限定された領域、
その中で自分を探す、

そんな真面目なテーマ……のはず

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3分間の暇潰しにどうぞ


箱庭

 「……い、……おい……」

 

 何だかボンヤリしている頭に声が響く

 

 

 

 

 あれ……私は……?

 

 「おい、目を覚ませ」

 

 誰かの声に漸く目を覚ました

 

 闇……何だここは?

 自分の周りに気配だけがある……

 怖い……

 

 「怯えるな……今日から仲間だぜ?」

 

 そう言いながら隣で横たわるモノ

 

 「貴方は……?」

 

 「俺か?俺は……」

 

 薄暗い中からシルエットが浮かび、

 近付くほどに色が付き銀色に光る、

 ……いや、ヌメって……

 

 その異形が姿を表す

 

 

 

 「俺はシャークカイザー、通称サメだ」

 

 

 

 私は気を失った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アイテムbox

 

 ハンターが武器防具から生活雑貨まで

 あらゆるモノを放り込む、

 ある意味四次元的な箱

 

 

 

 「お前も『造られただけ』でここに……」

 

 

 

 

 思い出した!

 ついさっき私は造られた、

 その途端に箱に投げ入れられたのだ!

 

 だがそんな事は認めない!

 私はご主人の役に立つ武器として、

 この世に誕生したのだ!

 

 「私はご主人の為に産まれ……」

 

 それを聞いた途端にサメは憐れみを

 含んだ口調で

 「ご主人は金がカンストしてなぁ……

 何でもいいから武器作ってるんだ」

 サメは目を瞑る

 「俺なんて一度だけエリアルで

 狩り場に持っていかれて」

 

 『サメでエリアルってシュールじゃね!?

 ギャハハ!!!』

 

 「って一発ネタに使われて以来

 箱の中さ……」

 サメは自嘲する

 

 「ご主人は優しそうな女性なのに……」

 

 

 

 

 「『中の人』は只のオッサンだ」

 サメは首を振る

 「一度位は使って貰えると良いな、

 おやすみベア……いや、クマよ」

 

 

 

 私は……私が……おやすみベア!???

 

 自分の手を見る……茶色のモフモフ、

 武器なのに?!

 

 攻撃力は低くて睡眠頼りのハンマー!?

 でも確かご主人は大剣使いのはず……

 なぜ?!

 

 

 

 

 

 ……中の人…………って何?!!

 

 

 

 

 「素材が余ってるからなぁ、ワシらが

 造られたんじゃ」

 サメの向こうから異形が話掛ける

 

 「貴方は!?」

 

 「グリモワールと申す……」

 

 「えっと……」

 杖?と本……えっ?本?…え?武器なの

 この人?……人?

 

 「言いたい事は分かる……

 このグリモワールさんは弓だ、

 そして俺は……ランスだ……」

 

 「弓?……なんですね」

 苦笑い……そんな顔をすると

 

 「お前だってヌイグルミじゃろ……

 手足もあるし顔も……羨ましい

 限りじゃ」

 

 

 

 

 

 確かに私には顔がある、お陰で

 表情も出ているようだ。

 

 

 いや、武器なのに顔ってどうよ?

 

 これはあれか?金と素材をもて余して

 ネタ武器造りに走ったのか?

 

 「私はなぜ造られたのでしょう……」

 これから強化されて……

 狩りに出て……ご主人の為に……

 

 「だから一発ネタ……」

 

 「いいや!いつか!いつか使って

 くれるはずじゃ!」

 サメの言葉を遮るグリモワール、

 それは自分に言い聞かせるように

 

 

 「甘いなぁグリモワール」

 

 「何奴!?」

 グリモワールは振り返った(様に見えた)

 

 「ネタにも色々あるんだ、俺の様に

 実用的じゃないとな」

 茶釜?から吹き矢を持ったアイルーが

 飛び出す

 

 状態異常の弾丸の扱いに長けて、

 サポートなら何でもできる

 ライトボウガン

 

 「お主は鯉と一緒に造られて

 『オンでウケるぜこれ!!』

 って笑われただけじゃろ!!」

 

 「何だとジジィ!!」

 

 「そもそもご主人は剣士じゃ!!」

 

 

 

 口が悪いアイルー……

 いやアイルーの人形かな?

 

 それにグリモワールさん、

 自分でそれ言っちゃあおしまいよ?

 アナタは弓でしょ?

