剣術狂いが剣姫の師を務めるのは間違っているだろうか   作:土ノ子

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第十二話

 オラリオにて『闇派閥(イヴィルス)』と呼ばれる勢力がある。

 

 この当時、オラリオは『暗黒期』と呼ばれる悪事と抗争のただなかにあった。

 それは迷宮都市に潜在する『悪』の勢力の台頭が招いた惨禍。

 

 元となった原因を探れば元迷宮都市最大派閥《ゼウス・ファミリア》と《ヘラ・ファミリア》の失墜に遡る。だがそれは青年と少女にとって重要ではない。

 

 ともかく当時オラリオの治安を守護する冒険者の権威が地に落ちており、それがこの闘争の渦を招いていた。

 

 そしてその『悪』の勢力の第一党こそが闇派閥(イヴィルス)。独自の美意識と規範を以て、社会に対する悪行を成す神々―――邪神に率いられた派閥(ファミリア)連合である。

 

 そして青年が所属する『正義』を掲げるアストレア・ファミリアは、彼ら『悪』の勢力を討ち果たす最先鋒であった。当然青年もまた、ひとたびオラリオに闘争の火種が燃え上がれば其処へ急行して鎮圧せねばならない。 

 

 青年はしばしば札付きの外道凶賊どもの首を刈り取って見せしめに晒す悪癖から『首刈り』とも称されるとともに『闇派閥』からは恐れられ、オラリオの住民からはドン引きされていた。とはいえ『悪』を討つ冒険者として頼りにされているのも間違いないのだが。

 

 そして近頃は活動が下火になっていた『闇派閥』が、今日と言う日に合わせて準備を整え、オラリオの各所から物資と金銭を強奪すべく大規模な騒動を巻き起こしていた。

 

 今や平穏に包まれていた昼下がりのオラリオは、同時多発的に巻き起こされた騒動により阿鼻叫喚を極めていた。

 

 

「―――! 何か、あっちの方から騒ぎが…!?」

「そのようだ。近頃大人しくしていたと思えば破落戸(ゴロツキ)は変わらず破落戸(ゴロツキ)か。せめて暗闇に潜む程度の可愛げがあればもう少し手心を加えて誅殺してやるものを」

 

 

 穏やかな会話を交わしながらの帰り道。

 それぞれがそれぞれなりに楽しんでいた時間が、遠方から耳に届く悲鳴と破壊音によって唐突に中断される。

 

 アイズの緊張に満ちた声に、不自然なほど平時と調子の変わらない声が返される。

 しかしその何気ない声音に込められた感情(モノ)を僅かなりとも感じ取り、思わずアイズはビクリと身体を震わせた。

 

 

「まったく」

 

 

 それは完璧に感情の抜け落ちた……さながら刀剣のような無機質な殺意に満ちた呟きだった。

 

 

「躾のなっていない野良犬が…。仕置きが必要だな?」

 

 

 心を切り裂く冷え切った声音が耳に届き、アイズの背筋を悪寒が走り抜ける。

 恐る恐る振り返ったそこには影が差して表情の伺えない青年の顔。魅入られたようにその様子を伺うためにアイズは反射的に目を凝らすと、

 

 

 ただ  その眼だけが   とても   冷たく     輝いていて   ———

 

 

「ヒッ…!」

 

 

 アイズが覗き見たその双眸はゾッとするほどの冷たさに満ちていた。

 怯えに喉を詰まらせて、腰を引けさせて後ずさるアイズ。

 

 それはアイズがまだ理解も経験もしていない、殺人者(マンイーター)の瞳だ。如何に生死のやり取りを経験しているとはいえ、まだ七歳の少女が本能的に恐怖を覚えるのも無理はない。

 

 

「おっと」

 

 

 しかしアイズの様子を見てとったセンリは驚くほどあっさりと露わにした殺意を引っ込める。

 その切り替えがあまりに自然すぎて、白昼夢を見たかと錯覚しそうになる。殺気を収めたはずの青年が途轍もなく恐ろしかった。

 

 

「すまない。君にはまだ刺激が強かったかな」

 

 

 センリの様子はもう平時と変わらない、穏やかなものだ。だがそれが余計に恐ろしい。

 

 彼は戦場(いくさば)にあってもいつも通りの笑顔で人の首を刎ねられる―――その事実を身を以て体験してしまったために。

 

 そして、あるいは自分すらも…。

 

