の、ISとはまた違った人型兵器。
ヨロヨロと起き上がるスマッシュの前には、高度を下げ地上からふわりと浮くセシリアのブルー・ティアーズと、蜂のような光を放つティアーズたち。
さらに彼女から遅れて、ビルから飛び降りた仮面騎士がその隣へと着地し立ちふさがる。
『……!』
「確実に仕留めるなら……」
スターライトを握りしめたまま、ティアーズに指示を出そうとするセシリア。
しかし、そんな彼女の動きを仮面騎士が静止する。
《おい、コッチを使え》
「え……?」
仮面騎士は懐から水色のボトルを取り出すと、突如声を掛けられて驚くセシリアへと放り投げた。
「逆にこっちはちょっと借りるぞ」
「え……! い、いつの間に……!?」
見れば仮面騎士の手元には、ついさきほどまで腰に装填されていたはずの黄色い蜂のボトルが握られていた。
と同時に、ティアーズのオーラとスターライトの針が霧散していく。
《───問題はない……か》
取ったボトルを自らの玩具のようなベルトに装填。ほんの少し安堵するような様子を見せてから、仮面騎士は手回しのハンドルのような部品を回しはじめる。
しばらく回してから、仮面騎士は変化を完了させる。
赤い兎を模した半身は、一瞬のうちに蜂を模した黄色いボディへと塗り潰される。
「ではこちらも……」
珍妙な光景に困惑しつつも、セシリアもまた気を取り直して腰に渡されたボトルを装填する。
ボトルを変えた瞬間、ふたたびティアーズに変化が現れる。
霧散しかけていた黄色いオーラが消えたと思えば、今度はティアーズそのものが硬質化したようにコーティングされ固まった。
その輝きや直前に鳴り響いた音声から、それがダイヤモンドだとはすぐに判別できた。
「これで……!」
セシリアの合図と同時に、硬質化したティアーズがスマッシュを取り囲むようにして発射される。
『!』
ティアーズが自らを包囲しようとするのを理解したのか、スマッシュは黒煙を上げるエンジンを無理矢理起動して逃げ遂せようとジャンプする。
だが、仮面騎士がそれを許さない。
右肩から伸びたハチの翅を羽ばたかせると、今まさに逃げ出そうとするスマッシュに組み付く。
『!?』
《ほら、チクっとしますよっと!》
戦車の力強さを持った右腕でスマッシュを掴むと、左手の人差し指から伸びる蜂の針を強く差し込む。
仮面騎士によって注入された神経毒を喰らったスマッシュはその場でガクガクと震えながら藻掻くと、そのまま力強い右足で蹴り飛ばされ、ティアーズの包囲網の中へと強制的に押し戻された。
《今だ!》
「ええ、これで
セシリアの操作と同時にティアーズが縦になると、ティアーズ同士から薄い水色の膜が発生する。
まさにダイヤモンドの形状をしたそれには、ただ一点の穴が開けられていた。そこまでお膳立てされれば、やるべきことは一つだけ。
スターライトから放たれた光は、真っ直ぐにその穴へと吸い込まれる。そして入り込んだ直後穴が塞がれる。
内部に入り込んだレーザーの光は、ダイヤモンドの壁に命中し、反射されたレーザーはまた壁に反射される。
あの膜の中はもはや、巨大な電子レンジの中に等しい。
反射され続けたレーザーは、やがて超高温となり軟化した装甲に真っ直ぐに突き刺さる。
限界まで極まった一撃によって、膜が役目を終えて砕け散ると同時に緑の爆煙が立ち昇るのだった……。
セシリアがスマッシュを撃破したその頃、鈴の甲龍は未だ茶色のスマッシュと戦闘を行っていた。
「ああもう、しつこいのよ!」
双天牙月を手にスマッシュへと振り下ろす鈴に、その一撃を左腕に備え付けられたカブトムシの前翅を模した巨大な盾受け止めるスマッシュ。
押合いになる中でスマッシュは翅を広げて推力を増し、鈴をより強い力で押し返す。
「おぉりやぁあ!」
押し出される中、その姿勢から双天牙月をかち上げてスマッシュを上に弾くと、大型
しかしスマッシュはまるでソレが見えているかのように器用に身体を捻って龍砲を回避すると、ふたたび鈴に接近戦を持ち込む。
「あぁもう! なんで当たり前のように回避すんのよ!?」
右手に持ったカブトムシのツノを模した大剣を振るって双天牙月と鍔迫り合いを行えば、さきほど同様に翅を広げて押し返す。
