対魔ライダーブレン   作:Rogue 5

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仮面ライダーブレンを見て試験的に書いてみました。ひょっとしたらその内連載するかもです。


彼は何故、毒と言えば何でも許されると思ったのか?

とある世界。堕落した人間の醜悪さで汚れ切った近未来。二代国家米連と中華連合に挟まれ紆余曲折がありながらも独立を続ける日本。今この国においては古来より分かたれていた魔と人の相互不可侵協定が破られ、魔界より来る勢力からの侵攻に晒されている。時の政府は圧倒的な力を持つ魔族の侵攻に対して、魔を滅する力を持つ忍びの集団「対魔忍」を組織し魔の侵攻に立ち向かっていた。しかし、この国において魔に立ち向かうのは何も忍びである彼ら彼女らだけではない。ある者は科学の力で、ある者は知恵で魔に立ち向かおうとしていた。

 

そんな者達の中にある一人の戦士がいた。緑のボディとマントで身を鎧った仮面の戦士。その名は――――

 

 

 

 

 

「はあ…はあ……くそ…来るなら来い」

 

「さすがにまずいねこの状況……」

 

東京の片隅にある路地裏に傷だらけの少女二人が息を切らしてなおも武器を構えて立っていた。彼女たちの刀やトンファーを構える姿は堂に入った物だが、その戦闘能力を以てしても迫りくる敵に対する彼女たちの勝利の可能性は薄いだろう。まず第一に少女たちはすでに激しい戦闘を経た結果満身創痍の状態であり、露出の多い服装もボロボロで武器の切っ先に至っては疲労と恐怖で震えている。そして第二に彼女たちの相手はただのチンピラではない。

 

「へへ…観念しな嬢ちゃんたちもう逃げ場はどこにもないぜ?」

 

「殺しはしねえよ。可愛がりはするけどな!ぎゃはっはは!」

 

「ふふふその通り。彼女たちは殺すことまかりならぬ。必ずや奴隷にして我らの快楽の贄とするのだ」

 

完全武装の彼らの構成には醜い人型の豚と言ったオークを始めとした魔族が多くいる。しかも指揮官である魔族の男は下級とは言えども吸血鬼。万全の状態ならともかくとして彼女達には勝ち目がないといっていいだろう。しかしそれでも少女たちは自らが頼みとする武器を構える。それは自らの信じる正義の為。囚われた人々を救う為。そして何より彼女たちを逃がすため囮となった友に報いる為。引くわけにはいかなかった。

 

少女たちの懸命な抵抗を見てリーダー格の吸血鬼の口元が醜く歪んだ。こういう健気な抵抗を踏みにじり嬲り玩具にするからこそ楽しいのだと彼の表情は告げている。彼には手に取るようにわかる。少女たちの怯えが苦痛が、そして悲惨な未来が。

 

その瞬間を今か今かと待ち望みはやる心を抑え吸血鬼は手を掲げる。そして残酷な裁定を下そうとして――――

 

「もの共かか――――はうっ」

 

「リーダー!どうなすったんです!?ってなんだこれ?」

 

吸血鬼の男はかくん、とまるで操り人形であったかのように白目をむいて急に崩れ落ちた。リーダーの男の急変に周囲の部下が慌てて駆け寄る。彼らが見つけたのはリーダーの首元を濡らすべっとりとした緑色の粘液。これはひょっとして毒、なのか?

 

「全く魔族も人間も強欲で陰湿で見苦しい……多くがそうなのはこの世界でも変わりませんね」

 

「何ッ!」

 

何時のまにか彼らの頭上にある門の上には緑色の服を着た眼鏡の男が立っていた。整った男の顔自体は魔界の人間のそれのような不可思議さはなく、明るい色の髪をきっちりと決めたこともあり男性アイドルグループの一員のようにも見える。しかし、しかししかしその全体から醸し出される雰囲気は何とも言い難く、『個』の強さは見る者に強烈な印象を与える物だ。さらに如何なる用途に使うのか彼の腰には金属製のベルトが巻かれており、その中央部は円形の液晶画面になっている。一体何に使うのだろうか?

