遡るは時の流れ   作:タイムマシン

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いつかアンケでした逆行者ようやく登場です

ダンメモやったけど、ダンまちくんさぁ…本編とそれ以外での話の重さが桁違いってよく言われない?



新たなる仲間

 魔石灯のついていない部屋。太陽の光も入らない薄暗いところで、男は一人(つち)を振るっていた。鎚にたたかれる鉄はリズムよく音を奏で、熱されて真っ赤に染まってその形を変える。鎚と鉄、彼らによってもたらされる物が今の男にとっての全てだった。

 

 自らが作る装備に仲間の命がかかっている。鍛冶師はそれを理解しているからこそ、手に力が入る。最近行動を共にするようになった只人(ヒューマン)の少年の装備はもちろん、サポーターとして迷宮(ダンジョン)攻略の手伝いをしてくれる小人族(パルゥム)の少女にもある程度装備は必要だろう。

 

 自身の特異な能力と血筋からファミリア内でも少し浮いた存在だった男にできた大切な仲間。見事に全員異なるファミリアに所属しているが、もしも同じ眷属(ファミリア)だったなら、それはより愉快な日々を送れるのではないか、とあり得ない(イフ)が頭に浮かんだ。

 

「……おっと」

 

 考え事をしていたためか雑念が入り、鎚が空を切る。鍛冶は何よりも集中力が物を言う。雑念は敵だ。再び気合いを入れ直すために一度外の空気を吸おうと立ち上がる。

 

「……おお?」

 

 しかし、長時間熱された空間で座っていた弊害か急に立ちくらみが起こり、その場でたたらを踏んで近くの壁にもたれかかった。ガシャン、と()()()()()()()()()()が────

 

「って! おいおいおい!?」

 

 ぼんやりとしていた思考が急に冴えわたる。いくら『鍛冶』の技能(アビリティ)がないレベル1の青年が作ったとはいえ、モンスターを屠る刃であることに変わりはない。青年は一般人より頑丈だが、刃物が体に刺さっても平気なほど人間を辞めていない。

 何とか迫りくる数々の武器を避けようと後ろに飛びのいて──そのまま盛大にこけた。足元に転がっていた紙の図面に足を滑らせて頭から。それはもう盛大にこけた。青年のファミリアの団長や主神が見ていたのならば大いに笑われただろう。

 

 壁に掛けてあった武器が軒並み地面に音を立てて落ちる。青年はなんとかそれを回避したが、とどめと言わんばかりに台に乗っていた鎚が頭に向かって落ちた。

 散々な目にあって青年は眉をしかめた。どうにもツイてない。『幸運』のアビリティを持つ少年と違って『不運』というレアアビリティが発現したのではないか。そんなことを考えて立ち上がろうとしたとき、不意に思った。────思い出した。

 

「……何やってるんだ、俺」

 

 

 鍛冶師の青年──ヴェルフ・クロッゾは呆然としたように、しばらく倒れこんだままだった。

 

 

 

 ◇◇

 

 

「はい、確かに確認しました。今日もお疲れ様です」

 

 そう言って半妖精(ハーフエルフ)の少女は笑みを浮かべて頭を下げた。ギルドの受付嬢である少女たちの存在はそのままギルドの印象に直結する。そのため、受付嬢は笑顔を作りながら冒険者に対応する。美人に微笑まれて悪い気になる男はいない。彼女たちに良いところを見せようとしてダンジョンを攻略し、魔石を収集する。魔石産業で成り立っている迷宮都市(オラリオ)には彼女たちの存在が不可欠なのである。

 日もそろそろ沈み、ギルドに押し寄せていた冒険者の波が無くなってきて、少女は小さく息を吐いた。

 

「疲れた~!」

 

 助けてー、と少女の友人が情けない声を漏らす。冒険者が少なくなったからと言って仕事が終わるわけではない。受付嬢の仕事は多岐にわたる。迷宮(ダンジョン)の情報を冒険者に伝えたり、新人相手ならば彼らが死なないように最低限の知識を教え込んだり、昇格(ランクアップ)した冒険者の情報を神会(デナトゥス)に届けるために書類を作成したりと。

 今日も当然、まだやるべき仕事が残っている。よって、友人の助けを呼ぶ声は無視(スルー)し、書類仕事にとりかかろうとする。

 

(……そういえば、ギルドに来なかったな)

 

 ペンを持つ手が少し止まる。今日は少女が担当していた少年が朝に見たきり、ギルドに来ていないことを。

 彼の主神は神格者のため、もしも少年がダンジョンからまだ帰っていないようなことがあれば、すぐさまギルドに報告してくるはずなので、今日も無事に帰ってきてギルドに来ていないだけだとは思うが、それでも心配なのだ。

 必ずしもダンジョン攻略の帰りにギルドを訪れる必要はないといっても、顔を見ないと安心できないという面もある。

 

