メタリックなスライムになっちゃった   作:フリードg

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39話 悪夢

ドワーフ王国とは、苦しく、苦々しく、トラウマを刺激するような所……だけではありません。

忘れてはならない場所が、この王国にはあるのだ。

 

今日、それを再確認する為にリムルはアティスを連れてやってくる。

 

 

「き、キンチョーしてきました……」

「ふっふっふ~~。約束の地はもう直ぐそこだ! 散々、演説をガゼル王にダメ出しされて、傷心気味なオレの心を癒してくれる約束の地へいざっ!!」

 

 

どういう場所なのか、事前にアティスは聞いている。

それでも、ガゼル王へのトラウマの方が強烈過ぎた為、それを餌にされても全く心は動かなかったのだが……、来たのだから、しっかりちゃんと満喫? しなければならないだろう。

 

リムル自身も、アティスを置いていく~と言う考えは持ってなかった。

ただ単に、餌として使った話題だから、最後まで筋を通す―――と言う訳ではなく、アティス1人残して、万が一にでも残してきた女性陣達にリークされて、極めて危険な状態になるのを、その危険性を少しでも取り除く為だ。

 

つまり、リスクアセス的な話だ。社会人として、幾度となく取り掛かった業務の1つ!

しっかりと、元社畜の身には染みている。

 

 

「リムル様~アティス様~~!」

「ゴブタ、声がでかいって。しーしー!」

「……っス」

 

 

そして、更にその後はゴブタが合流。

ゴブタだけでなく、その他大勢も集ってる。

 

何でも、ゴブタは前回置いてけぼりを食らって血涙を流したとか。今日こそは連れてきてほしい、と誰よりも懇願したとか。

男の性をよーく解ってるリムル。その魂の叫びを無碍にする事はあまりにも酷だ――――と言うより、アティス関連と同じで、ゴブタから女性陣へ、つまりシュナやシオンにリークするのを阻止。リスク管理はバッチリ。

 

 

「さぁさぁ、野郎ども! 行くぜ、約束の地へ!」

「り、リムルさんも声おっきいですって」

 

 

ベタベタな展開を演出しつつ~~、やってきました楽園(エデン)

 

美人で可愛く、際どいお召し物を羽織るエルフ族のお姉さんたちがたくさんいるお店―――夜の大人なお店。

 

 

「わーーー! いらっしゃ~~い!」

「待ってたわよ、スライムさん!」

「あっ、やっぱり一緒に来てくれたんだ~! スライムさんの家族っ」

 

 

出迎えてくれるお姉さんたちはやっぱり綺麗だ。

解りやすく真っ赤になるアティスと、ゆるみにゆるみまくるリムル。目をハートにさせるゴブタら。

 

確かに、リムルが言う通り楽園(エデン)と言って良い。

 

でも、こういう場に限って経験と言うモノが大事になってくる。最高に楽しく遊ぶ為にも。だから、殆ど初心者なアティスは姿を赤くさせる以上の活動が出来るか甚だ疑問なのである。

 

 

「やぁやぁお姉ちゃんたち、元気だった? こっちのはオレの弟。シャイボーイだから、そのつもりで接してやってほしい」

「もちろんっ!」

「わー、ほんと可愛い! 色違いもキューティーだよ~」

「だっこして良い? 2人とも良い??」

「どうぞどうぞ♪」

「あうあうあうあううぅぅぅ……」

「きゃーーー! カワイイ~~~!」

 

 

お店が一気に盛り上がりを見せた。

この店で勤務しているお嬢様たち、皆等しく昼間のリムルとアティスを目にしている。最早2人は有名人(?)であり、前回やってきたお得意様~と言うだけではないのだ。

 

 

「こっちのスライムさんも相変わらずカワイイ♡」

「随分ご無沙汰だったから、忘れちゃったのかと思ったよ~。でも、ご兄弟と一緒に来てくれたから許しちゃうっ」

「忘れる訳ないよ~~、こーんな楽しい場所っ」

「~~~~っっ」

「あははっ。良い感触~~ひんやりして気持ちいい~~~」

 

 