 今のアイズにとって、この騒ぎよりもダンジョンの魔物よりも、目の前に笑顔で佇む青年こそが恐ろしかった。

 

 

愛剣(ソード・エール)は持っているね? いざという時には躊躇わずそれを抜け。そして抜いたならば敵の血で刃を濡らすまで鞘に収めるな」

 

 

 アイズの恐怖を知ってか知らずか、端的に指示を出す。

 護身のためと師から外出時には常に帯剣するよう指示されたソード・エールはアイズの背中に収まっている。今はその重みが酷く頼もしかった。

 

 

「つまり余程のことが無ければ剣を交えるな。走って逃げろ。剣を抜くのは最終手段だよ」

「……う、うん」

 

 

 いつもとは様子の違う、怯えた風ですらある少女に首を傾げながらもまあそれどころではないかとあっさりと思考から切り捨てた。怯える少女に疑問を覚えつつも、素でそれ以上考えが及ばないのだ。

 

 センリを知る者がその場で見ていればお前、そういうところだぞと口を揃えてツッコミを入れただろう。彼は決して悪人ではないが、誰が見ても分かる通り心の機微には人一倍疎かった。

 

 平時と全く変わらない様子で同族(ニンゲン)を殺害できるキチガイなど恐怖を覚えて当然だというのに、その『当たり前』がセンリには遠い。

 

 

「君のホームまでもう近い。このまま真っ直ぐ道を走って帰りなさい。まずファミリアの庇護下に入るんだ。いいね?」

「分か…、分かった…」

 

 

 常にないほど弱弱しい小声。

 

 少女の異常の兆候を察しつつ優先度の問題から切り捨て、指示を念押しすると後はもう意識の大半を戦場に振り分ける。

 

 センリは鋭敏な五感をフルに活用して、複数の方角から聞こえてくる騒音の発生源を探った。

 

 

(―――此処よりも北に一つ、ギルド方面。冒険者御用達の商店が並ぶ一角の辺り…。かなり、近い!)

 

 

 第二級冒険者の高みにあるセンリの五感は相応に鋭い。頭の中の地図と照らし合わせ、まず間違いないだろうと最も近場の戦場を特定した。

 

 

「己が不運を呪え、凶賊」

 

 

 二ィィ、と見るからに禍々しい笑みを浮かべると腰に下げた愛刀を鞘から抜き放つ。心なしか昼下がりの陽光に照らされ、輝く刀身が主を戦場へと誘っているようにすら感じる。

 

 今日の愛刀はさぞや血に飢えていることだろう。速やかに悪鬼外道どもの喉首を掻っ捌き、渇きを満たしてやらねば。

 

 平時と変わらない笑顔を張りつけながら、身に纏う雰囲気だけが札付きの悪党も裸足で逃げ出すほどに凶悪な気配を帯びていく。

 

 ほとんどホラーじみたこの変貌にアイズはますます表情を引きつらせ、その心にトラウマが刻み込まれた。

 

 

「ボクは行く。君も行け」

 

 

 最後に短く声をかけ、センリは街を駆けた。

 

 (ダン)ッ、と石畳を砕きかねない勢いで地を蹴ってセンリは騒動の渦中へと向かう。放たれた矢のような勢いで遠ざかるその背が建物の陰に隠れるまで見送り、アイズは無意識に体を脱力させた。

 

 

「ハ……ァ……!」

 

 

 我知らず胸に押し込めていた息を吐き出し、路上にへたり込んでしまいそうになる己を叱咤して足に力を籠める。ぐらりと傾きかけた体を支える煉瓦の壁の揺るぎなさが頼もしくすらあった。

 

 

「なに、アレ……?」

 

 

 ()()()()()()? 

 

 

 アイズとて冒険者だ。ダンジョンでモンスターと殺し合い、怪我を負うことなど日常茶飯事だ。だがアレは……怖い、などという可愛らしいものではない。ただ只管(ひたすら)に恐ろしい。

 

 言うなれば『死』そのものを問答無用で直視させるようなおぞましさ。剣士(ツルギ)の持つ禍々しく破壊的な側面を無遠慮なほど剥き出しにしている。

 

 あるいは、だからこそか。

 

 自暴自棄な感情で、モンスターへの憎悪で本来の情動を麻痺させたからこそ日夜ダンジョンでの殺し合いを繰り広げてもアイズの精神は狂うことなく正気を保っている。

 

 だがセンリの鬼気に宿る『死』を否応なく直視させられることで、アイズは今初めて殺すこと・殺されることへの恐怖を覚えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 疾走する。

