ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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最終話 摩訶不思議アドベンチャー

 現在リゼットと悟空は、タイムパトローラーの案内の許、全王達が放逐されたという時間軸を訪れていた。

 コアエリアの戦士との戦いから数日が経ち、時の界王神が無事全王達が放逐された時間軸を割り出してくれたので、タイムパトローラー同伴のもと悟空とリゼットが全王回収にやって来たのだ。

 数日しっかり休んだ事でリゼットの体調も回復し、今回はしっかり本体で活動している。

 二人の近くにはセルが控えており、トランクスとバーダックは他の神々を回収する為に現在別行動中だ。

 

「あ、そうだ神様! これ使えねえかな?」

 

 そう言い、悟空が取り出したのは以前全王に渡された呼び出しスイッチだ。

 これを押せば全王をその場に呼び出せるという、一歩使い方を誤れば大惨事を招きかねないアイテムである。

 

「どうなんでしょうね。私達の元居た世界とここは別ですし……でも、試してみる価値はあると思いますよ」

「だよな。そんじゃポチっとな」

 

 悟空がスイッチオン! するとその場に全王が出現した。

 どうやらこの時間軸でも、呼び出しスイッチはしっかり機能するようだ。

 全王は呼び出された事に気付いていないのか、ぼーっとした顔で……いや、それは普段からだが……遠くを見ていた。

 

「よっ、全ちゃん!」

「全王君、迎えにきましたよ」

「あ……悟空、リゼット」

 

 全王はようやく二人に気付いたらしく、嬉しそうに顔を綻ばせた。

 しかしまた無表情に戻ってしまい、何もない世界をじっと見る。

 

「どうした、全ちゃん。何か気になるもんでもあったか?」

「ううん、何もないのね。何も」

「だよなあ。全部綺麗さっぱり消えちまってるもんな。宇宙まで消えちまってるってのは不思議なもんだ」

 

 この世界は、ここにいる全王が消したわけではない。

 だが全宇宙を消してしまえばどうなるか、の答えがここにある。

 以前の全王ならばきっと、この世界に何も思う事はなかっただろう。

 ただ何もない空間を独りで浮遊し続けて、永遠を過ごしたかもしれない。

 元々全王宮から出る事のない全王にとって、自分以外が消えても大して変化はない。

 ただ建物がなくなって、大神官や付き人がいなくなるだけだ。

 しかし今ここにいる全王は、この世界を見て今まで感じた事のない気持ちを抱いていた。

 

「凄くつまらない世界なのね、ここ。悟空もリゼットもいなくて、ペンギン村も無くて……凄く凄く退屈だったのね」

「……そっか」

「全王君、それは『つまらない』ではなく、『寂しい』という感情かもしれませんよ」

 

 全王の僅かな成長を感じさせる言葉に悟空は肯定も否定もせず、リゼットは全王の心に芽生えつつある新たな感情の名を教えた。

 すると全王は何も言わずにリゼットの側まで浮遊し、意図を察したリゼットは彼を軽く抱き上げた。

 

「よくわからないのね。けど、多分あまり好きな感じじゃないのね」

「なあ全ちゃん。全ちゃんは、この世界を見てどうしたいって思った?」

「このままだとつまらないし、戻したいのね」

「そっか」

 

 悟空の問いに、全王はこの世界を戻したいと答えた。それは以前までの全王ならばきっと言わなかった事だ。

 彼の返答に悟空は穏やかな笑みを浮かべ、ポンポンと頭を叩く。

 いくらか彼と接して、分かった事がある。

 全王は世界の頂点で、人間には理解不能な思考の持ち主で、無慈悲で何も考えていなくて、一見会話が成立しているように見えても根本的な部分では意思疎通など出来ない存在だ。

 誰もがそう思う。界王神や破壊神ですら『全王とは何か』と問われれば、突き詰めれば『世界の絶対のシステム』という答えに行き着くだろう。

 誰も全王の事など一個人として見ていないのだ。ただ、その能力と存在の格だけを見ている。

 だが悟空は思う。こいつはそこまで悪い奴じゃねえ、と。

 力の大会の時だって、優勝者が他の宇宙の復活を願う事を期待していたと後から聞かされた。

 彼が自分達と違うのは心じゃない。視点だ、と悟空は考える。

 ずっと全王宮にいて上からしか世界を見なかった。これでは、世界も人も理解出来なくて当然でしかない。

 

「じゃあ戻すか。オラ達の世界に戻ってよ、また超ドラゴンボールを揃えてこの世界を戻してくれって願おうぜ。使っちまったばっかだから一年待たないといけねえけどよ」

「うん、それがいいのね。すぐに大神官に集めさせるのね」

「それもいいけどよ……なあ全ちゃん、冒険ってした事あるか?」

 