 

「しかしその友を想う心は好ましい。この私が助太刀をしましょう。変身ッ!トゥッ!」

 

『ブレン・ザ・カメンライダー!!』

 

奇妙な笑い声をあげ男はくいっと眼鏡とベルトのツマミを触ると、魔族たちめがけて飛び降り―――――そして『変身』した男は魔族たちと一方的な戦いを始めた。その形容しがたい戦闘の様子に対して、ただ武器を構えていた少女たちは呆然としていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐはははははははは!対魔忍と言えども所詮は小娘ぇ!もはや逃れることは出来んぞ!!」

 

ところ変わって東京都内のとある高級住宅地。東京都内にオフィスを構える貿易会社フォントエル。政権交代からの好景気の傾向に乗り、近年事業を拡大し成長を続けるこの会社は表向きは各種の産業用物資を商うまっとうな企業であり、およそ悪徳とは無縁の優良企業のはずであった。だがシンプルで特徴のない社屋とは裏腹に贅を尽くした社長の豪奢な邸宅で行われていることは悪徳の宴そのもの。豪奢な部屋の中心にいる初老のフォントエル社長である男は豪勢に笑う。実に上機嫌そうだ。

 

「くうっ…」

 

厭らしい社長の視線の先には一人の少女が囚われている。なんらかの魔術が施されているのか仄暗い赤に輝く鎖に囚われた彼女は、両腕両脚を強制的に広げさせられ何の抵抗もすることが出来ない。鎖から照り返す光を除いても少女の顔はほんのりと羞恥心と屈辱で赤い。少女の細身の体は所々の金属的なパーツを除けば競泳水着やレオタードに見える体にぴったりとした水色の服で覆われており、薄い服を通してそのあどけない顔立ちとは裏腹に豊かな胸や尻、くびれた腰などの女性的な体つきがくっきりと見える。さらに今は乱暴な扱われ方をしたのか衣装の節々が破かれており、打撲や切り傷がありながらも尚きめ細かい白い肌が露になっていた。

 

魔と戦う戦士対魔忍の一人である少女の名前は風間玲奈。黒く長い髪を花を模した髪留めでまとめた彼女の顔立ちは本来ならば可愛らしく、男やややもすれば特殊な趣味の女を持惹きつけただろう。だが今この場では恥辱の苦しみに顔をゆがめその可憐さを損なねていた。最もこの社長のような男にとってはその方が快感を感じるのかもしれないが。

 

「ひっ…いやあ……触らないで」

 

社長の無遠慮な手が玲奈の肢体を無遠慮にまさぐる。その動きに少女は顔を背けるが四肢を拘束されそれ以上の抵抗はできない。長いまつ毛に浮かんだ涙はむしろ社長を興奮させるだけだ。

 

「しかしこう、十代の娘とは思えん体つきだな!本来ならもう年を取ってちっと熟れた方が好みだが、このいやらしさは儂のコレクションにふさわしい!こんな上物を捕まえてくれた君たちには後でボーナスを払おう!」

 

「それはそれは…光栄でございます」

 

「ぐはははははは!!光栄に思えい!」

 

対魔忍に似た扇情的な衣装の美女が優雅に礼をとると初老の男はますます品のない笑い声を大きくする。社長に同調し周囲で笑い声をあげるのはオークを始めとする魔族から近代的な武装を持った人間まで幅広い種族の揃った兵士たち。彼らもまた少女の苦しみを笑っていた。

 

そう、フォントエル社はまともな企業ではない。表向きはまっとうな商社であるが裏では数々の違法物資―――それこそ麻薬から武器、そして奴隷娼婦にする為の女までの輸出入を行うブラック企業の中のブラック企業だ。そして扇情的な女が率いる傭兵たちは提携先のある組織から派遣された社長一派への護衛兼敵対者への刺客。もうここまで行くとありふれた話ではあるがフォントエルの首脳部は人類の裏切り者としか言いようのない。

