ダンジョンでサーヴァントに出会うのは間違ってるでしょう!?   作:夕鶴

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(´・ω・`)お久しぶりです。


第13話④

 〆切が……〆切が近い……!!

 

 開幕早々焦りで顔面蒼白、パラケルススもどきことキャスターです。

 現在私はレベル5冒険者の腕が腱鞘炎になりそうな勢いで筆を走らせ、魔導書を執筆しています。

 机の上には万能薬や回復薬、気付け薬に眠気覚ましと様々な銘柄の空き瓶。そして額や肩、首、肘などいたるところに冷湿布を貼りながらのデスマーチ。

 ダンジョン探索に赴いたセイバーはじめ他の面々程ではないとは言え、二日酔いの頭にコレは効く。

 

 

 ──そもそも何故こんな修羅場った状況かと言うと、ことの始まりは数時間前にまで遡ります。

 

 一巻完結飲み会の翌早朝にセイバーとランサーが出掛けるのを見送り、アーチャーとバーサーカーに財布を託した後、さぁもう一眠りするかと寝台を目指していた私は胃液と一緒に魂も吐き出したような間抜け顔のアヴェンジャーとリビングで鉢合わせました。

 余りに哀れだったので二日酔いに効く薬でも調合してあげようかと声を掛けたところ、怪訝な顔をするアヴェンジャー。

 

『それはありがたいんですけどねぇ。キャスターさぁ、こないだフレイヤ様に魔導書せっつかれてなかったか?』

『!?』

『あ、忘れてたって顔してやんのー! 知らねえぞー、フレイヤ様怒らせたらどんな目に遭うかわかったもんじゃねえぞー』

 

 イッヒッヒッ、と意地悪く笑う敬愛する主神には酔い覚まし用の水のエレメンタルシャワーをブチかまし、即座に工房にダッシュ。

 本棚をひっくり返してお目当ての本を開くとまぁものの見事に白紙。

『クソ!!』してる時の某新世界の神のようなリアクションで頭を抱える脳裏には、一ヶ月ほど前の女神からの依頼。

 

 

『ねぇパラケルスス? 前からお願いしていた魔導書、そろそろ納品してもらえる? 近い内に必要になりそうな予感があるの』

 

 

 面倒極まりないこの依頼を受けたのは、二年前。

 ランサーとオッタルによる決闘の被害損失を到底埋められず、夜逃げの準備を始めていた我々にもたらされたフレイヤ・ファミリアからの救済案。

 原作世界においても魔導書の価値は高かったものの、この世界においては我等が敬愛する騎士王(ポンコツ)の手により幾つかの貴重な魔道具や魔導書が破壊されています。恐らく女神フレイヤの手に渡るはずだった魔導書もその時失われたのでしょう。

 フレイヤ・ファミリアほどの巨大組織ならば幾つかのストックはありそうな気もしますが、そこは戦争遊戯に勝利しながら借金を背負った我等に便宜を図ってくれたのでしょうか。

 

 とにかく、私が魔導書作成を引き受けたことによりなんとか首の皮が繋がったのが二年前。

 作成に取り掛かり最初こそ真面目にやっていたものの、なんか途中で飽きてきて必要な素材や儀式の準備の名目で忘れかけてたのが昨日まで。

 納品〆切として提示されているのが明日というデスマーチ。

 

 

 ──術式とそれを書き込む魔術用インクや紙の準備は一年前に終了済み……! 後は最後まで書き切れば私の勝ちです……!

 

 

 正直、ダンまち世界で賢者と呼ばれるような人々がどうやって魔導書を作成してるかは知りません。こっちで師匠もいませんし。

 ですが、この身(パラケルスス)に存在するTYPE-MOON世界の魔術とこちらの世界の神秘溢れる素材、そしてフワッとしたダンまち世界の賢者たちの伝説をなんとなく紐解いたフィーリング手法はかつて一冊の魔導書を仕上げるに至りました(ライダーに勝手に読まれましたが)。

 

 

 ──今こそあの時の奇跡よ宿れ我が右腕!!

 

 腕が千切れんばかりの勢いでペンを走らせるのです私よ!!

