クラネルさんちの今日のご飯   作:イベリ

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遅れましたごめんなさい。バイト忙し、ゲームやって寝る生活してたらできてませんでした。


アイズ・ヴァレンタイン!

「────んむぅ…?」

 

日差しに叩き起されて、隣にいる真っ白な少年をぎゅっと抱きしめる。匂いを嗅いで、体温を感じて、二度寝の体制に入る。

 

昨日は、最近流行りのゲームをして夜ふかししたのだ。まだまだ眠い。

 

ふと、朝日に照らされる卓上カレンダーを眺める。そして、今日の日付を見つけて、思いっきり飛び起きた。

 

(───マズイ…!?)

 

今日は2月14日。バレンタインデー。恋に恋する乙女たちの勝負の日なのだ。抱きしめていたベルの匂いが染み付いたシーツを投げ捨てる。というか、ベルがいるはずない。料理人としても有名な彼であるが、パティシエとしての腕も一流のベルは、この時期に出張式の屋台でチョコレート菓子を従業員と共に売り歩いている。

 

ベルの作る、ザッハトルテは格別に美味しい。外側のチョコレートの絶妙な甘さと、中の生地に練り込まれたチョコレートのビターな香り。そして、ほんのりと感じるココアもいいアクセントを効かせている。口溶けも生地特有のパサつきもなく、しっとりとした舌触りはもはや至高の域に到達していると言っていいだろう。

 

(──ハッ!いけない、ベルのお菓子を食べた過ぎて、現実逃避してた…!)

 

アイズ、妄想から帰還。

 

毎年、アイズはベルにチョコを送っているのだが、今年は初めて手作りに挑戦しようと思っていたから、昨日作ろうとしていたのだ。

 

しかし、その準備を何もしていない。ゲームをずっとしてたから。

 

正月、リヴェリアにたるんでいると言われたが、これでは本当に弛みきっている。

 

このままでは、ベルの彼女としての沽券に関わる。

 

「ハッ、そうだ…!」

 

アイズは特急でよそ行きの服に着替え、全速力で駆け出した。

 

 

 

「────で、なんで私?もっとこう…いたんじゃ?」

 

「私の知り合いで、女子力を持ってるの、リリだけ。リヴェリアは頼ったら必ずげんこつと説教がセットで付いてくる。何も言わずに手伝ってくれるのは、リリだけ。」

 

「それが本音かこの女…!」

 

不満そうに腕を組み、面倒くさそうにアイズを眺め、少女は何度目かのため息をこぼす。朝っぱらからホームに乗り込まれ、半分拉致のような形でアイズの家に連れ込まれたのだ。

 

アストレア・ファミリア所属、短期間でレベル5まで上り詰めた異例のルーキー、リリルカ・アーデ。二つ名を「灰被り(シンデレラ)」、小さな体からは想像もできないほどの怪力と、知略に長け、状況を俯瞰する力はフィンにも匹敵すると言われる。それと同時に彼女は、名のある冒険者でありながら普通の女の子のように当たり前のおしゃれをして、料理を作る家庭的な面も持ち合わせている。雑誌に取り上げられたりもする程に、料理上手だ。

 

ちなみに、アイズにもその手の話が来たことはあったが、お洒落のこだわりもベルが好きそうという一点に絞られるため、参考にならず只々ベルについての取材になったことがあった。

 

閑話休題

 

アイズがリリを頼ったのは、こういうことだ。

 

「……いや…レフィーヤは?」

 

「レフィーヤは今ベルの手伝い…春姫と、売り子してる。」

 

「……そういえば、今日団長達が変装して出かけたけど…どんだけ食べたいんですか…」

 

「ベルの、お菓子は、至高。」

 

「知ってますけど…ちょ、そんなガチな目で見ないでください!怖い怖い!わかったわかりました!手伝いますから!?」

 

信じられないものを見るように睨みつけるアイズに普通にブルったリリは、無理矢理にアイズの話を承諾した。

 

「んで…何作るんです?」

 

「ガトーショコラ…」

 

「ん…まぁ、それなら滅多なことなきゃ失敗しませんし…わかりました、キッチン貸してください。」

 

まぁ妥当な選択だなぁ、なんて思いながら、キッチンに入ると、リリはその設備に圧倒された。

 