 

風間玲奈や彼女の仲間達の不幸は彼らの存在やその戦力の規模について全く知らなかったことだ。彼女達は別の任務から帰投中に彼らの犯罪行為の一端を目撃し、持ち前の正義感からそれを止めようとした。しかし増援に駆け付けたリーダー格の女は、正確には彼女の使う奇妙なアイテムにより変身した女は強く、まだ新米対魔忍にすぎない玲奈達は敗北を喫した。何とか自身が囮となり仲間二人は逃がしたものの玲奈はその後力や術を抑制する薬を打たれこの屋敷に運び込まれたのだ。

 

「さ~てそろそろ儂も楽しむとしよう。君たちも護衛を除いた半数はもうすぐ到着する奴隷たちで楽しんでくるといい。儂のコレクションを特別に解放しよう!」

 

「ひゃっほう!流石旦那様器が広い!俺たちの扱い方を分かってるう!」

 

「おお、すげえこのモニターで奴隷の様子が確認できるのか。この子いいな。殴ったらいい悲鳴だしそう」

 

悪漢たちは社長の提案にはしゃぎだす。およそ虐げられる人間への共感などまるでない冷酷な者達しかこの場にはいなかった。囚われの身にある玲奈を除いては。

 

「儂はおニューの奴隷で楽しむとしようぐふふ……そうだ、君はそっちの趣味はないのかね?よかったら今回の礼に後で貸してもいいが」

 

「ご心配なく。私は15歳以下の西洋系美少年専門なので」

 

「そうか…君のような趣味の顧客の為にもっと扱う品物の幅を広げるべきかもしれんな」

 

商売人の鏡でも気取っているのか社長は思案しているかのような様子を見せる。しかし彼の頭の中は若く可憐な玲奈を汚すという欲望のみで締められているようだ。すぐに相好を崩し玲奈の顔を使う。

 

「儂のようなおっさんに汚されるのはどうだ!感想を述べい!」

 

「お願い、です……んう…私はどうなってもいいから捕まった人ったちは、あの人たちだけは助けてあげてください……」

 

「駄目に決まってるだろう!あの商品たちを揃えるのにいくらかかかったと思う!全く最近の若い者は資本主義を舐めているのかね…まあいい。儂の事業拡大記念に楽しませてもらおう。ぐわーっはっはっはっ!」

 

優しさや正義感から奴隷となった人々の開放を懇願する玲奈をよそに彼女の胸を揉みしだく社長は笑う。ああ、何という事だろうか。正義感から行った行為が原因で彼女は悪漢の手で純潔を失ってしまうのか。そして仲間も神も彼女を救うことなくその身に決定的な蹂躙を成されるというのか。彼女を救う者は誰もいないのか!

 

「はーっはーっは…は!?」

 

「っ!?何奴!」

 

その瞬間響いたのは轟音。突然堅牢なはずの邸宅の壁が爆破されたかのように粉々に砕け散ったのだ。瓦礫があたり一面に転がると共に土煙が立ち上る。

 

「な、なんだ!対魔忍の襲撃か!?」

 

「おさがりを」

 

動揺する社長を女が庇いたて、緩み切っていたはずの兵士たちが一瞬で戦闘状態に入る。魔法陣から原始的な近接武装に、銃器。その全てが土煙の中にいるアンノウンに向けられている。金属のブーツの音がして突入してきた人影が一歩踏み出す。確かな実力によるオーラ故か同時に土煙が晴れていった。

 

「貴様何者だ。対魔忍か米連か」

 

「ふふふ私の名は……」

 

自身も獲物を構えながら誰何する女の視線の先で土煙が完全に晴れ、その中にいた仮面の戦士が見えた。

 

