IS学園で探偵モノって見ないよね   作:通りすがる傭兵

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これから忙しくなるので供養という形で。誰かしら続き書いてもいいのよ?
2話分まとめてどうぞ。ただ話が長いという。


IS学園で探偵モノって見ないよね

 

 

 

「まあ、第一印象は最悪だったな。

なんせいびきかいて寝てたんだもん。あと酒臭かったし。

......というか、15から酒飲んでたのかアイツ」

 

ーーーー所属宇宙飛行士 織斑一夏

 

回顧録より抜粋。

 

 

 

 

 

 

(き、気まずい......)

 

世界で最初の男性操縦者、織斑一夏(オリムラ イチカ)は今、針のむしろに座っている気分を味わっていた。

突き刺さる奇異の視線、どこか壁を感じる距離感、不要なまでの特別扱い。

今までふつうの生活を送ってきた彼にとっては初めての事で、戸惑いや不安から神経をすり減らしていた。

 

その彼を悩ませる問題がもうひとつ。

 

「............くかぁ」

 

机に突っ伏し若干くぐもったいびきをあげて寝ている男、穂村紗鹿(ホムラ シャロク )

イギリス在住だと報道されていたが日本人らしい名前で、友達になれるかもの若干の希望を胸に教室の扉を開け、

 

「ぐおおお......すかー」

「なんでだよっ!」

 

机に突っ伏し寝息を立てる姿に思わずツッコミを入れてしまい、周りからくすくすと笑われる羽目になったからである。

(しかも酒臭いし! いびきうるさいし! 仕事帰りの千冬ねえかよっ!)

 

どこで働いているか知らない酒豪で酔っ払いの姉に心中で文句を言い始めた頃、ガラリと扉が開いた。

 

「はーい、全員揃いましたね。ではショートホームルームを始めますよ」

 

緑髪に小型な体格の、副担任と名乗った山田真耶(ヤマダ マヤ)が微笑むが、緊張で固まる教室にはまったくもって効果はない。

 

「え、えっと......皆さん、よろしくお願いします、ねっ!」

「んがっ」

「えー......」

 

予想外の事態に狼狽える山田先生。だがその小さい拳を握りしめて自分を奮い立たせると、いつもの2割り増しで声を張り上げ、自己紹介を促した。

 

そして、織斑一夏に番が回る。

前例に倣って立ち上がり、皆の方を向く。

さらに視線の密度が上がり思わず逃げ出したくもなった一夏だが、なんとか言葉を絞り出した。

 

「お、織斑一夏、です。よろしく」

 

日本人らしく軽く頭を下げるが、その程度の挨拶で花盛りの女子高生が満足するはずもなく、他には、と無言の視線が続きを急き立てる。

 

「え、えーっと......」

 

期待の視線を無下にもし難く、かといってこれ以上言う事もなく進退(きわ)まった一夏は、

 

「以上ですっ!」

「もっとまともな自己紹介をせんか」

「あだっ!」

 

すぱこん、と快音が響くと同時に一夏の頭に激痛が走る。思わず顔を上げるとそこには、

 

「千冬ねえっ?!」

「織斑先生だ」

「なんでっ!」

 

名前を叫んだだけで振り下ろされた理不尽な2発目。

思わず頭を抑える一夏を後目に、千冬ねえ、こと織斑千冬はコツコツと席の間を歩き、

 

「起きんか、貴様」

 

一夏のそれより若干軽めに、寝息を立てていた紗鹿の頭を叩く。

目が覚めたかゆるゆると顔を上げた紗鹿。あたりを見渡し状況を把握した紗鹿はスローモーションな動きで立ち上がり、自己紹介を行った。

 

「えー、穂村紗鹿ですー。よろしくですー。

二日酔いで辛いのでここまでー」

 

まったくもってやる気のなさげな様子で挨拶したかと思うと、すぐに机に突っ伏そうとして襟首を掴まれる。

 

「......せめてこの時間は起きていろ」

「了解でーす」

 

しばらく目を開けて粘っていた紗鹿ではあったものの、結局千冬が心構えを説いている途中で寝てしまった。

それを後方から忌々しそうに眺めている女生徒、縦巻きの金髪が特徴的なセシリアは怒りを燃え上がらせていた。

 

(まった貴方は酒を飲んでいたというのですか! 入学式前日に二日酔いになるまで飲む人がいますか!)