リムルは余裕な大人な対応。

アティスは頬ずり頬ずりの波状攻撃を受けてKO寸前。

魔国連邦(テンペスト)でも、同じ様な扱いをされた。だから初めてと言う訳じゃないのだが……、こういうお店での、更に際どい服、魔力感知でも見えないギリギリラインを責めてくるこの感じとは比べてはいけない、と身体の何処かがサインしているのか、ただただ真っ赤なスライムへと変貌してしまったのである。

 

 

「あ、ぅ……」

「おいおい、ちょっとは話せよ? ゴブタだって同じ初心者な筈なのに見てみろよ」

 

 

促されるままに、ゴブタの方を見てみると……。

 

 

「好きです」

「あら、ありがとう」

 

 

自分の気持ちに素直に、正直に、初対面堂々告白までやって見せた。

ある意味男の鏡なのだ。

 

 

「……あしらわれてますケド」

「でも、行動できる・できない。言える・言えないの差は天と地ほどある! だろ?」

「~~~~っっ、わ、わかりましたっっ! が、頑張りますからっ!!」

「よしっ」

 

 

 

―――告、……留めておきます(・・・・・・・)

 

 

何やら、己のスキルが……大賢者か聖母か、いやそもそもスキルではなく世界の声かもしれない。兎も角解らないが、何やら聞こえた気がしたが、気のせいだと言う事にした。

 

 

 

「お席へどうぞ、スライムさん達。お連れさんはもう出来上がってるわよ」

 

 

中へと通されて、そこで合流したのはカイジンとその弟カイドウ。

 

 

「よう! 旦那たち!」

「リムル殿!」

 

 

ピカピカと全てが輝いているお店で、……おっさん2人が居てくれる事は、良いカンフル剤になる、とアティスは少しだけ落ち着く事が出来た。

 

 

「初めまして、ですね。オレはアティス。リムルさんの弟分です」

「おお、話はかねがね。……リムルの旦那と身体の色以外は変わらねーから、親近感がわくよ。うん、そっちの方がしっくりくるな、やっぱり」

「おや? カイドウ君は、人型はお気に召さなかったか? 瓜二つなオレたちの姿見ても」

「いやいや、そういう訳じゃねぇが……、どうにも一致しなくてな?」

「……まぁ、解ります」

 

 

リムルの人型、つまりアティスの人型でもあるが、その姿はこの国ではあまり周知していなかった。スライム型で活動していた時期でもあったからか、このスライムの姿が一番メジャーなのだ。

だから、打ち明けた際にはかなりカイドウは驚いていたと記憶している。

見た目愛らしい女性タイプな身形だから、驚いていた、と言うよりやや緊張していた、と言うのが近いかもしれないが。

 

 

「2人とも、ありがとうよ。オレまで招待して貰って。英気を養うって場所だったんだろ?」

「ふっふっふ~、構わないさカイドウ君。どうせなら、こういう場所ビギナーなオレの弟分に、しっかり作法を叩きこんでもらえる相手がいた方が嬉しいかも? とか思ったりしてたりしなかったり? だよ」

「………それ、オレ聞いてないですよリムルさん」

「そりゃ、今考えたもん」

「かっはっはっは! オレでよけりゃ、幾らでも教えてやれるぜ。その、アティスの旦那!」

「ぅぅう……お、お手やわらかに」

 

 

アティスは苦笑いをしつつ―――カイドウとカイジンの2人を見比べた。

こちら側は兄弟(偽)だが、この2人は本物の兄弟だ。でも……似てない。

 

でも、こうやって2人で飲んでるのを見ると、仲の良い兄弟だと言うのが解る。

離れ離れで暮らしているのだから、誘ったリムルの判断はきっと正しいと思うアティス。

 

 

「久しぶりの兄弟水入らず、ですからね。その、オレに作法どうこうより、再会を祝する方が先じゃないです?」

「それもそうか。今夜はゆっくり兄弟で語り合う方優先で。こっちはテキトーに慣れるだろ。なんたってオレの弟だし」

 

 