上空で繰り広げられていたセシリアとスマッシュとの戦いは能力そのものは拮抗していたものの、自動攻撃機能があった分スマッシュ側がやや優勢であった。
それに比べ、こちらは鈴側の龍砲は確実に回避される。その一方でスマッシュ側は取っ付き性能が高く、近接戦で対応させなければ猛攻で沈めることができるはずであったが、鈴にほとんど対応されている。
すなわち、双方に決め手が欠ける状況であった。
もっとも、あくまで人間である鈴に先に限界が訪れるのは明白であり、このままではジリ貧となる。
そしてそれは他でもない鈴本人が一番理解していた。
「この際なんだっていいわ、使ってやろうじゃない!」
拡張領域から呼び出したのは水色をした小さなボトル。それを多少乱暴に取り出し振れば、周囲に奇妙な数式の羅列が舞う。
腰に追加されたスロットに装填すれば、おそらくそのボトルに描かれているだろうレリーフの名を高らかに告げる。
『コォーン……コォーン』
「な、何よ!?」
直後、甲龍の背後に浮かぶユニットから謎のコール音が鳴り響く。
困惑する鈴の目の前で、甲龍の空間投影ディスプレイの隅にレーダーのような物が表示される。
自身を中心に円状の物が飛び交っては、目の前のスマッシュを赤い点として位置を示していた。
「ああ、潜水艦だからソナーってことね。……今意味ないでしょうが!」
異様な音の正体に納得しつつも、現在この機能はあまり使い道も恩恵もないと言わざるを得ない。
その事実にノリツッコミしながら、とりあえず鈴は他に機能がないかを確認する。
そうこうしているうち、甲龍に訪れた変化を感じたのか、スマッシュはその翅を羽ばたかせて離脱を試みる。
「って、逃がすわけないでしょうが!」
その動きを見逃すことなく、鈴はスラスターを吹かせてスマッシュを追う。
幸い、表示されるようになったレーダーの影響で見失うことはまずないだろう。
『コォーン……コォーン……』
「……それはそれとしてうるさいんだけどコレ。なんとかなんないの……?」
いまだ大きな音量で鳴り響くユニット。一度止めれないかと思った鈴は、ふとなんとなしに表示されるレーダーの、丁度スマッシュがいる赤い点の部分を触ってみる。
『ゴン』
「え、今度は何!?」
なにやら変な異音がふたたび鳴り響く。今日幾度目かの困惑のなかで、鈴はすぐにその音の正体に気付くこととなる。
「いや何よコレ!?」
見れば、本来は不可視の砲弾を作り出す───現在は異様な音ともに索敵するソナーと化していた龍砲に、幾つかのミサイルが生えていた。その形状からして、まさしく魚雷だろう。
『ピピッ』
直後、鈴がタッチしていた画面の赤点に標準の様な物が浮かび上がれば、生えていた魚雷が勢いよく発射される。
空を泳ぐ魚雷は建物を直角起動で回避しながらスマッシュへと一直線に迫りながら透明になる。
視認できないステルスミサイルと化したソレは、そう時間を置くことなく命中する。
『!?』
たとえ視認できずとも回避できる能力を持つものの、背を見せた姿勢のままではその勢いに対応できず。
背に無骨かつ透明な魚雷を叩き込まれたスマッシュは、堪らずダウンして近くの地面に投げ出される。
「よし、これで───」
墜落したスマッシュに追い付いた鈴だが、そのさきに捉えた何らかの存在をハイパーセンサーで捉えていた。
「あれって……」
その方向───スマッシュを挟んだ向こう側、スマッシュに立ちはだかるなにかがボトルを腰に装填していた。
仮面騎士のドライバー。その中心からプラモデルのランナーのような物が、自身の前後に生成される。
スナップライドビルダーと呼ばれるそれには、彼の新たなベストマッチフォームの装甲が生み出されていた。
仮面騎士を挟み込むようして、黄色と青の装甲が煙とともに塗り替えられる。
クジラを模した深い青色の装甲と、戦闘機を模した淡い水色の装甲。
ニ色の派手な組み合わせが特徴な仮面騎士にしては珍しく、どちらも青の寒色系の姿だ。
仮面騎士の胸に備え付けられた滑走路を模したパーツから、小さな戦闘機が発進する。
空を翔ける戦闘機はスマッシュの周囲を旋回しながら、小さなミサイルを発射しスマッシュを牽制。ミサイルの弾幕でその場に釘付けにする。