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 

 

 

「ふおおおおあああああああ!!」

 

 

 

 

「あっ、タンマです──腕が攣りまし……」

 

 

 

 

「死ぬ……死んでしまいます……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かゆ……うま……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!?」

 

 気づけば夜は明け、リビングで目を覚ましました。

 

「魔導書は……良かった。ちゃんと完成させていましたか……」

 

 そして腕の中には確かな神秘を秘めた紙の束。

 目を通せばその魔力は失われてしまうので、文章を読むような真似はしませんが。

 寝落ちしながらも仕事をやり遂げた昨夜の自分を称えつつ、工房に戻る私。

 

「流石にこのまま渡すのは余りに不恰好というもの、装丁くらいはこしらえなければ……」

 

 幸い、製本の経験はそれなりにあります。

 

 私の工房に置いてある本棚に並ぶのはこちらの世界に来たばかりの頃、なんとか楽に金儲けができないかと探っていた時期に書いた娯楽小説達。物理保護用に一冊一冊私が魔術で強度を上げた無駄に妖しいオーラ溢れる手書きの品。

 Fateシリーズを含む数々の作品を記憶を頼りにかなり正確に再現したものですが、『盗作で金儲けはアウトじゃね?』という至極真っ当な意見により販売は中止されてしまいました。

 今では昔を懐かしむためにファミリアの同胞達が勝手に持ち出す程度ですが、その頃買った製本用の道具はまだ残っています。

 

 ページを揃えて、表紙と合わせて……よし、完成です。

 

 白い装丁をまとい、なんかそれっぽくなった魔導書に満足した私の背後で、工房の扉が勝手に開けられました。

 

「おーキャスター、仕事終わったぁ? お前さん、夏休みの宿題は最終日にやってたタイプだろ〜?」

「アヴェンジャー……貴方に言われると、何故か釈然としませんね……」

 

 ゲラゲラと笑う主神に少し眉をひそめつつ、私は入れ違いに工房を出ます。

 

「あん? どっか行くのか?」

「フレイヤ様へ魔導書を届けなくては……申し訳ありませんが、貴方に構っている暇はありません」

 

 まず一時間でも仮眠を取らなければ……流石に倒れます。その後は風呂に入って身支度を整えてフレイヤ・ファミリアに向かいましょう。

 

 あぁ、疲れた……まぁ今頃セイバーやランサーがレヴィスを倒している頃でしょう。 今後楽になるなら、今くらい頑張らなくては……。

 フラフラと工房を出た私は、寝室に向けて歩き出しました────。

 

 

 

 

 

 

 

「行っちまった。小説版プリヤ返しに来たんだが、まぁその辺に置いときゃいいか……」

 

 

 

 

 

 

 

 ────時は少し流れ、バベルのとある一室。

 

 贅を極めたような、それでいて下品さを感じさせない絶妙な調和が取れたそこで、私は恭しく跪きながら、一冊の書物を差し出していました。

 

「女神フレイヤよ……どうぞお納めください……」

「ちゃんと持ってきてくれて嬉しいわ、パラケルスス。なんの音沙汰もないから、ひょっとして忘れられてしまったのかしらと思ってたのよ?」

「ふっ……お戯れを……」

 

 もし今日来なければオッタルに取りに行かせるところだったわ、などと恐ろしいことを仰る女神に曖昧な笑みで返します。

 まぁ実際に忘れていたわけですが、私は『お戯れを』と言っただけで嘘はついていないのでセーフでしょう……。

 

 とは言えこれ以上ここにいて下手なことを言おうものなら、今も女神の側に控えている偉丈夫に何されるかわかったものではありませんので、早々に退室するとしましょう。

 タイマンでオッタルと殴り合えるのはウチのファミリアでもランサーか狂化中のバーサーカーくらいなものです。さわらぬ猪に祟りなし……。あっ、今不意にもの◯け姫見たくなりました……。

 

「それでは、依頼は果たしたということで……。私はこれで失礼します」

「えぇ、ありがとうパラケルスス」

 

 不意に目の前の女神が、あぁそうそう、と思い出したように口を開きます。

 

「先日現れた食人花のモンスターだけど、あの後何か進展はあったのかしら?」

「……いえ、我々もあの後忙しかったもので。フレイヤ様にお伝えできるような新しい情報は何も」

 

 嘘ではありません。飲み会の準備で忙しかったですし。原作知識は()()()、新しく得た情報ではありませんので。

 

「あらそうなの? そういえば、アルトリアとカルナが二人でダンジョンに出掛けたらしいけど、これは関係しているのかしら?」

「……さて、あの二人がどういう話の流れで迷宮に潜ったのか、私は聞いておりませんので、なんとも……」

 

 嘘ではありません。惰眠を貪るのに忙しかったですし。あのグータラセイバーを口下手なランサーがどうやって動かしたのか興味はありますが。まぁセイバーはランサーに甘いので、その辺でしょうけど。

 

 ……と言うか、やたら根掘り葉掘り聞いてきますねフレイヤ様。

 正直、ランサーやアヴェンジャーならともかく我々は神に嘘つけないのであんまり長話したくないのですが……。

 コレは完全に我らの私欲ですが、原作知識が流出することで、未来の英雄候補(ベル・クラネル)にどんな悪影響が出るかわかったものじゃありませんし。

 

