ACECOMBAT7 -Flying Hounds- 作:プリースト2-1
原作:ACECOMBAT7 Skies Unknown
タグ:R-15 クロスオーバー 戦闘機 VTuber エースコンバット ACECOMBAT7 F-14
洋上に浮かぶオーシア海軍の航空母艦"ケストレルⅡ"。その甲板上は緊迫した空気に覆われていた。艦の航空機を昇降させるエレベーターに大型の戦闘機が乗り、甲板にその姿を現す。主翼にはオーシアの国籍マーク、垂直尾翼に描かれたエンブレムでは狼と狐が同じ方向を向いている。エンジンを始動させたスタッフに代わり搭乗員がそれぞれの座席に飛び乗り、ハーネスとシートベルトを締めている間に整備員が離艦前最後の簡易的な点検を行った。ただその搭乗員たちには他とは違う決定的な特徴があった。髪を別けてそれぞれには“獣の耳”が生えているのだ。
「インターコム接続。音声の感明知らせて」
「無線の感度は良好。燃料の確認に移る」
絹のような白い髪と狐の耳を”White fox”と横に筆記体で書かれたヘルメットに格納し、酸素マスクで口全体を覆いながら前席のパイロット"白上フブキ"は発艦するための手順を手早く、着実に履行していく。機体の外では着用するベストの色から"レインボー・ギャング"と呼ばれるスタッフたちが発艦前の最終点検を行っていた。
「燃料残量16.0、警告灯チェック異常なし」
「オーケー。ミオ、風防を閉じて」
フブキが後席に座るもう一人の搭乗員に声をかける。野性的なイメージを抱かせる黒髪に狼の耳を生やした
「フォクシー01、カタパルトへの進入を許可する」
管制センターからタキシングの許可を受け、黄色のベストを着た誘導員の指示に従ってカタパルトまで機体を進める。50cmでも進むコースがずれてしまえば誰かスタッフを轢いてしまうかもしれない。しっかりと指示に従い、カタパルトの射出装置に機体の前輪を固定した。がこん、と鈍い音が伝わり誘導員が射出準備の完了を確認。翼を広げるようハンドサインを出す。
「主翼を広げる。クリアランスを」
「......OK、大丈夫」
左右を交互に見、人や航空機がいないスペースが十分確保されていることを確認。前席に伝える。それを聞いたフブキは主翼を展張させた。機体は大型だが横から見るとどこかスマートさを感じさせるフォルムで、主翼が伸びている状態と畳まれている状態ではまるで別の機体なのではないかと錯覚させる。後方に聳え立つ2枚の垂直尾翼は前から見ると若干斜め外側に傾いており、その名前と合わさって猫の耳をイメージさせる。F-14D"スーパートムキャット"。艦隊防空を主眼に置いて開発された大型の艦上戦闘機だ。
「ミオ、ラダー及びフラップの確認」
スティックを前後左右に動かし、小翼の動作を確認していく。ミオは左右に振り向きながらパタパタと小刻みに動く全遊動式の水平尾翼を見た。
「各種操舵系統に異常見られず。発艦準備良し」
「ディフレクター、オープン。射出待機」
後方に向け放出されるジェット気流を逃がすため、ジェットブラスト・ディフレクターと呼ばれる6枚の縦に長い板が立ち上がる。
『フォクシー01、射出シーケンスに移行。発艦を許可する。発艦後は方位2-8-0 高度6000まで上昇。以降はチャンネル5でコンタクトを取れ』
「了解。01発艦します。発艦後は方位2-8-0 高度6000まで上昇し、チャンネル5でコンタクト」
「フォクシー01、
フブキは発艦後、すぐに操縦桿とスロットルレバーに手を置き、推力を上げながら機首を緩やかに上方向へ向ける。
ミオがバックミラーで背後に視線を送ると、2枚の垂直尾翼の間から僚機が発艦、追従してくるのが見えた。
『01、高度6000に到達。方位2-8-0 不明機との距離90nm、接近して警告に向かいます』
『02はこれに続く』
ケストレルⅡからおよそ100マイル離れた空域。酸素マスクに装備された
「フォクシー01、レーダーコンタクト。不明機は高速で接近してくる」
ミオがレーダーモードに変更したパネルに視線を送りながら通信。彼女たちの前方から2個の輝点が近づいてくるのが確認できた。と同時に僚機のRIOから
『02より01、レーダー照射を受けてる!奴らやる気だ!』