「うわっ…すごい設備!オーブンとか全部最高のものじゃないですか!さすがベルの家…変に簡単にしないで、本格的なの作りますよ!ついでに私も作ります!」

 

「う、うん…ここはベルに任せてるから全然わからないけど…」

 

設備の良さに若干興奮しながら、リリはエプロンを腰に巻いた。

 

「じゃ、初めに…チョコは?」

 

「これ…」

 

「うお、スゴ…このチョコデメテル様の印付いてるやつ…」

 

「いつも食べてるやつだけど…?」

 

「……もっとベルに感謝したほうがいいですよ。これ、入手するの大変なんで。んじゃ、これを割って入れます。」

 

「わかった。」

 

食材に対する妥協が一切ないベルのストイックさに苦笑いしつつ、2人はデメテル印のチョコをパキパキと割っていく。

 

「そしたら、生クリームを鍋に入れて火にかけます。で、沸騰してきたらここにチョコレートを入れます、滑らかになるまで混ぜてください。」

 

「うん。」

 

カシャカシャと慣れない手付きで混ぜるアイズと、慣れた手付きで軽く混ぜるリリ。見た目と実年齢は姉と妹だが中身はリリの方がよほど成熟している。対象的なこの二人だが、その凸凹加減が絶妙なのか、意外と仲が良かったりする。

 

「そういえば、ベルのお店落ち着きました?なんかこの間行ったらエルフの客で埋め尽くされてたんですけど。」

 

「あ、それリヴェリアのせい。最近はもうリヴェリアのサイン外に出してないけど、常連が増えたって喜んでた。昼時過ぎに行くと比較的空いてる。それでも、まぁまぁ混んでる。」

 

「味も一級だし、そんなに高くないから通いやすいと…最強か?それにしても…あの種族同族意識おかしいですよね。」

 

「言えてる。アリシアとかはマシな方。レフィーヤはたまにヤバい、目が据わってる時あるから。リューさんも、強い?」

 

「あの人は…ん~、エルフの態度嫌いなくせにそういうのは大切にするんで、よくわからないですね。」

 

「リューさんはリヴェリアを見ても、そんなに態度変わらないけど…?リヴェリアも、彼女と話すときはそれほど疲れないって言ってた。」

 

「あぁ、あれ帰った後で『あの態度は不敬ではなかったでしょうか』とか落ち込んでるんでしっかりあっち側です。」

 

「お約束…?」

 

「だいたいこんな感じですよ。他と対して変わりませんから…おっ、そろそろいいですね、次に移ります。卵、グラニュー糖をボールに入れて泡立てます。んで、このままムースっぽくなるまで混ぜ続けます。」

 

「了解」

 

混ぜることに慣れてきたアイズは、段々とその手を早くしていき、最終的にミキサーと同じ速度まで上げて、速攻で十分な状態まで仕上げた。

 

「だいぶ、慣れてきましたね。」

 

「剣を振るのと同じ。」

 

「いや全然違います。」

 

雑談を交えながら、二人はテンポよく調理を進めていく。

 

「そしたら、この卵を3回に分けて加えていく。それが終わったら、型に流し入れて平にならして、気泡を抜くために軽くテーブルに叩きつける……軽く!ですからね?」

 

「わ、わかってる…」

 

人類最強の対をなすこの少女は、いささか力加減が下手の域を超えている。強すぎる恩恵の弊害なのだが、正直彼女のものは無視できないレベルだ。

 

ブルッブル震えながら、アイズはなんとか加減をして気泡を抜くことができた。

 

「で、できた…」

 

「料理をしていてヒヤヒヤしたの、初めてんなんですけど。んまぁ、此処まで来たらほぼ完成です、後はオーブンに任せればいいんでね。バットにお湯を2,3cm張って湯煎焼きにします。だいたい一時間でできますから、後は待つだけですね。」

 

「ふぅ…終わった…ありがとう、リリ…すごく助かった。」

 

「いいえ、構いません。貴女にも、ベルにも恩がありますし。この程度なら…けど、アポは取ってください。私じゃなかったら派閥間で問題になってますから。」

 

「つまり、リリはいくら攫ってもいい…?」

 