 

 オラリオの道を、裏路地を、建物のそこかしこに突き出された取っ掛かり、果ては建物の屋根すら突っ切って一直線に戦場へと駆けていく。

 

 

(見たところ、少なくとも騒ぎが起こっているのは六ケ所。どれが陽動で、どれが本命だ…? 皆との合流は……難しいか)

 

 

 比較的高所を飛び回って上空から街を俯瞰。

 オラリオ全体の概況を見て取り、戦況に思考を回す。

 

 

(まあいい、(しらみ)潰しだ。片端から斬り捨てて回ればいい。強者がいればそこが本命、雑兵ならば蹴散らして騒ぎを収める。その過程で頭の切れる誰かしらと合流できれば御の字か…。フィンか、団長(アリーゼ)なら情報も持ってるだろうから文句はないんだが)

 

 

 シンプルイズベストを地で行く脳筋思考。

 

 だが往々にして戦場という流動的な状況下では行動方針は単純なくらいで丁度いい、特に単騎で局地戦の勝敗をひっくり返せるほどの強者ならば。

 

 

(一つ目!)

 

 

 思考を進める間も第二級冒険者の俊足はあっという間にセンリを戦場へと運んだ。

 

 

(イヌどもが…)

 

 

 目に入ったのは力任せに打ち壊された幾つもの店構え、そこかしこを赤で汚す血飛沫の痕、血だまりの広がる石畳に臥せる何人もの屈強な男たち…。そして、年端もいかない『子供』まで。

 

 取り返しのつかない破壊、そしてそれ以上の惨劇を防ぐために剣を取る冒険者たちの姿もそこにあった。

 

 

(タダで済むと思うなよ?)

 

 

 平時から飄然とした調子を崩さないセンリの精神が一気に絶対零度まで冷え込む。同時に己に能う限り惨たらしい死に様をくれてやることを心に誓う。

 

 イタドリ・千里に真っ当な倫理観は無い。だがそれは決して『悪』を肯定しているわけでも、『悪』に無感情でいるわけでもない。強いて言うならただ感性がズレていて、常識というストッパーが外れているだけだ。

 

 だから目の前で子供が倒れていればその機嫌はあっという間に最低最悪まで急降下する。子供と言う弱者はかつての己や孤児院の兄弟たちを思い出すから。

 

 誰にも聞かれぬ誓約を己に結ぶ。

 さあ―――

 

 

「報いの時だ」

 

 

 所謂(いわゆる)『冒険者通り』を荒らしまわる『闇派閥』とその場に居合わせただろう冒険者たちとの抗争の場へと到着した青年が行ったのはまず何よりも『闇派閥』を率いる指揮官を探すことだった。

 

 目につくのは身の丈ほどもある大剣を片手で振り回し、全身鎧を被ったひと際体格の大きな巨漢だ。

 

 

(奴が敵の要…)

 

 

 他の破落戸(ゴロツキ)どもよりも目に見えて優れた装備、堂に入った戦いぶり。加えて前線に立って戦線を蹂躙しつつ胴間声を上げて威圧するその姿を一瞬で狩るべき獲物と判断し、足場とした建物の天板を強く踏み抜く。

 

 上空からの強襲。

 

 愛刀を構え、天から凄まじい速度で襲い掛かる青年であったが敵もさるもの。仲間からの呼びかけで青年の存在に気づくや否や武器を構えて迎撃の態勢を執った。

 

 その反応速度と堂に入った構えから最低でもLv3、ひょっとすると同格のLv4かもと直感するが最早戦端が開かれた今となっては大して変わりがない。

 

 敵ならば斬る、それだけだ。

 

 

「惜しい」

 

 

 理非善悪をさておき、眼前の大男は確かな強者である。可能であれば心行くまでその戦技を体感したいところだが、あいにく戦場はここ一か所ではない。できるだけ手早く済ませ、他所へ援軍に向かう必要がある。

 

 

「死ね」

「テメェが死ねやああああぁっ!」

 

 

 飄然とした殺害宣言に戦場の喧騒をかき消す大音声が迎え撃つ。

 

 たとえ悪党といえどそこには隔絶した膂力に確かな技が乗った瞠目すべき大剣の一振りであった。故に巨漢を悪党と蔑む者はあれど、未熟者と侮る者はいまい。

 

 されど敢えて言おう。

 