 

チャイムが鳴り響き、ホームルームの終わりを告げたその瞬間に、セシリアは席から立ち上がっていた。

 

「ちょっと、よろしくて!」

 

ワザと音を立てて机を叩けば、大抵の人間は起きる。のろのろと顔を上げた紗鹿にセシリアはいつものようにガミガミと怒鳴った。

 

「貴方は公共の場という意味を理解していらっしゃるのですか?」

「人を吊るし上げる場」

「違います! 貴方は現在世界でたった二人の男子操縦者、良くも悪くも衆目を集めるということを理解してまして! ああもう、そのような態度大英帝国の恥ですわ汚点ですわ、英国紳士らしく礼儀正しい立ち振る舞いを心掛けなさいな!」

「知ってる、でも二日酔いだから無理」

「だったらもう少し取り繕って下さいまし!」

「ワトソン君、水分ー」

「トイレにでも行ったらどうですか?」

「そりゃ名案、ちと吐いてくる。さっきから気持ち悪くて」

「貴方という人は......!」

 

さらに怒りを燃え上がらせ、ヒートアップするお説教。もしセシリアが冷静であれば、このようなこと行うはずもないのだが、彼女は現在頭に血が上っていて気がつくはずもない。

 

 

「ねね、もしかして」

「意外とセシリアさんてとっつきやすい?」

「自己紹介の時貴族って言ってたし、てっきりお嬢様かと」

「結構庶民派なのかな?」

 

それが良くも悪くも彼女の雰囲気を和らげるのに一役買ったのは、嬉しい誤算ではあるのだが、本人は知る由もない。

 

「いいですか、だいたいいつもいつも......」

「アーアーキコエナーイ」

「もうっ!」

 

 

◇◇◇

 

 

 

「ーーーであるからして、ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したISを運用を行った場合は刑法によって罰せられーーー」

 

(わっつあーゆーすぴーきんぐ?)

 

本格的な授業が始まって早々、一夏は置いてきぼりを食らっていた。

思わずキョロキョロと周りを見渡し仲間を探すが、理解した様子で時折うなずく生徒ばかり。頼みの綱になりそうな同じ男子の紗鹿といえば、

 

「......すぴー」

 

先の時間に続いて居眠りを決め込んでいた。

 

(......寝てる?! なんで?!

というか分からないの俺だけ、俺だけなのか? みんなこの長ったらしいのを覚えてるってのか? このアクティブなんちゃらとか広域なんとかかんとかとかさっぱり分からん。

というかこれ全部覚えなくちゃいかんのか?)

 

「織斑君、どうかしましたか?

分からない所があれば聞いてください、なにせ私は先生ですから」

 

戸惑う様子を見て優しく声をかけた真耶。

こうなったら、と腹を括った一夏は意を決して手を挙げ、

 

「先生!」

「はい、織斑君!」

「ほとんど全部わかりません!」

「......はい?」

「全然わかんないです!」

「え、ええーっ! ほ、他に分からない人は......しゃ、紗鹿君は大丈夫ですか?」

「......すかー」

「穂村くん、呼ばれてるよ、おーい」

「んが?」

 

となりの席の子につっつかれ、目を覚ました紗鹿。真耶の視線に気がつくと、

 

「分からない所、ありますか?」

「現在話されている箇所が『IS基礎学』のテキスト一章『ISの運用に当たって』の箇所の第2項『ISに関する法令について』の箇所にある記述に関する内容であれば全て暗記したので問題はありません。では」

 

板に水を流すようにつらつらと文句を並べ立て、言い終わるや否やまた参考書を枕にして寝息を立て始めた。

 

静まり返る教室内。

その静寂を破ったのは、真耶の隣で授業を見ていた千冬だった。

 

「織斑、参考書はどうした」

「......え、っとー」

「赤い表紙のものだ。まさか捨てたとは言わせんぞ」

「......電話帳と間違えて捨てちゃいました」

「馬鹿者が」

 

3度振り下ろされる出席簿。

 

「一週間で覚えろ、いいな」

「いやあんな量一週間とか到底」

「やれと言っている」

 

もう1発一夏の頭を叩くと、千冬はざわめく教室内を睨み一つで黙らせ、口を開いた。

 

「ISはその機動性、攻撃力、制圧力と過去の兵器をはるかに凌ぐ性能を誇る。

使いようによっては、兵器にもなりうる代物だ。それを深く知らずに用いれば、必ず重大な事故を引き起こす。

理解ができなくとも覚えろ、そして守れ。

規則とはそういうものだ。

 

