やべー奴が赤龍帝になりました。   作:やがみ0821

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ブレない彼女

 

 ハーデスら冥府の勢力、そして上役達の大半を排除したことで悪魔社会は本格的な安定期を迎えた。

 現政府や現魔王に反感を持つ者達を一子が一纏めにして、その庇護下とした為、サーゼクスらとしてもやりやすくなっている。

 不満の出処があちこちにあるよりも、一本化してもらった方が意見を汲みやすいという単純な話だ。

 何よりも一子は容赦をしなかった。

 政権転覆などの既存秩序の変更を望むような過激過ぎる者は何故か事故死もしくは病死している。

 そのような中で一子は上級悪魔昇格の儀式を終えて、正式にリアスの下から独立したのだが――そこからほぼ間を置かず、最上級悪魔へ推薦され昇格した。

 そして、最上級悪魔昇格と同時に一子が超越者であること、また七つの大罪にならって七大魔王制度の導入をサーゼクスが発表した。

 これは既存の四大魔王に加え、マモン、ベルフェゴール、サタンの3つの役職を増やすというものだ。

 

 これによりドラゴンと同一視されるサタンに一子が推薦され、彼女はそれを承諾した。

 時間を置くと一子がまた何かをやらかす可能性があった為、彼女を地位に縛り付けて動けなくするべく、極めて迅速にこれらは行われた。

 

 このような慌ただしい動きにより、一子にとって高校生活最後となる1年は学校と冥界の行ったり来たりがほとんどで、あんまり遊べる時間が無かったのが唯一の不満だ。

 

 

 とはいえ、ヤることはヤっていた。

 

   

 

 

 

 

 

 

「……いや、私が言うのも何だけど……ちょっとやりすぎちゃったわね」

 

 一子の視線の先にいたのは昨年卒業したリアス、朱乃、ソーナの3人をはじめ、黒歌やレイナーレ達やカテレア、セラフォルーといった面々だ。

 彼女達はそれぞれ一子との子供や、彼女達以外の――卒業式に出席するゼノヴィアやイリナ、アーシアの――子供達も連れていた。

 彼女達とともに一子の両親もいるのだが、2人は感無量といった面持ちだ。

 

 特にリアス、朱乃、ソーナの3人は在校生にもよく知られた存在であった為、相手は誰だとざわついている。

 

 まさか相手が私だとは思うまい、と一子は腕組みをして鷹揚に頷く。

 まさしく後方魔王面である。

 

 そんなこんなで卒業式は始まるが、密かに一子が妄想していたテロリストが襲撃してくるようなことは残念ながら無かった。

 以前にベンニーア達が攻めてきたことがあったが、結局戦わずじまいだったので不完全燃焼に終わっている。

 

 学校にテロリストが攻めてきたら、というのはたとえ魔王になっても妄想してしまうのである。

 

 

 卒業式の後は記念撮影だが、ここでもちょっとした騒ぎになる。

 

 一子とその両親を中心にその周囲をリアス達が陣取って、撮影を行った為だ。

 いったいどういう関係なんだ、と周りが疑問に思う中、無事に撮影も終了した。

 

 後日改めて卒業記念パーティーを行う為、卒業式の後は一子達は一緒に兵藤邸に帰宅した。

 

 一子の子供達がきゃーきゃーと遊び回っているが、メイドが多数ついている為、安心だ。

 そんな孫達の微笑ましい姿に顔を綻ばせながら、一子の父親である五郎は一子達をリビングに集めた。

 

 

 

「実はおめでたい日なんだが……もう一つおめでたい報告がある」

 

 五郎の言葉に対して、すかさず一子は手を挙げて自信満々に告げる。

 

「宝くじが当たった?」

「……いや、それもめでたいんだが……それとは違う」

「じゃあ何よ? 黒毛和牛でも当たったの?」

「一子、父さんは悲しいぞ……違う、そうじゃない」

 

 一子は渋い顔をしてみせる。

 

「お義父様、いったいどういう……?」

 

 一子に任せていると話が進まないのはよく知られたことだ。

 故にリアスが尋ねる。

 

 すると五郎は満面の笑みで告げる。

 

「実は母さんが妊娠したんだ」

「その、そういうことなの……一子が手を離れちゃって寂しいから……」

 

 そう言って微笑む母親の三希に五郎が告げる。

 

「技術の進歩でうまくいくかもしれないと当時考えて、お互いの精子と卵子を専門機関に冷凍保存してもらったんだ」

「その後に一子が生まれたんだけど、2人目が欲しくなったときに取っておいたの。一昨年くらいから皆には内緒で夫と2人で話し合って、実行しようって決めたのよ」

 

 そこで三希は言葉を切り、一拍の間をおいて告げる。

 

「年齢も年齢だから体外受精に成功しても、その後がうまくいくかはとても低い確率らしいんだけど……」

「医者がびっくりしていたぞ。経過は順調らしい」

 

 一子には覚えがあった。

 

