迷宮都市オラリオここで一人の英雄が波瀾万丈の人生に幕を閉じようとしていた。
英雄の名は、ベル・クラネル
猛者オッタルに剣姫アイズ・ヴァレンシュタインでさえたどり着けなかったレベル9という領域にたった一人足を踏み入れ、迷宮都市オラリオから産まれた数々の英雄達の船頭、そんな英雄でさえ寿命という敵には抗えない。
そしていま、ベルは数多くの仲間達に見送られ人としての生を終えようとしていた。
「神様、、、」
ベルは残りの少ない力を振り絞って、自らの主神であるヘスティアを呼ぶ。
「なんだい、ベル君」
「もうそろそろのようです、、、」
「そうか、、、ベル君僕は君と出会えたことを誇りに思うよ。僕がそちらに行くのはまだ少し先に、、、なりそうだ、、、少しあっちで待ってておくれよ、、、」
ベルは自らの死期を悟りヘスティアにそのことを伝える、ヘスティアはベルにいつものように穏やかな口調で話し掛けようとするが今にも泣き出しそうになる。
ベルは走馬灯のように今までの数多く出会いと別れを繰り返してきた冒険を思い返していた。
どんな時にもベルの傍らに付き添い、勇者フィン・ディムナと並びパルゥムの英雄と讃えられたパルゥムの少女
ベルの兄のような存在で自らの至高の剣を打つことに人生を捧げた鍛冶師
温泉が大好きでとある武神と想いを添い遂げた極東の女剣士
かつては娼婦の身でありながらベル達と共に数多くの冒険をやり遂げた狐人の少女
自らの正義を貫き通したエルフの少女
ベルが冒険者になった頃から共に歩みベルの帰りを笑顔で迎え続けたハーフエルフの少女
いつもベルにお弁当を渡し笑顔で送り出してくれたヒューマンの少女
行く宛の無かったベルに声を掛けベルの人生を大きく変えた女神
そして、ベルの憧憬でありベルが生涯を賭けて愛した女性
アイズさんやヘスティアファミリア創世記のメンバーは皆先に逝ってしまった。
ベルは先に逝った仲間達のことを考える、もう目は見えず感覚もほとんどない唯一残っている聴覚のおかげでヘスティアや他のファミリアの団員たちがベルを呼ぶ声が聴こえる。
ああ、、神様、皆、、、先に逝くよ、、、
この瞬間、オラリオにあるグランドベルが鳴り響いたそれはまるで迷宮都市オラリオがダンジョンが英雄ベル・クラネルの死を悲しむようだった。
この日、一人の英雄の物語が幕を閉じた。
数多くの家族に慕われた英雄
神聖浴場を命懸けで覗いた英雄
黒龍を倒した英雄
一人の女性を生涯賭けて愛し抜いた英雄
神々の限界を飛び越えた兎
数多くの英雄譚を残した英雄ベル・クラネルの生涯はこうして幕を閉じた。
気が付くとベルは全てが白い空間に立っていた、そこで不意に声をかけられる。
「ベル」
ベルが声のした方に振り向くと一人の女性が立っていた。
「あぁ、、、どうしてここに?」
「ベルが来るのをずっと待ってたんだよ、今度は一緒に行こう」
「はいっ、、、一緒に冒険をしましょう、、、」
こうして、ベルと一人の女性は白い空間を共に歩んで行った。
「ん、、うぅー、、」
ヘスティアは眠りから目を覚ます、本を読んでいたら眠ってしまいかつて自分が愛した眷属の夢を見ていたみたいだ。
「ヘスティア様ー」
するとそこで、一人のヒューマンの少年が走ってヘスティアのもとに訪れた。
「どうしたんだい?そんなに走って」
「ヘスティア様いつになったら僕を眷属にしてくれるの?早く冒険者になりたいんだ!」
「そうだなー君が14歳になったらステイタスを授け眷属にしてあげるよ。」
「ほんとに!約束だよ!」
「あぁ、僕の名に誓って約束だ」
「じゃあ!今日はまたあの英雄譚を聞かせてよ!」
「いいよ!君は冒険者になってなにを求める?」
「うーーん?」
「君も男の子ならダンジョンに出会いを求めなくちゃね!」
ヘスティアはかつて自分が愛した眷属達の物語を少年に語る。
ベル君かつて君は僕に聞いたね、「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか?」とどうだいベル君答えは見つかったかいきっと君ならこう言うんだろう。
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていなかった!
~fin~