貴様らにとって現状、ISはナントカに刃物だ。それを鬼に金棒と呼べるくらいの存在にし、送り出すのがこの学園だ。

去る者は追わん、来るものは拒まん。

だが、3年間はついてこい」

 

キャーキャーと黄色い歓声に混じって、ボソリと低い声を漏らす紗鹿。

 

「頼もしい先生なことで。世界最強は視点も凡人とは違いますか。

それもまた、ISを操縦してるが故なのか。

はたまた罪の意識なのやら......どうなんでしょうね?」

 

意味深なセリフを吐く紗鹿。

それは誰に聞こえるとでもなく、歓声の中に溶けて混ざって消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとよろしくて?」

 

少ない休み時間、ただでさえ不足した知識を補おうとウンウン唸りながら参考書に向き合う一夏に声をかけるセシリア。

その背中を紗鹿は何も言わず眺めていた。

 

(ワトソン君がコミュニケーションでミスするなんてことはないだろうけども、どうなることやら)

 

喧騒の中でも十分に声は拾える、いざとなれば読唇術も使えばいい。会話の内容を拾いつつ、考えに耽る。

(それに、あの織斑千冬の血縁、何かしらの理由があってISを起動したのは確か。

うまくいけば、俺がISを起動した謎が解けるかも分からないしね。関係性を持つのは悪くない)

 

「Hello.織斑一夏さん」

「えっと、ないすとぅーみーちゅー?」

「日本語で構いませんわ。自己紹介でも名乗りましたが、わたくし......」

「久しぶりね」

 

不意に肩を叩かれる。

声の主に心当たりがあったので特に振り向きもせず、セシリアの方を向いたまま応対した。

 

「......調子は?」

「まあまあね、そっちは?」

「二日酔いで頭がいたい」

「いつも通り、てわけね」

 

振り返ると、仏頂面に赤縁のメガネをかけた、長い赤髪をたたえた女子生徒が立っている。

 

「まさか、探偵がこんな場所にいるなんてね」

「そりゃどーも。こっちも元依頼人がいるとは思わなかった」

「......あの時は世話になったわね」

「結果としては面白かったし、ワトソン君の報告書もなかなかに味のあるものだった。今度読んでみるかい、ベルベット」

「興味ないわ。また旅の案内をしてくれるのであれば話は別だけど」

 

クラスの中でも抜きん出て身長の高いベルベット。その理由は制服の胸のリボンが彼女が三年生を表す色であったから。

学年も国籍も異なるベルベットと紗鹿に面識があるのかというと、昔とある事件を解決したよしみと、同好の士としての繋がりがあるからなのだ。

 

「そうそう彼女、事件の名前を『赤毛組合』なんてつけてたんだがどう思う?」

「......英国人はユーモアを持ち合わせていると思ったのだけど」

「アレで意外と単純なのさ」

「そう」

 

ふと目線をあげるベルベット。釣られて紗鹿も目線をあげると、時計の針は授業開始時間もうすぐを指していた。

 

「では、失礼するわ。何かあれば連絡ちょうだい。恩人のよしみとして多少は面倒を見てあげるから」

「んー、面白い事件があったら連絡する。それとここペット禁止じゃなかったっけ?」

「........................野良はセーフよ」

 

赤い髪の隙間から覗く耳が髪よりも真っ赤になっていたのは、見ないことにした。

 

「知ってたけどやっぱりネコ派か」

 

紗鹿はベルベッドの袖口から落ちた、短い茶色の毛をつまみ上げながらそうひとりごちた。

 

 

◇◇◇

 

 

 

「来週に行われるクラス対抗戦代表者を決めねばな。

自薦他薦は問わん、誰かいないか?」

 

6時間目、中途半端に時間を余らせていた千冬は思いついたようにこんなことを言った。

それが事の発端だった。

 

「はいはーい、織斑君がいいと思います!」

「私も私も〜」

「じゃ、私は穂村君で!」

「私もそれがいいと思いまーす!」

水を得た魚のように騒ぎ立てるクラスメイトを横目に、セシリアはたかを括っていた。

 

(物珍しさもありますが、実力としてはわたくしがはるかに上。何より代表候補生ですから、推薦される筈ですわ、ええ!)

 

「候補者は織斑一夏、穂村紗鹿の2名か。他にいないか、自薦他薦は問わない」

「ちょ、俺っ?」

「急に立つな、座れ」

 

(......あれ、おかしいですわね)

 

「ちょっと待った、俺はそんなのやらなーー」

「自薦他薦は問わない。他薦されたものに拒否権などない、選ばれた以上は覚悟をしておけ」

 

(......聞き間違いでは、なくて?)