 大神官に命じれば超ドラゴンボールはすぐに集まるだろう。

 しかし悟空は、それでは何も変わらないと考えた。

 全王に必要なのは恐怖ではない。無関心でもない。

 彼の世界を広げる為の第一歩と、外に連れ出してくれる誰かの手だ。

 そう……かつて、幼い頃の自分がブルマに連れられて外に出て、世界が広がったように。

 

「ないのね。ずっと全王宮にいるし、それで十分なのね」

「そっか。そんじゃあ、オラと同じだ。オラも子供の頃、ブルマに会うまでずっと小さな家で暮らしてた」

「冒険、楽しい?」

「ああ、色々苦労はあったが、すっげえ楽しかったぞ。知らねえもんばっかで、考えもしなかったような奴等がいてよ……全ちゃんにも、その楽しさを知ってもらいてえ」

「うわあ……僕もやりたいのね!」

 

 二人の会話を聞いてリゼットは一瞬やめさせるかどうか考えたが、悟空のやりたいようにやらせた方がよくなるような気がして口を挟まなかった。

 今の全王には、閉じた世界から引っ張り出してくれる悟空の図々しさが必要だ。

 この役目はきっと、破壊神も界王神も天使にも……そして、自分にも出来ない。

 能天気で、高く浮いている全王を何も気負わずに掴んで自分と同じ目線にまで下げてしまうような孫悟空だからこそ出来る事だ。

 

「そんじゃあブルマに宇宙船作って貰ってよ、オラと一緒に超ドラゴンボールを集める冒険に行こうぜ。きっと楽しいぞ」

「行きたい!」

「ああ。それに約束だったもんな、今度一緒に遊ぶってよ」

 

 すっかり乗り気になった全王はリゼットの腕から離れて悟空の側に飛び、悟空はそんな彼を両手で掴んで高い高いをするように持ち上げた。

 それからリゼットの方を見るが、言いたい事は分かる。

 だからリゼットは肩をすくめ、悟空が頼み事をする前に返事をした。

 

「安心して下さい。他の神への説明は私の方でやっておきます」

「悪いな神様」

「それは私よりブルマに言った方がいいかもしれませんね。宇宙船を作るのは彼女なんですから」

 

 言うまでも無い事だが、宇宙船はとても高い。

 ましてや超ドラゴンボールを探すとなれば他の宇宙まで行く事になるので、現在のカプセルコーポレーションの最新最高の宇宙船となるだろう。

 その値段は屋敷が数軒余裕で建つレベルである。

 だがブルマはきっと断らないだろう、とリゼットは思っていた。

 それに今回のクウラ討伐とモロ討伐、そしてハーツ討伐のお礼として討伐に関わった全員に少なくない報酬が支払われているので、それで宇宙船を『永遠の美』から買う事も出来る。

 ……コインにザーボンの顔が刻まれた胡散臭いもので、地球では使えないが第7宇宙のほとんどの星で使えるらしい。

 なのでクウラとハーツ二人の討伐に加わりハーツを倒した当人である悟空は実は宇宙全体で見ても指折りの超金持ちになっていた。実は宇宙レベルで見るとブルマより金を持っていて、惑星をいくつか買えるレベルだ。

 ……とはいえ地球では使えないので、本人的には使えもしない変なコインを大量に押し付けられたという感覚でしかない。

 

「それじゃあ、戻りましょうか……私達の宇宙に」

 

 

 神殿で空を眺めながらミラは一人、物思いに耽っていた。

 空に手を伸ばし、己の手を見る。

 以前よりもずっと強くなったのは間違いない。生き甲斐も感じている。

 だが……遠い、と思った。

 この掌は未だに何も掴めず、どこにも届いていない。

 ライバルに届かないのはまだいい。追いかけるべき宿敵が強いのは嬉しい事だ。

 だが、せめて……せめて、助けを求める我が子にくらいは届かせたかった……。

 

 ――い、嫌だ……嫌だ……死ぬの……嫌だ……。僕はまだ……何も解き明かしてない……。

助けて……父さん……母さん……助けてよ……。

 

 フューは、こんな自分を『父さん』と呼んでくれていた。

 それは挑発の為だったのかもしれないし、皮肉を込めていただけかもしれない。

 死に際のあの言葉も、その場で最も助かる可能性が高い行動を選んだだけで本心ではミラを父などと思っていなかったかもしれない。

 それでも確かに父と呼び、手を伸ばしてくれたのだ。

 だがその手を掴む事がミラには出来なかった。

 因果応報、当然の報い……そう言われてしまえば否定など出来ない。

 ミラもトワもフューも、自分の欲望の為だけに様々な時代を荒らした。命を奪ってきた。

 ならばこれは当然の、相応しい末路なのかもしれない。

 好き勝手してきた悪党が、より巨大な悪党に踏み潰された。まさに因果応報、然るべき結末だ。

 

