英雄の欠片は何を成す   作:かとやん

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ベル君、待望のランクアップです。
長かったぜ。(投稿するまでも、長かったぜ)


数話前から、というか数か月前から一人称語りではなく三人称タイプを使用していましたが一人称語りに戻ります。

もし三人称の方が見やすかったなどありましたらご意見ください。


英雄の欠片と器の昇華

レフィーヤさんから謎の暴力、というか鉄拳を受けた僕は暫く気絶していたようで、気が付くとソファに寝かされていた。

腹部を走る痛みに涙を滲ませながら体を起こせば、部屋の端では正座状態のレフィーヤさんがリヴェリアさんの説教を受けていた。

 

「えぇ……」

 

その光景に僕が困惑の声を上げると、書類を覗き込んでいたフィンさんと神様が顔を上げた。

 

「お、起きたんやな」

 

「大丈夫かい?」

 

「え、えっとはい。なんとか」

 

若干横の妖精を見つめながら僕を気遣うフィンさんに、僕は苦笑しながら答える。

「良いストレートやったで!」とからかう神様だったが、直ぐに表情を切り替え、ニヒルに笑いながら手を叩いた。

 

「ほな、ベルたんのステイタス更新。いこか!」

 

「! はい!!」

 

数日ぶりの更新に、僕は腹部の痛みすら忘れて立ち上がった。

 

 

 

 

「ベルたんランクアップ来たああああああああああああああああああああ!!!!!!」

 

「へ? え? ええええええええええええええええええ!?!?!?!?」

 

俯せになった僕の背に乗ったまま、神様が声を上ずらせて叫ぶ。

それに驚きながらも、僕はランクアップの知らせに目を瞬かせた。

 

ランクアップ? 誰が? 僕が!?!?

 

 

 

 

「ほれ! これがレベル1最後のステイタスやで」

 

そう言って手渡された紙を、僕は食い入るように見つめた。

 

 

ベル・クラネル

レベル 1

 

力  : A 859

耐久 : SS 1012

器用 : S 926

俊敏 : A 893

魔力 : SS 1175

 

【スキル】

//憧憬願望//

早熟する。

思いがある限り効果は持続し、思いの丈で効果は向上する。

限定的条件下におけるスキル補正

 

・王律鍵 E

レベルに応じた宝物庫へのアクセス権

 

・器用貧乏

複数の武器を扱うほど、武器の扱いに補正

戦闘で得られる経験値の一部消費

 

【魔法】

ゲート・オブ・バビロン

 詠唱破棄

宝物庫内の宝具の転送及び射出

 

 

英雄の号砲<神聖特攻宝具>

 全ステイタス、レベルを魔力に統合

使用後、レベルに応じた王律鍵の一時封印、及びステイタスの一時固定化

<詠唱文>

 顕現せよ。今は遥か過去の偉業。時の水面に沈めども願いは劣らず、腐敗せず。民を守るは我が勤め。友を救うは我が願い。顕現せよ、世界を統べし王の残滓よ。

 我求むは他の命、他の未来。血違えども一筋の灯り、絶えることなかれ。来たれ、燃えよ、幾千万の輝きもって敵、撃ち滅ぼさん。

 

 

 

 

トータル600オーバーの成長に思わず握り拳を作ってしまう。

頬が緩むのを必死で抑えていると、神様はもう一枚の紙を差し出してきた。

若干ぎこちない笑顔で髪を差し出してくる神様に、僕は首を傾げながらもランクアップの事実を確認したくて視線を二枚目の紙に移した。

 

ベル・クラネル

レベル 2

 

力  : I 0

耐久 : I 0

器用 : I 0

俊敏 : I 0

魔力 : I 0

 

神性 I

 

【スキル】

//憧憬願望//

早熟する。

思いがある限り効果は持続し、思いの丈で効果は向上する。

限定的条件下におけるスキル補正

 

・王律鍵 E

レベルに応じた宝物庫へのアクセス権

 

・器用貧乏

複数の武器を扱うほど、武器の扱いに補正

戦闘で得られる経験値の一部消費

 

【魔法】

ゲート・オブ・バビロン

 詠唱破棄

宝物庫内の宝具の転送及び射出

 

 

英雄の号砲<神聖特攻宝具>

 全ステイタス、レベルを魔力に統合

使用後、レベルに応じた王律鍵の一時封印、及びステイタスの一時固定化

 

 

 

 

「ほんとにレベル2になってるっ!」

 

何度も目を擦っては数字を確認する。

しかし、その「2」という数字は変わることなく、ようやく実感した僕は感極まって神様に抱き着いた。

 

「神様ぁ! やりましたよ! レベル2です!」

 

「ぅほ♪ 会得やぁ~」

 

指をまさぐるように背中へ回してくる神様。

しかし、そんな些細な事など気にならないぐらい嬉しかった僕はそのまま暫く神様と共に喜びを嚙み締めた。

 

 

 

 

「で、なんだこれは」

 

夕日のまぶしい黄昏時。

執務室で書類整理をしていたところに現れたのは、フィンとロキだった。

 

フィンの困ったような苦笑に嫌な気がしていた私だが、突き出されたベルのステイタスを前に眩暈と頭痛がした。

 

「ベルのステイタスやで!」

 

「……」

 

「じょ、冗談やんか。そんな怖い目で見んといてぇや」

 

無言の圧に屈したロキは、目を明後日の方へ揺らしながら絞り出すように囁いた。

 

「べ、ベルたんに、神性がついた」

 

……なぜ、こうなったのか。そもそも神性とは付与されるものなのか。

無数の疑問が頭痛となって私を襲うなか、先に見ていたであろうフィンが額の皺を揉み解しながらロキに尋ねる。

 

「この神性の効果はなんだい? まさか本当に神になるとでも?」

 

「い、いやそれはあらへんで。ベルたんから神威は感じれんし、そもそも新しい神が生まれたら絶対わかる。ただ……これがベルたんにどう影響するかは」

 

「予測できない、か。これからもダンジョンに潜っても問題ないと思うかい?」

 

ダンジョンは神を嫌う。

神が入ることを禁止されているダンジョンに、正体不明のステイタスを持ったベルを入れてもいいのか。

その問いにロキは大分悩んだ後、弱々しく首を縦に振った。

 

「今すぐにどうにかなるわけやないし、神威さえ使わんかったら早々ダンジョンにもバレへんのから問題ない、と思う」

 

「……これをどこまで周知する?」

 

「ギルドと神会には伏せる。どうなるか分からんし、神連中がこぞってベルたん襲いに来る未来が簡単に想像できるわ」

 

苛立ちげにそう吐き捨てたロキに、私もフィンも無言のうちに同意するとステイタスを暖炉へと放り投げた。

 

 


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