(なるべく帰ってきたらギルドに来てって言ってるのに……)

 

 少女が不満そうに眉を顰める。

 不思議な少年だ、と思う。冒険者になりたいと屈託のない笑みを浮かべていた彼はとてもじゃないが適性があるとは思えず、目を離したらすぐに死んでしまうのではないかと思うほど、荒くれもののイメージが定着している冒険者像とは真反対の純粋な少年だった。

 

 冒険者では無いエイナが守ってあげたいと思うような年下の彼は、あっという間に長い歴史を誇るオラリオで頭角を現し、最速でのランクアップを2度も果たした。

【ロキ・ファミリア】の【剣姫】──アイズ・ヴァレンシュタインを遥かに凌ぐスピードに、オラリオ中の神々と冒険者が彼に注目した。一度目は『ミノタウロス』を打倒して、二度目は格上(Lv3)を打倒して。最近では派閥間の同盟を結んだらしい。嬉しそうに少年が報告してきたのを覚えている。

 類まれなる才能を有した少年は第一級冒険者たちとも縁を結び、どこか遠い存在になりつつあった。そして、少女はそれが少しだけ嫌だった。目をかけていた少年に自分はもう不要な存在になってしまったような気がして。強くなることは良いことだが、手が届かなくなるのは寂しいものだ。

 

「はぁ……」

 

 ため息をついたあと、首を振ってネガティブな思考を振り払う。この鬱屈とした気分は、明日にでも少年に会って解消することにしようと再び書類に目を向ける。

 手元にあるのは、丁度数日前にランクアップを果した件の少年の物だった。Lv2昇格時(ぜんかい)神会(デナトゥス)直前にランクアップしたため満足に書類も作成出来なかったが、今回はまだ次までに時間があるので、作成に取り掛かっている。

 

 書類に書かれているのは冒険者の基本的な情報だ。年齢、性別、容姿、戦闘方法(スタイル)、交友関係など神々が二つ名を付けるに当たって必要な情報が取り揃えられている。

 少年の場合は、一度ランクアップしているので、前回付けられた二つ名も記載されている。二つ名が変更されるのも特に珍しいことではない。

 

 受付嬢は複雑な面持ちで少年の『二つ名』の場所をなぞった。

 

「【韋駄天(アキレウス)】……か」

 

 もっと無難な二つ名の方が彼らしいのにな、と頬を緩ませる。そう、例えば──【リトル・ルーキー】とか。

 

「……っ!」

 

「ちょっ! 大丈夫!?」

 

 突如頭痛に襲われて、手に取っていた書類が音を立てて地面に落ちる。

 頭を抱え込んだ少女を見て、友人が駆け寄ってくる。

 少女は割れるように痛む頭を押さえながら、書類に描かれた白髪の少年の似顔絵を見つめる。

 

「……ベル君?」

 

 半妖精(ハーフエルフ)の受付嬢──エイナ・チュールは有り得たかもしれない今を見た。

 

 

 ◇◇

 

 

(……おいおい、どうなってんだこりゃ)

 

 妙な事になったと確信したヴェルフは身一つで鍛冶場を飛び出し、ギルドに向かっていた。最初は【ヘスティア・ファミリア】の本拠地(ホーム)へと向かったものの人がおらず、他の心当たりがある場所を手当り次第に探る。

 今、ヴェルフには二つの記憶がある。生を受けてから17年間の記憶と、先ほど思い出した今より少し未来まで生きたヴェルフ・クロッゾの記憶。メインとなっているのは未来のヴェルフ──別世界と言った方が正しいのかもしれない──の記憶だが、過去を振り返ろうとすると、実感を持ってもう一人の記憶も思い出せる。

 この二つ記憶でこれほどまでに差異がある原因があるはずだと、ヴェルフはそう考えた。

 自分のファミリアでは大した変化はなかったが、他のファミリア──特にベルの周りは全くの別物になっている。

 

 記憶の中のベルに不審な点はなかった。まず間違いなくベルはヴェルフのように未来の知識を有しているわけではない。同類(なかま)なのはやはり、【ロキ・ファミリア】と【アストレア・ファミリア】の団員。特に【剣姫】と【凶狼(ヴァナルガンド)】、そして【疾風】。

 団長や神々が裏で手を回して関係性を前回と変更させた可能性もないわけではないが、おそらく彼らだろうと当たりを付けた。

 前回の【アストレア・ファミリア】のことをヴェルフは何も知らないので、話を通しに行くのならば【ロキ・ファミリア】の方が何かと都合がいい。しかし、未来のことを知っている、などと言っても本拠地(ホーム)の前で門前払いされるのが目に見えている。椿にも頭の心配をされることは想像に難くない。

 