リムルの言葉がプレッシャーに感じるが……、足踏みしてられない! と謎の責任感も出た。これでも国のNo.2を担う役処。公の場ではないとはいえ、あまりにもだらしない姿は御法度でNG。

頑張ろうと心に決めたその時、カイドウとカイジンは2人して反論。

 

 

「何言ってんだ旦那! こんな場所で野郎と話してどうする!?」

「そうだぞリムル殿! お姉ちゃんたちに失礼ってなもんだ! アティス殿を()にする為に行動した方が何倍も良い、ってもんだ!!」

 

「あ、はい」

「お、おとこ!? えと、その、お、オレはど、どうて……ぃじゃ、なく、別におとこに、なんて……」

「嘘つけコラ」

「いたぁっ!!?」

 

 

リムルはカイジンやカイドウの事よりも、アティスの言葉が一番引っかかった。

どうせ、嘘だと思うが、万が一、億が一、兆が一にでも、「どうて……ぃ」じゃなかったとしたら? 大変だ。国を揺るがす。

 

 

「意味わかんないですっ! つか、ほんとに痛かったですよ!? オレ」

「どこかで聞いたな。愛ある一撃は防ぐ術なし、だ」

「どこに今のやり取りで愛がありました!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も、楽しかった。

カイドウとアティスを抱えたお嬢様。

リムルは少々離れて、お店のママと色々とやり取り。

ゴブタは、出血多量。……なんで?

 

 

 

「少し目を離した間に何が……?」

「私の冗談を本気にしちゃったみたいで……」

 

 

割れたグラスを片付けながら説明してくれたが……それでも解らない。

なので、アティスは自身の金属王(スキル)を使って壊したグラスを元通り。

 

 

「もー、よくわかんないけど、お店のモノ壊しちゃダメだよ?」

「い、今のは不可抗力っすぅ~~……」

 

 

「おぉ、すげぇ……。ありゃ、確かに王が是が非でも欲しがる力だよなぁ」

「金属を生成して、形にしちまうんだ。リムルの旦那とはまた違った方向性で、それでいて同じ様に規格外な方だよ全く」

 

 

始めて力を目の当たりにしたカイジンは、やっぱり興味津々。

カイドウの様に職人~と言う訳じゃないのだが、それでも凄いモノはスゴイ。ドワーフとは元来そういうモノなのだろう。……多分。

 

 

「ごめんね、ママさん。ウチの弟は優秀だから、壊したモノは大抵直しちゃうんで、それで勘弁してもらえないかな?」

「いえいえ。大丈夫よ。スライムさんの弟さんなら、何でも大歓迎だから」

「そりゃ、兄としても鼻高々。……それともう一つ、これ(・・)、よければお店においてみてくれない??」

 

 

ぺっ、ぺっ、ぺっ、と取り出したのは、胃袋の中で保管していたガゼル王も大絶賛の蒸留酒(ブランデー)

しっかりとお店に並んでも見栄えがする様に、装飾を施している。準備万端売り出し前。

 

 

「まぁまぁ、これは……お酒ね?」

「そう。ウチで作った新商品だよ。ガゼル王にも卸すから、あんまり沢山渡せないんだけどね。お得意様限定、とかで出してみてよ」

「あらまぁ! そんな希少なモノを? でも良いの?」

 

 

無論、ただの善意~と言う訳ではない。

ある程度の見返りは期待している。

それも、双方に益があるタイプのモノ。

 

 

「ふふ。1人1杯のサービスで、幾らまで出せるかリサーチしてほしいんだ」

「あらあら、スライムさんは強かなのね。商魂たくましいわ。カチカチになって演説していたのが嘘みたい」

 

 

ここで、ビックリ!

どうやら、あの演説を聞いていたらしい。……解っていた事、ではあるが。

 

 

「散々ガゼル王にはダメ出しされちゃったんだよねぇ……。『短か過ぎる、謙り過ぎる、情に訴えかけ過ぎる』以上を以て零点だと。全く、演技も見抜けないとはガゼル王もまだまだだ!」

「うふふ。そういう事にしておきましょう。……でもね、私は。多分このお店の皆も好感を持った、って思うわ。やっぱり、人を引き付けるのは誠実さだと思うから」

 

 

この国だからこそ、上手くやれているエルフたち。

でも、他の国だったらどうなるだろう?