そう、この悪徳の家に突入したのは仮面の戦士だ。彼のボディは黒いスーツの上を鮮やかな緑のフレームと機械に見える金属部分で覆い、エメラルドの如き緑のマントを羽織っている。さらに特徴的なのは頭部。黄色い昆虫のような複眼と額からに頭頂部にかけて人間の脳みそを模したエングレーブが施されている。およそ奇怪なものにあふれかえったこのご時世においても強烈な印象を残す姿であった。

 

「私の名前は仮面ライダーブレン。優秀で誠実で――――仲間思いの仮面ライダーです!」

 

男にしては高い声で仮面の戦士が告げた。彼の名前は仮面ライダーブレン。600の頭脳を持つ戦士、仮面ライダーブレンなのだ。

 

 

 

 

先程まで悪徳の宴の会場と化していた邸宅はブレンの突入により熾烈な戦闘?の場になっていた。最早魔族や兵士たちは彼を倒す事しか考えていない。いつの間にかフォントエル社の社長も白目を剥いて転がっているがもはや誰も気にしていない。それほどまでにブレンの存在感は強烈だった。

 

玲奈っ!大丈夫!?」

 

「花梨に愛子!無事だったんだ!」

 

ボロボロになりながらも玲奈を助けにブレンの後を追って駆けつけてきたのは花梨と愛子の二人。再開を悦びつつも玲奈の拘束を外していく。

 

「二人こそ無事でよかったよ……あのブレンて人が助けてくれたの?」

 

「ああうん…」

 

あれからブレンのやった事は簡単だ。叩きのめした魔族からの情報とタブレットPCを介したハッキングで玲奈の連れ去られた場所を瞬時に特定。そうすると特に準備もなくバイクを駆ってこの邸宅に突撃したのだ。その間移動時間を含めて僅か数分。感心よりも困惑の勝るほどの早業であった。

 

「そうだ!あのブレンて人を助けないと!一人じゃあの数を相手するのは無理だよ!!」

 

「あ~それは大丈夫だと思うよ。だってあの人」

 

「雑に強いもんね」

 

何故か花梨と愛子がため息をつく中ドカンと、またしてもオークが壁を巻き込んで外へ消えていった。

 

「ヘヤ~ホホホ!やはり私はロイミュードとしてだけでなく仮面ライダーとしても強靭で優秀で無敵の存在!フウ~ッ!」

 

およそヒーローのそれではない奇声を上げながらブレンが縦横無尽に駆け抜ける。そう、彼は本当に何というか雑に強かった。彼の動きはおよそ武術などの訓練を受けたとは思えないチグハグな物。されど彼の攻撃はどこか他所から持ってきたようなデザインの眼鏡型ブレードは、拳や蹴りは、速く強く悪漢たちをぶっ叩き倒していく。その威力は急遽彼らが繰り出した装甲兵器も数発で事故った車のようにスクラップにする程だ。対魔忍の攻撃と違い何処か不条理ですらあるそれが振るわれる様はまるで現実と思えない。そしてさらに悪漢たちを恐れさせたのが―――

 

「ライダ~~……毒手ぅぅぅ! ウェヒヒヒヒヒ! 」

 

彼の手から滴り落ちる液体を纏った毒手だ。今どき毒手である。

 

「私の体内には999種類の毒素がある!それを喰らったらたとえ魔族であろうと、ひとたまりもありませんね~」

 

「きゅ、999種類!?多すぎて自分でもどんな毒があるか忘れあごっ!!」

 

あらゆる意味で危険すぎるブレンの毒手に怯える彼らはまた一人と倒されていく。ブレンの毒は恐ろしく強く、譬え装甲越しだろうと飛沫のみだろうと容赦なくその身を侵食し昏倒させる。恐ろしいほどに強力な毒だった。

 

「おまけのポイズンハンカチーフ!セイヤッ」

 

「うわああああああ…あへっ」

 

「のほぉ……」

 

さらにブレンは毒液にべったりと浸したハンカチを恐ろしい腕力で投げつけてくる。粘ついたハンカチが体に付着したら最後。彼らもまた悲惨な末路を辿るのだ。

 