 

聞き間違いでも、喧騒に紛れたわけでもなくセシリアの名前は呼ばれていない。

その理由は男子操縦者というネームバリューと、ただ盛り上がりさえすればどうでもいいという若さゆえの考え方に固執する高校生らしい思考回路にあるのだが、セシリアはそれを見誤った。

 

「いないか? いないなら投票を」

「待ってください、納得がいきませんわ!」

 

締め切ろうとされるのを見て思わず立ち上がるセシリア。一瞬後悔したものの、脳をフル回転させなんとか理論を構築する。

 

「クラス代表と言うのは文字通りクラスの代表です、それを男性というだけで選ぶのはいささか早計ではなくて?

代表というならば、実力と名声を兼ね備えた人物がなるべきもの。であればわたくし、イギリス代表候補生セシリア・オルコットが適任です!

それに、男性のおふたりはただでさえ心労を感じる環境なのです。その上さらに気苦労を重ねさせる立場に押し上げるのは」

「......オルコットは自薦するという事だな?」

「はい、流されるままに他薦されたおふたりよりは適任かと」

 

理論整然、かつ心情に訴えかけ罪悪感を掻き立てるこの発言。実際少々バツの悪そうな顔をして生徒もいることを確認し、これでわたくしが選ばれるのも当然、と胸を張ったセシリアだったが、

 

「は? お前の下につくとかあり得ないんですけど」

 

そうは問屋がおろさない。

この上なく不機嫌な顔で立ち上がった紗鹿はセシリアの方を睨みつける。

 

「わたくしの方がISでの実勢経験はありましてよ?」

「弟子より弱い師匠がいるか。前までびーびー泣きべそかいてた箱入り娘風情でよくそんなことが言えたな」

「入学早々アルコールを嗜むだらしない方には任せられなくてよ、この自堕落」

「ははっ」

「ふふっ」

 

笑顔を浮かべるもまったくもって目が笑ってないセシリアと、眉間にしわ寄せ引き攣った笑みで威嚇する紗鹿。

しばらく笑いあっていると、セシリアがいい笑顔を浮かべながら親指で窓の外を指差して、

 

「決闘ですわ」

「へぇ、今まで一度も勝てたことないくせに」

「ISはわたくしのホームグラウンド、勝利は譲らなくてよ」

「その減らず口が叩けなくなったところが見ものだな」

「負けた方が勝った方の言う事を聞く、よろしくて?」

「いいねぇ、負けたら奴隷になって貰おうかなぁ?」

「こちらの台詞ですわ」

「あの、そのくらいにして......」

「決闘か......面白い!」

 

手を叩いて2人の意識を切った千冬は、宣言するように大きな声で言った。

 

「一週間後の月曜放課後、クラス代表決定をかけた決闘を3人で行う。一番強いものをクラス代表として選出する......いいな?」

 

言い終わったタイミングでちょうど終業のカネが鳴り、話は終わりだと千冬はつかつかと教室を後にした。

 

「......」

「......」

「「ふんっ!」」

 

教室を後にし、お互い反対方向に歩き出したセシリアと紗鹿。仕事上のパートナーであれ、まだまだ年相応の子供なのである。

 

取り残されていた残りはと言うと、

 

「......一夏、どうするのだ?」

「みんなの期待を無下にはできない、勝ってみせるさ!」

「お、おー?」

「おりむかっこいい〜」

「えと頑張ってね織斑君、応援してるから!」

「おう! ......ところで誰かISの乗り方教えてくれない?」

「「「「......」」」」

「なんで誰も知らないんだよっ! ここIS学園だろ、なあっ!?」

「とりあえず剣を鍛えればいいだろう」

「そんな単純でいいのか......?」

「私にもわからん」

「おいぃ!」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「荷物の多いのも考えものだな」

 

古めかしいキャリーケースをえっちらおっちらと運びながらそうボヤく紗鹿。

スーツケースにボストンバック2つ、さらにバックパックに目一杯が今の荷物であり、中身は着替えや書類など嵩張る上に重い物ばかり。しかも自分の部屋はエレベーターから遠く、というわけで紗鹿はかきたくもない汗をかく重労働に勤しんでいるわけである。

 

目的の場所につき、ドアをノックする。

しばらくして、その家主が顔を出した。

 

「ただいまワトスン君、荷物持って」

「自分でやってくださいまし」

「弟子のくせに」

「それを言うなら助手ですわ」

 