 

 

 

「だからこそ、私は満点をつけたい。だって、見てみたいから。人や魔物……エルフ。そんな垣根のない、皆で笑い合えるような国を」

 

 

 

楽しく暮らせる国を作りたい。

 

それが基本理念。

ガゼル王にはダメだしされた。でも、それが間違ってるとは思ってない。王たるモノの当然の心構えであり、弟弟子である自分にしっかり教育してくれたと思っている。

 

それでも、こういう風に言ってもらえるのが何よりも嬉しい。

 

 

「……ありがとさん」

 

 

 

だからこそ、より気合が入ると言うモノだ。

 

 

「お嬢さんたちにプレゼントするよー! ほらほら、はーい!」

「きゃ~~~! スライムさん素敵!」

 

 

直ぐ横では、自分のスキルを思う存分,ふんだんに使って綺麗なグラスを作ってるアティス。

感慨深い気持ちが霧散していく……。

 

 

「おいおい。貢がされてんじゃないよ、全く」

 

 

世の男たちは、これで借金をして破滅までした……と言うのは決して大袈裟じゃない。節度を守ったアソビ方が良いと言うのに、全く。

 

 

「その辺は任せてくれ! 旦那!」

 

 

カイジンは自信満々に親指立ててるが……、一抹の不安はぬぐえない。

 

でも、別にしりぬぐいをさせられる訳でもないから良しとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リムルさん、楽しかったです」

「そりゃよかったな。オレ、スリープモードに入るんじゃねーか、って結構心配だったわ」

「流石にそれはないですよ。……でも、なんだか聖母(マザー)が怖い気がしちゃいましたが」

「あ~……そういや、なんか声聞こえたっけ? お前の保護者も同然だからなぁ。多少の羽目外しは許すかもだが、節度守らないと、雷落とす! かもよ?」

「えぇ……」

 

 

なので、このまま、はしごだ~~と言う事はせず、今日はもうこれで終わり。

でも、このまま気分よく終わり、とはいかない。

 

 

「あにぃき~~いくらなんでも、飲みしゅぎだじぇ~~~」

「おみゃぇしょ~~~、まっしゅぎゅ、あるけぇにぇ~じゃにぇ~のぉ~~」

 

千鳥足な酔っ払いの世話がある。

流石に招待した以上、このまま路上で眠られても困るから。

 

 

「ったく、あーあ、耐性スキルのせいで酔っ払えないのが辛い所だなぁ。あんなふうに、久しぶりに~って思ってるのに」

「……や、流石にあそこまでは」

「あれ? アティスはそういう経験ないの?」

「飲み会はありましたよ? でも、あそこまでの酒乱になる事は無かったです。と言うより、後始末やら尻ぬぐいやらの対応をする方が多かったですね」

「なーる。そこでも守る! か。流石、テンペストの守り神!」

「や、やめてくださいよー。そんな大層なものじゃないですって」

 

 

色々と異常耐性無効スキルを持っているリムル。それをとことん物真似(スキル)で習得たアティス。だから、ああやって酔う事は出来ない。雰囲気だけを見るしか出来ない……のだが、なんだかこの時のアティスはちょっぴり酔っ払えたような気がしていた。

 

 

 

「それよりゴブタですね」

「ったく。アティス。担架でも作ってくれ」

「いや、普通に担ぎます。聖母(マザー)の制御なしの、金属王(スキル)って、結構難しくて、気使いますから。背負った方が楽です」

 

 

アティスはひょい、とゴブタを背負った。

 

 

「アティスさまぁ……、すまねぇ、っスぅ…… ひ、貧血で……」

「もう、解ってるよ。でも、オレの上で血ながしたり、口から何か吐いたりしないでね? もししたら、ランガから教わったクレイジーヒューストンの刑だからね?」

「なんス、か。それ……」

「お空の旅だよ。全く。これからこっそり宿に帰るってのに、大通りでコレ。滅茶苦茶目立ってるじゃん」

 

 

それでもその場に置いて帰る~なんて、事はしない。王として民を導かなければならない。ついてこれない者を切り捨てる訳にはいかないのだ!