「よお、ここにいたか」

 

 無力感に支配されるミラに、誰かが声をかけた。

 振り向けばそこにいたのはバーダック、トランクス、セルのタイムパトローラー三人だ。

 ミラはすぐに視線を前に戻し、彼らを視界から外す。

 今のミラに、彼等の姿は眩しすぎたからだ。

 孫悟空という息子に未来を託し、その息子は今や第7宇宙最強の戦士となったバーダック。

 未来を託され、希望となったベジータの息子トランクス。

 そして細胞から作り出された存在という、フューと同じ存在であるセル……。

 彼らを見ていると何一つ掴めていない自分が惨めに思えてくる。

 

「らしくねえな。大方、クウラやハーツが暴れている時はそいつらの事を考えてればよかったが、全部終わった後になってフューの死に様が響いてきたってとこか」

「……分かっているならば放っておいてくれ」

「俺もそうしたいさ。だが、時の界王神がお前にこいつを渡していけって言うからよ」

 

 時の界王神が話題に出た事で、ミラはもう一度後ろを振り向く。

 そしてトランクスが抱えている小さな物体に気が付いた。

 それは赤ん坊だ。

 青い肌の目つきの悪い子供で角付きの黄色い帽子を被り、おしゃぶりをくわえている。

 その姿は、ミラの記憶の片隅に確かに存在していた。

 

「フュ……フュー……?」

「そうだ。お前が元いた時代の方のな」

 

 監獄惑星で出会ったフューは、この赤子が歪んだ成長を遂げた未来の姿である。

 ならばミラとトワが元々いた時代にはまだ、放置された赤子のフューがいるという事だ。

 その赤子をタイムパトロールは、時の界王神の命令を受けてこの時代に連れてきていた。

 

「本当はこういうのは駄目みたいなんですが、今回は特例らしいです。この子が成長して、またあんな性格になって色々な時代を荒らすくらいなら、今度はしっかり親元で育ててみせろって」

「…………」

 

 ミラは返事をしなかった……いや、出来なかった。

 ただ、震える手をフューに伸ばそうとしては引っ込めてしまっている。

 過去の宿敵の不器用な姿にバーダックが笑い、「渡してやれ」とトランクスに視線で指示する。

 

「ほら、ミラ……お前の子だろう。しっかり受け取れ」

「あ、ああ……」

 

 トランクスに手渡され、ミラは赤子のフューを受け取った。

 ……軽い、と思った。

 いや、こんなに軽かったのかと初めて知った。

 こんなに小さな命を自分達は置き去りにしたのかと、今更になって驚愕する。

 

「もう置いていくなよ……残される方は、辛いんだぞ」

 

 トランクスに言われ、ミラは小さく頷いた。

 今は感情の整理が出来ない。返事をする余裕すらない。

 ただ分かるのは、この小さな命を二度と手放してはならないという事だけだ。

 そんなミラを残し、タイムパトローラー三人はその場から離れるとリゼットやこの時代の皆に挨拶をして回る。

 トランクスはベジータとブルマ、この時代の自分へと別れを告げ、ターレスとバーダックは無言で殴り合い、セルはリゼットと軽くやり取りをして時の巣へと帰っていった。

 時の巣へと帰還した彼等は、ミラについて話し合う。

 

「ミラは大丈夫だろうか? 随分呆けていたが」

「さあな。私達がそこまで気にする事ではあるまい」

 

 トランクスの疑問にセルが薄情とも思える言葉を返す。

 しかし実際、この先はミラの問題だ。

 自分達が気にしてもどうしようもない。

 

「心配いらねえよ。あいつを誰だと思ってるんだ? 俺達を散々振り回しやがった野郎だぞ。

この程度の問題くらい、簡単に乗り越えやがるさ」

 

 恐らくはこの中で最もミラと戦った経験のあるバーダックが信頼にも近い言葉を放ち、トランクスとセルも納得したように笑う。

 きっと大丈夫……もうミラとフューは同じ失敗をしない。

 

 今はただ、そう信じよう。そう三人は思った。

 

 