 巨漢ほどの強者を以てしてなお、『武』を以て青年に対するは余りにも練度が足りなさすぎると。

 

 斬撃交差。

 

 二人の(つわもの)が互いの命を奪うため己が愛剣に気迫を込めて渾身の強振(フルスウィング)を振るう。

 

 青年の落下エネルギーを乗せた打ち下ろしが、巨漢が肩に構えて撃ち出す大剣とぶつかり合う。互いの業物はこの激突に耐え、込めたエネルギーが押し切らんと拮抗する。

 

 (ゴウ)、と。

 

 大気を震わせる衝撃が交差した両者の愛剣から放射される。

 下から打ち上げた大剣により青年の身体が宙に浮き、上空から打ち込まれた衝撃が巨漢の腰を落とさせた。

 

 一瞬の膠着。

 

 ただの一合、されど巨躯の悪漢はそこから敵手の積み上げた技量を読み取り、称賛の笑みを浮かべる。容易ならざる敵手。あるいはLv4の己の命にすら手が届きうる強敵だ。

 

 されど大地にしっかりと足を踏みしめた己こそが圧倒的に有利、と『闇派閥』の巨漢は確信していた。何も難しい話では無い。己が愛剣に膂力を伝えるのは大地を掴まえ、踏み抜く両の足だという当たり前の(コトワリ)だ。

 

 だが、その当たり前をセンリの技量は易々と覆す。

 

 巨漢の大剣によって打ち上げられたその体躯。その軌跡の中、上昇と落下が入れ替わる刹那の無重力を見切り、四肢と愛刀の重量を身のこなしによって上手く振り回すと、空中で姿勢を立て直して見せる。

 

 そのままふわり、と軽業じみた身の軽さでその体躯が宙を舞い、巨漢が持つ剣身の上に着地した。

 

 足場を確保するとともに敵の得物を封じる一手であった。

 

 

「な―――」

「迷いのない、良い一振りだった」

 

 

 称賛を一言、死出の旅路へ向かう男へ送る。

 

 

「じゃあね」

 

 

 そして愕然とした顔で差し出された首を無造作に薙ぐ。巨漢の喉首から鮮血が噴き出し、センリの装束を赤で汚した。

 

 突然の強襲から瞬く間に敵将を撃破してみせたセンリに、敵も味方も呆気にとられたように目を奪われる。

 

 

「まず、一人」

 

 

 語らずして()()()()()()、というニュアンスを含ませた呟きに『闇派閥』の構成員たちは残らず肝を潰し、味方であるはずの冒険者たちまで思わずビクリと身を竦ませた。

 

 アストレア・ファミリア所属冒険者、イタドリ・千里(センリ)

 Lv4の第二級冒険者。ステータスにおける最高値は器用:SSS。

 

 およそ下界で最も武神(タケミカズチ)に近い剣腕を持つオラリオ最高の剣士である。

 

 

 




 感想にて『憧憬剣理(リアリス・フレーゼ)』持ちのセンリの成長速度について多くの方が疑問に思ったようなので解説。

 かなり長めです。『興味がないならば読み飛ばし推奨』。
 また基本的にあくまで本作におけるオリジナル設定です。一応注意。私が神だ。


【TIPS】『憧憬剣理(リアリス・フレーゼ)

 うちの主人公(キチガイ)ことイタドリ・千里が成長促進系スキル『憧憬剣理(リアリス・フレーゼ)』を得ていながら、Lv5(実質Lv6)に昇格するまでの年月がかかりすぎているという感想が寄せられました。

 尤もな感想ですが、これに関しては理由が幾つかあります。
 まず一点目としては、

昇格(ランクアップ)にほとんど拘っていない。

 これが全ての前提です。

 作中でもすでに描写していますが、強くなることは即ち狂気の沙汰であるというのがセンリの基本的な考えです。つまりそれだけ強くなることは大変だということですね。特に、武神の領域に手を届かせようと考えているのならば尚更に。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()。まさしく狂気の沙汰ですが、人間が神の領域に辿り着こうと言うなら妥当というか大前提だと考えます。

 故に目先のステイタスの強化、手っ取り早く強くなるための昇格(ランクアップ)。これらはセンリにとって有益どころかむしろ将来的な成長に差し障る有害な手法です。冒険者としては間違っていませんが、求道者にとってはとても大きな問題です。

 一歩でも早く、少しでも早く強くなる。そういう思考の下無理無茶無謀を繰り返していた原作アイズとはある意味対照的ですね。なので本作では師事したアイズに決して焦ってはいけないと戒めています。