背負うのはアティスだが。

 

 

そんな時―――――だった。

夜闇に紛れて音もなく、誰かがいつの間にか急接近していたのは……

 

 

「お手伝いしましょうか? アティス様」

「あ、はい。だいじょうぶで………す……」

「ほらほら、迷惑かけるんじゃないよゴブタ。すみません――――ね?」

 

 

黒い笑みと共に、顔を覗き込む様にしているその存在。

凄まじい威圧感と魔素を放出しているその存在の正体は……なんとシュナだった。

下手なホラー映画より何倍も怖い。

シュナは凄まじくカワイイ。さっきの店のコらにも負けてない程カワイイ容姿な筈なのに、物凄く怖い。

 

つまり、バレた、と言う事だ。

 

なんの為に、秘密裡に行動していたのか……、これまでの努力が水の泡だ。

 

 

「あ、あれ? なんで? どしてどして??」

「お、おおお!? しゅ、シュナ!? なぜここに……」

「お二人とも落ち着いてください。最初から知ってましたよ? ……ゴブゾウが全て話してくれましたので」

「「ええ!?」」

 

 

ゴブゾウとは、ゴブタの部下。

何なら、今日一緒にきて遊んで帰ったウチの1人。

 

 

「えと、なんで言っちゃったの、かな? 秘密裡~って話は……」

「シュナ殿に聞かれた、お答えしたダス。勿論、仲間内以外では話してないダス」

「そっかー、素直だなーー」

「何現実逃避してんだ! いや、いやいや、なんで、どーして! こーいうシチュで秘密っていや、絶対――――……」

 

 

と、盛大な抗議と、出来る事ならお仕置きもしてやりたい衝動が出てきたが……無理だった。

何故なら、シュナに続いてもう1人やってきていたから。

 

 

 

「ひどいです。リムル様。アティス様も」

 

 

 

シュナが来ているのだから、当然もう1人、シオンだって来るだろう。

でも、シュナ程は怖くない。

 

 

「おいていくなんてあんまりです! 私は、アティス様にも言いましたよね?? 決して離れない、ってあの時だって言いましたよね? ヒドイですっ!」

 

 

純粋に、おいて行かれた事を嘆いているだけっぽいから。

女の子なお店に言った事を咎める~と言った感じではない。

 

キャバクラに行った事が嫁にバレた時のヤツじゃない。

純粋に、本当に純粋に、除け者が嫌だった、と言う事だ。ゴブゾウと同じく純粋シオン。

 

 

「えと、でも、だって。ほら、シオンさんだって今日疲れたと思って……。昨日のお酒、とか?」

「もう回復しております! 今日こそは挽回を~と、アティス様には言いました! 受けてくださいました!」

「はいぃぃぃ!! そう、でした!!」

 

 

アティスはゴブタを乱暴に落とした。

シオンの傍に行き、襟を正す為に。

 

 

「いや、まて。シオンもシュナも。……ほ、ほら、店の性質上、女の子が行って楽しい場所なのかわかんないし……、ほ、ほら。酒の提供先としての検討とかもあったし、色々と重なって……」

「そうだとしても、黙っていくのがひどいんですっ!」

「ぅぅ……」

 

 

取り付く島もない。

シオンだけならまだ良いが、黒い笑みを浮かべてるシュナだけが要注意。最大級のアラームを鳴らしている。

 

 

「因みに、情報共有のスキルで、アティス様の聖母より通達を受けておりました。とても楽しそうにしてらしたのも、承知しております」

「えええええ!!」

 

「(だ、大賢者!? 知ってた!? 主の意に反して自律行動しちゃってたよ!?)」

――解。知っておりました。

「(なんで、黙ってた!??)」

――解。聞かれておりませんので。

 

 

シュナの黒い笑みは周囲にも伝染してゆく。

酔っ払いだったカイジン・カイドウ兄弟も一気に冷めた様だ。

 

 

「あなた達が、リムル様とアティス様を夜遊びに誘ったのですか?」

 

 