 

 

 

 私は俯く、どうやら本当に一発ネタの

 為だけに造られたらしい

 

 

 

 「実用的か……そんな時代もあったな」

 箱の下の方から這い上がって来る者

 ……いや物。

 

 

 

 

 「おまえかパチンコ」

 

 「なんじゃパチンコか」

 

 「まだ売られてなかったのかよ」

 

 何だか嫌われているような……

 「皆さん……なんだか……キライ?」

 

 「過去にな……最強武器だった

 ヤツなんだ」

 

 「爆発しまくりでのぉ、

 武器のカテゴリーを壊したんじゃ」

 

 「そのあとは例によって弱体化、

 どうにもならねぇよ」

 

 

 

 「俺は仲間に……なれないのか?」

 俯く(?)パチンコ

 

 

 

 

 「だってなぁ……」

 サメが睨む

 

 「性能だけがネタだしなぁ」

 グリモワールも睨む(?)

 

 「見た目が面白くねぇぜ?」

 

 

 

 

 

 

 見た目……自分で言うかソレ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから箱の中を探索してみた

 

 結果、武器である誇りは捨てた、

 捨てたくもなる。

 

 だがそんな中で希望を見つける

 

 

 「お前が新入りのクマか」

 でっかいモロコシに話し掛けられた、

 傍らには麦わら帽子……

 

 麦わら帽子……?

 

 

 

 「今では第一線ではないけどな、

 前はルーツ攻略の第一候補だったぜ」

 モロコシは胸(?)を張る

 

 「凄い、最強の武器じゃないですか!!」

 キラキラした鉱石の瞳を輝かせる

 

 「砲撃だけだがな!!」

 モロコシは得意気に胸(???)を張る

 

 と、

 

 「アヒャヒャヒャ!!」

 

 「うわっ!!ウルサっ!!」

 見ると……何だこれ?

 エビとかカニの殻?双剣?

 

 「ヒャヒャヒャヒャアヒャア」

 

 「そいつは喋りが特殊でな、通常の

 会話はできない」

 モロコシは続ける

 「だが切れ味、攻撃力、水属性、

 どれをとっても一級品でな、

 グラビモスが雑魚になるほどだ」

 

 「アヒャア!!」

 (すげぇだろ)

 

 

 

 

 

 (そうか…強いと必ず弱体化

 させられるのか……誰に?)

 

 

 

 何者かの悪意を感じる……

 

 

 

 見た目は一癖ある、だけど使い方

 次第では最強だってあり得るんだ、

 

 きっと……

 

 きっと私だって限界突破したら!!

 凄い強い武器に!!

 

 

 

 

 

 

 「お前らは幸せそうだな」

 

 「ネタでも使って貰えるならな」

 

 クマは振り向く

 「あなた達は?!!」

 

 壁?を埋め尽くすほどの防具の数々

 

 「ネタがどうしたとか聞こえたぜ」

 アカムの防具……脚用が言ったのか?

 

 「はい、ネタ用でも笑いを取るだけでも

 使って貰いたいじゃないですか」

 

 「お前ら武器はまだ幸せなんだぜ?」

 銀色に光る脚用防具……

 シルバーソル

 

 「皆さんはスキルもあるし使って

 貰えるじゃないですか!」 

 羨ましい限りだ

 

 「確かに……確かに使って貰える」

 ネセト(脚用)が呟く

 

 「だが防具の合成が出来るお陰で…」

 うつ向く(?)アカム

 

 「見た目を変えられちまうんだ!!」

 シルバーソル

 

 「見た目が……変わる?」

 首をかしげるクマ

 

 

 

 「ご主人がオッサンだからなぁ」

 ブラック

 

 「合成されてアレにされるんだ!!」

 ドラゴン(脚用)が器用に指差す

 

 

 

 全ての防具の頂点に置かれたモノ

 

 

 明らかにboxの中で目立つ場所に

 置かれた特別な防具……

 

 薄暗い箱の中に射し込む光に照らされ

 キラキラと光を放つ……

 圧倒的存在感……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 縞パン……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 え?パンツ?……防具なのコレ?

 

 

 

 

 

 

 

 シクシクと啜り泣く脚用防具達……

 

 いくらカッコ良くても……

 皆縞パンにされるのか……

 

 その様子を見ると……

 

 

 

 

 

 

 

 下着にされる位ならネタ武器の方が

 幸せかも知れない

 

 うん、受け入れよう……現実を……

 

 ネタでも良いじゃないか……

 

 まだ幸せだよ、多分……

 

 

 ……………………

 

 

 

 「怯えるな、今日から仲間だぜ?」

 

 「貴方は……?」

 

 

 

 

 「おやすみベア……通称クマだ」

 

 




ギャグが描きたかったわけじゃない、
描いてる途中からおかしくなって来て、

予定の斜め上に着地しました。


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