New Year Party HonoRimi 作:『シュウヤ』
原作:ラブライブ!
タグ:クロスオーバー ラブライブ! BanG_Dream! μ's Popin'Party 高坂穂乃果 牛込りみ ほのりみ クロスオーバー
今年もよろしくお願いします。
2019年書き初め作品となります。
今年は放置しているシリーズモノをちゃんと更新しつつ、新しい事にも挑戦していきたいと思っています。
何卒応援よろしくお願いします!
一月六日。日曜日の今日だが、新年休み最終日の人も多く出歩く人はそこまで多くない。
天気は快晴。雲ひとつない抜けるような青空には、ようやく高く昇り始めた太陽が眩しく輝いていた。放射冷却で冷え切った空気が溶かされていくのを感じ、りみはコートのボタンを外す。
「──あ、お〜い! りみちゃんこっちだよ〜!」
聖橋付近でキョロキョロするりみに、元気な声。橋のたもとで、声の主は大きく手を振った。
声の方向を向いたりみは、不安げな表情から一転明るい色を見せた。
「──穂乃果ちゃん、久しぶり。明けましておめでとう」
「久しぶり〜! 元気だった? 明けましておめでとう!」
「うん、穂乃果ちゃんも元気そうだね」
穂乃果はえへへ、と笑うと、
「じゃあ行こっか!」
そう言って右手を差し出した。
「穂乃果が案内してあげるよ!」
新年明けてすぐ、りみのケータイに一本のメッセージが入った。
以前に連絡先を交換した穂乃果から、一緒に初詣に行かないかと提案があったのだ。穂乃果の地元秋葉原には、毎年テレビで取り上げられるほどの混雑を見せる神田明神がある。
さほど遠くはないし興味はあったのだが、人混みが苦手なりみは尻込みしていたのだ。土地勘もなく迷う心配もあった。
そこへ飛んできた、穂乃果の提案。年明けすぐの混雑を避けつつお互い学校が始まり忙しくなる前の今日に、という事で約束がなされたのだった。
「穂乃果ちゃん、お出迎えありがとうね」
聖橋を歩きながら、りみが口を開く。
「気にしなくていいよ〜。穂乃果の家も、ここまでほぼ一本道だから」
「和菓子屋さんなんだよね? いいなぁ、お菓子に囲まれる生活なんて、憧れちゃう」
すると穂乃果は、
「え〜そんな事ないよ〜。生まれた時から和菓子見てるから、もうあんこ飽きちゃったもん!」
そういう事もあるのか、とりみは考える。
「りみちゃんのお友達が羨ましいな〜」
「?」
「前に食べたチョココロネ! お友達のお家なんでしょ?」
「あ、山吹ベーカリー……」
「そうそれ!」
そこで穂乃果は、ふと何かに思い至る。
「……もしかして、バンドの練習の差し入れにパンを持ってきてくれたり?」
「あ、うん。よく差し入れに持ってきてくれるよ」
「うわぁぁ〜! 羨ましいっ!」
本気で叫ぶ穂乃果。りみはその本音っぷりに、もう少し近ければ差し入れに行けるのにな、と苦笑い。
聖橋を渡った先のイチョウ並木を抜けると、青銅色の鳥居が顔を見せる。
「わあ、大きいね。ここが神田明神かぁ……」
りみは鳥居を見上げ、それから小さく礼をする。
「おぉ、りみちゃん礼儀正しい!」
「そ、そうかな……」
逐一感動する穂乃果に、りみは少しだけ顔が熱くなる。
りみは辺りをざっと見渡して、
「人、多いね……」
元日から一週間が経つにも関わらず、溢れかえる人の波に目を丸くする。見ると、様々な屋台に簡易テーブルが用意され多くの人で賑わっている。
穂乃果はその反応自体が意外だったのか一瞬不思議そうな表情をしたが、
「ああ、ここは毎年こんな感じだよ〜。まだしばらくはこのままだね」
「流石は有名な神田明神……」
りみの反応が普通なのだと思い直す。
「これでもかなり減った方なんだよ〜。元旦の初詣なんて、それはそれは凄い人で……。気を付けないと勝手に流されて行っちゃうもん」
しかめっ面で唸る穂乃果に、テレビで見た以上なんだろうな、とりみは戦慄する。