「何ですって!?02、ブレイク・ハードポート!」
僚機からレーダー照射の報告を受け、2機は間髪を入れず左右に機体を急旋回させる。レーダー照射を受けている以上いつミサイルを撃たれてもおかしくはないとフブキは危惧していたが、その予測はすぐに的中した。
『こちら02、不明機がミサイルを発射。こっちに来る!』
2番機は回避運動を続けながら機体に装備されている対抗手段を使用する。距離があっても音速を超えた速さで到達するミサイルを回避するために使うことができる時間というのは短く、限られたものだ。機体横に装備されているディスペンサーからチャフと呼ばれる対アクティブレーダー誘導ミサイル欺瞞装備を放出する。彼の機体後部にアルミ箔でできた銀色の飛行機雲が浮かぶ。しかしあいにく無機物であるミサイルの"目"がそれに見とれることはなかった。
『だめだ、振り切れない!』
その通信の直後、僚機の後部にミサイルが着弾。火を噴きながら降下していく。煙の中墜ちていく機体から特有の長いキャノピーが飛び、二人のアビエイターが射出座席ごと空に投げ出されたのが確認できた。
「フォクシー01、......02の被撃墜を確認」
目の前で起きたことをなるべく平静を保ち空母に報告する。空母からは若干の沈黙ののち、CATCCオペレーターから生存者確認の返答があった。
『こちらケストレルⅡ、フォクシー02の脱出は確認したか』
「01、確認しました。座標のデータをミオに送らせるので、
後方でミオが座標をデータリンクを通してケストレルⅡに伝える。受け取ったCATCCはすぐにSARヘリを発進準備に入らせた。
「フブキ、どうやら......」
「分かってる。マスターアーム・オン、これよりケストレルⅡに近づく"敵機"と交戦する!」
フブキは自らに言い聞かせるように交戦を宣言。上空から敵機に向けて降下しながら武装を有効化させた。回避運動を行っていた間に結構な距離を詰められていたため目標をロックオン後、武装を機関砲に選択する。ヘッドオンで交差する際にインテークに数発撃ちこめば敵機をすぐに墜とすことができると彼女は考えた。
「フブキ、交差するまで5マイル。レーダーロックオン」
「了解ミオ。レディ・ガン」
段々と敵機の姿が見えてきた。いつの時代も敵機をとらえる最終手段は自らの目、というのは不変の事実だ。視力が命のファイター・パイロットだからこそヘッドオン直前、直後に敵機を目で捉えられることはその後のドッグファイトに繫ぐとき大きなアドバンテージになりうる。
「フォクシー01、
フブキの眼前を2機の戦闘機が飛びぬけ、後方に消える。キャノピー越しに視界を覆ったのは青い迷彩塗装を纏った大型の戦闘機。機首後方には小型のカナード翼があるが、それでも機体は見る者にスマートなイメージを持たせる。
Su-33 フランカーD。Su-27 フランカーをベースに空母での運用を可能とした海軍モデルの機体だ。
「01、敵機をビジュアルコンタクト!機種はSu-33、機数2」
『ケストレルⅡ了解。交戦を開始せよ』
フブキ達と交差したフランカーDは旋回しつつ降下、速度エネルギーを活かして背後に遷移しようとする。だがフブキはループして高度を稼いだ。
「ミオ、できる限り敵機から目を離さないで。短射程ミサイルにスイッチする」
「オーケー。下方にフランカー1機、もう1機は上昇を続けてる」
まず彼女が狙いをつけたのは下側にいるフランカーだった。推力を絞り、スティックを引いて機首を下方に向けながら降下する。武装は短射程ミサイルに選択し、
「フォクシー01、FOX2!」
スティックのスイッチを押すと胴体側面、翼の付け根に装着されたパイロンから一本のミサイルが分離する。AIM-9M サイドワインダー。戦闘機のエンジンノズルから出る排熱をもとに目標に襲い掛かるミサイル。ロケットモーターに点火し、パイロンから離脱したそれは爆発的な加速力で敵の背部に追いすがり、正確にフランカーの装甲板に覆われていた燃料、エンジン系統のパーツを上部から撃ち抜いた。
「フォクシー01、
「上から来る、回避!」