 そのため昇格するならそのレベルで得られる強さを残さず浚ってから。具体的には魔力以外の基本アビリティがオールSに成長するまで昇格を見送っています。それと強くなるほど戦う相手に困るというのもあります。

 加えてベル君の憧憬一途(リアリス・フレーゼ)と比べて、センリの憧憬剣理(リアリス・フレーゼ)は「器用」がとんでもなく上がりやすい代わりに、「力」「耐久」「敏捷」「魔力」は上がりにくい仕様です。

 もちろん他の冒険者と比べればずっと上がりやすい訳ですが、それでもオールSまで育てきるとなると相当な時間が要ります。そこがボトルネックとなって昇格速度ではベル君に劣っています。

 とはいえそれだけの積み重ねがあるから作中でも『オラリオ最高の剣士』と吹いたわけです。オラリオ最高ということはほとんど世界最高と同義ですから。それだけ吹かすなら最低でも才能と時間とチートは持たせとかないとなぁと思っての『憧憬剣理』実装です。

 実際それらの努力が実を結び、積み重ねた潜在値(エクストラポイント)も相まって昇格直後から同じLvの冒険者の中でも基礎スペックが頭が二つか三つくらい上に抜けています。『技と駆け引き』に至っては全力のアイズを基礎アビリティと『技と駆け引き』のみで格下扱いできるオッタルすらも上回るというキチガイ剣客仕様。

 確かに成長促進系スキルを持っている割に昇格速度はかなり遅めですがその分の『数値(ステイタス)では表現できない強さ』をしっかりと得ているわけです。まあそれを描写できていないと言われれば正しく仰る通りと頭を下げるしかないわけですが…。

 うちのキチガイについては概ね以上です。



 次、原作主人公ことベル・クラネル君。

 上記の説明を踏まえてそれでも遅いという方は恐らく同系統スキル所持者であるベル君と比較しての意見だと思いますが、これに関しては次の一点を前提とすることで大体説明できます。

 つまり()()()()()()()()()()()()()()()

 身も蓋もなく言ってしまうと所謂主人公補正な訳ですが、実際原作主人公ベル・クラネルは正しく主人公としか言えないような冒険に異常なほど短い期間に連続して遭遇しています。

 自分が強くならなければ命や戦友、誇りなどの大切なものを失う。そういう状況(シチュエーション)に何度も立たされているわけです。

 ある意味で強くなって当然です。強くならなければ『ざんねん!! あなたの ぼうけんは これで おわってしまった!!』になるわけですから。

 言っては何ですが憧憬一途(リアリス・フレーゼ)は危機に陥ったベル・クラネルが爆発的に強くなるための理由付けでしかないわけで、注目すべきは彼らが実力と幸運で潜り抜けてきた命が幾つあっても足りないような『冒険』と『偉業』のはずです。普通に考えて例え第一級冒険者でも同じような難度の冒険に『遭遇』して潜り抜けるのに一体何年かかるでしょうか。そう考えるとそこまでセンリの成長が遅くないと言っていいのではないかと思います。

 それらの事情を無視して単純に同じスキルを持っているから成長も同じでないとおかしいというのは少しスキルの力を過大評価しすぎではないかというのが私の考えです。

 それではベル君と比較してうちのキチガイはどうでしょうか。センリは英雄ではありません。主人公補正もありません。あらすじにも書いてある通り最初から最後まで()()()()()()()()()()()()()()()()()

 これは半分余談ですが、センリの冒険者人生は決して平穏でも栄光に溢れているわけではありません。彼自身自分が異常(キチガイ)であることは自覚しているのでそのズレに苦しんでいますし、これから『家族(ファミリア)』と呼び合った仲間たちを一度に大半を失うことになります。

 要するに生まれ持った才能に反比例して運命力は低めというかベル君たちほど短期間に連続して『冒険』に臨み、栄光を掴む機会に恵まれたわけではありません。……恵まれたっていうか客観的には苦難に見舞われてるわけですが。(大森藤ノ先生もうちょっとベル君たちに手加減してあげて)

 結局のところベル・クラネルは『英雄になりゆく少年』であり、イタドリ・千里は『善良で才能のある、ただの人間(キチガイ)』だったということなのだと思います。



 以上!
 異論反論は認めます。
 上記以外でもご意見ご感想あれば大歓迎です。

 だから感想ください(真顔)。


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