「「「…………」」」

 

その恐るべき光景に対魔忍の少女三人は無言。仮面ライダーブレンのやりたい放題の戦い方はまさに不条理の化身。これは適切な形容ではないかもしれないが、まさに作風が変わったようであった。

 

「く!ふざけるな!」

 

 

 

先程玲奈たちを倒した際に使用したのと同じ、昆虫を模した外骨格を装備した悪漢たちのリーダー格の女が甲殻生物の鋏を模したハサミで切りかかる。

 

「貴様は対魔忍でもこの国の人間でもないだろう!何で人間の味方をする?」

 

「キ~ッ!あなたは何という愚かな勘違いを!私は人間の味方をする気はありませんよ!アッタタッタタタ!!」

 

「何ぃ!ぐわっ!!」

 

ブレンはハサミ攻撃をこれまた雑な扱いのブレードでバシバシ叩いて跳ね返しそのまま外骨格の白いボディを中国拳法っぽい動きで叩きまくる。頑丈そうな外骨格にひびが入った。

 

「人間は醜く愚かで…愛らしい存在です。されど彼女達の友情もロイミュードである私にとって共感でき、尊重すべきものである。だから今日ここに来ましたし、それに…あなた達のような愚劣な存在に私たちが負けたと考えると我慢ならないんですよ!」

 

一際強力な緑色のエネルギーを纏った蹴りが女の外骨格を吹き飛ばす。ゴロゴロと転がる女をよそに彼は必殺技の予備動作をとる。

 

「故にあなたは私の一撃を喰らうべきです!トウッ!!」

 

『ヒッサーツ!フルスロットル!!』

 

ブレンは一気に飛び上がる。彼のボディの一部には莫大なエネルギーが集中していく。

 

「ブレン、ドロォップ!!」

 

「させるかあああああ!!」

 

対する女は体勢を立て直しこちらもエネルギーを集中させたハサミでブレンを継撃しようとする。それは歴戦の傭兵である女だからこそできるカウンターの一撃。混乱の中でも飛び蹴りを仕掛けてくるブレンを狙いすました一撃は落下の勢いをも利用して彼を断ち切る―――――

 

「と、見せかけて」

 

「えっ」

 

事はなかった。ブレンは飛び蹴りを仕掛けることなく女の目前に着地していた。そして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ブレンヘッドクラッシャー!!!」

 

「うぎゃああああああああああああああああ!!!」

 

必殺の頭突きを受けて外骨格が爆散し女が排出される。よってこの場に立つのは仮面ライダーブレン一人。彼の完全勝利であるのは明らかだ。

 

「やはり私は優秀で有能で有力な存在。ウェヒヒイヒヒ!!」

 

……なんかその結果に納得いかないのはまあおいとこう。

 

「く、くくくこれほどまでに強い仲間が来るとは想定外……しかし私を殺さないのは良い判断だったな」

 

「っ!あいつまだ!」

 

ボロボロになりながらもブレンに倒された女は立ち上がる。その顔には屈辱と不敵な笑み。

 

「しかし先程まで言ってはいなかったが私のバイタルサインは奴隷共の首輪に仕掛けられた爆薬とリンクしている。この意味が分かるな?」

 

「な、なんてことを!!?」

 

女の言う意味は一つ。それはすなわち奴隷たちの命を人質にしているという事。彼女はいったいどんな理不尽をこれから彼らに

 

「それなら解除しておきました」

 

「「「「えっ」」」」」

 

「あんな明確に、明晰に明瞭に信号が出てたらいやでもわかりますよ。あ、それとあなたの個人情報を調べた所元対魔忍のようなので、ある遅効性の毒を送り込んでおきましたウフフ」

 

「遅効性の、毒?」

 

「ええそれはずばり……」

 

恐らく仮面の下はどや顔なのだろう。腕を組んでブレンは自信満々に告げた。

 