やれやれと態とらしくため息をつきつつ、ボストンバッグを運ぶセシリア。紗鹿は荷物を部屋の中に押し込み、自分の体を隙間にねじ込んだ。

 

「どうだった?」

「......見ている限りではほとんど。やはり男子がいるのでしょうから、学園側も気を使ったのでしょう」

 

教室の態度とは打って変わって、口論する様子もなく、親しげに会話をする2人。

 

「......わたくしと貴方で不和を装い、そのやり取りの中から女尊派を割り出す。

正直やる必要ありますか?」

「あいつらは嫌でも顔を突き合わすんだ、それなら居心地のいい方がマシだ。それに、情報通と仲良くしておけば色々と便利......」

 

ぴろりとスマホが通知音を告げ、それを確認した紗鹿が少し笑みを浮かべる。

 

「どうかしました」

「カチューシャと連絡が取れてね。末永く宜しくだとさ。あと電子マスターキーのデータもらった」

「ああ、凄腕ハッカーの変人の方ですね」

「要求はアホだが腕は確かだ。これからもこき使ってやるさ」

「わあお、最低の雇い主ですわね。労働組合に訴えられますわ」

「知ってるか、フリーランスに労働基準法は通用しないんだ......さて」

 

紗鹿はおもむろにセシリアの荷物をひっくり返すと、中から丈の短いワンピースを選び出す。それを止めるでもないセシリアの方はというと、

 

「今回の要求はなんですの?」

「ちょっくら女装してパフェ食って来る」

「......相変わらず、意図が読めませんわね」

「狂人と天才の意図は読めん。んじゃ、バスルームで着替えるから覗くなよ?」

「そんな事するなら舌噛みちぎった方がマシですわ」

 

荷物から自前の化粧道具とウィッグを取り出し、ものの数分で女性に変装した紗鹿。地味目に纏めた髪型に、メガネで駄目押しの偽装。若干ガタイが大きいが体格の良い一般女子生徒、と受け取れないこともないだろう。

 

「あーあー、んーんー、よし」

「相変わらずその変声技術は凄いですわね」

「世の中にゃ七色の声を出せる奴はうじゃうじゃいるさ」

「流石名探偵、変装も一級品」

「やかましい」

 

そんじゃ行ってくると一般女子生徒になりすました紗鹿は足取りも軽く部屋を出て行った。

 

「......ただ、ちょくちょくネジが抜けるのが難点ですわね」

 

自分のくたびれた男物スニーカーを履いて。

 

 

「おおー、おとなりさんだーよろしくー」

「よろしくお願いします、ええと、布仏さん」

「よろしく〜。名前はー?」

「サクラ、と言います」

「よろしくねさっき〜。ところでなんでせしりんとほむほむの部屋からでてきたのぉ?」

「それは......その......えっと......し、知り合いだったのでご挨拶を、と」

「そのスニーカーかっこいいねぇ、ほむほむとおそろだ〜」

(あ、やべ)

(ガバプレイして慌てふためく名探偵カッコ笑キター!)

 

隣人が天才クラッカー『カチューシャ』こと更識簪であることを、紗鹿はまだしらない。

 

 

 

 

 




どうでも良さげな設定。

穂村 紗鹿

自称顧問探偵。

生まれは日本のロンドン育ち。
癖のついた赤毛が特徴の痩身長駆の男。
顔は痩せこけていて目つきは鋭いが、日本人特有の丸っぽい特徴もちらほら見える。

口調は礼儀正しさのそれからかけ離れたもので無作法極まりなく、時折スラングすら飛び出る有様。
知識に関しては一般常識はもちろん医学薬学生物学物理学、地学解剖学その他色々と多種多様。時々麻薬を吸っている。
趣味もまた多岐にわたり、自己流護身術を編み出したり、論文を書いたり、新しい薬品を製造したりなど。
両親は不在、兄が一人いるという。

シャーロックホームズっぽい日本人名を考えた結果。
先人には勝てなかったよ......


セシリア オルコット

本作ワトソン役、苦労人ポジション。
女尊男卑の傾向はあまりなしだが、感情を露わにすることが原作より多い。
学年主席とあって知識が豊富で頭も回る、だが紗鹿にバカにされる毎日。ひどい。
貴族だけあって趣味は多数。主なものはヴァイオリンやテニスなど。
両親は早くに亡くなっている。メイドで同い年のチェルシーとは仲が良い。

だいたい原作通り。ただ、原作よりかは庶民ぽく叫んだりはしゃいだり殴ったり......よく考えたら原作でもしてる気がする。


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