アニメアイキャッチ風でめちゃかっこよ!あらすじ欄にて紹介していますので皆さま是非見て!是非!!
更新空いてる4年の間に挿絵管理周りのシステムが地味に変更されていることに気づいて時の流れがボディーブローのように鈍く効いているのは内緒。
大きく息を吸う。
集中力を高める。
自分に突き刺さる複数の視線を感じながら、指先の神経を尖らせる。
鬼との戦闘とは異なる緊張。
万が一、万が一があれば、鬼殺隊の希望が一つ潰えることになる。
じっとりと全身に滲む汗の不快感を無視して、覚悟を決める。
「──行くぞ」
静かに首肯で返されたのを視界ではなく気配で感じた後、カッと目を見開いた。
波紋の呼吸、壱の型・山吹!
──
爪先に流したほんのちょっぴりの波紋を、手の甲に触れさせる。
……変化なし。
掌で手の甲を包み込むようにして、戦闘時と同程度の波紋を流す。
……変化なし。
両手で手を握りこんで、私の流せる最大量の波紋を一息に流す。
──変化、なし。
「……おいおい、まじかよ」
その身体が灰になる気配は、微塵もない。
さすがに信じられない光景に思わず面前の彼女──禰豆子の顔を見やる。
「ふ、ふ。あったかい、ねえ」
当の本人はにこにこと笑って呑気している。
害意を向けられたとすら思っていない、幼気な顔。
「──綾鼓さんの呼吸も、禰豆子さんには効果なし、ですね」
結果を確定させるかのように言葉を発するのは、しのぶ。
それがこの実験の終了を告げる合図のようだった。
ぶは、と大きく息を吐いて、脱力する。
こんなに繊細な波紋のコントロールをしたのは随分久しぶりだ。
上弦の鬼でもないと雑に波紋流して終わりだからなあ。
「禰豆子さんの髪の毛を使った実験である程度予測はついていたでしょうに」
「それでも、だろ。万が一このまま禰豆子が──なんてことになれば、私は炭治郎になんて言えばいいんだ」
大袈裟だなあ、と言外に呆れるしのぶを横目に汗で張り付いた前髪を掻き上げる。
いやほんとに。土下座じゃ済まんぞ。
ともあれ、だ。
この実験によって確信に至った。
もはや禰豆子にとって波紋は──太陽光は、敵ではない。
太陽を克服した鬼。
つまるところ、今の禰豆子は
あのカーズですら石仮面とエイジャの赤石が必須だった進化を、禰豆子は身一つでやってのけたわけだ。
他生物の能力を使うことはできないみたいだが、進化の過程で弱点の超克に特化したためと考えれば納得がいく。
というか、そうでなければカーズの立つ瀬がなさすぎる。禰豆子が「柱の男」の完全上位体ってことになっちまうからな。
本編では色んな事情で出せない尖ったキャラクターをスピンオフで出すってのはあるあるだが、それにしたってぶっ飛んでる。常識を根底から覆された気分だ。
だって「柱の男」じゃない、吸血鬼ですらない
ツェペリ男爵が存命で渡日してたら禰豆子見てひっくり返ってただろうなあ。
なんにせよ、鬼舞辻は禰豆子を手中に収めようと動くだろう。
少なくとも鬼殺隊と禰豆子を引き剥がしにかかる。
自分の唯一の弱点を克服した同族が敵対組織にいるだなんて最悪な状況を野放しになんてできないはずだ。
それこそ、上弦全員をけしかけてくるなんてことも十分ありえ──
「……その割には
思い出すのは、先日の邂逅。
隊士たちの血の海の中に立つ、六つ目の鬼。
私の到着と共に姿を消してしまったので目の中の数字は確認しきれなかったが、鴉からの報告によれば、あれは上弦の壱だった。
あの時点で鬼舞辻をはじめ鬼陣営にも刀鍛冶の里襲撃の始終は伝わっていたはず。
上弦の鬼の頂点が、禰豆子の情報を受けた状態で、柱と対峙して、何もせずに撤退なんてことがありえるのか?
