勇者の父親になる筈の原作主人公がTSしてたけど、何か質問ある? 作:社畜だったきなこ餅
まぁほら、飼い主とペットはよく似るよね。
マスタードラゴンの嫡子であり、世界最強の無職であるドレイクがとある疑問を感じたのはとある日の事……。
妻の一人であるビアンカの両親が宿屋を営んでいるサラボナ北の村で、ドレイクがビアンカと寄り添いながらのんびりとお茶を啜っていた時にふとある事に気付く。
「なぁビアンカ、なんかシャドウが心なしかウキウキした様子で村の外へ出ようとしてるが。大丈夫なのか?」
「ああアレね、なんでも奥さんに会いに行ってるから大丈夫みたい」
カップをソーサーへ置き、ビアンカの三つ編みを指先で弄りながら問いかけるドレイクの手に、自らの手を重ね絡めながらビアンカは答え。
その時のドレイクは、なんだアイツもやる事やってんだなぁ。などと呑気に答えつつビアンカの肩を抱き寄せようとし……。
二人を呼びに来たタバサの声に、慌ててその手を引っ込めていた。この男も大概である。
そしてまた別の日。
今度はサラボナの街のルドマン邸にて、ドレイクが一角ウサギ家族シリーズの新作であるミニチュア状のお屋敷を作っていた麗らかな陽気が窓から差し込む昼下がり。
父親であるルドマンの仕事を手伝っているデボラの愚痴に対して、適当に相槌を打っていたところ半眼になりながらデボラに耳を引っ張られたドレイクは悲鳴を上げながら視線を動かした時に……。
つい最近、サラボナ北の村で見た時と同じ雰囲気を醸し出しながら、町の外へ出ていこうとするシャドウに気付く。
「な、なぁデボラ。シャドウは大丈夫なのか?放っておいて」
「お気に入りの女の子に会いに行ってるだけよ……それより、ここぞとばかりに話を逸らそうとしない!」
「伸びる!そんなに引っ張ると耳が伸びるぅぅぅ!!」
これ幸いとばかりにシャドウの動きについてデボラに訴えるも、問答無用とばかりにドレイクは愛する妻から折檻を受ける事となり。
賑やかな二人の声の様子に、最近子供達だけで再封印されたブオーンの様子を見に行くお使いを終えたテンとソラが二人の様子を見にやってきたものの……デボラの剣幕に子供二人は無言で方向転換。
そして、二人はそのまま情けない声で助けを求める父親に心の中で謝罪しながら、そっと立ち去って行った。
なおデボラからの折檻は、フローラが手作りのオヤツを手に様子を見に来るまで続いたらしい。
そしてまた、更に別の日。
ラインハットの様子を見にフラっと顔を出した瞬間、ヨシュアにがっしりと捕獲されたドレイクはここぞとばかりに様々な式典に引きずり回され……。
ケロリとしているヘンリエッタやマリアの様子を尻目に、竜の勇者だの救国の英雄だのと持ち上げられっぱなしだったドレイクが死んだ小魚じみた目をしていた時。
ポピーに対して、何やらシャドウがガウガウ告げた後イソイソと出かけていく姿にドレイクは気付く。
なんか似たような様子、何回か見たぞコレなどとドレイクは思いつつ左右をヘンリエッタとマリアに挟まれたまま娘に問いかける。
「なぁ、シャドウと何かお話していたみたいだけどなんて言ってたんだ?」
「えぇお父様、恋人に会いに行ってくるって言ってましたわ」
「そうかー」
何やら熱心に父親が出席した式典の様子を本に書いている娘の言葉に、ドレイクは呑気に応答し……。
いやまて、サラボナ北の村周辺だと嫁、サラボナ近辺だとお気に入りの娘がいるって話じゃなかったか。という事実にハタと気付く。
「もしかしてアイツ、俺がルーラで飛ぶたびにどこからともなく現れてはついてくるの、各地の現地妻に会う為じゃなかろうな……」
「父上、多分だけどシャドウも父上にだけは言われたくねーと思うぞ」
「ぐふぅっ」
ドレイクの呟きに、両親が仲睦まじいのは良いのだがソレはソレとして普段きりっとしてる母のだらしない貌に、複雑な表情を浮かべているコリンズがぼそりと突っ込みを入れ。
ぐうの音も出ない剛速球メラゾーマ発言に、ドレイクは呻き声を上げるしかないのであった。
何のかんのいってモンスターだし、まぁその手の番関係の倫理観はまぁ緩いのだろう。
ドレイクは……否、彼の妻も子供達も割とそう思っていた。
しかし、その想像は大きく覆される事となる。
「よし、ここを上手い事繋げれば……イケた!」
「ドレイク様、もうその一角ウサギ家族の屋敷とか含めて一式売り出したらどうですか?」
「いいや、まだまだ手慰み程度だ。売り物にするならもっと拘り……なんぞ、あのベビーパンサー?」
「無職である事に悩んでる癖に変な職人根性出さんで下さいよ……ああ、シャドウが保護したベビーパンサーですよ」
グランバニア城のバルコニー、もはやドレイクの定位置と化した席にて一角ウサギ家族の小道具、その名もウサギ家族の物見櫓をドレイクが組み立て終え。
軽く背筋を伸ばしながら城の中庭へ視線を向けたところ、シャドウにじゃれつくベビーパンサーに気付いて疑問を口に出してみれば、傍らに控えていたピピンから突っ込みと共に補足説明が入る。
「あいつヤンチャだけど、結構面倒見良いよな。まるで親子みたいだ」
「どーかなー、どちらかと言うとあの子。シャドウの事好きなように見えるよ?」
「おおリュカ、お疲れ様」
ドレイクの呟きに、今日の分の職務を終えたリュカがのほほんとした声音で応えながら愛する夫の背中から抱き着き。子猫のようにドレイクの首筋に顎を擦り付ける。
背中に感じる大きく柔らかな山脈の感触含め、いつもの妻からのスキンシップにヒモ生活が板についてきたドレイクはリュカの艶やかな黒髪を、掬うように撫でつける。
ちなみに出来る衛兵ピピンは、リュカが立ち入って来たタイミングで背中を向けている。伊達に王族付きの兵士はやっていないのである。
「しかしそう言っても……まだあのベビーパンサーは幼いだろ」
「愛に年齢は関係ないよ? 自覚してるボクの初恋は6歳ぐらいの頃だし」
「マジか」
マジだよー、とぽややんと微笑みながら無邪気で無防備な子猫のように体全体でドレイクへ甘えるリュカの言葉に、ドレイク若干戦慄。
「シャドウは大変だろうねー、あの子結構独占欲強そうだし。ヘンリエッタ達から聞いた話だと、オラクルベリー南の修道院に住んでるプリズニャンの姉妹にもすり寄られてるらしいよ?」
「も、モテモテだな。アイツ」
一番傍にいた人に似たんだろうねー、などと冗談めかした笑みと共にリュカはドレイクに抱き着いてハグを愛する夫へ求め。
妻の言葉に夫であるドレイクは、俺のせいかよ。と小さく呟きながらもリュカを優しく抱きしめる。
弟分から託された甥っ子のような存在であるシャドウを取り巻く、修羅場地雷原にドレイクは戦慄すると共に。
ドレイクには今も息子が携えている天空の剣に宿る、弟分のホークの魂に向けて心の中で詫びる事しか出来ないのであった。
ホーク「自分のハーレムも御しきれぬとは、我が息子ながらまだまだよのう」
そんな事をホークさんが想ったかどうかは、闇の中です。