 超ドラゴンボールによって、全宇宙は元に戻った。

 他の時間軸に放逐された神々も無事に帰還し、今はそれぞれの宇宙で後始末に追われている。

 トランクス達タイムパトローラーも去り、全宇宙を巻き込んだ未曽有の危機はここに解決を迎えた。

 今回の事件解決に多大な貢献を果たしたリゼットは地球の神から、より上位の神への昇格の話や、専用の新しい役職を作るという話、他の宇宙からの好待遇での勧誘もあったが全て拒否し、今も地球の神として日々、人々の日常を見守っている。

 

 モロやクウラ、コアエリアの戦士の排除に成功した『永遠の美』と総帥であるザーボンはますます第7宇宙内での立場を強めて他の宇宙の治安維持部隊との連携も見えてきたが、すぐ近くにいる天使メルスに過剰に怯えているせいであまり横暴な事は出来ていない。

 また、今回の件で想像の遥か上だった地球の戦力を目の当たりにした事もあって、彼がフリーザと同じ暴君の道を歩む事はないだろう。

 

 第6宇宙のサイヤ人達は二度と負けぬように日々鍛錬を重ね、ヒットは難易度の高い仕事を優先して受けるようになった。

 彼等が見据える先にはきっと、あの山吹色の胴着を着た背中があるのだろう。

 第11宇宙のプライドトルーパーズは結束を強め、今日も宇宙の平和を守り続けている。

 その先頭を務めるのは勿論宇宙最強の戦士であるジレンだ。

 彼の後ろにはいつだって守るべき人々がいて、彼の前には叩きのめされた悪党達が這い蹲っている。

 信頼を知った男は強さを求める確かな理由を支えに、高みを目指して自らを鍛え続ける。

 

 今回のハーツの争乱に神々のうちの何人かはそれぞれ思う所があったのか、今までより業務に真面目に取り組むようになったが……その一方で第7宇宙の破壊神であるビルスは平常運転で今日も惰眠を貪っている。

 流石実力では最強レベルのくせに第7宇宙の人間レベルをワースト2位にした破壊神は駄目な方向に格が違う。

 一方界王神の方には明らかな変化が訪れていた。

 

「やあ、初めましてだねリゼットさん。私は大界王神。ずっとブウの中で眠っていたけど、今回の戦いで目覚めたんだ。よろしくね」

「あ……はい。よろしくお願いします……」

 

 地球の神殿の住人に大界王神が加わるという、まさかのビッグサプライズだ。

 正確に言えば今の彼はブウの別人格のような存在なので住人は増えていないのだが、リゼットにとってはある意味今までで一番対応に困る住人だ。

 リゼットは一惑星の神であり、神としての階級は最低ランクに位置している。

 一方大界王神は第7宇宙の頂点だ。上司(閻魔)上司(界王)上司(大界王)上司(界王神)の、そのまた上司である。

 それ自体は別にいい、今更だ。破壊神ビルスや全王と関わりを持った今となってはそこまで気にするような事ではない。

 しかしその大上司が職場に自分の部下扱いで入って来たのだからかなり居心地が悪い。

 

「そんなに気にしなくていいよ。今の私はもう終わったはずの過去の存在だ。

ただの同居人として扱ってくれると嬉しい。それに普段はブウが表に出て、私は引っ込んでいるしね」

「は、はあ……」

 

 そういえば、とリゼットは過去の自らの暴走を思い出す。

 あの時、あの世からの魂の召喚でブウに殺された界王神達も召喚したが……よく思い返してみれば確かにあの時、大界王神がいなかった。

 リゼット自身はこの事を深く考えず、神としての階級が違い過ぎて呼び出せなかったか、あるいはブウと完全に同化してしまったかのどちらかと思っていたのだが、まさか普通に出て来るとは。

 勿論この大界王神復活に神々の世界は大騒ぎで、大界王神を復帰させようという話まで出たそうだ。

 しかし結局当の本人が拒否した事と、今の彼は宇宙を荒らし回ったブウと同一人物という事で復帰させるわけにもいかず、結局神殿の助言役という位置づけに収まっている。

 その代わり、最近は界王神がよく地球の神殿を訪れ、大界王神に教えを請う姿が目撃されていた。

 もしかしたらこれで、引き継ぎ不足も解消されるかもしれない。

 そして――。

 

 

 

「おっ! 全ちゃん、あっちの方から反応ありだ! 超ドラゴンボールは近いぞ」

「やったーなのね!」

 

 宇宙を飛ぶ、カプセルコーポレーションのマークが付いた一隻の宇宙船。

 その中で悟空がドラゴンレーダーを見て喜びを示し、全王が両手を広げて万歳をした。

 悟空はすぐに宇宙船内の衣装ケースの中から、全身を包むタイプのアンダースーツを取り出して着込み、その上からいつもの胴着を着込んだ。

 