「──それはおそらく、鬼舞辻からの命令でしょう」
疑問へ回答するように、嫋やかな声が返される。
大きく広げられた腕の下から、袖をのれんをくぐる要領で持ち上げてこちらに顔を見せるのは、割烹着を身に着けた女。
その名を珠世。
若様曰く、禰豆子と同様に──否、禰豆子よりも先に鬼舞辻の呪いを外した鬼、らしい。
「あれは酷く臆病な男です。禰豆子さんを確実に取り込むことができる状況になるまで、上弦が今以上に欠ける可能性は極力避けると思われます。柱と──ましてや、
“その時”が来るまで、と結ばれた言葉は、ひどく冷静なようでいて、奥底に鬼舞辻への煮えたぎるような怨嗟が見え隠れしている。
「なるほどなあ。故に鬼の出現もぱったり止まったと。だからこその柱稽古で──だからこその、この
鬼の永い生を賭して鬼舞辻抹殺のための研究をしているという話は真実らしい。
若様が拠点を炙り出すまで鬼殺隊にその存在を気取られることなく、孤独に遠大な闘いに身を投じるその執念と覚悟は想像もつかない。
しのぶの頭脳と掛け合わされば、これはひょっとするとひょっとするかもだ。
ちなみに彼女の眷属(?)だという鬼の愈史郎は、彼女を護るように私の前に立ちふさがり両手を広げたまま動かない。禰豆子の実験が始まる前からずっとこうだ。
まあ、禰豆子と違って2人は私と触れたら一発アウトだからなあ。主の危険を警戒するのは当然とも言える。
これはあんまり長居すると可哀相かな。
「禰豆子の実験は終わったし、他に何かすることは?特にないってんなら稽古の方に戻るけど」
「それなら、最後に血を採らせてください。綾鼓さんの力についてはまだまだ研究の余地がありますから」
言うが早いか、しのぶは手馴れた動きで採血の準備を整えだす。
「玄弥くんの血も、以前の治療の際に採取させてもらいました。比較対象ができて多角的な研究ができれば、今まで解明できなかったことにも手が届くかもしれません」
「いつの間に……抜かりねえなあ」
しのぶ、うきうきだなあ。
味方とはいえ鬼と四六時中顔を突き合わせての研究は大丈夫なのかと少し心配していたが、それよりもブレイクスルーへの期待の方が強そうだ。
にしても、波紋を科学する、かあ。
原作にも紫外線照射装置はあったが、あれは時代的にもう少し未来の話だし、ドイツ軍の持つ技術と資金あっての実践投入だったわけだしな。
はてさて、どんな結果になるものか。
あとはこの2人がどこまで行けるかに賭けるまでだな。
***
屋敷に戻って門をくぐると、そこには隊士たちでできた絨毯が広がっていた。
……いや、それはものの例えで、実際には倒れ伏す隊士たちで埋め尽くされているだけなんだが。
「あ、綾鼓さんおかえりなさーい。ほら皆、柱が戻ってきたし休憩おしまい。稽古再開するよー」
そんな隊士たちに笑顔のまま死刑宣告のような言葉を真菰が投げかけている。
鱗滝一門らしい脳筋スパルタっぷりだ。惚れ惚れするぜ。
「も……むり……しぬ…」
「地面あったけえ……もう起き上がりたくない……」
「真菰さんかわいいのにおっかない……」
死屍累々。文字通り地を這うような声があちこちから聞こえる。
ひとつ溜め息をついて、足を一歩踏み出した。
──波紋の呼吸、陸の型・琥珀
「「「ビリっときたあああああ!?」」」
地面を介して全員同時に癒しの波紋を流すと、一斉に大きく跳びあがる。
よし、みんな元気だな。
「ほれ、体力は回復してやったから戻りな。時間は有限だぜ?」
慌てて駆けていく隊士たちを横目に、縁側に荷物を置く。
「予定よりも遅かったですね。何かありましたか?」
「……いや、少し産屋敷邸に寄ってただけだ。それよりも、こっちの様子はどうだ?」
「見ての通りです。やっぱり全体的に辛抱が足りませんね。玄弥くんに回復してもらいながらなのに、途中休憩なしで動けてるのは炭治郎と善逸くんと伊之助くんの3人だけです」
かなり辛辣めな真菰の評価を聞きながら、池に入っていく隊士たちを見送る。
私のところの稽古は「心肺強化訓練」だ。
玄弥の水泳訓練でも使った敷地内の大きい池を使って、肩から下は水に浸かった状態でひたすら木刀の素振りや鍛錬を行う。
全方向からかかる水圧で地上よりも筋肉は動かしにくいし、肺の膨らみも小さくなる。
その負荷を耐え続ければ、全集中の呼吸も剣技も向上が見込めるはずだ。