「今日はそんなでもないけど、一応──はいっ」
笑顔で差し出される、手。
「あ、ありがとう……」
面倒見の良さにどこか既視感を感じながらも、りみはそっと手を握る。
「さ、行こっ!」
「わわっ、穂乃果ちゃん、走らなくても……!」
新年の神田明神では、御神体前の賽銭箱には行けない。手前に設置された簡易賽銭箱に、お賽銭する形になっている。
「こんな風になるんだね……。前まで行けないのは、ちょっと残念かも」
「お正月だけだからね〜。仕方ないんだけど、確かに今しか来ないとそう思っちゃうかもね」
穂乃果も苦笑しながら、五円玉を放る。りみもその横で倣い、二人で手を合わせる。
しばしの沈黙。
「──さ!」
一瞬早く顔を上げた穂乃果が、右側に抜ける。りみも慌ててその後ろに続く。
「希ちゃんは、いるかな〜」
「誰?」
キョロキョロする穂乃果に、りみは問いかける。
「μ'sのメンバーの一人なんだけど、ここでバイトしてるの! スピリチュアルな女の子なんだよ〜」
「すぴ……?」
説明になっていない説明に戸惑うりみだったが、
「──あー、希ちゃん、今日はお家でノンビリしてるってメッセージ来てた。ん〜残念! 紹介したかったんたけどな〜」
りみもスピリチュアルなるメンバーがどんな人物なのか気になったが、いないものは仕方がない。
「──よーし、じゃあ穂乃果の家行こっか! 前に約束した通り、ご馳走してあげる! 和菓子しか無いけど!」
気を取り直した穂乃果は、一度クルリと華麗なターンを決める。
「うん、めっちゃ楽しみ〜」
こっちだよ、と穂乃果が向かった先には、石階段。
「わ、随分急な階段だね……」
「うん、男坂っていうんだよ〜。μ'sの練習場所の一つなんだ!」
「練習場所……?」
りみは一瞬考え、階段での練習方法なんて一つしか無い事に気付く。
「まさか、ここを登るの……⁉︎」
「うん、スクールアイドル始めた時からずっとね〜。今の練習メニューでは何往復もしたりするんだよ〜」
「…………」
言葉が出てこないりみ。ポピパの練習場所である市ヶ谷家までも長い階段を登るが、ここまで急ではないしそもそも走ったりはしない。
「スクールアイドル……」
笑顔で歌って踊る。その大変さを垣間見た気がしたりみ。前を歩く穂乃果の背中が、急に大きく見えた。
「お、りみちゃんもしかしてスクールアイドルに興味ある? ちょっと練習やってみる?」
発言を勘違いした穂乃果が楽しそうに駆け寄ってきたが、
「……………!」
りみは全力で首を横に振るしかなかった。
「──ただいま〜!」
「お、お邪魔します……」
穂むらに到着した二人は、正面のお店の入り口ではなく、家族用の玄関から中に入る。
「お客さんって訳でもないからね〜。家にお招きしたんだし!」
若干恐縮しているりみに、穂乃果は笑顔を向ける。
「あら、いらっしゃい。あなたがりみちゃんね。穂乃果から話は聞いてるわよ。娘がお世話になったみたいで。ゆっくりしていってね」
母親と思しき女性がお店側の暖簾を上げて挨拶。会釈を返したりみが視線を戻すと、居間らしき部屋からこちらを覗き込む女の子。自分より少し年下だろうか。
「どうもー」
それだけを言うと、
「お姉ちゃんが道端で知り合ったって言うからどんな人かと思ってたけど、意外と普通っぽくて安心した」
「私を何だと思ってるの!」
「無茶無謀な変人」
「こら雪穂〜!」
“思ったより普通”と評されたりみはどう反応していいか分からず、困った笑顔のまま立っていた。
「──もう部屋行くからね!」
「はいはーい、ごゆっくりー」
「まったくもう……!」
憤慨しながら階段を登る穂乃果。その後ろについていきながらりみは、
「妹さん?」
「そ、二つ下の雪穂。もうちょっと素直なら可愛いのにね〜」
「──聞こえてるよ!」
「うわっ、地獄耳!」
「お姉ちゃんの声が大きいだけでしょ!」
「あはは……。仲良しだね」