「この女…!変なところで頭回さなくていいんです!」

 

茶を飲みながら、焼き上がりを待つその時間も、絶えず会話は続けられ、なんだかんだこの二人の会話はベルの話に落ち着く。

 

「───ベルはなんだかんだ女の子に甘い。」

 

「それは…男の性でしょう?ベルに限ったことじゃない…ハズです。」

 

「違う。ベルは特別甘い。春姫の雇用だって…何ならリリを拾ったのもベルだし。」

 

「んぁ~…まぁ、確かに…それは言えてますね。普通見ず知らずの汚い小人族なんて拾いませんしね。」

 

「びっくりした、家に運び込まれた時、死にそうなくらいボロボロだった。起きてからも、ずっと泣いてたし…あのリリが、こんなに強くなるなんて思わなかった。」

 

「もう4年も前の話でしょう?止めてください…でも、あのとき食べたベルのスープの味、まだ覚えてます。」

 

一人ぼっちで、ズキズキ痛む体を引きずりながら、なんとか辿り着いた場所が、修行時代のベルの帰り道だったのだ。傷だらけの体を気遣って、優しい味のスープを作ってくれた。その時は、久しぶりに人並みの暖かさを感じて、子供のように泣きじゃくったものだ。

 

まぁ、あの時は名実ともに子供だったのだが。

 

そうやって、リリは昔の自分を自嘲した。

 

「ま、今はとんでもなく充実してますし、何とも思いませんけど……これでも、感謝してるんですよ?」

 

「…別に、私は何もしてないよ?」

 

「いいえ、貴女はそばに居てくれるだけで抑止力なんですよ。」

 

「兵器みたいに言わないで……」

 

「ふふ、ほら拗ねなでください。」

 

リリは、悪戯っぽく笑ってから優しくアイズの額を小突いた。その時と同時に、焼き上がりのチンッという音がリビングに響いた。

 

「どうやら、焼けたみたいですね。オーブンから取り出したら、1日冷やしておきます。」

 

「えっ…」

 

リリの発言に絶望したアイズだったが、リリはイタズラが成功した子供のように笑って、懐からある物を取り出した。

 

「────と、それじゃあ意味が無いので…くふっ…調理用の魔剣をつかって冷まします…ふふっくっ…調理方法確認したなら、そこの欠点に気づくと思うんですけどね…!」

 

やっぱり丸投げしてたなぁ、なんて思いながら、これくらいのからかいは許されるだろうと、リリは笑った。

 

「も、もうっ…!からかわないで!」

 

「はいはい、後はもう完成。これで十分冷やして、型から抜き取れば…完成です!」

 

「おお…!初めて、こんなに綺麗にできたかもしれない!」

 

パチパチとアイズが手を叩き、初めて自分の意志で作った料理に、感動した

 

──特別メニュー──

 

リリルカ直伝、シットリ食感のガトーショコラ。

 

 

 

「リリがいなきゃ…絶対できなかった…」

 

「いや、そんな……ありえなくも無さそうですね…貴女食べ専ですし。」

 

「私は、ベルの毒味役。」

 

「ベルに必要ないでしょう必要ないでしょうその役目…だから最近幸せ太りしてきたって言われるんですよ。」

 

「太って!!ない!!」

 

「え~?ほんとぉですかぁ?」

 

リリが脇腹を突けば、幾分ふくよかになった気がすることを自覚しているアイズは、冷や汗しか流れなかった。

 

 

そうしていると、ガチャリと、扉が開く音が聞こえた。

 

どうやら、ベルが帰ってきたようだ。

 

「ただいまー!お客さん来てるのー…って、リリ!久しぶり!最近レベル上がったんだよね!おめでとう!お祝いしようと思ってたんだけど、今日のほうがいい?」

 

「おかえりなさい、ほんと、久しぶりですね。有り難いですけど、今日はやめておきます。お宅のお姫様拗ねちゃいますよ?」

 

「す、拗ねない!それくらい、家でやればいい!」

 

「おやぁ?なら、お言葉に甘えましょうかね。来週の真ん中辺りにしていただけると嬉しいです!」

 

「ふふ、わかった。リリの好きな肉料理用意しとくね。」

 

「よっしゃあ!」

 