操縦桿を右に倒し、降下しつつロールして機関砲弾を避ける。水面ギリギリで操縦桿を引き込んで機体を水平に戻す。そこから再び操縦桿を引き込み、今度はスロットルレバーをいっぱいまで前方に押し込んだ。機首がやや上方に向いているトムキャットは咆哮したF110エンジンの推力に身を任せ、上昇を始めた。翼を畳み、機体の形を鋭利な三角形のように変形させる。機内ではHUDの高度・速度表示の目盛りが目まぐるしい勢いで増えていく。ある程度高度を稼いだところでスロットルを絞り、機体を水平に戻す。翼が展張していくのは搭乗する二人からも見えた。旋回しようとした矢先、レーダー照射警報の音がけたたましいサイレンに変わった。やや離れた距離から赤外線誘導ミサイルを発射されたのだ。ミオが背後に顔ごと向けながら叫ぶように報告する。
『エネミー、ミサイル発射を確認!到達まで20秒!』
『フレア放出、回避機動!』
フブキが操縦桿を右に倒し、斜め下方に旋回しながら
「く......!」
ブラックアウトやレッドアウトなどといった空間認識障害を軽減させるためとはいえ、身体を締め付けられるのには彼女はまだ慣れない。だがこれを耐えなければフブキ、ミオ共々空の中にまとめて1輪の赤い華を咲かせることになる。それだけは彼女たちはどうしても避けたかった。回避を続けていると、フレアに突っ込んだミサイルが爆発した炎がミオの目に入った。
「ミサイルの爆発を確認。うまく騙されてくれたねフブキ」
「フォクシー01、ミサイル回避に成功。体勢を立て直し迎撃に向かいます」
降下した状態から急角度のループで高度を稼ぎ、スティックに数あるスイッチを押して武装をミサイルから機関砲に選択。ロールして敵機と正対する形になる。フブキはレバーを押して機を加速させ、HUDに照準サークルを浮かび上がらせた。
「フォクシー01、ガンファイア」
フブキは操縦桿の引き金を引き、M61A1 20㎜バルカン砲を射撃した。敵機は左に急旋回して射線から離脱を図る。速度が乗っている状態からエアブレーキを展開させつつ半径の小さい旋回を行うフランカー。ミオは後席からどこに回避するかを目で追い、フブキに伝えた。報告を聞いたフブキはすかさず武装を変更し、目標をロックオン。特徴的な電子音がコックピットに鳴り響く。
「ターゲット、ロックオン。FOX2!」
翼下に装着されたパイロンから小型のミサイルが分離。音よりも速く風を切り、空気の壁を砕いて目標に襲いかかった。ミサイルを放たれたフランカーDはフレアを空域に散布し、離脱を図る。近接するサイドワインダーの弾頭シーカーはフレアの放つ熱に騙され、外れる。しかしフブキにとってそれは“作戦”のうちだった。
「一瞬でも隙を見せたのが命取りでしたね......!FOX3!」
フブキがスイッチを押すと機体中央の後部に吊りさがったミサイルが機体から分離、モーターに点火して敵機の後を追う。その間彼女はレーダーで目標を捕捉し続けた。急旋回を繰り返し、疲れが出ていたフランカーのパイロットは咄嗟に操縦桿を倒し、チャフを放出する。だが、フブキが発射したAIM-7 スパロー中射程ミサイルはそれらに騙されることなくフランカーに命中。パイロットが制御を失った機体から座席ごと空中に射出された直後、ミサイルの直撃を受けたSu-33 フランカーDは煙を出しながら錐もみ降下し続け、海面に機首から突っ込んで爆発を起こした。
「フォクシー01、スプラッシュ2。SARヘリに座標をデータリンクしつつ帰投します」
『了解した。救助及び捕虜の収容はこちらに任せてくれ』
「了解。フォクシー01RTB」
ICSを通した通信を終え、空母の待つ方位に向け旋回する。ミオが帰りがけにレーダー画面に視線を送ると、空母から発艦したヘリコプターが脱出した僚機の搭乗員が浮く座標に到達したことが確認できた。視線を前方に戻しながらフブキに話しかける。
「フブキ、……機体の国籍マーク、見た?」
「うん。あれは間違いない……エルジア海軍のマークだった」
「いつ戦闘が起きてもおかしくはない、って事か……」
2人が先ほど交戦した敵機の国籍、それはつい最近オーシアと戦争状態に入ったエルジア王国。その国の機体がケストレルⅡに向け接近してきたという事実。それは彼女たちに戦争がいつもすぐそばにあるという事実を改めて突きつけるものとなった。