対魔忍には有効極まりない、彼が使ったある毒を。

 

「触れられるだけで快楽を感じる、媚毒ですウェヒヒヒヒ」

 

 

 

―――――――――それからの光景はこれまでにも増して不条理だった。ブレンはこれまで通り奇怪な笑い声をあげながら「んほおおおおおおおおおおおお!!まるで千本のミミズみたいなのおおおおおお!!!」だの「昇天しちゃうかららめえええええええええええ!!」だの叫ぶ女を刷毛でくすぐり倒し、彼女たちの組織の活動に関する一切の情報を抜き取り対魔忍たちに与えると、いつの間にか呼んだのか対魔忍の増援が来ていることを告げ「夕飯の準備があるので」と何事もなかったかのようにバイクで帰っていった。あまりの事に花梨と愛子はチベットスナギツネのような顔をしている。

 

「…あ、増援部隊が奴隷にされた人たちを保護したって。こっちにも増援があと3分で来るらしいよ」

 

「…それはよかった。なんか今日は色々疲れたね。かえって報告済ませたらもうすぐ寝よ」

 

「だね」

 

もうあの不条理存の事は彼が恩人という事を差し引いても考えたくない。今はただ早く風呂に入って寝たかった。それは花梨と愛子二人の共通意見である。

 

だが玲奈は違うようだ。

 

「ん?どうしたの玲奈」

 

玲奈の様子は二人とは違う。お嬢様全とした顔立ちはほのかに赤らみ目は僅かにうるんでいる。その姿はまるで、いや恋する乙女そのものである。

 

「かっこいいブレン様……またお会いしたいなあ……」

 

「え゛っ!あれに惚れるとか嘘でしょ玲奈ぁ!?あんたラノベのチョロインか何か!!?」

 

「玲奈ォ!それはやめルォ!!」

 

……彼女たちの本当の受難は始まったばかりなのかもしれない。

 

 

 

そんな彼女たちをよそにブレンは東京の街をバイクに乗り駆けていく。彼がこの世界に来たのは数か月前。あの『無』との闘いの直後突如足元に穴が開き、落ちていった先がこの世界だった。あまりに唐突な異世界転移に流石の彼も戸惑ったもののすぐに元の世界にいるであろうハート達の元へ帰る為の活動を始めた。ある時は魔族相手に情報収集(物理)をしたり、優れた頭脳を活かしてIT関係の仕事で金を稼いだり、またある時は地元の食事に舌鼓をうったり自由闊達に活動していた。

 

(今日はとんだ無駄足をしていしまいました。しかしハート、それにメディック。あなた達もおそらく私と同じことをしたでしょう)

 

友情を大切にする――――それはブレン達ロイミュードと人間の数少ない共通点の一つだ。例え人間たちであろうとも友情があの忌々しい蛮野のような卑しい悪意で壊れるのは許せない。その思いは彼らロイミュードの中に共通した思いだ。

 

(あのような悪党はこの世界にも多すぎる。この私の毒で可能な限り滅ぼして見せましょう。)

 

それはかつて人間たちと懸命に戦った彼の譲れない誇りである。例え世界も時代も異なろうと人間たちが悪意により堕落することも敗北することも許せないことだ。

 

(そして、必ずやあなたの元へ帰って見せる!待っててくださいねハート!!)

 

「ヒョホホホホホ!あ」

 

「あ」

 

風に吹かれて飛んでいくのは彼が懐に忍ばせていたハンカチ。ふらふらと舞い上がったそれが堕ちていくのは―――――街中にたむろする難民たちの起こした焚火の中。

 

「あ、なんか落ちた。まあいいか」

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!゛!゛!゛私゛の゛ハ゛ン゛カ゛チ゛ぎ゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!゛!゛!゛!゛!゛」

 

 

 

……ブレンの前途もまた、対魔忍たちのように多難なようだ。

 




何が酷いってブレンの戦闘描写は原作のままなんですよね。
ブレンよ、お前は本当になんなんだ。


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