 ……一応ソード・オラトリアの事件の対抗策は色々動き始めてはいるので、許して欲しいのですが……。

 

 

 

 とは言え今のフレイヤ様の目はネズミを甚振る猫のように好奇心と嗜虐の光に輝いておられる。一体ナニがここまで彼女の興味を引いたのか…………あっ、そういえば。

 

 

「──念のため申し上げておきますと、ランサーとの契約に関して、我々は御身を疑ったことなど一度もございませんので」

 

 二年前の戦争遊戯、あれでランサーはフレイヤ様から怪物祭の治安を勝ち取りました。

 その上で今回の事件が起きたことで、自分が我々に疑われてると思っているのではないでしょうか。

 誇り高い彼女のことです。万が一にもそんな屈辱が無いよう、私にカマを掛けているのかも。

 

 

 

「……今の言葉に嘘は無いようね。良かったわ。万が一にもそんな疑いをかけられたら、私、少し怒ってしまっていたかも」

 

 私の言葉に美しき女神は、ほんの少し驚きを顔に浮かべた後、穏やかな笑みを浮かべました。

 

 

 ──あぁ、適当な思いつきでしたが、どうやら正解だったのでは? まったく、ランサーやアヴェンジャーの迂闊さのせいで私が尋問にあっているとは良い迷惑でs

 

 

 

 

「でも、どうして貴方達は怪物祭で事件が起きると思ったのかしら? ずっと気になっていたのよねぇ」

 

 やっべ。迂闊なのは私でした。

 

 イランこと言いました。完全に藪蛇突きました。どうしましょうコレ。助けてダ・ヴィンチちゃん。

 

 

 落ち着くのです、私。IQ53万の天才錬金術師ボディを信じなさい。はい深呼吸、ひっひっふー。

 ほぉら、良い感じの答えが浮かんできました。この場を乗り切る最適な答えは……!

 

 

「……失礼ながら、御身は自由奔放なる女神の象徴とも言えるお方。ランサーが懇意にしている神ガネーシャの祭りはただでさえトラブルの種を孕んでいる。彼が万全を期したいと思うのも、致し方ないことでしょう──暴力という手段に訴えたのは、残念ではありますが」

 

 えぇ、本当に残念(なランサー)としか言えませんよねあの事件。

 セイバーほどではありませんが、寿命縮む想いでしたからね本当に。私本来なら後衛なのに、四つ子とガチバトルやらされましたからね一人で。

 

「冒険者なのに力で解決を図ろうとするのは嫌なの? 貴方らしい優しい答えね、パラケルスス」

 

 クス、と笑う女神様。性欲が薄い私ですら思わず見惚れてしまう美しい微笑みです。

 そして言ってることも正しい。毎回毎回、思いついた最新医療をいの一番に仲間に受けさせてあげる私は優しさの塊と言えるでしょう。

 

「では心優しい錬金術師に改めて質問するわ。貴方達は──貴方は、あの事件が起きるのを知らなかったのね?」

「断言します。あの一件は、全く予期せぬ出来事でした」

 

 逆に、ベル・クラネルが食人花とエンカウントするとか予想できた人いたら教えてくださいよ。

 

 

 そんな想いを込めて女神の視線を真っ向から受け止めること数秒。

 フレイヤ様は小さく笑い、視線を緩めてくれました。

 

「そんなに怖い顔をしないで。こう見えても貴方達のことはそれなりに認めてるのよ?」

「──お戯れも、程々に願います」

 

 私は速やかに踵を返します。

 これ以上ここにいたら余計なことまでポロポロ話しそうですし。オッタルなんか凄い目でこっち見てますし。

 

 

 ──あぁ、しかし肝が冷えました。

 

 やっぱりフレイヤ・ファミリアとはあまり関わりたくありませんね、恐ろしいので。

 今後何か用事がある時は、セイバーかランサーにお願いしましょう。

 

 まぁ私が何かやらかした場合、隠蔽のために私が頑張ることになるでしょうけど、まさかそんなこと早々起きないでしょうし、しばらくはのんびり過ごしますか、アッハッハ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま戻りました」

「おーおかえりキャスター。なぁ、オレがお前の工房に置いてったプリヤの小説どこに置いたん? なんかこの、似たような白い本しか置いてなかったけど」

「……? 私は知りませんよ。ライダーが持っていったのでは────────お待ちを。アヴェンジャー、その、手に持っているものは……?」

「あん? だから、プリヤの代わりにお前の工房で見つけた本だって。なんか厳重な魔術掛けてるっぽいから中身はまだ読んでねーけど」

「……………………………お」

「お?」

 

 

 

「おおぅ……………」

 

 

 

 

 

 やっべ。やらかしました。




心優しい錬金術師()はこの数日後に③の事件を引き起こします。
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