とはいえ、負荷がかかれば相応に疲労するのは当然のこと。
普段通りの動きでも、その消耗は通常の比ではない。
もちろん、だからこその訓練ではあるのだが──
「玄弥、調子はどうだ?」
池に近づき、そのほとりに座る玄弥に声を掛ける。
「師範、おかえりなさい。こっちは順調ですよ。稽古の方も、
そう言いながら、玄弥は手に持つ
猩々緋砂鉄と猩々緋鉱石を精錬して作られたそれは、傍目でわかるほどに波紋の力を吸い込んでいた。
「うん、上出来だ」
玄弥に課した訓練は2つ。
1つは、日輪刀の材料となる玉鋼に波紋エネルギーを最大限注ぎ続けること。
1つは、その作業を行いながら隊士たちの稽古を見張り、疲労が極限に達した者を順次回復させていくこと。
太陽光を極限まで吸収した鉄で打たれた日輪刀は、鬼に対して絶大な威力を持つ。
だが、そんな鉄は自然の中では見つけること自体が稀だし、精錬で純度を高めるには刀鍛冶の里でも相当の時間が求められる。
そのため、希少な材料と技術を割いて作られるのは、柱の中でも限られた実力者の武器だけだった。
しかし、戦いのない今の間なら、波紋の力を使って疑似的な量産ができる。
限界まで波紋エネルギーを込めた玉鋼は、刀鍛冶の里に届けられて刀の材料として使用される予定だ。
もちろん、それを行う玄弥も、瞬間最大量のエネルギーを継続して放出し続けることで、波紋エネルギーの生成量を増やす訓練になる。
更に、全力の波紋操作と並行して大人数の隊士の観察と即座の回復動作を行うことで、戦闘中に不可欠な広い視野と柔軟な判断を培うことができるだろう。
「悪いな、他の稽古に参加できなくしちまって。お前も同期と一緒に他の柱のとこに行きたかったろうに」
「そりゃあ、久しぶりに悲鳴嶼さんと会いたかった気持ちもありますけど……。これは俺だからこそできることなんで、寧ろ嬉しいです」
そう言って前を向き、隊士たちを見守る横顔は随分と精悍になって、もう立派な戦士のそれだ。
実弥と対話して、上弦との戦いを経たからだろうか。
刀鍛冶の里から帰ってきた玄弥は、前よりも落ち着いたというか、精神的に安定したような気がする。
こちらに気づいて手を振ってくれる炭治郎たちも、以前とは見違えるほどに鍛え抜かれた体つきだ。
覚悟を持って挑み続けた地獄の様な鍛錬と死線が、確かに彼らを成長させている。
そして、この柱稽古で、彼らはまた一層強くなるだろう。
──であるならば、私も安心して、為すべきことを為せる。
さて、若様の読み通りに、事が運べばいいが。
綾鼓 汐
謹慎期間が終了したので復帰&柱稽古に参加。
詳細を何も聞かずいつも通りに接してくれる後輩たちにとても感謝している。
綾鼓の柱稽古は甘露寺の柔軟訓練と時透の高速移動稽古の間。
ちなみに錆兎は義勇と共に水柱稽古に参加している。
綾鼓の使用する籠手・脛当には戦闘を経て波紋の力が少しずつ蓄積されているため、使い古したものは処分されずになるべく回収・刀鍛冶の里で再利用され日輪刀へと生まれ変わっている。
胡蝶 しのぶ
蟲柱。珠代との共同研究に勤しむため柱稽古には不参加。
1人だけの研究に行き詰まりを感じていたところに数百年分の知識を携えた話の通じる鬼が現れたので内心フィーバー状態。絶対一緒に鬼舞辻ブッ殺しましょうね!
以前に綾鼓の波紋の力を研究しようとしたことがあったが、どう頑張ってもサンプル数が1人しかいないものに結論を出せるわけがないので当時は断念した。だが今は違う!(ギュッ)
隊士たち
ぜえこらひいこらいいながらなんとか稽古をこなしている。
あんなきっついのになんで竈門やら我妻やら猪頭は涼しい顔してこなしてるんだよ……こわ……。
質の悪い隊士は大半が既に脱落していること、玄弥という継子が「波紋の呼吸は継承可能な”技術”である」ことの証明となったことから、現役隊士に綾鼓のことを鬼と揶揄する者はほとんどいなくなった。
竈門 炭治郎
同期2人と共に柱稽古に参加。
行く方々で柱たちに可愛がられ(物理)ながら綾鼓の稽古に辿り着いた。
稽古完了後、久しぶりに持った日輪刀が凄く軽く感じるようになっていることに気づき驚く。
綾鼓から焦りの匂いが消え、代わりに覚悟の匂いが強まっていることについて話をしようと思っていたが、機会を得ることなく稽古が終了してしまった。