自分達とは違う感じだが、二人からは険悪な空気は感じない。こういう姉妹の仲の良さもあるのだろう、とりみは結論付けた。
「ここが穂乃果の部屋だよ〜。今お茶と和菓子持ってくるね〜」
部屋に案内されたりみは、丸テーブルのそばに腰を下ろす。ぼんやり部屋を見回してみると、本棚に並べられた少女漫画に少しだけ驚く。本人の性格的に、少年漫画の方が好みかと思っていたのだ。
「──お待たせ〜。はい、穂むら名物のほむまんだよ!」
穂乃果が差し出したお皿に盛られていたのは、白いおまんじゅうだった。
「わぁ……美味しそう」
「さ、食べて食べて! 遠慮しなくていいから!」
「う、うん」
りみはまだ仄かに湯気が漂うおまんじゅうを一つ手に取ると、一口。そして咀嚼。
「どう?」
「──め〜っちゃ美味しい〜!」
至福の表情で一つ目を平らげたりみは、輝く表情で穂乃果を見た。
「これ、私が今まで食べたおまんじゅうの中で間違いなく一番美味しいわ〜! やっぱり本物の和菓子屋さんって本格的なんやな〜」
すぐさま二つ目を頬張るりみに、
「関西弁出てる……」
穂乃果が発した言葉はそれだった。
「へっ? あっ……」
そこで初めて気付いたのか、りみは口を止めて顔を赤らめた。
「つい……。油断すると出ちゃうから気を付けてたのに……」
途端に食べるペースが鈍ったりみに、穂乃果は楽しそうに笑う。
「それだけ、うちのおまんじゅうが美味しくて気に入ってくれたって事でしょ? ありがとう、りみちゃん」
「うう、なんか恥ずかしい……」
「遠慮しないで食べてね! 羊羹とか粟ぜんざいとかもご馳走しちゃうから!」
魅惑的な和菓子の名前が出てきたが、大盤振る舞い過ぎてりみは逆に不安になってしまう。
それが表情に出ていたのか、穂乃果は笑顔でウインク。
「いいのいいの! お父さんも『遠方のファンを増やすチャンスだ!』って気合い入ってたから! 満足するまで食べてね! ……それこそ、もう和菓子飽きるくらい沢山!」
急に笑顔が怖くなる穂乃果。その表情にりみも不安を募らせたが、
「そ、そんなには食べられないかも……」
「ぷっ……冗談冗談! 無理して食べなくていいから!」
「な、なんだ……。びっくりしちゃった……。えへへ……」
朗らかな笑い声が、重なり合った。
「──お世話になりました。そして、ご馳走さまでした。和菓子、とっても美味しかったです」
穂むらの前で、りみはペコリと頭を下げた。
「また来てね」
「(グッ)」
「花咲川って高校も、聞いてみたら良さそうな学校だったなぁ。もう少し近ければな〜」
「雪穂⁉︎」
「冗談だってば。私はオトノキに行きますよー」
「ほら、穂乃果。送ってきてあげなさい」
「分かってるよ〜」
穂乃果はりみの隣に立つと、
「じゃあ行こっか!」
今までと変わらない笑顔でそう言った。
「うん! ──あの、本当にありがとうございました。こんな、お土産までいただいてしまって……」
りみの右手には、そこそこ大きい紙袋が下げられていた。
「ぜひ、Popin'Partyのみんなにも食べさせてあげてね!」
りみは最大限の感謝の意を込めて、もう一度深く頭を下げた。
駅までの道を歩きながら、りみは傾き始めた太陽を見上げた。
「穂乃果ちゃん、今日は本当にありがとうね。すっごく楽しかったし、和菓子美味しかった」
「どういたしまして〜。気に入ってくれたなら良かったよ〜」
穂乃果は一歩先に出ると、振り返る。
「今日は他のみんなに会えなかったけど、今度またμ'sのメンバーを紹介できたらいいな」
「わ、私も! μ'sの皆さんに会ってみたいし、穂乃果ちゃんに、ポピパのみんなに会わせてあげたい」
「ホント? 楽しみだな〜!」
穂乃果の声からは、別れを寂しがる様子は微塵も感じられない。
穂乃果は笑顔のまま右手を差し出すと、小指を立てる。
「じゃあ──約束!」
「────」
りみは一瞬固まった後、
「──うん! 約束!」
その指に、自分の小指を絡ませた。