いっその事少年のようにガッツポーズを決めたリリは、非常にいい笑顔で「約束ですからね!」と言質をとった。

そうしてパーティーの献立をベルが考えていると、机の上にあるガトーショコラに気がついた。

 

「ん…ガトーショコラ?しかも2ホールも…リリが作ったの?いや、にしては片方…少し不慣れに感じるけど?」

 

「流石、本職なだけありますね。片方は、貴方のお姫様が作ったんです。」

 

「えっ、アイズが!?」

 

「な、なに…そんなに、変、かな…?」

 

ポカンとしていたベルは、すぐに再起動。今日が何の日かを思い出して、目に涙を溜めた。

 

「うぅ…アイズが補助有りでだけどお菓子を作れるようになってるなんて…僕は感動したよ…いつも1日お手伝い券とか、何でも言うこと聞く券だったのに…今年はこんなサプライズがあるなんて…!僕は感動した!!」

 

「ベル、それは言わない約束…!」

 

「…子供じゃないんですから…ベルも甘やかしすぎです。だからいつまでも精神的成長が追いつかないんですよ?」

 

「やっぱり僕甘やかし過ぎかな…?」

 

「そ、そんなことない!」

 

なんだか不穏な方向に話が変わった雰囲気を悟ったアイズは、必死に抵抗。もともとベルにそのつもりはないのだが、なんとなく面白そうだからリリの話に乗っているに過ぎない。リリもその甘い空気を悟りながら、このバカップルはどうしようもないんだな、窓から夕日が沈む山向こうを眺めた。

 

「ま、とにかく…アイズからの気持ちですから。頑張ってましたよ、彼女。」

 

「言われなくもわかるよ。アイズ、本当に頑張ってくれたんだろうなって。」

 

十分にからかったリリは、念の為のフォローを入れたが、やはり必要なかったかと、やれやれと首を竦めた。

 

「じゃ、私は帰りますね。」

 

「うん、リリありがとう。」

 

「いいえ、どういたしまして。」

 

そうして笑って、ベルにタッパーに詰めてもらったガトーショコラを受け取る。

それ、誰用に作ったの?と、目で語るリリは、若干うんざりしたようにため息を吐いた。

 

「残念ですけど、貴方の想像しているようなことはありません。」

 

「んー?僕は何も言ってないよ?」

 

「目が語ってんですよ!お邪魔しました!」

 

そうして、タッパーをひったくるようにして、リリは帰っていった。

 

「全く、素直じゃないねぇアイズ?」

 

「ほんと、此処に来たときから、その気だったくせに…」

 

昔の素直な反応をするリリを思い出して、いつからあんなにツンツンしてしまうようになってしまったのか、なんてことを、笑いながら二人は思い出した。

 

「じゃあ、そろそろ貰おうかな?」

 

「う、うん…」

 

スーハーと息を吸ったアイズは、緊張をほぐすように、自然な笑顔を浮かべた。

 

「これは、その…感謝の気持。いつも、ありがとう、ベル。」

 

「……うん、ありがとうアイズ。ありがたく頂くね。」

 

「うん…!」

 

「じゃ、いただきます。」

 

アイズは嬉しそうに笑いかけ、早く食べてみてというワクワクした顔をして、ベルを見つめている。

ベルはそのアイズに、犬を連想して、無意識のうちに頭を撫で回して、一人で満足。ようやっと目の前のケーキに手を付ける。

 

ちなみにアイズは、撫でられたことに照れてそれどころではなかったが、すぐに気を取り戻してワクワクした視線を再度向けた。

 

ひとくち食べたベルは、驚いた。

 

「──美味しい!美味しいよアイズ!」

 

「ほ、ほんと!?本当に!」

 

「ほんとほんと!今まで食べたガトーショコラの中で一番美味しい!口当たりはしっとりしてて優しいし、甘さもしつこくない。口の中でサッと溶けて長引かない味もいい!うん、本当に美味しいよ!」

 

アイズはベルの言葉に、言い過ぎだと思わないこともなかったが、素直に言葉を受け取って、嬉しそうに体をくねらせた。

 

ベルは、なんだか感慨深いものと同時に、こうしてアイズとお菓子を作ったリリを羨んだが、女の子同士の語らいだって必要だろうと、ちょっとの嫉妬心を抑えた。

 

「あー…アイズ本当にありがとうね!」

 

感極まったように抱きついて、感謝の気持を体いっぱいに使って表現した。口下手なアイズには、こうして伝えるほうがより伝わるのだ。

 

そこで、アイズは思い出した。ベルが来る前に伝授された、悩殺技術とやらを。

 

(確か…こうして…上目遣い…?)