 故に、幹部級の眷属と直接話がしたいならば、椿か主神(ヘファイストス)を連れていくしかない。生憎と椿は一人で武器の試し切りをしにダンジョンの深くまで潜っているので、その手は使えない。

 ならばどうするか。

 

「ベルの奴何処に行ってんだ?」

 

 ──ベルを見つければいいのだ。

 ベルあるところに師匠ありと言われるほど、ベルと彼女たちは行動を共にしている。ダンジョンにこそレベルの差やファミリアの違いでついてこないが、外に出たら市場にも飲食店にも大体いる。

 つまり、ベルと一緒に居ればほぼ確実に彼女たちと直接会話をする機会が生まれるのだ。

 時刻はもうしばらくで夜のとばりも落ちるころ。冒険者はダンジョンから帰還し始める。ベルが本拠地に居なかったならば、残りはギルドか『豊穣の女主人』。そう思ってギルドに顔を出すと、

 

「あの、すいません。今日はエイナさんもう帰っちゃいました?」

 

「あ、弟君じゃん! エイナはね、ちょっと疲れがたまってたみたいで奥で休んでるの」

 

「そうなんですか……」

 

「じゃあまた明日行くことにしなよベル君。早くいかないと間に合わないぜ」

 

 居た。ヘスティアも一緒だ。ヴェルフの担当であるミィシャと会話している。

 ベルたちには何やら用事があるようで、ギルドを去りそうな二人を慌てて止めにかかる。

 

「おーい! ベル、ちょっと待った!」

 

「ヴェルフ!? どうしたの?」

 

「ちょっとベルに聞きたいことがあってだな……。今からどっか行くのか?」

 

「うん! アストレア様にご飯を食べようって誘われて」

 

 そっちか、と内心歯噛みする。ロキ・ファミリアなら一緒に連れて行ってもらいたいくらいだが、彼女たちとヴェルフ自体は対して仲がいいわけではない。向こうはベルの友人として接してくるし、こちらもベルの友人として接するが、所謂、友達の友達のような関係で、ホームにまで乗り込むのはややハードルが高い。別にロキ・ファミリアに友人がいるのかと聞かれたら、否と答えるが、男女比の問題である。ベル・クラネル(ハーレム希望者)ではないヴェルフには些か荷が重い。

 そのまま何気ない会話を繰り広げるが、やはりベルに記憶がある様子はなかった。隣のヘスティアやミィシャにも、所々で前回の記憶があれば反応しそうな言葉(フレーズ)を使用したものの特に反応はない。

 ヘスティアがそわそわしてきたので、人探しは明日以降にしようとベルと別れようとすると、

 

「ベル君!?」

 

 ひと際大きな声がギルドに響いた。

 そちらに振り向くとエイナが肩で息をして立っていた。

 

「エイナ、もう大丈夫なの?」

 

「ベ、ベル君! 覚えてないの!? 戦争遊戯(ウォーゲーム)とか緊急任務(ミッション)のこととか!」

 

「エ、エイナさん……? なんのことですか?」

 

 

 ミィシャが声をかけたのにも気づかず、エイナはベルに詰め寄る。詰め寄られたベルは目を白黒させて、エイナに問い返した。望んだ答えが返ってこなかったエイナは表情を暗くする。

 周りの注目を集めていたため、ベルとエイナの様子を見てギルドに残っていた面々は何事だとざわめきだしたが、ヴェルフはこの彼女の慌てように一つの解を導けた。戦争遊戯、緊急任務。いずれも覚えがある。ヴェルフ・クロッゾがベル・クラネルと共に潜り抜けたものだ。そして、これを今知っているのは────

 

「なあ、【()()()()()()()()】って冒険者に覚えはないか?」

 

「──!」

 

 ──ヴェルフと同じ、時を遡った者のみである。

 驚愕の色に染まった翠玉(エメラルド)の瞳が大きく開かれる。

 ようやく一人見つけたと、ヴェルフはにやりと笑った。

 

 




ベル・クラネル:他派閥のホームに週3くらいのペースで行ってる。

ヴェルフ・クロッゾ:六人目の逆行者。はじめは仲間枠の逆行者はフィンにして闇派閥戦で楽しようとしたけど、シリアスさんはなるべく省略すればいいって神様が啓示をくれたので変更。とりあえずレベル2にならないと鍛冶師としての活躍が難しいので、今後の課題はレベル上げ。

エイナ・チュール:七人目。かわいい。(15巻のエイナさんのイラスト神)(最新刊早く出て)(ダンメモちゃんとやってます)頭脳派ヒロイン、多分。記憶が戻ってすぐにヴェルフたちがギルドに来たので冷静さを欠いていた。でもかわいい。

いつもの人たち:出番なし

お気に入り四桁いっててびっくりしました。ありがとうございます。
P.S.ヴェルフがエイナさんのことなんて呼ぶか本編かダンメモで覚えがあれば教えてください。
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