これは、返答を誤ったら……ヤられるヤツだ、と瞬時に理解。

 

 

「ええ! えと、誘ったと言うか、提案した、と言うか……」

「お、オレは招待されただけ、と言うか……」

 

 

カイジンは兎も角、カイドウは招待されただけ~で逃げれそうな気がしなくもないのだが……、この黒い笑みに対して、背を向けて逃げるような真似をしたら即座に断罪される! と思ったのか、中々行動に移せなかった。

 

 

 

 

その後、尋問も受けて暫くすさまじい圧を受けていたが……徐々に和らいでゆく。

 

 

 

 

 

「……私は、お二人を。なさりたい事をお止めするつもりは毛頭ありません、が。ちょっぴり寂しかったと言う気持ちも理解してもらえれば幸いなのです」

「ぅぅ……」

「ぁぅ……」

 

 

シオンの様に、シュナの根幹部分にもやはり除け者にされて寂しかった、と言う感情はあったのだろう。

大人なお店に行った事による嫉妬。他の女に目が向くゆえの嫉妬も無論……と言うより、そっちが大多数を占めるだろうが。

 

 

「すみませんでした!! もう、2人に黙ってこういった事はしませんっっ!」

「ご、ごめんなさい………」

 

スライム姿なので、土下座~までは出来ないが必死に頭を下げる。

 

流石に、リムルも人型……シズと瓜二つなあの姿で、今回のしりぬぐいをさせるのは気が引けるから。そもそも、あの店で人型に戻なてないので、この姿のままが一番良い。

 

 

兎に角、下手な言い訳は全て逆効果だから、言葉短めに、低姿勢で、加えてスライムの可愛さも全面にアピール。これで情けはかけてもらえるだろう。

 

 

「(アティス! キラキラモード!)」

「(あい!)」

 

 

アティスの光の力で、ちょっとしたロマンティックな風景を演出。

女の子ならクラっ、コロっ、となれる様に意識。

 

 

それを見たシオンとシュナは、にっこりとほほ笑んだ。

 

こうかはばつぐんだ、か!?

 

 

と、確かな手ごたえを感じていたリムルだったのだが……。

 

 

「わかりました。では、1週間シオンの朝ごはんで許してあげます」

「ほっ ありがとうございます」

「ええええ!!!??」

「ん? え?」

 

 

許しを得た、とアティスはホッとしていて……対照的にリムルは大慌て。

 

 

「お、おまっ、な、なにを」

「え、何をって………んんん???? シュナさん、すみません。もう一度いってもらえます? その、条件を」

「はい、アティス様。シオンの朝ごはんです。1週間分を」

「その条件で許し頂ける、と?」

「はい、その通りです」

「おれ、しおんさんのごはん、まだ食べた事ないんですが、ゆるされるようなもの、だと? そういうたぐいの、代物、だと?」

「ええ。勿論です。天にも昇るとはこのことだ、と思われるかと存じます」

 

 

アティスはぐるっっっ!! と身体を回転させてリムルを見た。

 

 

「大絶賛してませんでした? ものすごく紹介してくれませんでした?? どういうことですか??」

「……あ~~~~、アティスは知らんかったっけかぁ。そういや、まだネタバレもしてなかったっけかぁ……」

「こっち向いてハッキリ説明してくださいよ!!!! どーなんですか!? いや、そーなんですよねっ!?? 在り来たりで、ベタな展開なんですよねっっ!??」

 

 

知らなきゃよかった事など、世の中にはいくらでもある。

 

そして、知らなかったとしても……身に必ず起こるのであれば、意味は無。

それを教訓とした。

それと、最近では夢見が良かった日が続いていた。

 

夢とは、あまり覚えてられないものであり、起きたら泡のように消え去る……と言うのが通例なんだけど、今回のそれはそうはいかないらしい。

 

夢は夢でも……悪夢の始まり、かもしれないから。

 

直接言うと、流石に傷ついちゃうかもしれないから言わないが。

 

 

 

 

 

リムルはリムルで、ガゼル王がダメ出ししていた3点。

それを全面に使ってこの場面。

 

思いっきり反省するのだった。

 

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