 

火照った頬を隠すように、ベルの胸に顔を埋め込んで、リリに教えてもらった技術を総動員した。

 

『いいですか?抱きついたら、上目遣いでこう言ってやりなさい!』

 

 

 

 

「ベル、大好き。」

 

 

 

 

 

そうして、ベルはその可愛いの権化、女神も羨む美貌を持つ少女の上目遣いで、無事気絶した。

 

気絶する寸前、どこかで、いたずら好きのシンデレラが笑った気がした。




おまけ

─シンデレラ─

「ふう…仕事は相変わらず多いし、今日はティオネの圧が特にやばかったなぁ…」

凝った肩を回しながら、フィンは紙袋パンパンのチョコを眺めて、深い溜め息を吐いた。

まさかアラフォーにして、ここまでモテるようになるとは思わなかったのもあるが、何よりも、最近は気になる女性が不誠実とは思いながらも三人もいるのだ。

「…まさか、僕がハーレムを意識するなんて思わなかった…」

正直、この年にして未経験であるフィンは、これ大丈夫か?と自分に疑問を持たなかったわけではないが、仕方ない。これも恩恵の副作用だと割り切ることにした。

そうして部屋に戻れば、机に見慣れない物が置いてあった。

「ん?これは…ガトーショコラ?」

暗殺か?と周囲を疑ったが今更自分に効く毒が存在するとも思えず、その可能性は排除する。しかし、部屋が荒らされた形跡もなければ、本当にこれを置きに来ただけのようだった。

そうして、机に近づけば、あぁ、と納得した。

紙切れの端っこに、見慣れた筆跡で雑にメッセージが残されていた。


『義理!ですから!』


フィンは、思わず笑ってしまった。なんて可愛いことをしてくれるんだろうかと。

「───全く、素直じゃないね。」

仮にも同盟派閥とはいえ、団長室に無断で忍び込まれるとは思わなかったが、まぁこの際どうでもいい。

ありがたく頂くことにした。
優雅に紅茶を入れてから、乾いた喉を潤すようにまず一口。

そして、ガトーショコラを丁寧にフォークで割って、口に運ぶ。

「うん…紅茶によく合う。」

寝る前にこれは良くないのだが、まぁ今日は特別だ。この美味いチョコに免じて、たまには夜ふかしでもしようか。

「美味いよ、リリ───どうせなら、一緒にどうかな?」

窓の外に投げるように声かければ、がたっと窓枠が揺れて、気まずそうに犯人が出てきた。

「…これだから上位冒険者は…その、すみません。勝手に入って…」

「いいさ、君と僕の仲だ。いつでも来ていいと言った手前、特に言うことはないよ。」

「ほんと…その王子様ムーブ、癪に障ります…!」

「なら、君は僕じゃなく、()が好みか?」

そうやって、いつもより強気に囁やけば、リリは顔を少し赤くして、俯いた。
どうやら正解だったらしく、フィンは慈しむようにリリの髪を梳いた。

「どうかな?今ならお茶もついてる。お得だろう?」

「……もちろん、タダですよね?」

「あぁ、もちろん。」

「じゃあ、そのサービス受けてあげます!存分に私を楽しませてください!あぁ、それと、お返しは三倍でお願いしますね?」

「おっと、これはハードルが高いね…お姫様(シンデレラ)は何をご所望かな?」

「んー…給料三ヶ月分で構いませんよ?」

「……あれ、これ覚悟決めなきゃいけない感じかな?」

「さぁ、ソレは…あなた次第ですけどね?」

「お、お手柔らかに頼むよ…」

「ふふ、お互い様に、ね?」

そうして、リリは慣れた手付きで部屋の鍵を閉めた。

次回は…

  • 寝正月!
  • 実家回っておせちを喰らう!
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