授業を終えて家路へ向かう結月ゆかり(偽)。疲れからか、不幸にも黒塗りの兎に追突してしまう。友人をかばいすべての責任を負ったゆかり(偽)に対し、その小さな体の主、IS搭乗者ボーデヴィッヒに言い渡された示談の条件とは…?

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(VOICEROIDは)初投稿です


1.

ラウラ・ボーデヴィッヒが『それ』に出会ったのはほんの偶然でしかなかった。

 

IS学園に移ってすぐ。夜、眠れる気分でもなくネットを駆け巡っていると『それ』を見つけた。

 

 

『皆さんこんばんは。美人実況者結月ゆかりです。今日はつおったーの告知でお知らせした通りNEWスーパーマリオブラザーズWiiのRTAをやっていこうと思います』

 

 

ネットを回るうち、最終的にたどり着いたのは日本ではかなりの知名度を誇る動画サイト『ニタニタ動画』だった。

ラウラ自身は特に興味はなかったが、舞台の副隊長であるクラリッサがこの動画サイトを見ていたのを思い出したのだ。

 

見れば見るほど出てくるアニメ、アニソン、実況、歌ってみた、バカ動画……。

実況も生声やゆっくりと呼ばれる機械音声を使用したもの、汚い男の喘ぎ声などを使用した淫夢実況なるものなどが多く存在していた。

 

ただ、ラウラは試験管ベビーであり、幼少期から軍事訓練を行ってきたがため、このような日本の文化(日本の文化と言ったら失礼この上ない)やその他の国の文化にも触れてこなかった。

あるとしたらせいぜいコーヒーや菓子などの必要最低限な娯楽でしかない。

 

そんな彼女ゆえ、すぐに飽き、タブを閉じてしまおうとした。

 

 

 

 

『それ』と出会った。

 

 

生配信中と出ていたその動画を開くと同時に聞こえるのは落ち着いていて、どこか優しさを感じる声だった。

 

画面にはゲームのスタート画面。その右上にはゲーミングチェアに座り、ゲーム機を持つ紫色の少女だった。

 

始まると同時に流れてくるコメント達。

 

 

「またゲーミングチェアなんかに座っちゃって」「いつもは寝転がりながらやってるに花京院の魂をかける」「今日も可愛いね」「あれ、服変わった?」「おお、フードにうさみみついてる」「かぶって。かぶれ(豹変)」「Newスーパーマリオとか懐い」

 

 

白文字が流れる中、たまに赤字や黄色、その場から動かない文字に太文字など生放送とは思えない大量のコメントたち。

 

 

「あ、気づきました? 今回服のデザインを少し変えてみようかと思いまして。え、かぶって欲しいんですか? 構いませんよ」

 

 

少女がフードをかぶればまたコメントを通して見ている視聴者達が大いに興奮する。

 

 

「可愛い」「ゆかりちゃんかわいいやったー」「那珂ちゃんのファンやめてゆかりちゃん推しになります」「←なんでや那珂ちゃん関係ないやろ」「結婚して」

 

 

様々なコメントが溢れる中、ゆかりと呼ばれる彼女はコメントを拾ったり、雑談したりしながらも順調にゲームを進めて行った。

 

そして結局最後まで視聴する。そして、まだ続きを見てみたいと考えてることに気がつく。

 

 

『結果は27分05秒。まだ詰められますね。また今度挑戦してみましょう。反省点としてはやはり5のお化け屋敷でしょうか……。最後ゴールポールでテレサに当たって死んじゃいましたからね。まぁその辺はまた今度。また次の動画でお会いしましょう』

 

 

画面が暗転し、右上の少女(結月ゆかり)が頭を下げると同時に配信は終了した。

 

 

「……」

 

 

そしてラウラは無言でうp主『結月ゆかりの実況チャンネル』へ飛び、マイリストから彼女のかつて投稿した動画を見て回る。

何が彼女を引き付けたのかは分からないが、惹き付けられたのだ。

 

結局ラウラは部屋に日差しが射すまで見続けた。

 

その日は寝不足で集中力が疎かになり、教諭である織斑千冬の思い一撃を喰らうことになったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃー。終わったぜー」

 

 

やや暗い部屋の中

()()は立ち上がり、装着していたウィッグを外し、ゲーミングチェアの背もたれにかけると服を脱ぎ始める。

パーカーを脱ぎその下も脱ぐ。そして部屋着に着替えると洗面台まで行き軽く施したメイクを落とす。

 

 

「ぬわああああん、疲れたもん」

 

 

そのままキッチンへ行くと冷蔵庫から雪印コーヒーを取り出しそのまま口をつけ飲む。

空になった空き箱に水をはるとそのまま自室に戻りベッドへ。

 

 

「今日も楽しかった。次はなんのゲームをするかね……」

 

 

そしてそのまま眠りに落ちた。

 

 

『結月ゆかり』を名乗り実況をする彼はいわゆる転生者である。

 

といっても、神に出会ったとか特別な力を手に入れたというのはない。彼が与えられたのはその女顔と不自然に自分以外が存在しない一軒家だけだった。

 

転生者だと自覚したのは15歳。現在より1年前のことだった。

彼、三浦悠太にそれ以前の記憶はなく、両親や親戚のことも一切記憶にない。

 

ただただいつの間にかそこに存在しただけであった。

 

生きていくだけ困らない金はあったし、家のローンもない。かと言って新築同然の家だと言う。

何故か近所の人間は自分のことを知っていて、近所の高校に在籍している。

 

そのことに関してはもう疑問をうかべることも回答を答えることもやめた。

 

高校に通いつつ、ネットで動画を見たりする毎日。

 

 

 

そのうち彼は気がつく。三浦悠太の前世では存在し、今世では存在しないものを。

 

 

VOICEROIDであった。

 

 

そして気がついた。己の声が結月ゆかりに酷似していると。

 

 

その時、彼の脳内に声が響く。

 

 

なに? ゆかりんが居ない? 逆に考えるんだ。自分がゆかりになればいいさと考えるんだ。

 

 

「父さん!」

 

 

三浦悠太は決意した。ゆかりんになってやると。

 

 

 

その事実に気がついた三浦悠太はその場で己の服の襟と裾を掴み立つ。

 

 

「VOICEROIDに憧れた!」

 

 

 

 

そしてその日から彼の努力は始まった。まるで噛み合っていなかった懐中時計に歯車を差し込んだかのように動き始めた。

 

まずはボイスレッスンから始め、衣服を作りウィッグを注文した。撮影機材も揃えねばならず、家電量販店を駆けずり回った。

ヤマモト電機やディックカメラ。ウィーズ電気にミツバシカメラとさまざまな家電量販店を回った。

 

秋葉にも向かい、話題になりそうなレトロゲーを買う。

 

その時三浦の頭に「人気が出ない」や「すべる」といった考えはなかった。

 

 

そして、初めての投稿を2日で視聴数5桁、達成する。

 

 

 

三浦は喜びのあまり画面の前で飛び上がり、勢い余って1人でバックドロップを食らった。

 

 

それから1年ほど経った今、初めて投稿したその動画の冒頭はコメントをオフにしなければならないほどコメントで溢れていた。

 

 

三浦は今でもそこに訪れてはタグ一覧に乗せられた『伝説の始まり』を見てにやけている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




美人実況者(美女とは言ってない)

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