その間に跳躍した仮面騎士は、鈴のすぐ隣に降り立つと腰のスロットに装填されていた潜水艦のボトルを抜き取った。
《ちょっと借りるぞ》
「え───あ、ちょっとアンタ!」
さきほどまでソナーの甲高い音を響かせていた龍砲は、ボトルを抜かれると同時に画面を消してその役目を終えるように停止、本来の機能に立ち返った。
仮面騎士は持っていたドリルの刃を逆さにして取り付けられた装備のスロットに、鈴から引ったくったボトルを装填。
音声が鳴ると同時に、その銃口をスマッシュに向けて引き金を引く。
備え付けられていたメーターが反応し、その銃口から小さな魚雷が何発も発射される。
魚雷はすべてスマッシュに命中し、火花を散らしてスマッシュを爆発とともに吹き飛ばす。
《───っと、こっちも問題無しか》
「ちょっとアンタ、それ返しなさいよ!」
《別にお前のものでもないだろ。……まぁいいか、ならこっち使え》
理不尽に感じながらも仮面騎士は鈴の言葉に理解を示したか、何処からか取り出した茶色のボトルを投げ渡す。
「なによこれ」
《そもそもお前のISはアイツと相性が悪い》
「はぁ?」
《カブトムシは本来目があまりよくない昆虫だ。その分、熱に対して反応する習性を持っている……つまりどんなに不可視の攻撃を放っても、高温を発する時点で意味がないってワケ》
「へ、へぇ……」
そもそもあれにモデルとなった生き物の特性なんてあるのかとツッコミを浮かべたくなるが、あの不自然な回避の理由としては十分説明がつく。
ひとまずそれで納得することにした鈴は、受け取ったボトルをスロットに装填する。
「ちょっ、ゴリラってアンタどういう意味よ!?」
《別に他意はないよ》
突然響き渡るゴリラのコールに怒る鈴。
呆れる仮面騎士はその抗議を受け流しながら、ドライバーのハンドルを回転させる。
音声が鳴ると同時に突如として小さな海が発生し、スマッシュをその中へと沈めてしまう。
そして海にふたたび魚雷を撃ち込めば、沈んでいったスマッシュの後を追うように海の中へと飛び込む。
道路に広がる水中、その中でスイスイと泳ぐ仮面騎士。そのさらに下には何処から現れたのか、水で出来たクジラが潜航していた。
ビルドがクジラと共に遊泳するのを他所に、スマッシュはさきに放たれた魚雷が命中、そのまま水上へと打ち上げられる。
『!?』
スマッシュを打ち上げた直後、仮面騎士はクジラの潮吹きによって水中から打ち揚げられる。
「あーもう! やってやろうじゃない!」
狙うタイミングとしてここなのだろう。
仮面騎士のお膳立てを察してか、鈴は装填した結果ゴリラのように巨大化した腕で双天牙月を投擲しスマッシュをさらに打ち上げる。
《はぁっ!》
「おおぅりやぁあああ!!」
背中に備え付けられた戦闘機のブースターを吹かせると、仮面騎士は今度は空を滑空。さきに打ち上げられていたスマッシュ目掛けて、水の力を纏ったキックを放つ。
その真下からは、エネルギーの剛腕を振り回しながら接近した鈴が、徒手空拳で追い打ちを放つ。
激流のキックと野生の剛拳を同時に喰らったスマッシュは、たまらず爆炎に包まれた……。
『
ブルーティアーズがハチのような形状に変化。それぞれが母体=セシリアの指示によって攻撃と防衛を自動的に意思を持って行う。各機が虫の群体として機能している……所謂超個体と呼ばれる存在に近づいているため、他のティアーズとリアルタイムでの同調、リンクを可能としている。
発射するのがレーザーではなく、それらが凝縮して出来たニードルガン。
『
龍砲からソナーが発生する機能の追加。さらにそのソナーによって追加されたディスプレイ部分をタッチすることで、選択した相手に龍砲から生成された魚雷ミサイルを発射する。
龍砲の特性を持っており、発射後はステルスミサイルとなり透明化、相手を自動追尾し迎撃する。
『カードフルボトル ボルテック・ブレイク』
仮面ライダーディケイド/門矢士から託されたカードフルボトルをドリルクラッシャーのスロットに装填して放つ必殺技。
ブレードモード時は「ディメンションスラッシュ」、ガンモード時は「ディメンションブラスト」と酷似した技になる。