「悟空悟空、それ何?」

「へへーっ、銀河パトロールの制服をブルマが解析して、作ってくれたんだ。

よくわかんねえけど、これを着てるとオラ達サイヤ人でも宇宙で生きてられるんだぜ。すげえだろ?」

「わあ! じゃあ悟空も僕と一緒に宇宙空間に出られるのね」

 

 悟空はニカッ、と人懐っこい笑みを浮かべて宇宙船のハッチを開け、全王を持ち上げると自分の背に乗せた。

 そして飛び出し、宇宙空間を高速で飛翔する。

 星々の間を翔け、かつて雲のマシンで空を飛んでいた少年は大人となった今、星々の海を泳ぐ。

 その背にはかつての自分同様に広い世界を知らなかった少年を乗せ、ドラゴンボールを目指して未知の世界へと飛び込んだ。

 その途中、悟空と全王は太陽を泳ぐ巨大な龍を見た。

 どこか神龍に似ている青い龍で顔つきは意外と可愛らしい。

 青い龍が悟空達を丸呑みしようと迫るが、悟空はアクロバティックに回転しながら龍の横をすり抜けた。

 

「すっげえなあ! 宇宙にはあんなんもいるんか!」

「でっかいのね! かっくいー!」

 

 龍は尚もしつこく悟空達を追うが、悟空は軽々と龍を翻弄して右へ左へ誘導し、やがて龍は気付いた時には自らの身体で蝶結びを作ってしまっていた。

 涙目になる龍をその場に残して悟空が飛び、レーダーの反応を頼りに巨大な惑星へ向かう。

 超ドラゴンボールはまだ石のはずだが、ブルマが開発した最新型のレーダーならば石のままでも探知してくれる。

 

「なあ全ちゃん、楽しみじゃねえか? この先もきっと、あんな見た事のねえ奴が沢山いるぞ! 宇宙にはまだまだ、オラ達の知らねえ事がいっぱいあんぞ!」

「うん! とってもスーパースーパー楽しみなのね!」

「だよなー! そんじゃ行くぞ……それー!」

 

 悟空が速度を上げ、全王が歓声をあげた。

 全王宮では大神官とウイスがその姿を見ながら、困ったように微笑む。

 悟空の手にかかっては、宇宙の神々が恐れる全王もただの冒険に心躍らせる少年に早変わりだ。

 その姿を水晶越しに見ている大神官は小さく溜息を吐いた。

 

「ウイスさん」

「はい、お父さま」

「私は全王様の、あれほど楽しそうなお顔を見た事がありません」

 

 大神官のその言葉は、少しばかり普段の声色と違った。

 それが喜びなのか、それとも悔しさから来るものなのかは本人にも分からない。

 分かるのは、以前ペンギン村で遊ぶ全王を見た時とは明らかに違う感情を抱いているという事だ。

 

「今でも私は反対なのですよ。全王様は常に平等であるべきです。

特定の何かに好意を持たれて、消す事に躊躇うようでは今回のように付け込まれてしまうかもしれません」

「同感です」

「しかし……何故でしょうね。そうなっても、どうしてか……何とかなってしまいそうな気がするのです」

「ふふっ……それも、同感です」

 

 全王を背に乗せた悟空は宇宙を駆け抜け、星を越える。

 この先きっと、悟空と全王は不思議な旅をするのだろう。

 そしてその旅はきっと、楽しいものとなるだろう。

 何故なら、この宇宙は大きな宝島なのだから。

 

 

 

 悟空と全王は摩訶不思議なアドベンチャーを求めて、宇宙のどこかへ飛び去って行った。




宇宙争乱編(とクウラ決着編とワールドミッション編とモロ編)完ッ!!

というわけでまずは監獄惑星からスタートした一連の戦いは終わりです。
全王に関してはマジでハーツによって歴史ごと消される流れにして退場させるかどうか悩んだのですが、悟空のペースに巻き込んで成長させる方向に舵を切りました。
どうせなら、皆が恐れてしまう全王相手でも能天気に巻き込んで、一緒に笑ってる方が自分の中の悟空像に近かったので。
それにこのSSの全王は未来トランクスの世界消してないからまあセーフという事で。
ついでに大界王神とフューベイビーが神殿INしました。
フューはちゃんと成長して今度はゼノバース版に近い性格になる事でしょう。勿論他の時代に迷惑をかけないくらいの分別もプラスで。
フューの性能そのままだと流石にバランスブレイカーなのでベイビーまでナーフしておきました。これなら神殿にいてもヨシ!

それではまた、忘れてなければお会いしましょう。

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