 10年以上前にウィッシュ・アポン・ア・スターを使ったのだ。

 当時、夕食時にテレビのニュースでちょうど不妊治療の話題を扱ったときで、そのときに教えてもらった。

 

 すぐさま一子はウィッシュ・アポン・ア・スターを使って、星に願いを託したから、2人目は産まれるかもね、と言っていたのだ。

 

「昔、一子が星に願いを託したから弟か妹ができるかもって言っていたけど……本当にできちゃったわ」

「ああ、父さんも覚えているぞ。偶然だろうが、ここは一子のおかげと思いたいな」

 

 リアス達からの視線が集中するのを一子は感じていたが、それらは全て好意的なものだ。

 同じ女であり、また母である以上、そういう気持ちも分かるようになったリアス達である。

 

「先輩……最高です」

 

 小猫もそう言って、一子に対してサムズアップ。

 何だかんだで彼女に対して、一子は今のところ手を出していない。

 黒歌はさっさと手を出すように言ってくるが、何となくきっかけが掴めないというのもあったが、時間はたっぷりあるので一子は焦ってはいなかった。

 

「先輩もちゃんと親孝行できるんですね」

「いや、それはさすがに一子さんに失礼だと思うよ」

 

 ギャスパーの言葉に木場は苦笑しながら告げる。

 

「ギャスパー、あとで屋上裏な」

「屋上裏ってなんですか!? 体育館裏と屋上が混ざってますよ!?」

 

 ツッコミを入れるギャスパーには答えず、一子は深呼吸をして――そして、両親に対して問いかける。

 

「ところで名前は決めてあるの?」

 

 一子の問いに五郎が答える。

 

「女の子だったら双葉、男の子だったら一誠にしようかと思っているんだ」

「双葉は穏やかな子に育つように、一誠は一番誠実に生きて欲しいという意味を込めているの」

 

 なるほど、と一子は大きく頷き――カテレアに対して指示を出す。

 

「ガブちゃんを呼んでっ! ミカエルとかも!」

 

 とりあえず熾天使を全員呼んで祝福してもらう、もし無事に生まれなかったら天界潰してやろうと一子は決意をした。

 

 一子の指示はカテレアによってただちに実行されたのだが、さすがにサーゼクス達に伝えないわけにもいかない。

 その為、一子は彼らにも伝えたのだが――大変なことになった。

 

 

 

 

 

 

「うわぁ、神話のクロスオーバーだわ……」

 

 そんな感想を一子は言ってしまう。 

 

 リフォームによってかなり広くなった兵藤邸。

 しかし、そんな家が手狭に感じてしまう程に大勢の客がきた。

 

 三大陣営の偉い人達が全員集結し、それだけでなく北欧や須弥山、インドなど各地の神話における偉い人達までやってきた。

 邪龍達との戦い後のパーティーで一子は彼らと面識があったが、失礼にならない程度の短い会話で切り上げることで勧誘をうまく逃れたという経緯があった。

 これにより、ただ女をあてがうだけでは転ばないという勘違いを神々にされてしまったのだが、当時、本人が性的な意味で昂ぶっていて精神的に余裕が無かっただけである。

 

 ともあれ、そんな彼らは一子に挨拶をした後、母のお腹に宿っている新しい命に声を掛け、祝福するというとんでもないことをしていた。

 誰がここまで事態を大きくしろと言ったのだ、と一子は途方に暮れる。

 

 彼女はただ、ミカエル達天使に祝福してもらえればそれで良かったのに、と思う。

 

 生まれてくる弟か妹、色々と変な影響でも出るんじゃないか、と一子は心配してしまう。

 彼女は知らなかったが、さすがにそういう影響が出ないように彼らも配慮していた。

 

 

「一子」

 

 そのとき、リアスが一子の名を呼びながら歩み寄ってきた。

 

「……凄いことになったわね」

 

 偉い人達で溢れかえる兵藤邸にリアスは呆れながら、告げる。

 

「色々とあったけど、あなたを眷属にして良かったわ……だけど、最初からあなたは色々とやらかしてくれていたわよね……?」

「今代の赤龍帝なので」

「それ、久しぶりに聞いたわ。もうそれでは誤魔化されないわよ。本当、どうしてあなたが赤龍帝になっちゃったのかしら……」

 

 リアスの言葉に一子は頬を膨らませて問いかける。

 

「やべー奴が赤龍帝になりました、とでも言いたいわけ?」

「事実でしょうに」

 

 リアスの答えに一子はぐぅの音も出なかった。

 

「まあ、それはさておいて……これからどうしたい? あなたは高い地位を得たけれど……?」

 

 リアスの問いに一子は胸を張って告げる。

 

「趣味で世界最強を目指し、リアスや他の子達とイチャイチャ、あと美味しいものを食べたいし、色んなところを観光したい」

 

 彼女は全くブレていなかった。

 欲望一直線――それが兵藤一子であった。

 

 

 




これにて完結です。
お疲れ様でした。
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